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大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)265号 判決 1965年7月13日

原告 三露産業株式会社

代表取締役 大下真吉

訴訟代理人弁護士 竹西輝雄

同復代理人同 船越孜

高橋靖夫

被告 曽根勝真治

訴訟代理人弁護士 伊藤増一

辻野新一

立入庄司

主文

1、被告は原告に対し金四八万六、〇〇〇円と、これに対する昭和二九年二月二日から支払ずみまで年六分の金員を支払え。

2、原告のその余の請求を棄却する。

3、訴訟費用は、二分の一を原告、その余を被告の負担とする。

4、この判決は、原告勝訴部分に限り仮執行することができる。

事実

原告は、「被告は原告に対し、金一〇五万一、〇〇〇円と、内金五六万五、〇〇〇円に対し昭和二九年一月三〇日から、内金四八万六、〇〇〇円に対し同年二月二日から、各支払ずみまで年六分の金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」旨の判決および担保を条件とする仮執行宣言を求め、請求原因として≪省略≫

被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め≪以下省略≫

理由

1、原告主張一、五の事実および原告が本件手形二通の所持人であることは争がなく、また≪証拠省略≫によれば、原告主張一、1の手形につき川田商店の第一裏書および信用組合の第二裏書(いずれも被裏書人白地)があり、同2の手形につき川田商店の第一裏書(被裏書人原告)、原告の第二裏書および信用組合の第三裏書(いずれも被裏書人は白地)があり、いずれも裏書の連続があることが認められる。

2、そこで、原告の手形取得が期限後裏書によるものかどうかを考える。≪証拠省略≫を総合すれば、信用組合は、川田商店との間で前記相殺を行なったのち、本件手形二通を含む相殺ずみの手形を川田商店に返還するにあたり、川田商店の依頼に基いてこれを原告に交付したこと。これは、川田商店が原告に対して負担している綿糸取引代金債務の担保として、右のように信用組合から返還を受けるべき相殺ずみ手形を原告に譲渡したものであること。この原告に対する手形譲渡の約定は昭和二九年一月二九日になされたが、本件手形が原告に交付されたのは、その翌日か翌々日のことであり、そのとき1の手形にはすでに拒絶証書が付されており、2の手形は満期到来前であったこと。原告は、その後2の手形を信用組合に対し取立委任の目的で裏書交付し、支払拒絶証書作成後これを信用組合から受戻したこと、

を認めることができる。右認定の事実によれば、原告は、本件手形をいずれも川田商店から、1の手形は拒絶証書作成後に、2の手形は満期前に、それぞれ譲り受け取得したものということができる。

3、したがって、2の手形については、期限後裏書を前提とする被告の主張(三)ないし(五)、ならびに原告が信用組合から手形を譲り受けたことを前提とする同(六)の主張は、いずれも理由がない。

4、1の手形に関する被告の主張(三)について。被告が、右手形を見せ手形として他に譲渡することを禁じて川田商店に振出交付したという点について、これに副う乙一号証の一の記載、証人曽根勝啓一、被告人の供述部分はたやすく信用できず、甲七号証の二、甲一三号証、証人川田小三郎の供述により成立を認める乙二、三号証、同証人および証人植村敬一の供述、被告本人の供述(一部)によれば、右手形は、被告が川田商店に金融を得させるため貸与した融通手形であり、川田商店は右手形と額面金額を同じくし、満期を右手形より三日前とする反対手形(被告主張(四)(1)の約束手形)を被告に交付していたこと、被告はこの反対手形を満期に呈示したところ不渡となったので、本件手形をも不渡としたこと、を認めることができる。

5、ところで、被告の(三)の主張は、本件手形が見せ手形であって、被告は川田商店に対しその支払を拒むことができることを主張するものである。そして、見せ手形と融通手形とは概念上相異するところがあるけれども、被告のこれを抗弁とする趣旨は、本件手形が被告において川田商店に信用を付与するため好意的に振り出した手形であり、被告は川田商店に対しては手形支払義務を負担していないことを主張しようとするものであるから、右主張に基いて本件手形が前記のような融通手形であることを認定し、抗弁の当否を審究しても、当事者の主張しない事実を判決の基礎としたことにはならないと解する。

6、そして、融通手形を被融通者から拒絶証書作成後に譲り受けた第三者が、振出人(融通者)の被融通者に対する抗弁の対抗を受けるかどうかは、見解の分れるところであるが、融通手形は、その性質上満期前に割引その他の方法により換金され、満期までの期間融通者の信用を利用せしめることを目的とし、したがって融通当事者は、特段の事情のないかぎり満期前の利用を予想して手形の授受をするものであること、とくに本件においては、前認定のとおり被融通者である川田商店の方から、満期を三日前とする反対手形が交付され、いわゆる手形の交換が行なわれていることに鑑みれば、被告および川田商店は、黙示的に右反対手形の満期までか、おそくとも本件手形の満期までの間にかぎって本件手形を換金のため他に譲渡することを約したものと認めるのが相当であり、このような手形授受者間の合意に基く抗弁は、一般の人的抗弁とおなじく期限後の手形取得者に承継される。

7、こうして、被告は川田商店に対し1の手形金支払を拒むことができるから、川田商店から右手形の期限後裏書を受けた原告にも、その支払を拒むことができる。原告の八の主張は、原告が信用組合から本件手形を譲り受けたことを前提とするものであるから、採用できない。

8、そうすると、原告の請求は、前記2の手形金およびこれに対し満期の翌日以降支払ずみまで手形法による年六分の遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容し、その余は失当であるから棄却し、民訴九二条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦)

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