大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成5年(ワ)4448号 判決

原告

小野良隆

被告

岩槻幸次

主文

一  被告は原告に対し、金二三万三八三〇円及びこれに対する平成四年六月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一三分し、その一〇を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は原告に対し、金九七万一四二〇円及びこれに対する平成四年六月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告が軽四輪貨物自動車(以下「被告車」という。)を運転して交差点を右折していた際、左方道路から交差点を直進通過しようとした原告が運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と衝突し、原告車が破損した事故について、原告が被告に対して、民法七〇九条に基づく損害賠償を請求したものである。

一  争いのない事実

交通事故の発生

日時 平成四年六月二一日午後九時三〇分ころ

場所 大阪市北区出入橋交差点

態様 被告が被告車を運転して交差点を右折していた際、左方道路から交差点を直進通過しようとした原告が運転する原告車と衝突し、原告車が破損した。

二  争点

1  被告の民法七〇九条に関する過失の有無(原告は、被告が赤信号に従つて停止線で停止せず、漫然と時速約六〇キロメートルの速度で交差点に進入して右折したため、青信号に従つて進行していた原告車に追突した過失があると主張する。これに対して、被告は、対面信号が青色から黄色に変わつた直後に交差点に進入し、時速約二〇キロメートルの速度で右折していたところへ、赤信号で交差点に進入した原告車の右側面後部と被告車の左前部とが接触したもので、被告に過失はないと主張する。)

2  損害額(修理費、代車料、慰謝料)(代車料について、原告は一一日分を請求するが、被告は、修理相当期間である五日間を越える代車料については、本件事故と相当因果関係がないと主張する。また、原告は、被告が保険会社などに対し、被告が黄色信号で交差点に進入し、原告が赤信号を無視して交差点に進入したとの虚偽の事実を申し立て、これによつて原告の名誉を毀損したとして慰謝料を請求するが、被告は、虚偽の事実を申し立て原告の名誉を毀損したことはないとして、右主張を争う。)

3  過失相殺(被告は、仮に被告に過失があるとしても、前記1の被告主張の事故態様と、本件事故当時、原告が左右の注視を怠つていた点から、相当の過失相殺をすべきであると主張する。)

第三争点に対する判断

一  証拠(甲一、三、四、検甲一、二の1ないし7、乙一、二、検乙一の1ないし3、二の1ないし4、三の1ないし12、原告、被告各本人、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められ、原告、被告各本人尋問の結果のうち右認定に反する部分、右認定に反する甲二、七、八、乙三はいずれも採用できない。

1  本件事故現場は、別紙図面のとおり、ほぼ東西に伸びる道路(以下「東西道路」という。)と、南北に伸びる道路(以下「南北道路」という。)とが交差した、信号機による交通整理の行われている交差点である。本件交差点西詰付近では、東西道路の東行車線は、道路中央寄りから順に、右折専用車線、直進専用車線、直進及び左折車線となつている。また、本件交差点北詰付近には、阪神電鉄の踏切があり、この踏切と本件交差点北詰の停止線との間には、三、四台の車両が縦列に停止できる程度の間隔しかない。本件交差点北詰付近では、南北道路の南行車線は、道路中央側が右折専用車線、道路端側が直進及び左折車線となつている。本件交差点の信号機の表示は、東西道路側、南北道路側のいずれもが、青色、三秒間程度の黄色、赤色の順で変わり、その間、本件交差点内の信号が全部赤色となるのが三秒間程度ある。また、東西道路側の西行車線、東行車線の信号表示は、相互に同じであり、南北道路の北行車線、南行車線の信号表示も相互に同じである。

2  本件事故当時、原告は、原告車(箱型の乗用自動車、車名ホーミーコーチ)を運転して南北道路を南進し、本件交差点北詰の南行車線(直進及び左折車線)の停止線付近で、信号待ちのため停止した。その後、原告は、本件交差点を直進通過するため、本件交差点内に進入した。そして、原告は、本件交差点内を南進中、本件交差点西詰の東行車線から本件交差点内に右折進入してくれる乗用自動車に気付いたが、その乗用自動車は、原告車の進路上に合流する形で先に右折して、南北道路の南行車線を南進した。その後間もなく、原告車が本件交差点南詰の横断歩道のすぐ北側付近(本件交差点北詰の停止線から約四五メートル南側の地点)を走行していた際、原告車の右後輪上部付近の車体側面と被告車の左前角付近とが衝突した。原告は、原告車の後部に衝撃を感じるまで、被告車に全く気付かなかつた。右衝突後、原告車は、二、三メートル進行して停止した。右衝突の結果、原告車には、修理費三五万四三六一円(部品代一三万六五四〇円、技術料二〇万七五〇〇円の合計三四万四〇四〇円に消費税を加えたもの)を要する損傷を受けた。

3  本件事故当時、被告は、被告車を運転して東西道路を東進し、本件交差点を右折するため、本件交差点西詰付近の右折専用車線上で時速約二〇キロメートルに減速し、同様に右折する先行車に続いて本件交差点南詰の横断歩道のすぐ北側付近(本件交差点西詰の横断歩道付近から約三五メートル右折進行した地点)まで進行していた際、本件交差点を南進してくる原告車を認め、ハンドルをやや右に切り、急ブレーキをかけたが間に合わず、原告車と衝突した。右衝突の結果、被告車には修理見積一一万四六五〇円(部品代三万二四五〇円、技術料八万二二〇〇円の合計額)を要する損傷を受けた。本件事故直後、原告と被告は、互いに車を道路脇に寄せて話し合つた際、原告は被告に対し、被告が信号無視であると主張し、被告は原告に対し、被告車が黄色信号で本件交差点に進入したと主張していた。

二  被告の民法七〇九条に関する過失の有無について、

前記一で認定したところによれば、原告車は、本件交差点を東西に直進通過する車両と衝突することなく本件交差点内を通過して本件衝突地点に到達するとともに、被告車も、本件交差点を北進する車両と衝突することなく本件交差点内を通過して本件衝突地点に到達しており、また、原告車が本件交差点北詰の停止線付近から発進し、約四五メートル走行して本件衝突地点に到達していることから、右発進地点から衝突地点までの間における原告車の平均速度は、時速二〇キロメートル(秒速五・五メートル)程度であつたと解され、さらに、被告車も、時速約二〇キロメートルの速度で本件交差点西詰の横断歩道付近から約三五メートル走行した後、急ブレーキをかけて減速した直後に原告車と衝突しているのであり、このような原告車と被告車の走行経路、進行速度、進行状況からすると、原告車は、南北道路側の信号が青信号に変わる以前に、東西道路側の信号が赤色に変わつたのを見て本件交差点内に進入し、被告車は、東西道路側の対面信号が、赤色を表示してから間もなく本件交差点内に進入し(原告車と被告車は、いずれも本件交差点内の信号が全部赤色になるのとほぼ同時に本件交差点内に進入したと解する。)、本件事故が発生したと解するのが相当である(原告は、本件事故当時、原告車が青信号に従つて進行していたと主張し、被告は、被告車の対面信号が青色から黄色に変わつた直後に交差点に進入したと主張し、原告、被告各本人尋問の結果中には、右各主張に添う部分が存在するが、右各主張の信号関係を裏付けるに足りる目撃者の証言等の客観的、第三者的な性格の証拠が見当たらないことからすると、右各供述部分は、本件事故当時の信号関係の表示を決する証拠として採用することは困難である。また、乙三の陳述書、被告本人尋問の結果中には、被告車が本件交差点に進入する直前に、先行車に対して被告車の前照灯を上下させて、先行車の右折を促すよう合図したとの部分が存在するが、右供述部分等についても、これを裏付けるに足りる証拠はないから、右供述部分等を採用することはできない。さらに、原告は、本件事故当時、被告車が時速約六〇キロメートルの速度で進行していたと主張するが、原告車と被告車の前記各修理費から判断される各損傷程度からすると、原告の右主張は採用できない。)。

そうすると、被告には、対面信号の表示に従わないで本件交差点に進入したうえ、左方道路から進行してくる車両の有無、動静に十分注意しないで右折進行した点で過失があると解される。

三  損害

1  修理費 三五万四三六一円(請求三五万八一二〇円)

前記一で認定したとおり、本件事故による原告車の修理費として三五万四三六一円を要した(なお、甲四のアルミホイール交換三六五〇円については、本件事故との相当因果関係が認められない。)。そうすると、原告の修理費に関する請求は、三五万四三六一円の限度で理由がある。

2  代車料 一一万三三〇〇円(請求同額)

原告は、原告車を日産プリンス大阪販売株式会社香里支店で修理し、その修理期間として、平成五年二月一五日から同月二五日までの一一日間を要し、その間、日産カーリース株式会社から代車を借り、その間の代車料として一一万三三〇〇円(消費税を含む。)を要した(甲四、五、原告本人)。

右事実に、前記一、三1(修理費)で認定したところを併せ考慮すれば、代車料に関する原告の請求は理由がある(被告は、五日間が修理相当期間であり、右期間を越える代車料は本件事故と相当因果関係がないと主張するが、右主張は採用できない。)。

3  慰謝料(請求五〇万円)

前記一の認定事実に、前記二で判示したところによれば、慰謝料に関する原告の請求は理由がない。

四  過失相殺

被告には、前記二で認定した過失があるが、他方、原告も、対面信号が赤信号であるにもかかわらず、交差道路が赤信号になつた時点で発進して本件交差点内に進入したうえ、右方道路から右折進行してくる車両の有無、動静に十分注意して進行すべきであつたにもかかわらず、右注意が不十分なままで本件交差点を通過しようとして本件事故を発生させた点で過失があると解されることの諸事情を考慮すれば、本件事故発生について、原告と被告には、それぞれ五〇パーセントの過失があると解される。

そうすると、四六万七六六一円(前記三1、2の損害合計額)に右過失割合を適用した過失相殺後の金額は、二三万三八三〇円(円未満切り捨て。)となる。

五  以上によれば、原告の請求は、二三万三八三〇円とこれに対する本件交通事故発生の日である平成四年六月二一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 安原清蔵)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例