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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)8182号 判決 1998年10月15日

原告

西脇進

ほか一名

被告

岩田富雄

ほか二名

主文

一  被告岩田富雄及び同岩田栄は、原告西脇進に対し、各自六四一万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告岩田富雄及び同岩田栄は、原告西脇孝子に対し、各自五八六万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告三井海上火災保険株式会社は、原告西脇進の被告岩田富雄に対する判決が確定することを条件として、原告西脇進に対し、六四一万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告三井海上火災保険株式会社は、原告西脇進の被告岩田栄に対する判決が確定することを条件として、原告西脇進に対し、六四一万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告三井海上火災保険株式会社は、原告西脇孝子の被告岩田富雄に対する判決が確定することを条件として、原告西脇孝子に対し、五八六万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告三井海上火災保険株式会社は、原告西脇孝子の被告岩田栄に対する判決が確定することを条件として、原告西脇孝子に対し、五八六万八〇三六円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

八  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの負担の、その余を被告らの負担とする。

九  この判決の第一ないし二項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告岩田富雄及び被告岩田栄は、原告西脇進に対し、各自一二三三万六二五〇円、同西脇孝子に対し、各自一一八三万六二五〇円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告三井海上火災保険株式会社は、原告らの右被告両名に対する判決が確定することを条件として、原告西脇進に対し、二四六七万二五〇〇円、同西脇孝子に対し、二三六七万二五〇〇円及びこれに対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告らの子である西脇正也(以下「正也」という。)が同乗し、被告岩田富雄及び同岩田栄の子である岩田伸一郎(以下「伸一郎」という。)が運転する自動車と笠原徹運転の自動車の衝突事故に関し、正也、伸一郎ともに死亡したので、原告らが、被告岩田富雄及び同岩田栄に対し、民法七〇九条、自動車損害賠償法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、損害の賠償を求め、伸一郎が任意保険契約を締結していた被告三井海上火災保険株式会社(以下「被告会社」という。)に対し、保険金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等

以下のうち、1、8、9は当事者間に争いがない(車両登録番号、本件事故の場所は甲一、乙一1)。2、3は被告らにおいて明らかに争わないので自白したものと見なされる。4、5は甲六により認められる。6、7は甲九により認められる。

1  伸一郎は、正也を同乗させて、平成八年九月六日午後一一時五五分ころ、普通乗用自動車(京都五四す六七九、以下「被告車両」という。)を運転して、鳥取県岩美郡岩美町大字大谷二二一四番地四先道路(以下「本件道路」という。)を進行中、センターラインを超えて、同所反対車線を走行中の大型貨物自動車(京都一一き三四六〇、京都一一け一五六九、以下「笠原車両」という。)と正面衝突した(以下「本件事故」という。)。正也は、本件事故当時、シートベルトを着用していなかった。

2  本件事故は、伸一郎の過失によって発生した。

3  本件事故当時、伸一郎は、被告車両を所有して自己のために運行の用に供していた。

4  正也は、本件事故により平成八年九月六日死亡した。

5  正也死亡当時、原告西脇進はその父、原告西脇孝子はその母であった。

6  伸一郎は、本件事故により平成八年九月七日死亡した。

7  伸一郎死亡当時、被告岩田富雄はその父、被告岩田栄はその母であった。

8  被告会社は、被告車両に自動車保険契約を有し、その約款によれば原告らの加害者への請求が確定すれば、被告会社も原告らに直接支払義務を負うこととされていた。

9  原告らは、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から三〇〇〇万円の支払を受けた。

二  (争点)

1  原告らの損害 特に逸失利益について両当事者の主張は次のとおりである。

(一) 原告ら

(1) 逸失利益 五〇三四万五〇〇〇円

正也は、昭和五〇年一〇月二七日生まれで、本件事故当時二〇歳、平成八年三月よりJA兵庫みかたに就職しており、死亡時までに得た給料は一二四万三一二三円であったが、若年であり逸失利益としては男子労働者平均賃金額により六七歳まで四七年間分を生活控除五〇パーセントで、ライプニッツ係数により計算すると、次の計算式のとおり五〇三四万五〇〇〇円となる。

計算式 5,599,800×0.5×17.981=50,345,000

(2) 逸失利益 四五六九万八二八一円

仮に右が認められなくても、昇給予定を基礎にした正也六〇歳までのJA兵庫みかたでの年収入額に定年退職後の六年間の収入(右のうち四年間は平成八年度高卒男子労働者の平均賃金年間五三一万二七〇〇円、その後二年間は同平均賃金六五歳以上の年間四六八万〇九一九円を基礎にする。)に新ホフマン係数と生活費控除五〇パーセントを乗じた金額の合算である。

(3) 逸失利益 四四一二万〇九三二円

仮に右が認められなくても、昇給予定を基礎にした正也六〇歳までのJA兵庫みかたでの年収入額及び退職金予定額に新ホフマン係数と生活費控除五〇パーセントを乗じて金額の合算で、四四一二万〇九三二円となる。

(4) 逸失利益 四二五一万三三五六円

仮に右が認められなくても、平成八年度高卒二〇歳男子平均賃金ベースで計算した収入面での逸失利益(三九四〇万九七八六円)及び退職金予定額に新ホフマン係数と生活費控除割合五〇パーセントを乗じて計算した金額(四二五一万三三五六円)の合算額である。

(二) 被告ら

原告らの請求は過大である。本件事故直前の現実の収入を基礎にホフマン係数により算出すべきである。正也が本件事故当時勤務していたJA兵庫で終身雇用による年功序列型を前提とした昇給や将来退職金を得られることを前提とした計算は蓋然性がなくできない。

2  好意同乗減額

(一) 被告ら

本件はまがりくねった山道を友人同士で時速八〇キロメートル以上の高速度でドライブを楽しんでいたもので、正也は伸一郎の運転も未熟であることなども知っていたなどの事情があるから、共同して運行利益を享受した事例であったし、危険を承認して同乗したものにも当たるので、少なくとも二割の好意同乗減額をすべきである。

(二) 原告ら

本件事故当時の走行速度等の走行状態について争うし、被告らの主張するような事情では好意同乗減額をするのは相当でない。

第三争点に対する判断

一  原告らの損害について

正也は本件事故により被告岩田富雄及び同岩田栄に対し次の1、2の損害について損害賠償請求権を取得し、原告らは、相続分に従いこれを二分の一ずつ(円未満切捨て、以下同じ。)の割合で相続したものと認められる。原告西脇進は3の費用を負担し、同額の損害を受けたものと認められる。

1  逸失利益 三一二七万二一四七円(原告らの主張 前記第二の二1(一)のとおり)

第二の一、甲二、四、五、一〇、一九及び弁論の全趣旨によれば、正也は、昭和五〇年一〇月二七日生まれの男子で、本件事故当時二〇歳の独身であり、兵庫県立温泉高校卒業後、大阪法律専門学校(公務員コース)を経て、平成八年三月一三日兵庫県美方郡温泉町細田五〇六―一所在の兵庫みかた農業協同組合(以下「みかた農協」という。)に就職し、約六か月後に本件事故に遭ったこと、本件事故までの給与等として、みかた農協から合計一二四万三一二三円(一二六万七七二三円から通勤実費六月分二万四六〇〇円、月額四一〇〇円(甲一二)を引く。)の支給を受けていたに過ぎないが、まる一年勤めれば、平成八年度の支給予定総額として賞与を含め二六二万四三八三円(二六七万三五八三円から四万九二〇〇円を引く。)の収入が見込まれたところ、正也は、本件事故に遭わなければ、二〇歳から六七歳までの四七年間就労し、その間に少なくとも年収二六二万四三八三円を得ることができたと認められるから、正也の生活費として五割を控除し、右期間に相当する年五分の中間利息を新ホフマン方式により控除すると、三一二七万二一四七円を下回ることはないと認められる。

計算式 2,624,383×(1-0.5)×23.832=31,272,147

原告らは、まず、男子全労働者全年齢平均賃金を基礎にライプニッツ係数で計算すべきであると主張するが、正也が現実にみかた農協に勤務していたので男子全労働者全年齢平均賃金を基礎とするのは相当でなく、中間利息控除の係数を本件では新ホフマン係数を使うのが相当であるから、原告の右主張は採用できないこと、次に正也のみかた農協での定年(六〇歳)までの昇給見込みも考慮すべきだし、退職金予定額等も含むべきであると主張する。確かに甲一三1、2、一八中にはみかた農協には職員に関する給与規程や退職給与規程も存するようだが、正也は就職してまだ約六月間しか経ておらず、しかも現在の経済状況からすると、いまの段階で定年までみかた農協に勤務し続ける蓋然性は認め難く、他にこれを認めるに足る的確な証拠もないので、右定年までの昇給見込等を前提とする右原告の主張は採用できない。また、原告は、右定年後四年間は平成八年度高卒男子労働者の平均賃金を、その後二年間は同平均賃金六五歳以上の平均賃金を基礎にすべきであるという主張もするが、同じく右定年を前提とする主張であるから、右と同様の理由から採用できない主張である。一方、正也は、みかた農協に勤務して一年未満で本件事故に遭って死亡しているが、専門学校に行ってまでみかた農協に勤務したのであるから本件事故の遭った年度くらいは勤務した蓋然性が高いといえるから、前記のとおり、平成八年度一年分の合計収入見込み額を基礎にするのが相当である。

2  慰藉料 二〇〇〇万円(原告らの主張二二〇〇万円)

本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、正也が本件事故によって死亡したことによって受けた精神的苦痛を慰藉するためには、二〇〇〇万円をもってするのが相当である。

3  葬儀費用 一〇〇万円(原告西脇進の主張どおり)

弁論全趣旨によれば、原告西脇進は、正也の葬儀を行い、そのために一〇〇万円を下らない費用を負担したものと認められる。

二  好意同乗減額について

まず、友人同士でドライブを楽しんでいたというだけでは、原告らに生じた損害について減額すべき事情にはあたらず、この点に関する被告らの主張は採用できない。

第二の一、甲二、三、乙一1ないし5、二1ないし4、三二ないし三四、三六、三七1によれば、本件道路の本件事故があった付近はカーブした山道であったこと、伸一郎運転の被告車両の衝突時の速度が時速約五三キロで、本件事故直前の速度が約八〇キロメートル(本件道路の制限速度時速五〇キロメートルであった。)であったこと、本件事故時、正也はシートベルトをしていなかったが、大型貨物自動車と被告車両との正面衝突で、正也は、圧死による即死状態であったこと、本件事故は平成八年九月六日午後一一時五五分ころであったが、伸一郎は、右本件事故時の約四時間前の本件事故日の午後七時ころ、自宅を出ていたことが認められ、右事実からすると、正也は、本件事故当時、シートベルト非着用であったが、本件事故の状況から正也がたとえシートベルトを着用していたとしても死亡していた蓋然性が高いといえるので、右シートベルト非着用を正也の過失として本件事故の損害で考量するのは相当でなく、本件事故直前では伸一郎は、時速約八〇キロメートルで被告車両を走行させていたことが認められるが、これらと本件道路が山道であったことや、伸一郎が自宅を出た時間など前記認定の各事実から、伸一郎が被告車両を運転して時速約八〇キロメートルの高速で長時間運転していたという高い蓋然性を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠もないので、結局、本件事故直前の被告車両の時速が時速約八〇キロメートルであったとだけしか認められず、また、正也は、伸一郎の運転が未熟であったことを承知していたことを認める的確な証拠はないなどの諸事情からすると、正也が事故発生の危険が極めて高いような状況が存在したことを知りながらあえて同乗したことも認められない。

以上から、本件事故では原告らの損害について好意同乗減額をするのは相当でないから、この点につき被告らの主張は採用できない。

四  結論

以上によると、本件事故による原告西脇進の損害は、二六六三万六〇七三円になり、原告西脇孝子の損害は、二五六三万六〇七三円となるところ、原告らは自賠責保険から三〇〇〇万円の支払を受けたことは前記のとおり認められるところ、弁論の全趣旨によれば、原告らはこれを二分の一ずつ各自の損害のてん補に充てたものと認められ、そうすると、原告西脇進の残損害は、一一六三万六〇七三円となり、原告西脇孝子の残損害は、一〇六三万六〇七三円となる。

本件の性格及び認容額に照らすと、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は、原告西脇進一二〇万円で、同西脇孝子が一一〇万円とするのが相当である。

結局、原告西脇進は、被告岩田富雄及び岩田栄各自に対し、六四一万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、原告西脇孝子は、被告岩田富雄及び岩田栄各自に対し、五八六万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、原告西脇進は、被告三井海上火災保険株式会社に対し、原告西脇進の被告岩田富雄に対する判決が確定することを条件として、六四一万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、被告三井海上火災保険株式会社に対し、原告西脇進の被告岩田栄に対する判決が確定することを条件として、六四一万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、原告西脇孝子は、被告三井海上火災保険株式会社に対し、原告西脇孝子の被告岩田富雄に対する判決が確定することを条件として、五八六万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、被告三井海上火災保険株式会社に対し、原告西脇孝子の被告岩田栄に対する判決が確定することを条件として、五八六万八〇三六円及びこれに対する本件事故の日である平成八年九月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩崎敏郎)

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