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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)11606号 判決 1996年9月27日

原告

桐原實明

右訴訟代理人弁護士

中山哲

被告

錦タクシー株式会社

右代表者代表取締役

遠藤公

右訴訟代理人弁護士

尾埜善司

前田嘉道

増田眞里

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金七九万五八〇〇円及び内金二〇万七八〇〇円に対しては平成五年七月一六日から、内金二万〇三〇〇円に対しては同年一二月一六日から、内金二六万七七〇〇円に対しては平成六年七月一六日から、それぞれ支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  当事者間に争いのない事実

1  被告は、昭和二六年三月二九日に設立されたタクシー業を営む会社であり、原告は、昭和四二年九月一三日、運転手として被告に入社した従業員である。

2  被告と原告の所属する錦タクシー労働組合との間において、平成五年夏季賞与については同年七月六日に、同年冬季賞与については同年一二月六日に、平成六年夏季賞与については同年七月三日に、それぞれ協定書が取り交わされた。

これらの協定書で定められた賞与の支給対象期間、対象資格者、賞与の内容及びその計算方法は、別紙1ないし3記載のとおりであるが、賞与の支給額は、右各協定に定められた均等割、年功割、水揚割、日数割、事故減額、無届欠勤減額及び早退減額として算出した金額を合計したものであった。そして、原告の右各対象期間の勤務状況は、平成五年夏季賞与に関しては出勤日数七二日、年次有給休暇の取得日数一三日、労働災害による休業日数六三日であり、同年冬季賞与に関しては出勤日数一四三日、年次有給休暇の取得日数七日であり、平成六年夏季賞与に関しては出勤日数六八日、年次有給休暇の取得日数六日、労働災害による休業日数七四日であった。

3  被告は、原告に対し、いずれも弁済期である平成五年七月一五日に同年夏季賞与として九万五九〇〇円を、同年一二月一五日に同年冬季賞与として三九万一八〇〇円を、平成六年七月一五日に同年夏季賞与として四万四八〇〇円を、それぞれ支払った。そして、右各賞与額の内訳であるが、平成五年夏季賞与は、協定書(別紙1)六条一項の適用による均等割六万五〇〇〇円及び年功割三万五二五〇円の合計額から日数割による四三五〇円を減額したものであり、同年冬季賞与は、協定書(別紙2)四条の適用による均等割一七万六〇〇〇円、年功割七万〇九〇〇円、水揚割七万八二〇〇円及び日数割六万六七〇〇円の合計額であり、平成六年夏季賞与は、協定書(別紙3)六条二項の適用による均等割一万円及び日数割三万四八〇〇円の合計額である。

二  原告の主張

1  原告が本件で請求するのは、平成五年夏季、同年冬季及び平成六年夏季の各賞与の均等割、年功割及び日数割の未払分であるが、このような問題が生じたのは、被告が各協定書四条四項の「乗務日数」に、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入しないという取扱いをしていることが原因である。そして、以下に述べるとおり、右取扱いは同項の解釈を誤ったものであり、あるいは同項自体が公序良俗に反するから、いずれにしても無効というべきである。

(一) 被告は、各協定書四条四項に記載された日数割の基礎となる「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入していないが、右「乗務日数」は、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入して算出することを定めたものと解すべきである。したがって、被告の右取扱いは、右各協定の解釈、適用を誤ったものである。

(二) 仮に、右日数割の基礎となる「乗務日数」が年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入しない趣旨で定められたものであったとすれば、右日数割に関する部分の協定は、公序良俗に反し、無効である。

すなわち、年次有給休暇の取得及び労働災害による休業は、労基法三九条、一三四条、同法七五ないし七七条等によって労働者に保障された権利であり、年次有給休暇を取得し、労働災害により休業した場合に、賃金、賞与その他の点において他の労働者と差別され、不利益な取扱いを受けることになれば、労働者のこれらの権利の行使を抑制することとなり、ひいては労基法が労働者に右各権利を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる。したがって、使用者は、年次有給休暇の取得及び労働災害による休業の権利の行使による不就労を理由に、賃金、賞与その他の点において、他の労働者と差別し、不利益な取扱いをしてはならない義務を負うというべきである。しかるに、右各協定の日数割は、この義務に反した内容であるばかりでなく、その規定にかかる日数割の加減額は、一日当たり二九〇〇円あるいは三〇〇〇円もの多額に及んでいることを考えると、右各協定上の日数割の制度が労働者に対して有する年次有給休暇の取得や労働災害による休業に対する抑制力は強度というべきである。このように、右日数割の制度は、労働者の年次有給休暇の取得や労働災害による休業の取得の権利の行使を抑制し、ひいては労基法が労働者に右各権利を保障した趣旨を実質的に失わせることになるから、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入しない限度において、民法九〇条の公序良俗に反し、無効というべきである。そして、右無効部分については、前記労基法の趣旨に鑑み、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入して計算すべきである。

(三) さらに、右(二)の「乗務日数」が年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入しない旨の規定が無効であるとの主張が容れられないとしても、少なくとも、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数が「乗務日数」に算入されないことによって日数割が減額されることを定めた部分については、均等割等により算出された賞与を減額させる効果があり、労働者に与える影響は著しいから、(二)で述べたのと同様の理由で、無効というべきである。したがって、被告は、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を「乗務日数」から控除し、日数割を減額して算定することは許されない。

(四) なお、被告は、平成五、六年の各夏季につき、本来適用されるべきでない協定書の六条一、二項を適用して、原告の賞与を算定しているが、これは、「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入しないことにより、原告の賞与額が著しく低額となるのを避けるための便法にすぎず、被告と錦タクシー労働組合との間で右取扱いを行う旨の合意がなされたり、そのような労使慣行があったわけではない。

2  原告は、本来各協定書四条の適用を受け、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入した「乗務日数」に基づいて算出した賞与の支給を受ける権利があったのであるが、その額は、平成五年夏季賞与が三〇万三七〇〇円(均等割一五万二〇〇〇円、年功割七万〇五〇〇円及び日数割八万一二〇〇円の合計)、同年冬季賞与が四一万二一〇〇円(均等割一七万六〇〇〇円、年功割七万〇九〇〇円、水揚割七万八二〇〇円及び日数割八万七〇〇〇円の合計)、平成六年夏季賞与が三一万二五〇〇円(均等割一五万五〇〇〇円、年功割七万〇五〇〇円及び日数割八万七〇〇〇円の合計)であるから、原告は、実際の支給額との差額として、平成五年夏季賞与については二〇万七八〇〇円、同年冬季賞与については二万〇三〇〇円、平成六年夏季賞与については二六万七七〇〇円の未払賞与請求権を有する。

3  さらに、前記のとおり、被告が右各賞与における日数割の計算にあたって、原告の年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を故意に算入せず、差額の支払いをしなかったために、原告は、被告に対する再三の請求や大阪中央労働基準監督署へ指導を求めたりしたばかりでなく、結局は、前記各賞与の未払分の支払いを求めるため、本件訴訟の提起を余儀なくされたのであるが、このような事情に鑑みれば、被告の右各賞与の不払いは、賞与債務の不履行にとどまらず、原告に対する不法行為をも構成することは明らかである。そして、原告は、原告代理人に対して、着手金、報酬、訴訟追行費用各一〇万円の合計三〇万円を支払わなければならず、同額の損害を被った。

4  よって、原告は、被告に対し、右未払賞与四九万五八〇〇円及び不法行為による損害金三〇万円の合計七九万五八〇〇円並びに内金二〇万七八〇〇円(平成五年夏季賞与の未払分)については弁済期の翌日である平成五年七月一六日から、内金二万〇三〇〇円(同年冬季賞与の未払分)については同じく同年一二月一六日から、内金二六万七七〇〇円(平成六年夏季賞与の未払分)については同じく平成六年七月一六日から、それぞれ支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

三  被告の主張

1  原告が問題とする各協定書四条四項の「乗務日数」は、以下に述べるとおり、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入しない趣旨であり、また、このような規定は、賞与の性質や被告の営業であるタクシー業の特殊性などに照らして、合理的であって、従業員の年次有給休暇の取得及び労働災害による休業の権利を害するものではない。したがって、被告の行った賞与計算には、何らの瑕疵もなく、原告の主張は失当である。

2  賞与は、個々の労働者との約定や就業規則等に定めのない限り、支給の有無、金額、算定方法等が専ら使用者の裁量に委ねられている点において、純然たる賃金ではなく、恩恵的給付の側面が強い。また、労働者や労働組合との合意に基づいて支給する場合においても、賞与額の支給基準や支給条件の決定については、労働者あるいは労働組合と使用者との合意に基づく私的自治に委ねられているというべきであるが、賞与の支給が対象期間の労働に対する報酬たる意義を有するのみならず、将来の労働に対する意欲向上策たる性質をも有することを考えれば、私的自治における裁量の範囲は、賃金に比してより広範であるということができる。そして、本件各賞与は、被告と労働組合との間で締結された前記各協定に基づいて支給されたのである。

3  次に、年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの主張についてであるが、労基法一三四条の規定は、使用者の努力義務を定めたもので、これに反する取扱いの私法上の効力を否定するものではなく、諸般の事情を総合考慮したうえで、この取扱いが労働者の年次有給休暇取得の権利の行使を抑制し、ひいては労基法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせると認められた場合に限り、公序良俗に反し、無効になるというべきである。そして、被告の営むタクシー業は、運賃収入に依存し、営業車の効率的な運行の必要性が大きく、実車率が重視されるという特殊性を有する。したがって、将来の労働に対する従業員の意欲向上策たる性質をも有する賞与における日数割の算定においても、実車率の向上を達し得るような基準を設けることは当然である。このように、被告の会社における実車率向上という目的からすれば、実際に乗務した日数こそが重視されるのであり、このような見地からは、勤務日数を問題とせず、対象期間における水揚額のみに基づき、賞与額を算定することも考えられるのであるが(実際にも、大阪府下のタクシー会社のうちの半数余りが、そのような賞与の算定方法を採用している。)、被告は、水揚げが悪くても真面目に出勤している従業員の労に報いるため、賞与算定方法の一部として日数割の制度を設けたのである。

右の事情を考慮すれば、前記各協定における「乗務日数」について、実際に乗務をしなかった年次有給休暇の取得日数を算入しない旨を定めた前記各協定の条項は、従業員に不利益な取扱いには該らないというべきである。また、仮に、このような取扱いが従業員にとって不利益と評価されるとしても、前記日数割の制度の趣旨等に鑑みれば、これが年次有給休暇の取得を抑制する目的に出たものでないことは明らかであるし、また、日数割が賞与算定の諸要素の一つであり、その金額的な影響も僅少であること、錦タクシー労働組合も日数割の制度に異議を述べることもなく、長年にわたってこの制度が実施されてきたことなどの点を考えると、右日数割の制度は、労働者の年次有給休暇取得の権利の行使を抑制し、ひいては労基法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるとはいえないから、有効である。

4(一)  また、労働災害による休業日数についても、前項で述べたところと同様の基準でその有効、無効を判断すべきであるが、そもそも使用者には、労働災害による休業期間中の賃金すら支払う義務はないのであるから、賞与についても当然に支払義務が生じるものではない。すなわち、労働災害による休業期間についての法的保護は、休業補償(労基法七六条)の限度で図られているにすぎないのであるが、被告は、その給付を実行しており、これを超えて、賞与の算定においても、右休業期間を実際に乗務に従事したものとして取り扱わなければならない義務を負うものではない。したがって、労働災害による休業期間を「乗務日数」に算入しないとする前記各協定の定めは、労働者に対する不利益取扱いとはいえないし、仮に不利益取扱いに該るとしても、前記年次有給休暇の取得日数との関係で述べたところと同様の理由で、有効である。

(二)  確かに、原告は、平成五、六年の夏季賞与の各対象期間中に、乗務中に遭遇した交通事故により休業を余儀なくされたのであるが、この事故によって生じた賞与の減額は、右事故による損害として、相手方に賠償請求すべきものであって、これを賞与の形で、被告に請求するのは筋違いというべきである。

(三)  さらに、被告においては、協定上は「勤務日数」により、四条または六条が適用されることになっているにもかかわらず、昭和四〇年ころの労使間の合意により、従業員の賞与の低額化を防ぐため、「乗務日数」が一〇〇日以上であれば四条により、一〇〇日未満であれば六条によるものとし、この取扱いはその後、錦タクシー労働組合からの異議もなく、維持、継続されて、労使慣行になっている。このように、「乗務日数」の少ない従業員の賞与計算については、従業員の利益を配慮した運用が行われており、これらの事情をも考慮すれば、「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入しないことが違法といえないことは明らかである。

5  また、仮に、前記各協定に無効な部分があったとしても、これらの協定は、原告が委員長をしていたときに、被告と錦タクシー労働組合との間で締結された協定が引き継がれたものであり、原告は、右労働組合の委員長として、日数割を含む各協定の締結に関与したうえ、その後も、被告による賞与算定の取扱いは、何ら異議の対象となることもなく長年実施されてきた。それにもかかわらず、原告が本件で被告の取扱いや協定の無効を主張することは、信義に反し、許されないというべきである。

6  なお、平成六年の夏季賞与については、協定書六条一項によるべきところを同条二項により計算した過誤があり、事故減額の一万五〇〇〇円を差し引いた三万〇七五〇円が未払いとなっている。そして、原告が平成七年七月三一日の本件口頭弁論期日にその受領を予め拒絶したため、被告は、同年八月一日、右金員を、これに対する平成六年七月一六日以降の民法所定の年五分の割合による遅延損害金一六一〇円とともに、大阪法務局に弁済供託した。したがって、被告には、いかなる意味においても、原告に対する賞与の未払分はない。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

一  前記当事者間に争いのない事実、(証拠・人証略)、被告代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  被告においては、昭和三三年ころ以降、賞与の算定方法につき、支給に先立って、錦タクシー労働組合との間で協定が取り交わされてきた。これらの協定の内容は、前年度の協定を前提としてその後の協定が作(ママ)定されるなどしたため、日数割の金額や基準日数、水揚割の基準金額などに変更はあったものの、均等割、年功割等賞与を構成する諸要素や計算の基本的な方法は、共通したものであった。

このような協定が取り交わされるようになったのは、労使の協議の結果によるものであるが、賞与の構成要素とされたもののうち、均等割等は従業員の収入確保のために右労働組合の要求により設けられ、日数割及び水揚割は、実車率の向上や売上に対する貢献に報いるとの目的のもとに、被告の要請により設けられたものであった。そして、賞与支給の対象者となるために要する「勤務日数」については、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を算入する旨の規定(各協定書三条)があるが、日数割の基準となる日数については、そのような規定はなく、また、その文言も、「乗務日数」とされていた。なお、日数割の基準となる「乗務日数」は、各対象期間における勤務可能日数の八割を目処として、決められていた。

被告は、昭和三三年ころ以降、各協定に基づき、賞与計算を行っており、日数割の基準となる「乗務日数」には、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入しないという取扱いを一貫して続けてきた。また、被告の賞与の決定における姿勢は、同業他社の従業員の平均の相場を参考にしてその年度の賞与支給額の原案を作り、錦タクシー労働組合と交渉して、決定するというものであった。その間、労働災害による休業が長期間に及び、支給された賞与が低額となる事例が生じたこともあったが、その点については、本人からも、右労働組合からも、特段の異議は述べられず、以後の賞与に関する協定締結にあたっても、右労働組合の側から、協定の見直しが求められたことはなかった。

2  なお、原告は、昭和五一年九月から平成四年一〇月まで、錦タクシー労働組合の委員長であったが、原告が右委員長の地位にあったときも、被告との間で賞与の算定を巡る紛争が生じたことはなく、原告が委員長の地位を退いた後も、被告と右労働組合との間では、これまでと同旨の文言による協定書が取り交わされている。

3  本件各賞与に関する協定も、右のような経緯で取り交わされるに至ったものであり、これらの協定によれば、賞与支給の対象とされるのは、対象期間(夏季賞与については前年の一一月二一日から当年の五月二〇日まで、冬季賞与については当年の五月二一日から一一月二〇日まで)の末日現在勤続満六か月以上の者で、対象期間に一二〇日(平成六年夏季賞与については一一九日)以上勤務し(「勤務日数」)、かつ、支給期日に在職する者とされていた(各協定書三条)。

右各協定書三条においても、それ以前のものと同様、「勤務日数」の算定につき、年次有給休暇の取得日数や業務上の負傷等による休業日数は、勤務したものとみなされる旨規定され、また、従業員の賞与は、均等割(各従業員に均等に支給される金額)、年功割(勤続年数に応じて支給される金額)、水揚割(各従業員の営業収入額に応じて支給される金額)、日数割(対象期間中一定の日数を基準とし、「乗務日数」がこれを上回り、あるいは下回った場合、一日につき一定額を増減した金額)、事故減額、無届欠勤減額及び早退減額によって算出された金額を合計したものとされていた。被告は、右日数割における「乗務日数」は、実際にタクシー乗務に従事した日数を意味するとの解釈のもとに、日数割の額の算出にあたっては、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数は算入しなかった。

4  右各協定書における日数割は、平成五年夏季及び冬季の各賞与については一二一日以上一五〇日まで一日につき二九〇〇円宛増減され、平成六年夏季賞与については一二〇日以上一四九日まで一日につき三〇〇〇円宛増減される旨規定されていたが、原告の平成五年夏季賞与の対象期間における出勤日数は七二日、有給休暇取得日数は一三日、平成五年二月に起こした業務中の自動車事故による労働災害の休業日数が六三日であり、同年冬季賞与の対象期間における出勤日数は一四三日、有給休暇取得日数は七日であり、平成六年夏季賞与の対象期間における出勤日数は六八日、有給休暇取得日数は六日、平成五年一二月に起こした業務中の自動車事故による労働災害の休業日数が七四日であった。

5  右各協定書三条によれば、本件各賞与の各対象期間における原告の「勤務日数」は、いずれも所定の日数を超えているから、原告の各賞与は、各協定書四条を適用して計算すべきこととなる。そして、被告における四条四項の「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数、労働災害による休業日数を算入しないという取扱いを前提に、四条を適用して算出した原告の各賞与の金額は、平成五年夏季賞与が八万三三〇〇円、同年冬季賞与が三九万一八〇〇円、平成六年夏季賞与が六万九五〇〇円となるが、被告は、平成五、六年の各夏季賞与については、労働災害による休業日数が長期に及び、賞与が低額になってしまうため、本来原告への適用が予定されていない条項(平成五年夏季賞与については協定書六条一項、平成六年夏季賞与については協定書六条二項)を適用して計算し、平成五年夏季賞与として九万五九〇〇円を、平成六年夏季賞与として四万四八〇〇円をそれぞれ支払い、平成五年冬季賞与として三九万一八〇〇円を支払った。被告が平成五、六年の各夏季賞与につき右のような措置を講じたのは、協定書四条、六条一項、二項により計算した金額のうち、最も高額になるものを支給しようとの配慮によるものであった(もっとも、平成六年夏季賞与については、協定書六条一項に基づく計算による方が高額になるため、被告は、本件訴訟係属の後に、右六条一項に基づく計算による差額から一万五〇〇〇円の事故減額をした金額である三万〇七五〇円及びこれに対する弁済期の翌日以降の遅延損害金を供託した。)。

二  右認定の事実関係に基づき、原告の請求の当否につき判断する。

1  まず、賞与における日数割の基準となる「乗務日数」の意義について検討するに、そもそも日数割の制度は、実車率の向上等を目的とした被告の求めに応じて、被告と錦タクシー労働組合との協議の上採用されたものであるが、被告は、右制度が採られた後、一貫して「乗務日数」には年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入させない計算をしていたうえ、右労働組合からも、被告の右取扱いについて異議が述べられた形跡はなかった。さらに、賞与支給対象の要件となる「勤務日数」については、前記のとおり、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入する旨の規定がありながら、日数割の基準となる「乗務日数」については、そのような規定を欠いており、また、文言上の表現も、「勤務日数」、「乗務日数」と区別されていたのである。

2  これらの事情に照らせば、協定における「乗務日数」とは、被告主張のとおり、被告の従業員が実際に乗務に就いた日数を示すものとして規定されたというべきであり、この「乗務日数」は、もともと年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を算入しないものとして設けられたとするのが相当である。

3  したがって、被告の本件各賞与の算定における取扱いが各協定書四条四項に記載された「乗務日数」の解釈、適用を誤ったものである旨の原告の主張は採用しない。

三1  原告は、さらに、年次有給休暇の取得日数及び労働災害による休業日数を「乗務日数」に算入しないとする前記各協定の定めは、不当な賞与額の減少をもたらし、ひいては労働基準法が保障した年次有給休暇取得の権利や労働災害による休業の権利を無意味にするものであり、公序良俗に反し無効であるから、原告は、「乗務日数」に年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を含めた日数に基づいて計算した賞与の支給を受ける権利を有する旨を主張する。

2  ところで、賞与は、労働の対価たる側面を有することは否定できないものの、賃金のように、労働契約上当然に使用者に支払いが義務付けられるものではなく、対象期間における使用者の収益や労働者の勤務状況、勤務態度等多くの要素を考慮して支給の有無やその額が決定せられるもので、使用者の利益の分配や労働者に対する報奨的性質も強く、その性格は必ずしも一義的に説明できるものではない。そして、賞与を支給するかどうか、どのような条件のもとに支給するかといった事柄は、使用者と労働者との個別の約定や労働協約、就業規則等によって具体化されることになるが、その収入のほとんどの部分を労働者の乗務による収入に依存せざるを得ないというタクシー会社の特殊性をも考慮したとき、被告における賞与の決定にあたっては、従業員の生活保障の観点とともに、利益獲得における従業員の貢献に対する報奨、将来の業務の奨励等の見地から、これに応じた諸要素の総合的考慮を行う必要のあることは、容易に推測できるし、このような見地から賞与の算定基準を設けることも是認できるというべきである。

3  確かに、年次有給休暇の取得や労働災害による休業は、労基法が労働者に保障した権利であり、尊重されるべきものであって、使用者が、賞与の算定にあたり、労働者がこれらの権利を行使したことを理由として、ことさら不利益に取り扱い、労基法が右各権利を保障したことの意味を実質的に失わせることは許されないが、被告の賞与算定における取扱いがこれに該当するかどうかの判断に際しては、年次有給休暇の取得日数や労働災害による休業日数を控除した「乗務日数」が定められた趣旨や目的、被告の従業員が被る経済的不利益の程度等の諸事情を考慮したうえで、年次有給休暇の取得や労働災害による休業の権利に対する事実上の抑止力の強弱等を総合的に判断することが必要である。

4  以上の観点から、まず、労働災害による休業期間の不算入について判断するに、労基法によれば、労働者が業務上の災害に罹災した場合に、使用者が療養補償、休業補償及び障害補償の義務を負う旨規定され、また、同法三七条五(ママ)項は、年次有給休暇算定の基礎となる期間に右休業期間を算入しなければならない旨規定して、その保障を図っているのではあるが、少なくとも、法律上使用者に課せられた義務は、右の限度にとどまるというべきである。さらに、右休業期間中の賃金保障のような規定を置いていないこと(同法三九条六項参照)をも考え併せれば、休業している労働者を賞与の計算上、実際に労働したものとして取り扱わなければならないものとすることはできない。

確かに、労働災害による休業は、長期に及ぶ場合が予想され、したがって、被告の前記取扱いによる賞与計算によれば、労働者が被る経済的不利益が相当の額に達することもあり得ないではない。しかしながら、このような事態はごく稀にしか生じないものと考えられるし、前記のとおり、被告には、労働災害による休業中の従業員を乗務に就いたものとして扱わなければならない義務はない。また、被告による右取扱いの目的が、被告が稼働率を高め、営業による収入の向上を図るとともに、対象期間中よく勤務した従業員の労に報い、将来における従業員の勤労意欲の(ママ)高揚させることにあったこと、被告は適宜協定書六条一、二項を適用して、労働災害による休業を余儀なくされた従業員の賞与の低額化を防ごうとしていたこと、労働者は、前記のとおり、労働災害に関して種々の保障を受け得る地位にあることなどの諸事情を考え併せれば、労働災害による休業日数を乗務日数から控除する旨の前記各協定の定めは、労基法が定めた労働災害による休業の権利を害する目的で設けられたといえないことは明らかであり、また、右権利を害したり、その保障を実質的に無意味にするともいえないのであるから、この定めが公序良俗に反し、無効であるとすることはできない。

5  次に、年次有給休暇取得日数の不算入の点について検討する。

(一) 労基法一三四条は、使用者が年次有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない旨を規定しているが、この規定は、それ自体としては、使用者の努力義務を定めたものにすぎず、労働者の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を全て否定するまでのものではないと解すべきである。

確かに、被告による「乗務日数」への不算入の取扱いが年次有給休暇を保障した労基法の精神に沿わない面を有することを完全に否定することはできないが、その効力については、前記のとおり、その規定が設けられた趣旨、目的、労働者が被る経済的不利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑圧し、ひいては同法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序良俗に反して無効になるとすることはできない。

(二) 以下本件の取扱いがこれに該るか否かについて検討するに、本件で問題とされた日数割については、一定の乗務日数を基準として、実際の乗務日数に応じて増額あるいは減額するものとされているが、右増額及び減額の取扱いは、その意味合いを異にする面があると思われるので、それぞれの場合に分けて検討する。

(1) 右増額の取扱いは、前記のとおり、より多くの乗務に就いた者の賞与額を増加することによって、その労に報いるとともに、将来にわたって、労働者の勤労意欲の増大を期待する趣旨に基づくものであり、功労的、報奨的、政策的性格が強いものといえる。そして、被告の取扱いによれば、年次有給休暇を取得することによって、増額の対象となる乗務日数が減少し、その分の経済的利益を受けられないことになり、ひいては労働者に有給休暇の取得を諦めさせる危険が皆無とはいえない。しかしながら、前記のとおり、賞与に報奨的側面があることを考えれば、被告が実際に多くの乗務に就いた従業員に報いるため、賞与額に差異を設けることが許されないではなく、被告も、まさにこのような趣旨で、前記の取扱いを行っているのである。さらに、被告の就業規則(<証拠略>)によれば、被告の従業員の有給休暇は年間二〇日間を限度とされており、仮に、賞与の対象期間となる半年間の間にこれに対応する一〇日間の年次有給休暇を取得したとしても、そのことによって増加されない金額は三万円程度であること、前記各協定が各賞与に関し、被告と錦タクシー労働組合とがその都度合意して決定したものであること、前記タクシー会社の特殊性、タクシー会社においては、賞与分の支給にあたり、売上歩合制を採用している会社も少なくないこと(この事実は、<証拠・人証略>及び被告代表者尋問の結果により認めることができる。)、右「乗務日数」にかかる取扱いは、被告と右労働組合との間で取り交わした協定に基づき、長年にわたって行われてきたものであり、これまで被告の乗務日数の計算方法に関して、従業員や右労働組合から特段の異議が出された形跡もないことなどの事情を考え併せれば、右日数割の増額につき年次有給休暇取得日数を乗務日数に算入しないとの取扱いには、相応の経済的合理性があるというべきであり、この扱いが労基法が保障した年次有給休暇取得の権利を実質的に無意味にするとまではいえない。したがって、前記各規定が公序良俗に反するとまではいえず、これを無効とすることはできない。

(2) 次に、基準日数を下回ることによる減額にかかる取扱いについてであるが、年次有給休暇の取得日数が乗務日数に算入されないことにより、乗務日数が基準日数を下回る場合は、均等割等日数割以外の諸要素によって算定された賞与額が減額されることになるのであるから、このことによって労働者が被る不利益は、前記の増額されない場合に比して相当程度大きくなるといえる。しかしながら、前記認定のとおり、日数割の基準となる「乗務日数」は、勤務可能日数(勤務日数)の八〇パーセントを目処に設定されており、本件各賞与の対象期間における原告の勤務日数と日数割の基準となる日数を比較してみると、平成五年夏季賞与分の勤務日数が一四八日、乗務日数が一二〇日であり、同年冬季賞与分の勤務日数が一五〇日、乗務日数が一二〇日であり、平成六年夏季賞与分の勤務日数が一四八日、乗務日数が一一九日であって、それぞれ三〇日間程の差がある。このような基準日数の定め方によれば、仮にこれらの賞与の対象となる期間において、前記限度である二〇日間の年次有給休暇を全部取得したとしても、それだけでは減額には至らないのである。このことに、被告のタクシー会社としての特殊性、右取扱いが被告と錦タクシー労働組合との間で取り交わした協定に基づき、長年にわたって続けられてきたこと、その間右労働組合から何らの異議も述べられていないこと、他のタクシー会社における売上歩合制の採用等の前記諸事情に、被告が適宜協定書六条の規定を適用することによって、従業員に有利な方向で、賞与額を算定し、賞与の低額化を防いでいることなどを考え併せれば、この取扱いが公序良俗に反し、無効であるとすることはできない。

なお、原告の平成五、六年の各夏季賞与は、かなり大幅な減額となっているが、このような事態が生じたのは、労働災害による休業が長期化したという通常あまり起こることのない事情が重なったためであり、単なる年次有給休暇の取得だけでは、右各賞与の減額は起こり得なかったのである。したがって、たまたまこのような結果が生じたとしても、そのことをもって、右各協定の定めが公序良俗に反し、無効になるとすることはできない。

四1  以上判示のとおり、前記各協定に定められた日数割の基準となる「乗務日数」は、実際に乗務についた日数を意味した規定と解すべきであるから、右と同様の解釈に基づく被告の取扱いは、右各協定に反したものではない。また、右のような趣旨に基づく「乗務日数」を賞与の日数割の基準として採用し、賞与の増額及び減額を行うことも、労働者に保障された年次有給休暇の取得及び労働災害による休業の権利を著しく制限し、その保障の意味を無にしてしまう程度には至っていないというべきであるから、右の規定は、有効というべきである。

2  そして、前記認定の事実を前提として、各協定の四条に基づいて計算した原告の各賞与の額は、平成五年夏季賞与が八万三三〇〇円(均等割一五万二〇〇〇円及び年功割七万〇五〇〇円の合計から日数割による一三万九二〇〇円を減じた金額)、同年冬季賞与が三九万一八〇〇円(均等割一七万六〇〇〇円、年功割七万〇九〇〇円、水揚割七万八二〇〇円及び日数割六万六七〇〇円の合計)、平成六年夏季賞与が六万九五〇〇円(均等割一五万五〇〇〇円及び年功割七万〇五〇〇円の合計から日数割による一五万六〇〇〇円を減じた金額)となるが、原告は、前記のとおり、平成五年夏季賞与として九万五九〇〇円の、同年冬季賞与として三九万一八〇〇円の、平成六年夏季賞与として四万四八〇〇円の、各支給を受けているのである。

3  右の事実によれば、原告の平成六年夏季賞与のうち、二万四七〇〇円が未払いとなっているが、右未払分の債権は、被告が平成七年八月一日に同賞与の未払分三万〇七五〇円及びこれに対する弁済期の翌日である平成六年七月一六日以降の遅延損害金を供託した(原告が平成七年七月三一日の本件口頭弁論期日に右未払分の受領を拒絶したことは本件記録上明らかであるし、<証拠略>によれば、右供託の事実が認められる。)ことにより、消滅したとするのが相当である。

4  そうすると、原告については、本件各賞与の未払分はないことになるから、原告の本件未払賞与請求は理由がない(なお、被告は、労働災害による休業等により、協定書四条記載の日数割により算出した賞与額が低額になる場合には、協定書六条一、二項の計算により、従業員の不利益を回避するとの錦タクシー労働組合旨(ママ)の合意や労使慣行があったと主張するが、原告は、そのような合意や慣行を否定しているうえ、右合意や慣行の存在が認められる的確な証拠もないことに鑑みれば、右協定書六条一、二項による賞与の算定は、被告の事実上の配慮に基づく措置にすぎないというべきであり、そのような取扱いがなされていたことにより、原告がこれに対応する私法上の権利を取得したとすることはできない。)。

また、被告の賞与の支給に関する協定書の日数割に関する部分について、被告の行った解釈や取扱いに違法な点はないから、その支給に関し、被告に不法行為が成立する余地はなく、また、前記平成六年夏季賞与の未払いも、単なる債務不履行にとどまり、不法行為を構成するものとはいえない。したがって、原告の不法行為に基づく損害賠償請求も、理由がないことは明らかである。

第五結語

以上の次第で、原告の本件請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 長久保尚善)

《協定書》

錦タクシー株式会社と、錦タクシー労働組合との間に於いて、平成四年夏季賞与支給規定を、下記の通り協定する。

平成四年七月四日

錦タクシー株式会社

代表取締役 遠藤公

交通労連錦タクシー労働組合

執行委員長 桐原実明

平成四年夏季賞与支給規定

第一条 平成四年夏季賞与は、下記の計算方法にて支給する。

第二条 対象期間は、平成三年一一月二一日より平成四年五月二〇日までとする。

第三条 支給対象は、上記対象期間の末日現在、勤続満六ケ月以上の者で、対象期間に一二〇日以上勤務し、なお且つ支給期日に在職する者とする。

但し、

一 上記勤務日数の算定に、就業規則第三六条及び第三九条の休暇を、会社の承認を受けてとった日数は、勤務したものと看做す。

二 第二種免許養成期間は除く。

第四条 乗務員の賞与は、下記第一項より第八項の計算方法にて支給する。

一 均等割…一人当り均等に一五一、〇〇〇円を支給する。

二 年功割…上記第二条の対象期間末日現在にて、勤続満一年以上満五年までの期間は六ケ月毎に三、五〇〇円を支給し、満五年六ケ月以上満一〇年までの期間は六ケ月毎に二、七〇〇円、満一〇年六ケ月以上満一五年までの期間は六ケ月毎に一、二〇〇円を支給する。

三 水揚割…対象期間中の各自の営業収入額が、三一〇万円以上三六〇万円未満は、二万円毎に二、一〇〇円を支給し、三六〇万円以上四一〇万円未満は、二万円毎に二、八〇〇円を支給、四一〇万円以上は、二万円毎に三、五〇〇円を支給、夜勤専属勤務者は第二条期間中の各自水揚額より四五〇万円を控除し、残余額×九%を加算支給する。

四 日数割…対象期間中の乗務日数一二一日以上一五〇日まで、一日につき二、九〇〇円宛加減して支給する。

五 事故減額 イ)対象期間中に有責事故を起こしながら、日数不足等で無事故手当に関係しなかった者は一件につき六、〇〇〇円宛減額して支給する。

六 事故減額 ロ)対象期間中に有責人事事故を起こし、その損害額が一〇万円以上の者は、一件につき五、〇〇〇円を、損害額が二〇万円以上の者は、一件につき一〇、〇〇〇円を、損害額が一〇〇万円以上の者は、一件につき一五、〇〇〇円を各々減額して支給する。

七 無届欠勤減額 対象期間中に無届欠勤をした者に対しては、無届欠勤一日につき二、九〇〇円宛減額して支給する。

八 早退減額 昼勤早退、通し早退は、一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

第五条 内勤者の賞与は各対象期間内の、給料合計の一六・七%の額で支給する。

第六条 支給日に在職し、上記第三条の支給対象資格に満たなかった乗務員に対しての、賞与の計算方法は下記のとおりとする。

一 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が、七五日以上一二〇日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り六五、〇〇〇円を支給する。

ロ)年功割は第四条第二項の年功割の半額を支給する。

ハ)水揚割は第四条第三項の水揚割を、そのまま適用する。

ニ)日数割は乗務日数七六日以上及び未満一日につき一、四五〇円宛加減して支給する。

ホ)事故減額は第四条第六項の事故減額(ロ)をそのまま適用する。

ヘ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

二 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に九、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は乗務日数一一日以上一日につき六〇〇円宛加算して支給する。

ハ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

三 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一二〇日以上の者に対しては、第四条第一項の均等割より五、〇〇〇円を減額し、同条第三項より第八項まではそのまま適用する。

四 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が七五日以上一二〇日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り均等に五二、〇〇〇円を支給する。

ロ)水揚割は第四条三項を、

ハ)日数割は第六条第一項の(ニ)を、

ニ)事故減額は第四条第六項の(ロ)を、

ホ)早退減額は第六条第八項を、そのまま適用する。

五 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に八、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は第六条第二項(ロ)を、

ハ)早退減額は第六条第二項(ハ)をそのまま適用する。

第七条 平成 年々末賞与は、昨年実績より一七、〇〇〇円増をメドとする。

第八条 支給期日 平成四年七月一五日(水)を予定日とする。

以上

別紙一 《協定書》

平成五年七月六日

錦タクシー株式会社と、錦タクシー労働組合との間に於て、平成五年夏季賞与支給規定を、下記の通り協定する。

錦タクシー株式会社

代表取締役 遠藤公

交通労連錦タクシー労働組合 福永敬孝

平成四年七月四日付の平成四年夏季賞与支給協定書を総て援用し、変更したるもののみを掲げる。

一 第四条 一 均等割…一人当り均等に一五一、〇〇〇円を支給するとあるを、一五二、〇〇〇円に変更する。

二 当期中の水揚額が二六〇万円以上三一〇万円未満の者……一〇、〇〇〇円

三一〇万円以上三六〇万円未満の者……一五、〇〇〇円

三六〇万円以上四一〇万円未満の者……二〇、〇〇〇円

四一〇万円以上の者……二五、〇〇〇円

を加算支給する。

以上

別紙二 《協定書》

錦タクシー株式会社と、錦タクシー労働組合との間に於いて、平成五年冬季賞与支給規定を、下記の通り協定する。

平成五年一二月六日

錦タクシー株式会社

代表取締役 遠藤公

交通労連錦タクシー労働組合

執行委員長 福永敬孝

平成五年冬季賞与支給規定

第一条 平成五年冬季賞与は、下記の計算方法にて支給する。

第二条 対象期間は、平成五年五月二一日より平成五年一一月二〇日までとする。

第三条 支給対象は、上記対象期間の末日現在、勤続満六ケ月以上の者で、対象期間に一二〇日以上勤務し、なお且つ支給期日に在職する者とする。

但し、

一 上記勤務日数の算定に、就業規則第三六条及び第三九条の休暇を、会社の承認を受けてとった日数は、勤務したものと看做す。

二 第二種免許養成期間は除く。

第四条 乗務員の賞与は、下記第一項より第八項の計算方法にて支給する。

一 均等割…一人当り均等に一七六、〇〇〇円を支給する。

二 年功割…上記第二条の対象期間末日現在にて、勤続満一年以上満五年までの期間は六ケ月毎に四、一〇〇円を支給し、満五年六ケ月以上満一〇年までの期間は六ケ月毎に二、三〇〇円、満一〇年六ケ月以上満一五年までの期間は六ケ月毎に一、一〇〇円を支給する。

三 水揚割…対象期間中の各自の営業収入額が、二八〇万円以上三三〇万円未満は、二万円毎に二、二〇〇円を支給し、三三〇万円以上三八〇万円未満は、二万円毎に二、九〇〇円を支給、三八〇万円以上は、二万円毎に三、六〇〇円を支給、夜勤専属勤務者は第二条期間中の各自水揚額より四二〇万円を控除し、残余額×九%を加算支給する。

四 日数割…対象期間中の乗務日数一二一日以上一五〇日まで、一日につき二、九〇〇円宛加減して支給する。

五 事故減額 イ)対象期間中に有責事故を起こしながら、日数不足等で無事故手当に関係しなかった者は一件につき六、〇〇〇円宛減額して支給する。

六 事故減額 ロ)対象期間中に有責人事事故を起こし、その損害額が一〇万円以上の者は、一件につき五、〇〇〇円を、損害額が二〇万円以上の者は、一件につき一〇、〇〇〇円を、損害額が一〇〇万円以上の者は、一件につき一五、〇〇〇円を各々減額して支給する。

七 無届欠勤減額 対象期間中に無届欠勤をした者に対しては、無届欠勤一日につき二、九〇〇円宛減額して支給する。

八 早退減額 昼勤早退、通し早退は、一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

第五条 内勤者の賞与は各対象期間内の、給料合計(基準外賃金を除く)の二三%の額で支給する。

第六条 支給日に在職し、上記第三条の支給対象資格に満たなかった乗務員に対しての、賞与の計算方法は下記のとおりとする。

一 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が、七五日以上一二〇日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り七〇、〇〇〇円を支給する。

ロ)年功割は第四条第二項の年功割の半額を支給する。

ハ)水揚割は第四条第三項の水揚割を、そのまま適用する。

ニ)日数割は乗務日数七六日以上及び未満一日につき一、四五〇円宛加減して支給する。

ホ)事故減額は第四条第六項の事故減額(ロ)をそのまま適用する。

ヘ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

二 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に一二、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は乗務日数一一日以上一日につき四三〇円宛加算して支給する。

ハ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、四五〇円宛減額して支給する。

三 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一二〇日以上の者に対しては、第四条第一項の均等割より五、〇〇〇円を減額し、同条第三項より第八項まではそのまま適用する。

四 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が七五日以上一二〇日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り均等に五八、〇〇〇円を支給する。

ロ)水揚割は第四条三項を、

ハ)日数割は第六条第一項の(ニ)を、

ニ)事故減額は第四条第六項の(ロ)を、

ホ)早退減額は第六条第八項を、そのまま適用する。

五 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に七、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は第六条第二項(ロ)を、

ハ)早退減額は第六条第二項(ハ)をそのまま適用する。

第七条 支給期日 平成五年一二月一五日(水)を予定日とする。

以上

別紙三 《協定書》

錦タクシー株式会社と、錦タクシー労働組合との間に於いて、平成六年夏季賞与支給規定を、下記の通り協定する。

平成六年七月三日

錦タクシー株式会社

代表取締役 遠藤公

交通労連錦タクシー労働組合

執行委員長 福永敬孝

平成六年夏季賞与支給規定

第一条 平成六年夏季賞与は、下記の計算方法にて支給する。

第二条 対象期間は、平成五年一一月二一日より平成六年五月二〇日までとする。

第三条 支給対象は、上記対象期間の末日現在、勤続満六ケ月以上の者で、対象期間に一一九日以上勤務し、なお且つ支給期日に在職する者とする。

但し、

一 上記勤務日数の算定に、就業規則第三六条及び第三九条の休暇を、会社の承認を受けてとった日数は、勤務したものと看做す。

二 第二種免許養成期間は除く。

第四条 乗務員の賞与は、下記第一項より第八項の計算方法にて支給する。

一 均等割…一人当り均等に一五五、〇〇〇円を支給する。

二 年功割…上記第二条の対象期間末日現在にて、勤続満一年以上満五年までの期間は六ケ月毎に三、五〇〇円を支給し、満五年六ケ月以上満一〇年までの期間は六ケ月毎に二、七〇〇円、満一〇年六ケ月以上満一五年までの期間は六ケ月毎に一、二〇〇円を支給する。

三 水揚割…対象期間中の各自の営業収入額が、三一〇万円以上三六〇万円未満は、二万円毎に二、二〇〇円を支給し、三六〇万円以上四一〇万円未満は、二万円毎に二、九〇〇円を支給、四一〇万円以上は、二万円毎に三、六〇〇円を支給、夜勤専属勤務者は第二条期間中の各自水揚額より四五〇万円を控除し、残余額×九%を加算支給する。

四 日数割…対象期間中の乗務日数一二〇日以上一四九日まで、一日につき三、〇〇〇円宛加減して支給する。

五 事故減額 イ)対象期間中に有責事故を起こしながら、日数不足等で無事故手当に関係しなかった者は一件につき六、〇〇〇円宛減額して支給する。

六 事故減額 ロ)対象期間中に有責人事事故を起こし、その損害額が一〇万円以上の者は、一件につき五、〇〇〇円を、損害額が二〇万円以上の者は、一件につき一〇、〇〇〇円を、損害額が一〇〇万円以上の者は、一件につき一五、〇〇〇円を各々減額して支給する。

七 無届欠勤減額 対象期間中に無届欠勤をした者に対しては、無届欠勤一日につき三、〇〇〇円宛減額して支給する。

八 早退減額 昼勤早退、通し早退は、一回につき一、五〇〇円宛減額して支給する。

第五条 内勤者の賞与は各対象期間内の、給料合計(基準外賃金を除く)の一六・七%の額で支給する。

第六条 支給日に在職し、上記第三条の支給対象資格に満たなかった乗務員に対しての、賞与の計算方法は下記のとおりとする。

一 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が、七五日以上一一九日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り六六、〇〇〇円を支給する。

ロ)年功割は第四条第二項の年功割の半額を支給する。

ハ)水揚割は第四条第三項の水揚割を、そのまま適用する。

ニ)日数割は乗務日数七六日以上及び未満一日につき一、五〇〇円宛加減して支給する。

ホ)事故減額は第四条第六項の事故減額(ロ)をそのまま適用する。

ヘ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、五〇〇円宛減額して支給する。

二 対象期間の前日までに入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に一〇、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は乗務日数一一日以上一日につき六〇〇円宛加算して支給する。

ハ)昼勤早退、通し早退は一回につき一、五〇〇円宛減額して支給する。

三 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一一九日以上の者に対しては、第四条第一項の均等割より五、〇〇〇円を減額し、同条第三項より第八項まではそのまま適用する。

四 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が七五日以上一一九日未満の者に対しては、

イ)均等割を一人当り均等に五三、〇〇〇円を支給する。

ロ)水揚割は第四条三項を、

ハ)日数割は第六条第一項の(ニ)を、

ニ)事故減額は第四条第六項の(ロ)を、

ホ)早退減額は第六条第八項を、そのまま適用する。

五 対象期間中に入社し、対象期間中の勤務日数が一〇日以上七五日未満の者に対しては

イ)均等割を一人当り均等に八、〇〇〇円を支給する。

ロ)日数割は第六条第二項(ロ)を、

ハ)早退減額は第六条第二項(ハ)をそのまま適用する。

第七条 支給期日 平成六年七月一五日(金)を予定日とする。

以上

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