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大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)4402号 判決 1958年6月10日

原告 鈴木君子

<外二名>

右三名代理人弁護士 環長三郎

被告 大阪相互不動産株式会社

右代表者 佐野棟勇

被告 大相興業株式会社

右代表者 佐野棟勇

主文

被告大阪相互不動産株式会社は原告に対し、別紙目録記載の建物を収去して別紙目録記載の土地を明渡し、且つ昭和二八年九月一五日から右土地明渡済に至るまで一坪につき一ヶ月金四三円の割合による金員の支払をせよ。

被告大相興業株式会社は原告に対し、別紙目録記載の建物が収去せられるときはこれから退去せよ。

原告等の被告大相興業株式会社に対するその余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決は原告等が被告大阪相互不動産株式会社に対して金一五〇、〇〇〇円、同大相興業株式会社に対して金五〇、〇〇〇円の担保を供するときはそれぞれ仮に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

原告等が原告等主張の土地を共有していること、被告大阪相互不動産が原告等主張の日より別紙目録記載の土地の上に同目録記載の建物を所有並に占有し、被告大相興業が原告等主張の日より右建物を被告大阪相互不動産と共同して使用していることは当事者間に争なく、被告大阪相互不動産が右土地を右建物所有のため占有使用し得る権原については同被告において何等の主張立証しないところであるから、同被告の本件土地占有は不法占有と目するの外はなく、土地所有者である原告に対し、右建物の収去、土地明渡、並に右明渡まで土地不法占有に因る損害金支払の義務があることはいうまでもない。そしてその損害金の額は、さきに原告等と大内成介との間に賃料一ヶ月金六、〇〇〇円で原告等主張の土地が賃貸されていたことは当事者間に争がないから、これを一坪当りに換算すると金四三円強となり、原告主張の一坪金四三円は、右土地の相当賃料と認められるから、これを以て損害金の額と認定することができる。よつて同被告に対する原告等の請求は全部正当として認容すべきものとする。

次に被告大相興業は、前記被告大阪相互不動産の土地不法占有による建物を占有使用しているものであり、それ以外に原告等に対抗し得べき権原については同被告の主張立証しないところであるから、右建物所有者において建物収去義務がある以上、右収去せらるべき建物を占有することにより収去の妨害をしない義務を原告等に対し負担することはいうまでもない。よつて右建物の収去される時期において、これより退去すべき義務があるということができる。しかしながら右収去の行われる以前においては、建物占有行為と敷地の使用妨害の結果との間には相当因果関係を欠き収去とは切離した独立した即時無条件の退去義務は存在しないものというべきであるから、土地所有者に対し、土地使用妨害乃至不法占有に基く損害賠償の義務を負うことはないと解すべきである。よつて同被告に対する原告の請求はその退去を求める部分のみは正当として認容すべきも、損害金の支払を求める部分は失当として棄却を免れない。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮川種一郎 裁判官 奥村正策 鍬守正一)

<以下省略>

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