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大阪地方裁判所 平成9年(ヨ)1790号 決定 1997年9月22日

債権者

冨山安信

(他三名)

債権者ら代理人弁護士

森博行

永嶋靖久

債務者

丸新港運株式会社

右代表者代表取締役

中西隆利

債務者代理人弁護士

田邉満

主文

一  債権者冨山安信、同園田学及び同飯干和志が、債務者に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、平成九年七月から同年一二月まで、毎月二五日限り、

1  債権者冨山安信に対し一九万円

2  同園田学に対し二八万二二〇〇円

3  同飯干和志に対し二二万六〇〇〇円の各割合による金員を仮に支払え。

三  債権者片山正広の申立て並びに債権者冨山安信、同園田学及び同飯干和志のその余の申立てをいずれも却下する。

四  申立費用は、債権者片山正広と債務者との間に生じたものは同債権者の負担とし、その余はこれを二分し、その一を債務者の、その余を債権者冨山安信、同園田学及び同飯干和志の負担とする。

事実及び理由

第一債権者らの申立て

一  債権者らが、債務者に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、平成九年七月から本案の第一審判決言渡しに至るまで、毎月二五日限り、

1  債権者冨山安信(以下「債権者冨山」)に対し三〇万八九四〇円

2  債権者片山正広(以下「債権者片山」)に対し三一万一八八〇円

3  債権者園田学(以下「債権者園田」)に対し二九万七三〇〇円

4  債権者飯干和志(以下「債権者飯干」)に対し三二万八一一〇円の各割合による金員を仮に支払え。

第二事案の概要

本件は、債務者の従業員で、いわゆる港湾荷役作業に従事する債権者らが、他の労働者と共に解雇されたことにつき、「債権者らの組合の分会結成を理由とする不当労働行為であり、解雇権の濫用である」と主張し地位保全金員仮払仮処分を求めたのに対し、債務者が、普通解雇であり、解雇した各人につきそれぞれ合理的な解雇理由があると反論している事案である。

第三前提となる事実(争いがない)

一  債務者は、港湾運送事業、船内荷役事業、沿岸荷役事業などを事業目的とする株式会社である。

申立外株式会社マルニカ(以下「マルニカ」)は、陸上運輸事業、自動車運送取扱事業、労働者派遣事業法に基く人材派遣等を事業目的とする株式会社である。

債務者の代表取締役は、マルニカの代表取締役の父親である。

二  債権者らは、いずれも債務者と労働契約を締結し、マルニカから派遣された申立外大塚信哉(以下「申立外大塚」)と共に、同一職場で船内荷役や沿岸荷役に従事する労働者である。

債権者らは、いずれも全日本港湾労働組合関西地方大阪支部(以下「全港湾大阪支部」)に所属する組合員である。

三  債務者の浜島取締役部長(以下「浜島部長」。マルニカの取締役を兼務)は、債権者ら四名及び申立外大塚並びに申立外田守和行、同沖野誠、同梁取幸信、同木下勝宏及び同日高国義に対し、平成九年七月一日、解雇を通告し(以下「本件解雇」)、その後債務者は、債権者らに対し、一ケ月分の解雇予告手当を振り込んだ。

第四解雇についての債務者の主張(【 】内は債権者らの認否、反論等)

一  債務者は、元請会社の株式会社日新から、平成八年一〇月、船内・沿岸荷役及び関連作業を引き受け、平成九年一月以降、現業部の増員強化を図ってきた。しかし、同年四月二一日に第一船が入港し作業手続が開始されたところ、取扱実績が当初予想を大幅に下回ったうえ、作業料金も予想料金より極端に低く、そのため収益が急激に悪化し、経費削減、人員削減を余儀なくされるに至った。【否認する。債務者主張の荷役作業は、債務者南港営業所(L―2)の仕事であり、同K―1営業所の仕事ではなかった。したがって、債務者主張の事実があったとしても、そのことは、K―1営業所に所属していた債権者片山及び同園田を解雇する理由とはならない。しかも、同荷役作業に対しては、K―1営業所や泉北営業所からも応援を出しているうえ、債務者は、平成九年四月以降も、人手不足のため日雇労働者を多数雇用し、L―2で稼働させてきており、「剰員を生じていた」との主張自体疑わしい】なお、債権者らは、右荷役作業はK―1営業所の仕事ではない旨主張するが、債務者では、全ての受託作業を全社的に取り組んでおり、債権者ら主張のような取扱いはしていない。また、債務者は、貨物取扱業の山側倉庫で若干の日雇労働者を雇い入れているが、これは、日々の労働量に大きな変化があるため、日雇労働者を雇用しているのである。

そこで、人員削減については、就業規則一九条五号(その他経営上やむを得ない事情が生じ剰員となったとき)、三号(勤労意欲が他のものに比して劣り…勤務成績が著しく不良で就業させるに適さないと認めたとき)及び九号(その他前各号に準じる事由のあったとき)を適用し、同年六月初旬、現業員一〇名を削減する、削減対象者としては、新規雇用者、成績不良者を対象に選別することを決定し、同月二〇日、債権者ら及び申立外沖野誠、梁取幸信、木下勝宏、日高国義の解雇を決定し、マルニカにおいては、申立外大塚の解雇を決定し、第一四四半期が終了した同年七月一日に、債権者らに対し解雇の通告をした。【債権者ら及び申立外沖野、同梁取、同大塚に対する解雇通告は認め、その余は否認ないし不知】

債権者らは、本件解雇は債権者らの組合分会結成を嫌悪してなされた不当労働行為であると主張するが、債務者は、解雇した一〇名の選定を右のとおり平成九年六月二〇日に決定しており、そのときには、分会結成についての噂すら聞いていなかったものである。【否認する】

二  解雇者ら選定の理由

1  債権者冨山について

同人は、平成八年九月二六日の入社であるが、日常の仕事態度は口ばかりで手が動かない。要領が良くて楽な仕事に逃げ、仕事をしないと同僚から批判されるほどで、仕事について上司の信頼がなく、また、協調性に乏しく、勤務態度も悪く、従業員としての適性に欠けると判断された。【入社日は認め、その余は否認する。なお、債権者冨山は、債務者から、平成九年六月二三日以降に、「車両系建設機械(整地・運搬・積込・掘削用)運転技能講習」への参加を命じられており、少なくともこの時点で債務者が同債権者の解雇を考えていなかったことは明らかである】

2  債権者片山について

同人は、平成四年九月一六日の入社であるが、性格が協調性に乏しく、不平不満が多く、非常に短気で喧嘩早く、社内でもトラブルが多く色々問題があったが、従来は実父が会社で働いているお陰で解雇されず今日まで会社で働いてこられたに過ぎない。業務上も注意散漫で、事故が多く従業員としての適性に欠ける。

事故歴は、平成六年一一月二一日貨物事故損害額二九〇万円、平成八年五月二二日物損事故損害額二五万円、同年九月二〇日物損事故損害額二一万円である。【入社日は認め、その余は争う。平成六年の事故は、債権者片山がフォークリフトに乗り出して間もない頃のことで、全てを同債権者の責任にするのは酷である。平成八年五月の事故は、上司から、一五、六トンある品物を一二トンフォークで荷役するよう命ぜられ、無理だと断ったのに何とかしてくれと言われ作業に入ったところ、案の定事故が起きたもので、同債権者の責任ではない。同年九月の事故については、責任があることを認める。もっとも、債務者においては、貨物事故、自動車事故、労災事故が頻発しており、債権者片山のみ特に事故が多いわけではない】

3  債権者園田について

同人は、平成七年一一月二一日の入社であるが、平成九年三月に南港営業所からK―1営業所に移っており、若年層の多い職場でのリーダーたるべく嘱望されたが、意欲がなく期待はずれに終わっている。平成九年三月五日には不注意により損害額一四万円の物損事故を起こしている。【入社日、営業場所の移動、物損事故を起こしたことは認め、その余は争う。なお、物損事故については、予定していたフォークのオペレーターが急に来れなくなったところ、現場責任者から「お前やってみろ」と命ぜられて初めて一二トンの大型フォークに乗って荷役を行った際のもので、経験の浅い債権者園田に仕事を任せたことにも無理があった。また、債権者園田は、債務者から、平成八年一〇月、平成九年一月に表彰を受けている】

4  債権者飯干について

同人は、平成八年二月二四日の入社であるが、日頃から不平不満が多く、協調性に乏しい。債務者は、適材適所の人材を育成する計画を進め、債権者飯干に対しても指導してきたが、朝の出勤時間が早いときは高速料が欲しいとか、残業手当がついているだろうと言っても高速料に消えてしまうと不平を言い、常に総監督の指示に不服を言い、若年層の従業員に対し悪影響を及ぼすおそれが強く、従業員としての適性に欠けると判断された。【入社日は認め、その余は争う】

5  申立外大塚信哉について

同人は、平成七年六月一日に入社し債務者に出向してきたものであるが、業務の上での責任感が薄く、上司、同僚からの評価も平均以下と芳しいものではなく、勤務態度も欠勤・遅刻が多く良好ではなく、その都度注意を受け、指導されてきたが、改善は見られなかった。また、日頃から仕事に対する不平不満が多く、仕事に対する積極的姿勢に欠け、責任ある仕事に就けることは難しく現業員としての適性に欠けると判断された。【否認する】

6  申立外田守和行について【不知】

同人は、平成五年八月五日の入社であるが、勤務態度は劣悪で、欠勤・遅刻が多く、出勤率は平均以下でしかない。技量も劣り、注意力も散漫で、平成六年四月二二日物損事故損害額一五万円、同年八月二二日貨物事故損害額一〇万円、平成八年一二月一八日物損事故損害額二五万円、平成九年五月二七日貨物事故損害額三〇万円と事故を多発させ上司の注意・指導にかかわらず何ら改善されるところはない。平成九年三月には、社内において同僚とのトラブルから重傷を負わせ再起不能の状態に陥らせる事態を招いている。成績は不良で、賞与や昇級の査定は平均以下と悪い。債務者は、申立外田守和行の妻の父が同じ職場にいるため配慮してきたが、上司の注意も聞き流して改善の兆しもなく、解雇相当と判断された。

7  申立外沖野誠について【不知】

同人は、昭和六二年四月一日の入社である。同人は、学卒採用であり、債務者としても当初は将来のリーダー職として期待し教育してきた。しかし、沖野は、入社後数年してから意欲を失い、会社が勧める技能資格の取得にも消極的で、技能者としての能力開発も頭打ちとなり、学卒者の中では最も低い評価しか得られない。業務についても倉庫業務しか好まず、船内業務には消極的で船内要員としては全く期待できない状態であり、倉庫業務についても指導的立場に立てず後輩にリーダー職を取られる状態に終始している。債務者としては、再三リーダーを目指すよう説得してきたが、意欲を失った状態のままなので、後輩のリーダーも仕事がし難くチームの協調性を阻害する存在となっており、解雇もやむを得ない。平成九年七月一日、同人にその事実を指摘し解雇を通告したところ、退職を申し出たので受領した。

8  申立外梁取幸信について【不知】

同人は、平成三年五月二七日の入社である。同人は、技量も劣り不注意による事故が多いが、上司に注意されても事故に対する反省が全く見られない。過去に勤務場所の変更があったが、若年従業員に対する誹謗発言など無用の口数ばかり多くて、協調性についても問題があり、従業員としての適性に欠ける。梁取は、平成九年五月、倉庫作業で事故を起こし、債務者としては、荷主に対し事故再発防止を示すため、同年六月一日から梁取を倉庫作業から船内作業に移したが、同人の勤務状況ではチーム作業の船内作業は危険度も高く、船内作業に従事させることはできないと考え、解雇相当と判断した。

9  申立外木下勝宏について【不知】

同人は、平成九年四月二五日の入社である。同人は、勤務態度が劣悪で、欠勤・遅刻が極めて多い。上司が何回となく注意し指導してきたが、反省して改善するとの態度も見られず、解雇が相当と判断された。

10  申立外日高国義について【不知】

同人は、平成九年三月三日の入社である。同人は勤務態度はまじめであるが、年齢も高く、現場業務に馴染めず協調性に欠ける。現業業務についての適正に欠けると判断し解雇を通告した。日高は解雇を了承し、平成九年七月三一日に退職する旨を申し出て、債務者もこれを認めた。

三  不当労働行為との点について

債務者は、平成九年六月二〇日には各人の解雇を決定したのであって、組合結成に関しては、同年七月一日、申立外大塚に対し解雇の通告をしたところ、同人が、「首になった」と騒ぎ立て、「わしは組合に関係がないのに」と名前を挙げて喋り回ったことから、分会に加入しようとしていた者の氏名を知ったに過ぎない。【否認する】

第五保全の必要性について

一  債権者ら

債権者らは、本訴提起を準備中であるが、いずれも債務者から得る賃金を唯一の生活の糧とし、また債務者との労働契約上の地位に基づいて大阪港湾健康保険組合の保険証を利用して自らと家族の健康を保持している労働者であって、本件判決に至るまでの間その地位を保全すると共に、賃金の仮払を得ることができなければ、本訴で勝訴判決を得たとしても回復し難い損害を被る。

二  債務者

保全の必要性一般については争う。

債権者らが仮払を求める金額(前記第一の二)は、いずれも平成九年四月から同年六月の間の平均賃金で、債務者が解雇予告手当として支給した三〇日分以上の平均賃金額と同一である。しかし、右には通勤手当や残業手当が含まれているところ、通勤手当のように実費補償的なものや残業手当のように現実に残業に従事して初めて請求権が発生するものなどは除外されるべきである。それらを除いて債権者らの給与を算定すると、以下のとおりとなる。

1  債権者片山 二五万四九二〇円

2  債権者園田 二五万〇五六〇円

3  債権者飯干 二四万七四四〇円

4  債権者冨山 二六万八五〇〇円(日給制)

第六判断

一  解雇の合理性について

1  債権者冨山について

同債権者に対する債務者の主張する解雇理由は、前記のとおり抽象的で、疎明(書証略)による何ら具体性が補充されていない。したがって、不当労働行為の点について判断するまでもなく、解雇に合理性があることを一応認めるに足りない。

2  債権者片山について

(一) 疎明(書証略)によると、前記第四の一の第一段の事実(減員等の必要性等)が一応認められるところ、疎明(書証略)及び争いのない事実によると、債務者主張のとおり、同債権者は、過去に社内で喧嘩に関与したことがあったこと、複数回にわたり事故を起こしていることが一応認められ、これらの事実に照らせば、会社都合による人員削減の対象者として債権者片山を選定したことは、合理的な理由があると一応認められる。

もっとも、右喧嘩についてはその詳細が必ずしも明らかでないこと、事故については、前記第四の二2記載のとおり、同債権者に言い分がないではないようであり、また、事故は何も同債権者だけに限ったことではないことは一応認められる(書証略)が、喧嘩については、同債権者自ら「責任を感じて辞める」と申し出ているほどのものであったと窺われること(書証略)、事故についても、その主張自体からして、同債権者にそれ相応の責任があることは否定できないこと、確かに、債務者においては平成八年四月から同年一二月までの間だけでも、五〇回前後もの事故が発生しているところ、同期間内に二回の事故を経験しているのは、同債権者以外に五人(谷悟志、桑野弘生、小田幸恵、金谷昌直、引地昌弘)はいるが、同債権者が発生させた損害額は谷悟志に次いでいる(なお、審尋の全趣旨によると、同債権者の平成六年一一月の事故の損害額は二九〇万円と高額であり、この金額は、右五〇回前後の事故の金額と比べ、一、二を争う高額なものになると一応認められる)ことなどを考えると、同債権者を被解雇者として選定したことに合理的な理由があるとの右認定を左右するものではない。

(二) そこで、債務者に、右解雇の合理性を覆す程度の不当労働行為の意図も併存していたのかについて検討するに、疎明(書証略)及び争いのない事実並びに審尋の全趣旨によると、以下の事実が一応認められる。

(1) 債務者には、従来から大阪港湾労働組合丸新港運支部(以下「大港労組丸新支部」)が約四〇名の組合員をもって存在していた(争いがない)。

(2) 全港湾大阪支部は、大港労組丸新支部に組織されていない債務者及びマルニカの労働者から相談を受け、かねて組織化を働きかけていたが、平成九年六月二八日、これに応じた債権者らの加入を得て、分会を結成した。本件解雇により解雇された一〇名のうち、少なくとも債権者ら四名、申立外大塚、同田守、同沖野幸信の七名は、右分会に加入した者である。

(3) 債権者らに本件解雇を告知する際、浜島部長は、「会社に矢を向けるような奴は会社の枠に入っていない」「君たちが組合を作ろうとしていても、…会社は一切動じない」「組合を作っていることは会社にばれている。誰と誰がいるのか」などと述べた。

(4) 債務者の従業員は、平成九年七月二日から四日にかけて、大阪港湾労働組合丸新港運職員支部を結成し、全港湾大阪支部に加盟した者に対し、それからの脱退届に署名して貰った。

以上の事実に照らすと、本件解雇は、全港湾大阪支部に加盟し分会を作ろうとした動きに対抗する意図もあってなされた可能性は否定できない。しかし、債権者片山に対する前記解雇理由は、ある程度高度のものと一応認められ、右認定事実から窺われる程度の債務者の不当労働行為意思は、仮にそれがあったとしても、同債権者に対する解雇を無効にするほどのものとまでは認めることができない。

よって、債権者片山に関する仮処分申立ては理由がない。

3  債権者園田について

同債権者に対する解雇理由のうち、事故を指摘するもの以外は抽象的であって理由にならず、事故についても右2(一)に述べたその他大勢の「事故発生者」の事故と大差なく(書証略)、被解雇者として特に債権者園田を選定した理由が明らかではなく、同債権者に対する解雇に合理性があることを一応認めるには足りない。

4  債権者飯干について

同債権者に対する債務者の主張する解雇理由も、前記のとおり抽象的で、疎明(書証略)によるも何ら具体性が補充されておらず、不当労働行為の点について判断するまでもなく、解雇に合理性があることを一応認めるには足りない。

二  保全の必要性について

疎明及び審尋の全趣旨によると、債権者らは、いずれも債務者から得る賃金を唯一の生活の糧とし、また債務者との労働契約上の地位に基づいて大阪港湾健康保険組合の保険証を利用して自らと家族の健康を保持している労働者であり、本案判決に至るまでの間その地位を保全すると共に、賃金の仮払を得る必要性があること、解雇前三ケ月間の平均支給額は債権者ら主張のとおりであること、は一応認められる。

しかし、債権者らの月平均必要額(支出額)は、債権者冨山は約二三万円(書証略)、同園田は約二九万二六〇〇円(書証略)、同飯干は二二万六〇〇〇円(書証略)であること、債権者冨山の二三万円については、うち八万円が結婚準備金とされており、いわば貯金であるように窺われること、解雇前三ケ月間の平均支給額の中には通勤手当も含まれていることも一応認められ、これらに照らすと、債権者冨山については月一九万円(結婚準備金は四万円の限度で保全の必要性を認める)、同園田は月二八万二二〇〇円(解雇前三ケ月間の平均賃金二九万七三〇〇円から平成九年七月分における通勤費一万五一〇〇円を差し引いた金額)、同飯干は月二二万六〇〇〇円の限度で保全の必要性があると一応認めることができる。

また、仮払の期間について検討するに、債権者らは、いずれも入社から二年足らずとその社員としての地位がそれほど確固としたものとはいえないこと、ある程度の期間があれば、債権者らが他から収入を得られるようになるなどの事情変更の可能性があることなどを考えると、仮払の必要性は、平成九年七月から半年間の限度(平成九年一二月分まで)で認めることができる。

三  結論

よって、本件仮処分申立ては、債権者片山については理由がないから却下し、その余の債権者らについては、債務者に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めると共に、平成九年七月から同年一二月まで、それぞれ毎月二五日限り、債権者冨山については一九万円、同園田については二八万二二〇〇円、同飯干については二二万六〇〇〇円の限度で賃金仮払を認め、その余は却下し、主文のとおり決定する。

(裁判官 久我泰博)

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