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大阪地方裁判所 平成8年(行ウ)86号 判決 1998年10月28日

名古屋市中区金山一丁目七番一三号

原告

明和興産株式会社

右代表者代表取締役

古村純子

右訴訟代理人弁護士

竹下重人

名古屋市中区三の丸三丁目三番二号

被告

北税務署長承継者名古屋中税務署長 細井章吾

右指定代理人

山崎敬二

長田義博

杉田隆夫

柳原国良

佐藤信吉

主文

一  訴訟承継前の被告が原告に対して平成六年二月二五日付けでした次の各処分を取り消す。

1  平成元年二月一日から平成二年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち差引納付すべき税額三四万八一〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額一一万九〇〇〇円を超える部分

2  平成元年二月一日から平成二年一月三一日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額四万二〇〇〇円を超える部分

3  平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち差引納付すべき税額五〇七万四〇〇〇円を超える部分

4  平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの事業年度の法人臨時特別税に係る更正のうち差引納付すべき税額一三万一二〇〇円を超える部分

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  訴訟承継前の被告が原告に対して平成六年二月二五日付けでした法人税に係る次の各処分を取り消す。

1  昭和六三年二月一日から平成元年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額四〇八九万〇七〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定

2  平成元年二月一日から平成二年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額一億二一三六万七九〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定

3  平成二年二月一日から平成三年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額一億二一一五万七八〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定

4  平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額三億六〇二七万九五〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額六〇〇〇円を超える部分

5  平成四年二月一日から平成五年一月三一日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額一億五七九七万六七〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額二万二〇〇〇円を超える部分

二  訴訟承継前の被告が原告に対して平成六年二月二五日付けでした平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの事業年度の法人臨時特別税に係る更正のうち法人臨時特別税額八五七万三五〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額一〇〇〇円を超える部分を取り消す。

三  訴訟承継前の被告が原告に対して平成六年二月二五日付けでした平成四年二月一日から平成五年一月三一日までの事業年度の法人特別税に係る更正のうち法人特別税額三九〇万六〇〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額一〇〇〇円を超える部分を取り消す。

四  訴訟承継前の被告が原告に対して平成六年二月二五日付けでした消費税に係る次の各処分を取り消す。

1  平成元年二月一日から平成二年一月三一日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額一万七〇〇〇円を超える部分

2  平成二年二月一日から平成三年一月三一日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額六〇〇〇円を超える部分

3  平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額一万円を超える部分

4  平成四年二月一日から平成五年一月三一日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額七五万二〇〇〇円を超える部分

第二事案の概要

一  本件は、原告が、<1>訴訟承継前の被告がした昭和六三年二月一日から平成元年一月三一日まで、平成元年二月一日から平成二年一月三一日まで、平成二年二月一日から平成三年一月三一日まで、平成三年二月一日から平成四年一月三一日まで及び平成四年二月一日から平成五年一月三一日までの各事業年度(以下、順次「平成元年一月期」「平成二年一月期」「平成三年一月期」「平成四年一月期」及び「平成五年一月期」といい、これらを合わせて「本件各事業年度」という。)の法人税、平成四年一月期の法人臨時特別税並びに平成五年一月期の法人特別税に係る各更正(以下「本件各更正」という。)には、原告の従業員の横領による損失を損金に算入すべきであるにもかかわらず、これを算入しなかった違法があるとして、その一部取消しを求めるとともに、<2>訴訟承継前の被告がした本件各事業年度の法人税、平成四年一月期の法人臨時特別税、平成五年一月期の法人特別税及び平成二年一月期ないし平成五年一月期の各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税に係る各重加算税賦課決定(以下「本件各重加算税賦課決定」という。)には、原告による仮装又は隠ぺいの事実がないにもかかわらず、重加算税を賦課した違法があるとして、その一部取消しを求めた事案である。

二  本件訴訟に至る経緯等(いずれも当事者間に争いがない。)

1  当事者について

(一) 原告は、パチンコ店及びゲームセンターの経営等を目的とする株式会社であり、法人税法二条一〇号所定の同族会社に該当し、本件各事業年度には、いずれも青色申告の承認を受けていた。

(二) 被告は、原告が平成一〇年四月一日付けで本店所在地を大阪市北区南森町二丁目二番一八号から名古屋市中区金山一丁目七番一三号に移転したことにより、訴訟承継前の被告である北税務署長から、被告適格を承継した。

2  本件各課税処分の経緯について

(一) 法人税について

原告の本件各事業年度の各法人税についての確定申告、課税処分及び不服申立ての経緯は、別表1ないし5記載のとおりである。

(二) 法人臨時特別税について

原告の平成四年一月期の法人臨時特別税についての確定申告、課税処分及び不服申立ての経緯は、別表6記載のとおりである。

(三) 法人特別税について

原告の平成五年一月期の法人特別税についての確定申告、課税処分及び不服申立ての経緯は、別表7記載のとおりである。

(四) 消費税について

原告の本件各課税期間の消費税についての確定申告、課税処分及び不服申立ての経緯は、別表8ないし11記載のとおりである。

三  本件各更正及び本件各重加算税賦課決定の課税根拠についての被告の主張

1  平成元年一月期について

(一) 所得金額の計算について

(1) 申告所得金額 一億〇三一一万九九三〇円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した申告所得金額である。

(当事者間に争いがない。)

(2) ゲームセンター収入の除外額 一四八四万二二〇〇円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る金種表(売上日報)の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額であって、その内訳は、別紙3の1記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(3) 所得金額 一億一七九六万二一三〇円

したがって、所得金額は、別紙1記載のとおり、前記(1)記載の申告所得金額に同(2)記載のゲームセンター収入の除外額を加算した合計額になる。

(二) 法人税額の計算について

(1) 所得金額に対する法人税額 四八五八万四〇四〇円

前記(一)(3)記載の所得金額に対する法人税額は、別表2記載のとおり、同所得金額(但し、国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に、法人税法六六条一項、二項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(2) 課税留保金額 一七七万七〇〇〇円

右金額は、前記(一)(3)記載の所得金額のうち、留保された金額を基礎として、法人税法六七条一項ないし三項に基づき、本件更正に伴う法人税額等の増加額を調整して計算した金額である。

(3) 課税留保金額に対する法人税額 一七万七七〇〇円

右(2)記載の課税留保金額に対する法人税額は、同課税留保金額に、法人税法六七条一項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(4) 所得税額の控除額 二九〇万八八二四円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した所得税額の控除額である。

(当事者間に争いがない。)

(5) 差引合計法人税額 四五八五万二九〇〇円

右税額は、別紙2記載のとおり、前記(1)記載の所得金額に対する法人税額に同(3)記載の課税留保金額に対する法人税額を加算し、右(4)記載の所得税額の控除額を控除した金額(但し、国税通則法一一九条一項に基づき一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(三) 重加算税額 一七三万六〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外に係る重加算税額は、別表1記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額四九六万二二〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

2  平成二年一月期について

(一) 所得金額の計算について

(1) 申告所得金額 二億八五一五万二五六八円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した申告所得金額である。

(当事者間に争いがない。)

(2) ゲームセンター収入の除外額 五八二万〇六八〇円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る金種表(売上日報)の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額である五九九万五三〇〇円から、消費税相当額一七万四六二〇円(五九九万五三〇〇円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の1記載のとおりである。

(後記四争点1の係争部分を除き、当事者間に争いがない。)

(3) 未納事業税の認容額 一九五万九一〇〇円

右認容額は、前期(平成元年一月期)の法人税等の更正に伴い増加した事業税額であり、これを当期の損金の額に算入したものである。

(4) 所得金額 二億八九〇一万四一四八円

したがって、所得金額は、別紙1記載のとおり、前記(1)記載の申告所得金額に同(2)記載のゲームセンター収入の除外額を加算し、右(3)記載の未納事業税額の認容額を控除した金額になる。

(二) 法人税額の計算について

(1) 所得金額に対する法人税額 一億二〇四二万五八八〇円

前記(一)(4)記載の所得金額に対する法人税額は、別紙2記載のとおり、同所得金額(但し、国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に、法人税法六六条一項、二項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(2) 課税留保金額 三三四八万八〇〇〇円

右金額は、前記(一)(4)記載の所得金額のうち、留保された金額を基礎として、法人税法六七条一項ないし三項に基づき、本件更正に伴う法人税額等の増加額を調整して計算した金額である。

(3) 課税留保金額に対する法人税額 三五二万三二〇〇円

右(2)記載の課税留保金額に対する法人税額は、同課税留保金額に、法人税法六七条一項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(4) 所得税額の控除額 一七七万五六六五円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した所得税額の控除額である。

(当事者間に争いがない。)

(5) 差引合計法人税額 一億二二一七万三四〇〇円

右税額は、別紙2記載のとおり、前記(1)記載の所得金額に対する法人税額に同(3)記載の課税留保金額に対する法人税額を加算し、右(4)記載の所得税額の控除額を控除した金額(但し、国税通則法一一九条一項に基づき一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(三) 消費税額 一七万四七〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の圧縮除外額の合計額である五九九万五三〇〇円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した一七万四六二〇円(但し、当初申告額との端数調整のため一七万四七〇〇円)である。

(四) 重加算税額の計算について

(1) 法人税に係る重加算税額 二八万円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による法人税に係る重加算税額は、別表2記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額八〇万五五〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 消費税に係る重加算税 五万九五〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による消費税に係る重加算税額は、別表8記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき消費税額一七万四七〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

3  平成三年一月期について

(一) 所得金額の計算について

(1) 申告所得金額 二億九九五五万四八八一円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した申告所得金額である。

(当事者間に争いがない。)

(2) ゲームセンター収入の除外額 一四九万〇〇〇〇円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る金種表(売上日報)の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額である一五三万四七〇〇円から、消費税相当額四万四七〇〇円(一五三万四七〇〇円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の1記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(3) 未納事業税の認容額 五〇万九六〇〇円

右認容額は、前期(平成二年一月期)の法人税等の更正に伴い増加した事業税額であり、これを当期の損金の額に算入したものである。

(4) 所得金額 三億〇〇五三万五二八一円

したがって、所得金額は、別紙1記載のとおり、前記(1)記載の申告所得金額に同(2)記載のゲームセンター収入の除外額を加算し、右(3)記載の未納事業税額の認容額を控除した金額になる。

(二) 法人税額の計算について

(1) 所得金額に対する法人税額 一億一九三三万四〇〇〇円

前記(一)(4)記載の所得金額に対する法人税額は、別紙2記載のとおり、同所得金額(但し、国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に、法人税法六六条一項、二項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(2) 課税留保金額 四六七二万七〇〇〇円

右金額は、前記(一)(4)記載の所得金額のうち、留保された金額を基礎として、法人税法六七条一項ないし三項に基づき、本件更正に伴う法人税額等の増加額を調整して計算した金額である。

(3) 課税留保金額に対する法人税額 五五〇万九〇五〇円

右(2)記載の課税留保金額に対する法人税額は、同課税留保金額に法人税法六七条一項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(4) 所得税額の控除額 三四九万八五九六円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した所得税額の控除額である。

(当事者間に争いがない。)

(5) 差引合計法人税額 一億二一三四万四四〇〇円

右税額は、別紙2記載のとおり、前記(1)記載の所得金額に対する法人税額に前記(3)記載の課税留保金額に対する法人税額を加算し、右(4)記載の所得税額の控除額を控除した金額(但し、国税通則法一一九条一項に基づき一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(三) 消費税額 四万四七〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の圧縮除外額の合計額である一五三万四七〇〇円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(四) 重加算税額の計算について

(1) 法人税に係る重加算税額 六万三〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による法人税に係る重加算税額は、別表3記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額一八万六六〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 消費税に係る重加算税 一万六〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による消費税に係る重加算税額は、別表9記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき消費税額四万四七〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条二項所定の一〇〇分の四〇の割合を乗じて算出した金額である(当期の消費税の確定申告書の提出は、法定申告期限を徒過した期限後申告に当たる。)。

4  平成四年一月期について

(一) 所得金額の計算について

(1) 申告所得金額 九億一三七八万七九〇八円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した申告所得金額である。

(当事者間に争いがない。)

(2) ゲームセンター収入の除外額 三三九万一九二三円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る金種表(売上日報)の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額である三四九万三六八〇円から、消費税相当額一〇万一七五七円(三四九万三六八〇円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の1記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(3) 建物減価償却費の償却超過額 八九四万六八一〇円

原告は、平成三年九月に取得した建物について、耐用年数を二四年として計算した減価償却費を当期の損金の額に算入しているところ、右建物の耐用年数は六〇年であるから、右損金算入額と耐用年数を六〇年として計算した減価償却費の額との差額は、損金の額に算入することができない。

(当事者間に争いがない。)

(4) 支払手数料の損金不算入額 一八〇万九〇五二円

原告は、土地取得に伴い平成三年八月二三日に一〇〇万円、同年一二月一一日に八六万三三二三円(内五万四二七一円は消費税)を支出し、合計一八〇万九〇五二円を支払手数料として損金の額に算入しているところ、右手数料は、土地の取得価額に算入すべき支出であり、損金の額に算入することはできない。

(当事者間に争いがない。)

(5) 未納事業税の認容額 一二万九三〇〇円

右認容額は、前期(平成三年一月期)の法人税等の更正に伴い増加した事業税額であり、これを当期の損金の額に算入したものである。

(6) 所得金額 九億二七八〇万六三九三円

したがって、所得金額は、別紙1記載のとおり、前記(1)記載の申告所得金額に同(2)記載のゲームセンター収入の除外額、同(3)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(4)記載の支払手数料の損金不算入額を加算し、右(5)記載の未納事業税額の認容額を控除した金額になる。

(二) 法人税額の計算について

(1) 所得金額に対する法人税額 三億四七一六万七二五〇円

前記(一)(6)記載の所得金額に対する法人税額は、別紙2記載のとおり、同所得金額(但し、国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に、法人税法六六条一項、二項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(2) 法人臨時特別税額 八六〇万四一〇〇円

右税額は、別表6記載のとおり、緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源確保に係る臨時措置に関する法律九条一項に基づき、課税標準法人税額三億四四一六万七〇〇〇円(右(1)記載の法人税額から定額控除額三〇〇万円を控除して、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に一〇〇分の二・五の税率を乗じて算出した金額(一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(3) 課税留保金額 一億一六三三万八〇〇〇円

右金額は、前記(一)(6)記載の所得金額のうち、留保された金額を基礎として、法人税法六七条一項ないし三項に基づき、本件更正に伴う法人税額等の増加額を調整して計算した結果である。

(4) 課税留保金額に対する法人税額 一六七六万七六〇〇円

右(3)記載の課税留保金額に対する法人税額は、同課税留保金額に法人税法六七条一項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(5) 所得税額の控除額 三〇〇万七七〇二円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した所得税額の控除額である。

(当事者間に争いがない。)

(6) 差引合計法人税額 三億六〇九二万七一〇〇円

右税額は、別紙2記載のとおり、前記(1)記載の所得金額に対する法人税額に前記(4)記載の課税留保金額に対する法人税額を加算し、右(5)記載の所得税額の控除額を控除した金額(但し、国税通則法一一九条一項に基づき一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(三) 消費税額 一〇万一七五七円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の圧縮除外額の合計額である三四九万三六八〇円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(四) 過少申告加算税の計算について

(1) 法人税に係る過少申告加算税額 四三万七〇〇〇円

前記(一)(3)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(4)記載の支払手数料の損金不算入額についての法人税に係る過少申告加算税額は、別表4記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額四三七万一五〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六五条一項所定の一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 法人臨時特別税に係る過少申告加算税額 九〇〇〇円

前記(一)(3)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(4)記載の支払手数料の損金不算入額についての法人臨時特別税に係る過少申告加算税額は、別表6記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人臨時特別税額九万九六〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六五条一項所定の一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。

(五) 重加算税額の計算について

(1) 法人税に係る重加算税額 二四万八五〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による法人税に係る重加算税額は、別表4記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額七一万四〇〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 法人臨時特別税に係る重加算税額 一万〇五〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による法人臨時特別税に係る重加算税額は、別表6記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人臨時特別税額三万一八〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(3) 消費税に係る重加算税 三万五〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外による消費税に係る重加算税額は、別表10のとおり、本件更正に基づき納付すべき消費税額一〇万一七〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

5  平成五年一月期について

(一) 所得金額の計算について

(1) 申告所得金額 三億九六〇二万六一九〇円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した申告所得金額である。

(当事者間に争いがない。)

(2) ゲームセンター収入の除外額 三八八七万八二五三円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る金種表(売上日報)の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額である四〇〇四万四六〇〇円から、消費税相当額一一六万六三四七円(四〇〇四万四六〇〇円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の1記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(3) パチンコ収入の除外額 六二一三万五九二三円

右除外額は、各店舗の責任者の作成に係る営業日報の記載を総勘定元帳に転記する際に圧縮除外された金額の合計額である六四〇〇万円から、消費税相当額一八六万四〇七七円(六四〇〇万円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の2記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(4) 仕入の架空計上額 一億四九五一万四五六四円

右架空計上額は、総勘定元帳にはパチンコの景品の仕入金額として計上されているものの、各店舗の営業日報には仕入の記載がなく、仕入代金支払の事実もない架空仕入の合計額である一億五四〇〇万円から、消費税相当額四四八万五四三六円(一億五四〇〇万円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の3記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(5) ゲームセンター収入の翌期繰延額 九八三万三六九〇円

右繰延額は、当期の売上として計上すべきであるにもかかわらず、誤って翌期(平成五年二月一日から平成六年一月三〇日までの事業年度)の売上として計上されていた売上金額の合計額である一〇一二万八七〇〇円から、消費税相当額二九万五〇一〇円(一〇一二万八七〇〇円に一〇三分の三を乗じた金額)を控除した金額であって、その内訳は、別紙3の4記載のとおりである。

(当事者間に争いがない。)

(6) 建物減価償却費の償却超過額 二〇三〇万九二五九円

原告は、平成三年九月に取得した建物について、耐用年数を二四年として計算した減価償却費を当期の損金の額に算入しているところ、右建物の耐用年数は六〇年であるから、右損金算入額と耐用年数を六〇年として計算した減価償却費の額との差額は、損金の額に算入することができない。

(当事者間に争いがない。)

(7) 支払手数料の損金不算入額 四九七万七一八五円

原告は、土地取得に伴い四九七万七一八五円を支出し、同額を支払手数料として損金の額に算入しているところ、右手数料は、土地の取得価額に算入すべき支出であり、損金の額に算入することはできない。

(当事者間に争いがない。)

(8) 寄附金の損金不算入額の認容額 五三万九七一八円

原告は、当期に損金経理した寄付金について、寄付金の損金算入限度額の計算(法人税法三七条、同法施行令七三条)に基づき、五三万九七一八円を損金不算入額として益金に加算していたところ、当期の所得金額が本件更正によって増加した結果、寄付金の損金算入限度額が増加したので、これを当期の損金の額に算入したものである。

(9) 未納事業税の認容額 一八五万〇三〇〇円

右認容額は、前期(平成四年一月期)の法人税等の更正に伴い増加した事業税額であり、これを当期の損金の額に算入したものである。

(10) 所得金額 六億七九二八万五〇四六円

したがって、所得金額は、別紙1記載のとおり、前記(1)記載の申告所得金額に同(2)記載のゲームセンター収入の除外額、同(3)記載のパチンコ収入の除外額、同(4)記載の仕入の架空計上額、同(5)記載のゲームセンター収入の翌期繰延額、同(6)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(7)記載の支払手数料の損金不算入額を加算し、同(8)記載の寄付金の損金不算入額の認容額及び右(9)記載の未納事業税額の認容額を控除した金額になる。

(二) 法人税額の計算について

(1) 所得金額に対する法人税額 二億五三九七万一八七五円

前記(一)(10)記載の所得金額に対する法人税額は、別紙2記載のとおり、同所得金額(但し、国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に、法人税法六六条一項、二項所定の税率を乗じて算出した金額である。

(2) 法人特別税額 六二四万九二〇〇円

右税額は、別表7記載のとおり、法人特別税法七条一項に基づき、課税標準法人税額二億四九九七万一〇〇〇円(右(1)記載の法人税額から定額控除税額四〇〇万円を控除して、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)に一〇〇分の二・五の税率を乗じて算出した金額(一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(3) 所得税額の控除額 二二六万六八六二円

右金額は、原告が当期の法人税の確定申告書に記載した所得税額の控除額である。

(当事者間に争いがない。)

(4) 差引合計法人税額 二億五一七〇万五〇〇〇円

右税額は、別紙2記載のとおり、前記(1)記載の所得金額に対する法人税額から、同(3)記載の所得税額の控除額を控除した金額(但し、国税通則法一一九条一項に基づき一〇〇円未満の端数を切り捨てた金額)である。

(三) 消費税額の計算について

(1) ゲームセンター収入の除外額分 一一六万六三四七円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の圧縮除外額の合計額である四〇〇四万四六〇〇円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(2) パチンコ収入の除外額分 一八六万四〇七七円

前記(一)(3)記載のパチンコ収入の圧縮除外額の合計額である六四〇〇万円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(3) 仕入の架空計上額分 四四八万五四三六円

前記(一)(4)記載の架空仕入の合計額である一億五四〇〇万円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(4) ゲームセンター収入の翌期繰延額分 二九万五〇一〇円

前記(一)(5)記載の翌期の売上として計上されていた売上金額の合計額である一〇一二万八七〇〇円に含まれる消費税額は、同合計額に一〇三分の三を乗じて算出した金額である。

(5) 消費税額合計額 七八一万〇八〇〇円

納付すべき消費税額は、前記(1)ないし(4)の合計額である。

(四) 過少申告加算税の計算について

(1) 法人税に係る過少申告加算税額 一二二万七〇〇〇円

前記(一)(5)記載のゲームセンター収入の翌期繰延額、同(6)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(7)記載の支払手数料の損金不算入額についての法人税に係る過少申告加算税額は、別表5記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額一二二七万三八〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六五条一項所定の一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 法人特別税に係る過少申告加算税額 三万円

前記(一)(5)記載のゲームセンター収入の翌期繰延額、同(6)記載の建物減価償却費の償却超過額及び同(7)記載の支払手数料の損金不算入額についての法人特別税に係る過少申告加算税額は、別表7記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人特別税額三〇万六八〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六五条一項所定の一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。

(3) 消費税に係る過少申告加算税額 二万九〇〇〇円

前記(一)(5)記載のゲームセンター収入の翌期繰延額についての消費税に係る過少申告加算税額は、別表11記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき消費税額二九万五〇〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六五条一項所定の一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。

(五) 重加算税額の計算について

(1) 法人税に係る重加算税額 三二八七万九〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外額、同(3)記載のパチンコ収入の除外額及び同(4)記載の仕入の架空計上額についての法人税に係る重加算税額は、別表5記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人税額九三九四万八四〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(2) 法人特別税に係る重加算税額 八一万九〇〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外額、同(3)記載のパチンコ収入の除外額及び同(4)記載の仕入の架空計上額についての法人特別税に係る重加算税額は、別表7記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき法人特別税額二三四万八七〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

(3) 消費税に係る重加算税 二六二万八五〇〇円

前記(一)(2)記載のゲームセンター収入の除外額、同(3)記載のパチンコ収入の除外額及び同(4)記載の仕入の架空計上額についての消費税に係る重加算税額は、別表11記載のとおり、本件更正に基づき納付すべき消費税額七五一万五八〇〇円(但し、国税通則法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切り捨てた金額)に、国税通則法六八条一項所定の一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した金額である。

四  争点

1  平成二年一月期のゲームセンター収入の除外額

(一) 被告の主張

原告は、平成二年一月期の確定申告の際、別紙3記載のとおり、ゲームセンターサンレモの売上一三九万二七〇〇円と赤池ゲームの売上四六〇万二六〇〇円の合計五九九万五三〇〇円(消費税込)を売上から除外して申告した。

(二) 原告の主張

被告主張の売上除外のうち、ゲームセンターサンレモの売上除外は認めるが、赤池ゲームの売上除外については、否認する。

赤池ゲームの売上四六〇万二六〇〇円については、平成二年一月期の確定申告の際、誤って赤池大都会(パチンコ店)の売上として計上したもので、売上除外の事実はない。

2  本件訴訟における処分理由の差替えの適否

(一) 被告の主張

(1) 被告は、本件訴訟において、原告から提出された証拠(甲七の1ないし39)を検討した結果、平成二年一月期には、本件更正で認定した売上除外のほかにも、「株式会社アキューリース明和取り分」(以下「アキューリース明和取り分」という。)として二九六万一五〇〇円(消費税込)の売上が除外されていることが判明したので、原告に対し、右売上除外の事実について認否を求めたところ、原告は、右売上除外の事実を自白した。

したがって、仮に、前記1記載の赤池ゲームの売上が平成二年一月期の確定申告において赤池大都会の売上として計上されているとしても、これとは別に、右「アキューリース明和取り分」の売上除外が存在するのであるから、本件更正は、右「アキューリース明和取り分」の売上除外額と前記1記載のゲームセンターサンレモの売上除外額との合計額四三五万四二〇〇円(消費税込)を超えない限度で、適法である。

(2) 課税庁は、青色申告に係る更正処分の取消訴訟において、更正処分に附記された理由と異なる事実を主張することが許されないわけではなく(最高裁昭和五二年(行ツ)第六二号同五六年七月一四日第三小法廷判決・民集三五巻五号九〇一頁参照)、本件訴訟における理由の差替えは許されるというべきである。

(二) 原告の主張

(1) 「アキューリース明和取り分」の売上除外の事実は、認める。

(2) 本件更正の理由には、「アキューリース明和取り分」の売上除外の事実は記載されていないところ、青色申告に係る更正処分の取消訴訟において、更正処分に附記された理由と異なる事実を主張することは許されないから、本件訴訟において、右「アキューリース明和取り分」の売上除外の事実を主張することは許されないというべきである。

3  本件売上除外等に係る横領損失の有無及びその損金計上時期

(一) 被告の主張

(1) 原告は、前記三の1(一)(2)、同2(一)(2)、同3(一)(2)・同4(一)(2)及び同5(一)(2)記載のゲームセンター収入の売上除外、同5(一)(3)記載のパチンコ収入の売上除外並びに同5(一)(4)記載の仕入の架空計上(以下、これらを合わせて「本件売上除外等」という。)に係る売上金は、従業員である糸見紀子(以下「糸見」という。)が横領したものであるから、右横領に係る損失を本件各事業年度の損金に計上すべきである旨主張するけれども、本件売上除外等に係る売上金がすべて糸見によって横領されたものとは認められない。

(2) 横領によって損害を被った法人は、横領者に対して右損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するから、右損害を生じた事業年度に、右損害額を損金に計上するとともに右損害賠償請求権を益金に計上すべきであり、右損害賠償請求権が債務者の無資力その他の事由によって実現不能であることが明白になったときに初めて損金となすべきである(最高裁昭和四〇年(行ツ)第一〇七号同四三年一〇月一七日第一小法廷判決・集民九二号六〇七頁参照)。

したがって、仮に、本件売上除外等に係る売上金がすべて糸見によって横領されたものであるとしても、本件各事業年度に、右横領による損失に対応する損害賠償請求権を益金に計上すべきであるから、本件各事業年度の所得金額に変動はなく、本件各更正は適法である。

(二) 原告の主張

(1) 本件売上除外等に係る売上金は、糸見が横領したものであるから、原告は、右横領によって本件売上除外等に係る売上金相当額の損失を被ったというべきである。

(2) 糸見による不正行為は、本件各事業年度経過後の平成五年一〇月に初めて発覚したのであるから、本件各事業年度に糸見に対する損害賠償請求権を益金に計上することは不可能であり、被告が主張する同時両建説(損益両建説)による損益計上は、原告に対して不可能な経理処理を強いるものである。

不法行為による損害賠償請求権は、商取引上の債権とは異なり、その内容が抽象的で未確定なものであるから、相手方との合意、裁判上の和解又は判決等によって債権の存在及び額が客観的に明らかになったときに初めて確定するのであり、右時点で益金に算入すれば足りるというべきである。かかる異時両建説(損益切離説)による損益計上は、最高裁昭和五五年(行ツ)第一一号同六〇年三月一四日第一小法廷判決・税務訴訟資料一四四号五四六頁によっても支持されており、法人税基本通達二―一―三七もこれを是認している。

したがって、本件売上除外等に係る売上金相当額の損失は、本件各事業年度に損金として算入すべきであるから、右損金算入を否定した本件各更正は違法である。

4  本件各重加算税賦課決定の適法性

(一) 被告の主張

(1) 重加算税は、国税通則法六五条ないし六七条に規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反が課税要件事実を隠ぺいし、又は仮装する方法によって行われた場合に、行政機関の行政手続により違反者に課せられるもので、これによってかかる方法による納税義務違反の発生を防止し、もって徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり、違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科される刑罰とは趣旨、性質を異にするものであるから(最高裁昭和四三年(あ)第七一二号同四五年九月一一日第二小法廷判決・刑集二四巻一〇号一三三三頁参照)、納税者本人以外の者が行った隠ぺい・仮装行為であっても、隠ぺい又は仮装したところに基づいて過少申告をしたときには、納税者が正当な所得を申告すべき義務を怠ったものとして、原則として重加算税を賦課されるものと解すべきである。特に、法人については、自己の経済活動を行うに当たって多くの者の手助けを必要とするのであり、その手足として従業員を使用し、そのことにより経済的利益を享受する反面、従業員が他人に損害を与えた場合には、代表者がこれを知らなくとも、当該損害を賠償すべき関係にあるのであるから、従業員の行った隠ぺい・仮装行為は、法人自身の行為と同一視されるべきである。

(2) 糸見は、決算書を作成するときの資料の作成まで担当していた主要な経理職員であって、その隠ぺい・仮装行為は長期にわたり、多額に上っていたにもかかわらず、原告は、糸見の経理処理に対して何らの管理・監督もしないまま放置してきたものであるから、糸見による隠ぺい・仮装行為は、原告の行為と同一視されるべきである。

したがって、本件各重加算税賦課決定は適法である。

(二) 原告の主張

(1) 重加算税を賦課するためには、納税者が課税要件となる事実の隠ぺい又は仮装について認識していることが必要であり、法人の場合には、代表者のほか、取締役等の経営者の立場にある者又は経理部長・経理課長等の税務に関してある程度包括的な代理権を与えられている者が、法人の租税負担の軽減を図る意図をもって隠ぺい・仮装行為を行った場合に限られるというべきである。

(2) 糸見は、経理課に所属する単なる補助職員であって、現金の取りまとめや起票等の機械的事務を担当していたにすぎず、自らの私欲を満たすために隠ぺい・仮装行為を行ったものであるから、糸見による隠ぺい・仮装行為を原告の行為と同一視することはできない。原告は、糸見による隠ぺい・仮装行為を知らなかったのであるから、本件各重加算税賦課決定は違法である。

第三争点に対する判断

一  争点1(平成二年一月期のゲームセンター収入の除外額)について

被告は、平成二年一月期の確定申告の際、赤池ゲームの売上四六〇万二六〇〇円(消費税込)が除外されている旨主張する。

しかしながら、右売上除外の事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、証拠(甲一の3、八の1ないし7)及び弁論の全趣旨によると、原告は、ゲームセンターサンレモ、赤池ゲーム、赤池大都会(パチンコ店)等の店舗を経営し、これら店舗毎にコード番号を付してその売上額をコンピューター入力していたこと、赤池ゲームは、平成元年七月一二日に四六〇万二六〇〇円の売上を上げ、右売上は、赤池ゲーム売上明細表(甲八の2)及び振替伝票(甲八の3)に記載されて原告に報告されたが、これを現金出納簿(甲八の4)に転記する際、誤って赤池大都会のコード番号が記載されたこと、このため、右売上は、仕訳帳(甲一の3、八の7)上、赤池大都会の売上として記載され、平成二年一月期の確定申告の際にも、赤池大都会の売上に含めて計上されるに至ったこと、一方、同日の赤池大都会の売上は、二二一九万三七〇〇円であって、仕訳帳(甲八の7)上、赤池ゲームの右売上とは別個に計上されていることが認められ、右認定事実によると、赤池ゲームの右売上は、平成二年一月期の確定申告において申告済みであることが明らかである。

そうすると、平成二年一月期の赤池ゲームの売上除外に関する被告の主張は、採用することができない。

二  争点2(本件訴訟における処分理由の差替えの適否)について

1  一般に、更正処分の取消訴訟における実体上の審判の対象は、当該更正処分によって確定された税額の適否であって、更正理由の適否ではないから、更正処分における課税庁の認定等に誤りがあったとしても、これにより確定された税額が総額において租税法規によって客観的に定まる税額を上回らない限り、当該更正処分は適法であると解される。

もっとも、青色申告に対する更正処分については、処分庁の判断の慎重さ、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて、不服申立ての便宜を与える趣旨から、理由を附記しなければならないものとされているけれども、かかる理由附記制度の趣旨・目的は、理由附記の不備が更正の取消事由とされ、その不備は後日の裁決等による理由附記によっても治癒されないものと解することによって十分担保され得るのであって、理由附記制度が、右のような趣旨・目的を超えて、更正処分の取消訴訟における主張制限の効果まで有するものと解すべき法令上の根拠は存在しないといわざるを得ない。また、白色申告に対する更正処分の場合であっても、これに対する異議決定や裁決については、同様の趣旨から理由の附記が要求されているにもかかわらず(国税通則法八四条四項、五項、一〇一条一項)、白色申告に対する更正処分の取消訴訟においては、異議決定等に附記された理由に拘束されず、理由の差替えが許されるものと解されているところ(最高裁昭和三九年(行ツ)第六五号同四二年九月一二日第三小法廷判決・集民八八号三八七頁参照)、これとの均衡を考えると、青色申告に対する更正処分についてのみ、理由の差替えが許されないものと解することは困難というほかない。

そうすると、青色申告に対する更正処分の取消訴訟においても、少なくとも被処分者に格別の不利益を与えるものでない場合は、処分理由の差替えが許されるものというべきである(最高裁昭和五二年(行ツ)第六二号同五六年七月一四日第三小法廷判決・民集三五巻五号九〇一頁参照)。

2  そこで、本件において、被告の主張する理由の差替えが許されるかどうかについて検討する。

証拠(甲九の2)によれば、平成二年一月期の法人税の更正通知書には、更正の理由として、「ゲームセンターサンレモの売上一三九万二七〇〇円及び赤池ゲームの売上四六〇万二六〇〇円が売上から除外されているので、当期の所得金額に加算し」旨附記されていることが認められるところ、本件記録によれば、被告は、平成九年一一月二五日の本件口頭弁論期日において、原告から提出された証拠(甲七の1ないし39)を検討した結果、本件各更正の理由に記載された本件売上除外等以外に、平成元年一月期にオリンピアゲームの売上及び「アキューリース明和取り分」の合計六一四万八三〇〇円、平成二年一月期に「アキューリース明和取り分」二九六万一五〇〇円、平成三年一月期に「アキューリース明和取り分」九二万七九一五円、平成四年一月期に「アキューリース明和取り分」七一万一九〇〇円、平成五年一月期にスロットル大都会の売上一〇〇万円がそれぞれ申告から除外されていることが初めて判明したとして、原告に対して右各売上除外の事実を認めるかどうか釈明を求めたこと、これに対し、原告は、平成一〇年二月四日の本件口頭弁論期日において、右各売上除外の事実を認める旨述べたこと、これを受けて、被告は、同年五月一三日の本件口頭弁論期日において、仮に赤池ゲームの売上除外が存在しないとしても、平成二年一月期には、これとは別に、右「アキューリース明和取り分」の売上除外が存在するのであるから、平成二年一月期の法人税に係る本件更正は、右「アキューリース明和取り分」の売上除外額二九六万一五〇〇円とゲームセンターサンレモの売上除外額一三九万二七〇〇円の合計額四三五万四二〇〇円(消費税込)を超えない限度で、適法である旨主張するに至ったことが明らかである(なお、甲第五号証によれば、「アキューリース明和取り分」とは、原告がリース会社である株式会社アキューからリースを受けているゲーム機の売上額のうち、リース料としてその四〇パーセント又は五〇パーセントを株式会社アキューに支払った残りの原告の取り分額を意味するものであると認められる。)。

右事実によると、被告の追加主張に係る平成二年一月期の売上除外の事実は、原告が本件訴訟で提出した書証によって初めて判明したものであって、原告自身、本件訴訟において右売上除外の事実を自白しているのであるから、被告に右追加主張の提出を許しても、原告が本件更正を争うについて格別の不利益を与えるものでないことが明らかである。

そうすると、前記1に説示したところに従い、本件訴訟において処分理由の差替えは許されるものというべきである。

三  争点3(本件売上除外等に係る横領損失の有無及びその損金計上時期)について

1  原告は、本件売上除外等に係る売上金は、糸見が横領したものであるから、右横領によって本件売上除外等に係る売上金相当額の損失を被った旨主張する。

(一) 確かに、証拠(甲二ないし六、七の1ないし39、一七、乙五及び六)によると、糸見は、昭和五一年一〇月頃から、原告の系列会社である古村産業株式会社に勤務して原告の経理事務に従事し、遅くとも上司である伊藤宏(以下「伊藤」という。)が退職した平成二年一月以降、<1>出納簿の入金額を改竄する、<2>出納簿に記載すべき売上額の一部を除外する、<3>出納簿に架空仕入を計上するという不正な経理処理を繰り返し、売上金の一部を横領してきたこと、右不正経理は、平成五年一〇月に行われた税務調査の際に発覚し、その結果、平成六年二月二五日、本件各更正が行われるに至ったこと、原告は、平成八年一〇月一二日、糸見に対して昭和六三年頃から平成五年一月末までの間の横領による損害の賠償金として二億九一〇五万七四九五円の支払を求める民事訴訟(以下「別件民事訴訟」という。)を名古屋地方裁判所に提起したこと、右訴訟において、糸見は、横領の事実は認めるが、損害額は知らない旨答弁し、平成九年四月二五日、原告の請求を全部認容する判決が言い渡されたこと、その後、糸見は、同年七月一七日、同裁判所において、平成四年八月三一日頃から同年一一月二日頃までの間に、二五回にわたって合計約一一二〇万円を着服横領したとして、懲役一年八月の実刑判決の言渡しを受けたことが認められるのであって、右認定事実によると、糸見が本件売上除外等に係る売上金をすべて横領したものと考えられなくもない。

(二) しかしながら、他方、右各証拠(甲二ないし六、七の1ないし39、一七、乙五及び六)を仔細に検討すると、次の(1)及び(2)のような問題点を指摘することができるのであって、これらの点に照らすと、糸見が本件売上除外等に係る売上金の一部を横領したことは明らかであるものの、その全額を横領したものとまで推認することは困難であるといわざるを得ない。

(1) まず、証拠(乙五及び六)によると、伊藤の在職中、糸見は、伊藤の下で経理の補助的事務を担当していたにすぎず、伊藤が独りで現金管理を掌握していたものであるところ、当時、原告の従業員らの間では、伊藤が金庫から現金を持ち出しているという風評があって、現に、河野直子(以下「河野」という。)ら従業員によって、右持出が幾度か目撃されていること、糸見が伊藤の退職に伴って現金管理を含むゲームセンター関係の経理事務一切を引き継いだ平成二年一月の時点において、帳簿上の現金額と実際の現金残高の間には、五、六〇〇〇万円もの齟齬が生じていたこと、右不一致の事実は、糸見によって、河野ら同僚に知らされただけでなく、原告の経理課長兼役員である堀田武(以下「堀田経理課長」という。)にも報告されたが、原告は、何らの調査も行わないままこれを放置したこと、糸見自身、被告指定代理人らによる聴取に対し、引継前の横領の事実を否認し、横領開始時期は同年六月である旨回答していることが認められるのであって、これら諸点に鑑みると、糸見が経理事務一切を引き継ぐ前に発生した本件売上除外等に係る売上金については、糸見が横領したものとは考え難いというべきである。

(2) また、証拠(甲七の1ないし10・27、乙五及び六)によると、糸見は、平成四年一一月二日頃、現金管理を河野に引き継いでおり、その後は、現金持出の機会はなかったと考えられるにもかかわらず、同月五日から同月一八日までの間に合計一八八万八五〇〇円の使途不明金が発生していることが認められるのであって、右認定事実によると、平成五年一月期の本件売上除外等に係る売上金が全額糸見によって横領されたものであるかどうかについても、疑問が残るといわざるを得ない。

(三) そうすると、本件売上除外等に係る売上金がすべて糸見によって横領されたものであることを前提とする原告の主張は、そのまま採用することができない。

2  さらに、この点を暫く措くとしても、本件売上除外等に係る売上金相当額を本件各事業年度の損金に算入することは許されないというべきである。

(一) 一般に、横領行為によって損害を被った法人は、横領者に対して右損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するのであるから、右損害を生じた事業年度には、右損害額を損金に計上するとともに右損害賠償請求権を益金に計上すべきであって、右損害賠償請求権が債務者の無資力その他の事由によって実現不能であることが明白になったときに初めて損金として処理すべきであるものと解される(最高裁昭和四〇年(行ツ)第一〇七号同四三年一〇月一七日第一小法廷判決・集民九二号六〇七頁参照)。

これに対し、原告は、不法行為による損害賠償請求権は、商取引上の債権とは異なり、その内容が抽象的で未確定なものであるから、相手方との合意、裁判上の和解又は判決等によって債権の存在及び額が客観的に明らかになったときに初めて確定するのであり、右時点で益金に算入すれば足りる旨主張する。

しかしながら、法人税法は、収益を計上すべき事業年度を決するについて、所得税法と同様、原則として発生主義のうちの権利確定主義を採用しているのであって、右にいう権利の確定とは、法律上その権利を行使することができるようになったことをいうものと解されるところ、横領という不法行為による損害賠償請求権についても、通常の金銭債権と特に異なる取扱をすべき理由は存在しないから(前掲最高裁判決参照)、法律上権利行使が可能となったとき、即ち、横領という不法行為によって損害賠償請求権が発生したときに、右権利が確定し、これを当該事業年度の収益に計上すべきものというべきである。

(二) もっとも、右に説示した同時両建(損益両建)による損益計上の方法によっても、横領による損害賠償請求権が取得当初から明白に実現不能の状態にあった場合には、直ちに当該事業年度の損金として算入することを妨げられないものというべきである(前掲最高裁判決参照)。

しかし、前記1(一)認定の事実によると、糸見の不正経理は、本件各事業年度経過後の平成五年一〇月に行われた税務調査の際に発覚したものであって、原告は、右発覚後、さらに三年も経過した平成八年一〇月一二日になって糸見に対して横領による損害の賠償を求める別件民事訴訟を提起したにすぎず、その後、糸見は、平成九年七月一七日に至って、平成四年八月三一日頃から同年一一月二日頃までの間に、二五回にわたって合計約一一二〇万円を着服横領したとして、懲役一年八月の実刑判決の言渡しを受けたというのであるから、糸見に対する損害賠償請求権は、取得当初から明白に実現不能の状態にあった、ないしは本件各事業年度の間において実現不能が明白になったものとは認められないというべきである。

したがって、本件売上除外等に係る売上金相当額を本件各事業年度の損金として算入することは許されない。

(三) そうすると、仮に本件売上除外等に係る売上金がすべて糸見によって横領されたものであるとしても、本件各事業年度に、右横領による損失に対応する損害賠償請求権を益金に計上すべきであるから、この関係においては、本件各事業年度の所得金額に変動はなく、本件各更正は適法というべきである。

四  争点4(本件各重加算税賦課決定の適法性)について

1  前記第二の二の事実に、証拠(甲三、五、七の1ないし39、二三の1、乙五ないし一二)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 原告は、パチンコ店及びゲームセンターの経営等を目的とする株式会社で、名古屋市内においてパチンコ店五店舗、ゲームセンター六店舗を経営している。これら店舗の売上は、すべて名古屋市中村区名駅の原告名古屋支店の経理課に報告され、同課において、原告全体の経理全般が管理されていた(同支店は、平成四年九月に同市中区金山のビルに移転した。)。

(二) 糸見は、昭和五一年一〇月頃から、原告の系列会社である古村産業株式会社に勤務し、原告の経理事務に従事してきた。当初、糸見は、上司である伊藤の下で、経理の補助的事務に携わっていたが、伊藤が平成二年一月に退職した際、原告の役員で、原告代表者の姪の夫でもある堀田経理課長の指示に基づき、従前伊藤が担当していた現金管理を含むゲームセンター関係の経理事務一切を引き継いだ。

(三) 右引継後、糸見は、<1>ゲームセンター各店舗から毎日搬入される現金と金種表との照合及び集計、<2>ゲームセンター各店舗から報告されるゲーム機械別売上表に基づく売上ノート・振替伝票・出納簿等への記帳、<3>決算書作成用資料や当座預金残高調整表等の作成等の業務に従事した。右引継の際、伊藤から引き継いだ帳簿残高と実際の現金残高に不一致があったことから、糸見は、帳簿上、辻褄を合わせるために、会計帳簿への不正記帳を始め、平成二年六月頃からは、右現金を金種表と照合したうえ現金袋に入れる際等に、その一部を着服横領するようになった。

(四) 糸見の不正記帳は、<1>出納簿の入金額を改竄する、<2>出納簿に記載すべき売上額の一部を除外するという方法で行われたが、糸見が現金管理を含むゲームセンター関係の経理事務を河野に引き継いだ平成四年一一月以降は、これらに加えて、<3>出納簿に架空仕入を計上するという方法も採られた。さらに、糸見は、法人税確定申告書に添付される当座預金残高調整表にも、架空の未入金を記載した。本件各事業年度の確定申告は、いずれもこれら不正記帳がされた会計帳簿に基づいて行われた。

(五) 堀田経理課長は、糸見に対して現金管理を任せ切りにしていて、自らは金庫から現金袋を出し入れするだけで、糸見が行った金種表と現金額との照合結果を点検することも、銀行預金額の確認を行うこともなかった。また、堀田経理課長は、機別売上表と売上ノート・振替伝票・出納簿等との照合を行うこともなく、糸見が作成した振替伝票にそのまま決裁印を押捺していた。なお、出納簿の不正記帳は、毎月銀行から送付される当座預金照合票と出納簿とを照合すれば容易に判明するものであって、平成三年一月期及び平成四年一月期の各当座預金残高調整表についても、夜間金庫に入金された売上金は翌日には当座預金に入金されるので翌日が平日である平成三年一月三〇日(水曜日)付及び平成四年一月三〇日(木曜日)付の未入金は本来生じ得ないにもかかわらず、右各日付の売上が未入金として記載され、その額、回数もかなりのものに上っている等、一見して不自然、不合理なものであった。かかる不正記帳の結果、平成五年一月期の損益計算書は、売上高が前期比三パーセントの増加であるのに対し、営業利益は前期比五四・六パーセントの減少という不自然な内容であり、本件売上除外等によって申告漏れとなった同期の売上金二億五〇五二万八七四〇円(前記第二の三5(一)の(2)ないし(4)の合計)は、当初申告所得金額三億九六〇二万六一九〇円の六三・三パーセントにも及んでいたにもかかわらず、同年一〇月に税務調査が実施されるまで、原告による調査は一切行われなかった。

2  右認定事実によると、本件各事業年度の確定申告は、いずれも課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき行われたものというべきである。

この点に関し、原告は、糸見による隠ぺい・仮装行為を知らなかったのであるから、本件各重加算税賦課決定は違法である旨主張する。

しかしながら、国税通則法六八条に規定する重加算税は、同法六五条ないし六七条に規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反が課税要件事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法によって行われた場合に、違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁としての刑罰ではないから(最高裁昭和四三年(あ)第七一二号同四五年九月一一日第二小法廷判決・刑集二四巻一〇号一三三三頁参照)、従業員を自己の手足として経済活動を行っている法人においては、隠ぺい・仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われた場合であっても、原則として、法人自身が右行為を行ったものとして重加算税を賦課することができるものというべきである。

本件においては、前記1で認定したとおり、糸見は、決算や確定申告に関わる帳簿・資料の作成を任されていた主要な経理職員であって、その隠ぺい・仮装行為は、長期間にわたって行われ、これによる本件売上除外等の額も多額に上り、容易に発見できるものであったにもかかわらず、原告は、糸見に対して経理処理を任せ切りにして、何らの管理・監督もしないまま放置してきたものであるから、原告に対して重加算税を賦課することは、適法というべきである。

第四結論

一  前記第三の一及び二において認定説示したところによれば、平成二年一月期の法人税に係る本件更正は、右「アキューリース明和取り分」の売上除外額とゲームセンターサンレモの売上除外額の合計額四三五万四二〇〇円(消費税込)を超える部分を所得金額に加算している限度において、違法というべきである。

そして、これと前記第二の三2(一)及び(二)で摘示した事実を総合すると、平成二年一月期の法人税に係る所得金額は、別紙(1)記載のとおり二億八七四二万〇八四七円となり、これに対する税額(別紙2の「所得金額に係る税額計算」に準じて計算)、差引納付すべき税額、重加算税額は、それぞれ別表2の「判決認定額」欄の<2>欄、<8>欄、<9>欄記載のとおりとなるから、同期の法人税に係る本件更正のうち差引納付すべき税額三四万八一〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額一一万九〇〇〇円を超える部分には、いずれも違法としてこれを取り消すべきことになる。また、同期の消費税に係る重加算税賦課決定についても、右売上除外額減少の結果、課税標準額が一二八億七六三六万三〇〇〇円となり、差引税額、納付すべき税額、重加算税額は、それぞれ別表8の「判決認定額」欄の<4>欄、<6>欄、<8>欄記載のとおりとなるから、重加算税額四万二〇〇〇円を超える部分について、取消しを免れないことになる。

二  平成二年一月期の法人税に係る本件更正は、前記一説示のとおり一部取消しを免れないところ、右取消しによって平成三年一月期以降の未納事業税の認容額は、別紙(1)の<10>欄記載のとおりとなり、その結果、平成四年一月期の法人税に係る所得金額は九億二七七七万八六九三円となり、これに対する税額(別紙2の「所得金額に係る税額計算」に準じて計算)、差引納付すべき税額は、それぞれ別表4の「判決認定額」欄の<2>欄、<8>欄記載のとおりとなるから、同期の法人税に係る本件更正のうち差引納付すべき税額五〇七万四〇〇〇円を超える部分は、違法としてこれを取り消すべきことになる。また、同期の法人臨時特別税に係る本件更正についても、右法人税額減少の結果、その法人臨時特別税額、差引納付すべき法人臨時特別税額は、それぞれ別表6の「判決認定額」欄の<4>欄、<6>欄記載のとおりとなるから、差引納付すべき税額一三万一二〇〇円を超える部分について、取消しを免れないことになる(なお、平成三年一月期及び平成五年一月期については、右と同様の取消事由は存しない。)。

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 福井章代 裁判官 栗原三緒)

別表1

課税の経緯(法人税)

<省略>

別表2

課税の経緯(法人税)

<省略>

別表3

課税の経緯(法人税)

<省略>

別表4

課税の経緯(法人税)

<省略>

別表5

課税の経緯(法人税)

<省略>

別表6

課税の経緯(法人臨時特別税)

<省略>

別表7

課税の経緯(法人特別税)

<省略>

別表8

課税の経緯(消費税)

<省略>

別表9

課税の経緯(消費税)

<省略>

別表10

課税の経緯(消費税)

<省略>

別表11

課税の経緯(消費税)

<省略>

別紙1

所得金額の内訳表

<省略>

別紙2

法人税額の計算

<省略>

別紙3

1.ゲームセンター収入除外額

<省略>

2.パチンコ収入除外額

<省略>

3.仕入架空計上額

<省略>

4.ゲームセンター収入の翌期繰延額

<省略>

別紙(1)

所得金額の内訳表

<省略>

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