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大阪地方裁判所 平成5年(わ)3909号 判決 1995年7月03日

裁判所書記官

牧之内葉子

本籍

和歌山市西長町一丁目一一番地

住居

右同

会社役員

則岡信吾

昭和二二年六月五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官室田源太郎、弁護人家藤信正各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年四月及び罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する。)被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、不動産売買等を業とする和興開発株式会社の当時の顧問税理士であり、前田喬は同社の当時の代表取締役であったところ、

第一  被告人は、同社から頼まれて清水久夫の税務申告手続等に関与したものであるが、前記前田及び右清水と共謀の上、同人が平成四年六月一〇日ころ同人所有の和歌山市薗部字五屋谷ノ内雛子谷一七二五番四の山林(立木を含む。)ほか二筆の山林並びに同人及び同人の義母清水照所有の同市薗部字五屋谷ノ内雛子谷一七二五番二の山林(立木を含む。)ほか二筆の山林についての右清水の各共有持分を前記会社に合計一八億〇九八一万四〇〇〇円で売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(一)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成四年分の総合課税の総所得金額が三二九万九一七五円、山林所得金額が九五三一万七〇〇〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が一五億六六六一万三〇五〇円で、これに対する所得税額が四億九八六九万一二〇〇円であった(別紙(一)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、右譲渡にかかる収入金の一部を除外した虚偽の売買契約書を平成三年一二月三〇日付けで作成し、平成三年度の所得として修正申告をする方法により、平成四年分の右譲渡所得及び山林所得の全部を秘匿した上、平成五年三月一五日、同市湊通丁北一丁目一所在の所轄和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総合課税の総所得金額が三二九万九一七五円(ただし、申告書は誤って三二九万九九五三円と記帳)で、これに対する所得税額が八万〇五〇〇円(ただし、申告書は誤って一万〇五〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(一)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額四億九八六一万〇七〇〇円を免れ

第二  被告人は、園村滋、南郷耕造、廣﨑栄、廣﨑恵子、村口正雄及び村口昌弘から同人らの税務申告手続等の依頼を受けた前記前田に頼まれて右園村ら六名の税務申告手続等に関与したものであるが、前記前田と共謀の上、

一  右園村が、和歌山市薗部字新林一六五五番二外二筆の山林を一〇億四二〇〇万円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(二)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の総合課税の総所得金額が一三一万〇六五一円、分離課税の長期譲渡所得金額が九億六六六〇万円で、これに対する所得税額が二億三九六七万五一〇〇円であった(別紙(二)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、右譲渡にかかる収入金の一部を除外するなどの行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総合課税の総所得金額が一三一万〇六五一円、分離課税の長期譲渡所得金額が二億八二三八万六〇〇〇円で、これに対する所得税額が六八六二万一六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(二)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額一億七一〇五万三五〇〇円を免れ

二  前記南郷が、和歌山市薗部字五屋谷池東原一七一九番三の山林を一億七五三一万四六〇〇円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(三)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の総合課税の総所得金額が三六万四三六九円、分離課税の長期譲渡所得金額が一億六五四四万八八七〇円で、これに対する所得税額が三九二四万一二〇〇円であった(別紙(三)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、前記一同様の行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総合課税の総所得金額が三六万四三六九円、分離課税の長期譲渡所得金額が三二四六万円で、これに対する所得税額が六三九万五二〇〇円(ただし、申告書には誤って六三六万八二〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(三)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額三二八四万六〇〇〇円を免れ

三  前記廣﨑栄が、和歌山市六十谷字笹谷一二四八番一外六筆の山林を二億〇八九九万円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(四)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の総合課税の総所得金額が三〇一万一七四七円、分離課税の長期譲渡所得金額が一億九七四四万〇五〇〇円で、これに対する所得税額が四七四二万三七〇〇円であった(別紙(四)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、前記一同様の行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総合課税の総所得金額が三〇一万一七四七円、分離課税の長期譲渡所得金額が八七七八万八〇〇〇円で、これに対する所得税額が二〇〇一万〇七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(四)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額二七四一万三〇〇〇円を免れ

四  前記廣﨑恵子が、和歌山市薗部字鴻ノ巣一六三八番の山林を二億八〇三五万円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(五)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の分離課税の長期譲渡所得金額が二億六五二三万二五〇〇円で、これに対する所得税額が六四一八万一五〇〇円であった(別紙(五)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、前記一同様の行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の分離課税の長期譲渡所得金額が七五五三万三〇〇〇円で、これに対する所得税額が一六七五万六七〇〇円(ただし、申告書には誤って一六七五万六七五〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(五)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額四七四二万四八〇〇円を免れ

五  前記村口正雄が、和歌山市薗部字新林一六五八番二外二筆の山林を二億五八四五万円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(六)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の総合課税の総所得金額が四一万二〇〇〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が二億四四五二万七五〇〇円で、これに対する所得税額が五九一三万七九〇〇円であった(別紙(六)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、前記一同様の行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総合課税の総所得金額が四一万二〇〇〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が六七二一万一〇〇〇円で、これに対する所得税額が一四八〇万八九〇〇円(ただし、申告書には誤って一四六九万三二〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(六)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額四四三二万九〇〇〇円を免れ

六  前記村口昌弘が、和歌山市薗部字若林一六五一番外一筆の山林を二億七五五五万円で前記会社に売却譲渡したことに関し、同人の所得税を免れようと企て、別紙(七)の(1)修正損益計算書記載のとおり、同人の平成三年分の分離課税の長期譲渡所得金額が二億六〇七七万二五〇〇円で、これに対する所得税額が六三一〇万五五〇〇円であった(別紙(七)の(2)税額計算書参照)にもかかわらず、前記一同様の行為により、同年分の右譲渡所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の分離課税の長期譲渡所得金額が七三七〇万九〇〇〇円で、これに対する所得税額が一六三三万九七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙(七)の(2)税額計算書記載のとおり、右年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額四六七六万五八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の検察官調書〔二五七、二六〇〕

一  分離前の相被告人前田喬の当公判廷における供述

一  第六回及び第八回公判調書中の分離前の相被告人前田喬の各供述部分

一  前田喬の検察官調書〔二〇八〕

判示第一の事実について

一  被告人の検察官調書〔二五八〕

一  分離前の相被告人清水久夫の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の分離前の相被告人清水久夫の供述部分

一  前田喬の検察官調書〔二〇三、二〇五、二〇六、二一〇、二一一、二一三〕

一  清水久夫の検察官調書〔二五二ないし二五四〕及び大蔵事務官質問てん末書〔二五一〕

一  清水照〔一〇五〕、清水貞夫〔一〇六〕、中村溥〔一〇七ないし一〇九〕、塩郷善昭〔一二二〕、宮本多喜子〔一三一、一三二〕及び松江恒雄〔一三八ないし一四三〕の検察官調書

一  査察官調査書〔七ないし二〇〕

一  調査報告書〔二一、二三〕

一  査察官調査報告書〔二二〕

一  証明書〔二ないし四〕

一  「所得税務署の所在地について」と題する書面〔六〕

判示第二の事実全部について

一  被告人の検察官調書〔二五九、二六二〕

一  前田喬の検察官調書〔二一八、二二〇、二二四ないし二二九〕

一  塩郷善昭〔一二三〕及び飯田敬文〔一九一〕の検察官調書

判示第二の一、二、五及び六の各事実について

一  前田喬の検察官調書〔二二三〕

判示第二の一の事実について

一  前田喬の検察官調書〔二二三〕

一  園村滋〔一一〇〕、野志幸雄〔一一一〕及び宮垣直〔一三〇〕の検察官調書

一  検察官調査書〔二八ないし三四〕

一  調査報告書〔三五〕

一  証明書〔二五〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔二七〕

判示第二の二の事実について

一  前田喬の検察官調書〔二二二〕

一  南郷耕造〔一一二〕及び塩郷善昭〔一二六〕の検察官調書

一  検察官調査書〔四〇ないし四六〕

一  調査報告書〔四七〕

一  証明書〔三七〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔三九〕

判示第二の三及び四の各事実について

一  前田喬の検察官調書〔二一九〕

一  廣﨑栄〔一一三、一一四〕、塩郷善昭〔一二五〕及び宮垣直〔一二九〕の検察官調書

一  廣﨑恵子の大蔵事務官質問てん末書〔一一五〕

一  査察官調査書〔五三、六九〕

一  査察官調査報告書〔六〇、六一〕

判示第二の三の事実について

一  査察官調査書〔五二、五四ないし五九〕

一  査察官調査報告書〔六二、六三〕

一  証明書〔四九〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔五一〕

判示第二の四の事実について

一  廣﨑恵子の大蔵事務官質問てん末書〔一一六、一一七〕

一  査察官調査書〔六八、七〇ないし七六〕

一  査察官調査報告書〔七七、七八〕

一  証明書〔六五〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔六七〕

判示第二の五及び六の各事実について

一  前田喬の検察官調書〔二二一〕

一  村口建生〔一一九ないし一二一〕、塩郷善昭〔一二四〕、宮垣直〔一二八〕及び北田淑男〔一九二〕の検察官調書

一  査察官調査書〔九〇〕

一  査察官報告書〔九一〕

判示第二の五の事実について

一  査察官調査書〔八三ないし八九〕

一  証明書〔八〇〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔八二〕

判示第二の六の事実について

一  査察官調査書〔九六ないし一〇二〕

一  証明書〔九三〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔九五〕

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項本文により同法による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。)六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項に、判示第二の各所為は旧刑法六五条一項、六〇条、所得税法二四四条一項、二三八条一項にそれぞれ該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑との併科を選択し、以上は旧刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役二年四月及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金三万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する。)被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

一  本件は、不動産売買を業とする会社の顧問税理士であった被告人が、同社に山林を売却譲渡した七名の地権者の譲渡所得に関し、同社の当時の代表取締役と共謀し、さらに判示第一の事実については地権者とも共謀の上、右地権者七名の税務申告手続等に関与して合計八億六八四四万円余りもの巨額の所得税を脱税したもので、ほ脱率は平均約八五・八六パーセントにも達し、重大事案である。その犯行態様は、判示第一の事実については、当該山林の売買代金のうち七億円を裏金として売買契約書に記載せず、また残り一一億〇九八一万円余りを代金額として記載した売買契約書についても契約日付を長期譲渡所得の分離課税の税率の低い平成三年の一二月三〇日に遡らせて被告人において平成三年分の修正申告として所得を申告し、結局所得を申告すべき平成四年分としては右売却にかかる所得を全く申告しなかったというものであり、また判示第二の各事実については、地権者六名の各所得税確定申告書に各山林売買の代金額を実際の売買代金額の三〇ないし四〇パーセントに圧縮して記載し、さらにそれぞれ三〇〇〇万円の架空の控除を計上して右各譲渡所得の一部を除外した上、部落解放和歌山県企業連合会(以下「企業連」という。)を通じて売買契約書を添付せずに右各申告書を税務署に提出したというものであり、いずれも悪質な犯行である。また、被告人は本件に関与した動機について、右代表取締役から各地権者が山林売買の条件として同売買にかかる譲渡所得税を同社側で負担することを要求して困っていると聞かされ、土地買収に苦労する右代表取締役に同情したためである旨供述するが、一方で高額の脱税報酬に魅力があったためであるとも供述しており、本件ほ脱額が極めて高額であることに鑑みればいずれも同情の余地はない。そして、被告人は税理士でありながら本件各脱税を敢行したものであること、本件脱税報酬として判示第一の事実については地権者から一四〇〇万円、判示第二の各事実については右代表取締役から約一六六〇万円もの高額の報酬を得たこと、右地権者から得た一四〇〇万円については後にこれを返却したものの右代表取締役から得た約一六六〇万円については現在も被告人が利得したままであると認められること、本件が摘発されて企業連の事務局長から被告人に対し右代表取締役宛返却された企業連への脱税報酬を一時的にせよ自己のために流用したことなどをも考え合わせると、被告人の刑事責任は重大である。

二  一方、判示第一の事実については、右代表取締役が、難航していた清水と前記会社との売買契約を早期に締結させるために、前記のように七億円の裏金を授受することや売買契約書の契約日付を遡らせることによる脱税方法を発案したものであり、被告人はこれらのことを清水との最終的な山林売買締結の交渉に同席する直前あるいはその場に至るまで知らなかったのであって被告人が積極的に関与したものではないこと、また判示第二の各事実については、地権者六名から税務申告手続等の依頼を受けていた右代表取締役が各山林売買の売買代金額を坪あたり二万円として申告することを被告人との間で決定したが、被告人は右代表取締役から実際の売買代金額を知らされないまま右圧縮代金額を記載した一覧表を渡されて同金額に従って本件各所得税確定申告書を作成したものである上、被告人は右代表取締役が各地権者から申告所得税額以上の納税資金を受け取ってその差額を右代表取締役が利得していることを知らずに同社が各地権者の所得税を負担するものと思っていたことなどからすれば、被告人はあくまで右代表取締役に依頼されて脱税の税務申告手続を行ったのであって、同人に対して従属的立場にあったものと認められる。さらに、判示第一の事実については、ほ脱額のうち売買契約書に記載した一一億〇九八一万円余りの売買代金に関しては、納期限前の平成四年六月二三日に平成三年分の所得として修正申告した上、地権者が所得税二億五二〇五万円を納付しており、実質的なほ脱額は約二億四六五六万円であること、また判示第一の事実に関して地権者から受け取った報酬一四〇〇万円については被告人は本件逮捕前の平均五年一〇月二二日に右地権者に返却したこと、前記企業連からの報酬返還額についても本件逮捕後自己が流用していた部分を含めて右代表取締役に返却したこと、被告人は本件各犯行について素直に事実を認め、反省していること、被告人は本件起訴後自ら税理士会に対して脱会手続をとって税理士を辞めるなど一定の社会的制裁を受けていること、被告人にはこれまで前科がないことなど被告人に有利な事情も認められる。

三  以上のとおり、本件はほ脱額の合計は巨額であり、また被告人は税理士でありながら本件各犯行に関与して高額の報酬を得ていたものであって、被告人を実刑に処することも十分考慮に値するところではあるが、右のような被告人の本件各犯行に対する関与の態様、判示第一の事実についての実質的なほ脱金額、その他被告人に有利な事情を総合して考慮し、被告人を主文の懲役刑及び罰金刑に処した上、なお懲役刑についてはその執行を猶予するを相当と思料する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 松下潔 裁判官 増田啓祐)

別紙(一)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

(山林所得)

<省略>

別紙(一)の(2)

税額計算書

<省略>

(総合課税総所得)

<省略>

別紙(二)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(二)の(2)

税額計算書

<省略>

別紙(三)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(三)の(2)

税額計算書

<省略>

別紙(四)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(四)の(2)

税額計算書

<省略>

別紙(五)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(五)の(2)

税額計算書

<省略>

別紙(六)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(六)の(2)

税額計算書

<省略>

別紙(七)の(1)

修正損益計算書

(総合計)

<省略>

(分離長期譲渡所得)

<省略>

別紙(七)の(2)

税額計算書

<省略>

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