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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)4749号 判決 1998年10月28日

大阪府<以下省略>

原告

X1

兵庫県<以下省略>

原告

X2

兵庫県<以下省略>

原告

X3

右三名訴訟代理人弁護士

中川清孝

片岡利雄

斉藤護

田端聡

松田繁三

右訴訟代理人中川清孝

伊藤寛

同片岡利雄訴訟復代理人弁護士

東京都<以下省略>

被告

野村證券株式会社

右代表者代表取締役

神奈川県<以下省略>

被告

Y1

右両名訴訟代理人弁護士

高坂敬三

辰野久夫

主文

一  被告野村證券株式会社は、原告X2に対し、金一七五七万八五四四円及び内金一五二万六六四〇円に対する平成三年五月七日から、内金一五一八万一七七九円に対する同年一二月二七日から、内金八七万〇一二五円に対する同月三〇日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告X2のその余の請求並びに原告X1及び原告X3の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告X1に生じた費用、被告野村證券株式会社に生じた費用の三分の一及び被告Y1に生じた費用を原告X1の負担とし、原告X2に生じた費用を原告X2の負担とし、原告X3に生じた費用及び被告野村證券株式会社に生じた費用の三分の一を原告X3の負担とし、被告野村證券株式会社に生じたその余の費用を被告野村證券株式会社の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは、原告X1(以下「原告X1」という。)に対し、金一四一九万一三九三円及びこれに対する平成二年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告野村證券株式会社(以下「被告会社」という。)は、原告X2(以下「原告X2」という。)に対し、金五一〇四万六〇五三円及びこれに対する平成二年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告会社は、原告X3(以下「原告X3」という。)に対し、金二六一八万三八一二円及びこれに対する平成三年七月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告らが、証券会社である被告会社からそれぞれ別個にワラントを購入したが、右購入は被告会社ないし被告会社従業員の違法な勧誘行為によるものだとして、被告会社に対し被告会社自身の不法行為責任又は使用者責任に基づき、また、原告X1については予備的に売買契約上の債務不履行責任に基づき、更に、原告X1については被告会社従業員である被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し不法行為責任に基づき、それぞれ損害賠償(不法行為の日からの遅延損害金を含む。)を請求している事案である。

一  争いのない事実

1  当事者

原告らは、証券取引法制上、一般投資者と呼称される者である。被告会社は、証券取引法に基づく大蔵大臣の免許を得て有価証券の売買を業とする証券会社であり、被告Y1は、被告会社堺支店の営業課従業員として、原告X1を担当していた者である。

2  ワラント

ワラントとは、昭和五六年の商法改正により認められた新株引受権付社債(ワラント債)から社債部分を切り離したものであり、新株引受権のみを表章した有価証券である。ワラント一般の証券としての特質を要約すれば、予め定められた権利行使期間内に、予め定められた権利行使価格を別途払い込んで、予め定められた一定株数の新株を購入できる権利を有する証券ということができる。また、ワラント債には、国内で発行される円建てのものと、海外で外貨建にて発行されるものがあるが、現在海外で発行されている日本企業のワラント債としては、ヨーロッパ市場で発行されるユーロ・ドル建のものが多数を占めている。

ワラントの売買に関しては、その取引価格は原則的に株価に連動しつつもこれを遥かに上回る激しい値動きを見せることが多いこと(ギヤリング効果)、権利行使期間を経過すれば、ワラントは無価値になること等の特質が指摘される。

外貨建ワラントは、我が国においては上場されておらず、市場外で、店頭取引、相対取引として売買される。

3  本件ワラント取引等

(一) 原告X1関係

(1) 平成二年一月一二日、原告X1は、三井物産ワラント(外貨建。権利行使期限平成五年一月二二日。)四四単位を、一〇〇八万六六一五円で購入した。

(2) 同年七月二五日、原告X1は、前項と同じ三井物産ワラント五〇単位を、四六九万〇六二五円で購入した。

(3) 平成三年五月三一日、原告X1は、右の三井物産ワラントのうち八四単位を一五六万〇〇七一円で売却した。

同年一二月一一日、原告X1は、残りの三井物産ワラント一〇単位を、一万五七七六円で売却した。

(4) 右取引を通して、原告X1は、三井物産ワラント九四単位を計一四七七万七二四〇円で購入し、計一五七万五八四七円で売却したことにより、一三二〇万一三九三円の損失を被った。

(二) 原告X2関係

原告X2は、息子であるB(以下「B」という。)名義で、被告会社と、別紙原告X2ワラント取引一覧表記載のとおりのワラント取引を行った。

そのうち、同表3、4、10、12、13及び15記載の取引により、原告X2は、同表差引損益欄記載の損失を被り、右損失額は合計すると四六四〇万六〇五三円になる。

(三) 原告X3関係

原告X3は、被告会社と、別紙原告X3ワラント取引一覧表記載のとおりのワラント取引を行った。

そのうち、同表7、9、12、16、19、20及び22記載の取引により、原告X3は、同表損益欄記載の損失を被り、そのうち、12、19、20及び22の取引による損失額は合計すると二三八八万三八一二円になる。

二  当事者の主張

(原告らの主張)

1 ワラントの特質、危険性

ワラントには次のとおりの特質、危険性がある。

(一) リスクの巨大さ

ワラントには、前記一2記載のとおりの、激しい値動きをみせるギヤリング効果を有することや権利行使期間を経過すれば無価値になるなどの特質がある。加えて、外貨建ワラントにおいては為替変動のリスクもあり、相乗的に危険性が増大する。

このように、ワラントは、一瞬にして全損を招きかねない、極めて投機性の高い商品である。

(二) 外貨建ワラントにおける取引手法、取引価格の不透明さ

外貨建ワラントは、前記一2記載のとおり、市場外で、店頭取引、相対取引として売買され、しかも証券自体は顧客に交付されないため、顧客は購入した証券会社以外でこれを売却することはできず、結局は購入、売却ともに当該証券会社が決定した値段でしか取引を行うことができない。そして、公的な相場価格がないために価格決定過程は極めて不明朗であり、証券会社による恣意的な操作が行われやすい特質を有している。また、公的な相場価格がないため、一般投資者が投資判断の根拠とすべき日々の価格、売買状況、株価との連動状況等の情報は、全く開示されていないか、極めて不完全である。

(三) 取引手法の複雑さ

ワラントは、予め定められた価格によって将来において株式を取得するというだけの、実態が希薄な権利を表章する証券であり、「ポイント」なる用語を用いての計算方法等、その取引システムも極めて技巧的である。とりわけ外貨建ワラントにおいてはさらに一般投資者にはなじみのない店頭取引、外国証券としての特質も加わって、その取引手法は一般投資者に容易に理解できるものではない。

2 本件の各ワラント取引の違法性

前項記載のようなワラントの特質、危険性に鑑みれば、本件の各ワラント取引には、次のような違法性がある。

(一) 適合性の原則違反

証券会社は、顧客の意向、財産状態、投資経験等に適合した投資勧誘を行わなければならない(適合性の原則)。そして、一般個人投資家は、そもそも外貨建ワラント取引につき適合性を有しておらず、特に個別事案において当該投資家が適合性を有することを根拠付ける特殊事情が明らかにされない限り、一般個人投資家への積極的勧誘によるワラント取引は適合性原則に反し違法である。

本件において、原告らはいずれも典型的な一般個人投資家であって、被告会社における取引内容全般からしても、原告らがワラント取引をなすに足りる知識や経験を有していなかったこと、投機的取引を指向していなかったことは明白である。また、被告会社は、公正慣習規則第九号に基づいて制定した取引開始基準として、女性のワラント取引を原則として禁止する旨の基準を有しているが、原告X2については、右基準に反し、男性名義で取引をさせたものであり、顕著な適合性原則違反がある。

(二) 説明義務違反

外貨建ワラントについては、その危険性につき、①権利行使期限の到来により無価値となること、②権利行使価格と株価との関係及び残存権利行使期限の長短を基礎に、価格が激しく複雑に変動すること、③株価が権利行使価格を下回れば理論価格はゼロとなり、この場合にはプレミアムのみによって価格が形成され、期限到来前でも無価値同然となることがあり得ること、④為替リスクの存在、の四点を説明し、購入金額全額を失う覚悟が必要な商品であることを端的に理解させる必要がある。そして、一般投資家に対する危険性についての十分な説明の欠如は、当然に、証券取引法(以下「証取法」という。)五〇条一項五号(改正後六号)及び証券会社の健全性の準則等に関する省令(以下「健全性省令」という。)が禁止する「虚偽の表示」又は「重要な事項につき誤解を生ぜしめる表示」に該当する。

また、商品そのものの内容につき、新株引受権であることの具体的な意味は勿論、現に勧誘する当該ワラントの権利行使価格、権利行使期限、権利行使による取得株数、権利行使に関する払込代金の額を明示した上、これらに即して権利内容や時価算定方法を具体的に説明する必要がある。

また、勧誘時の当該ワラントの時価と株価、権利行使価格との関係の説明は不可欠であり、特に株価が権利行使価格を下回っているとき(マイナスパリティ)には、危険性の告知の観点からも、その旨を明確に理解させる必要がある。更に、店頭取引、相対取引であること及びその具体的な意味についての説明も不可欠である。

また、公正慣習規則第九号六条は、ワラント取引につき証券会社に顧客への説明書の交付と取引の概要及び危険に関する事項の十分な説明、顧客からの確認書の徴求を義務付けているところ、これら説明書、確認書が取引に遅れて交付、徴求されている場合には、同規則に違反するとともに説明義務違反を強く推認させる。

本件において、原告らに対する勧誘の際に、ワラント取引の危険性や問題点の説明は全くなされていず、原告らはいずれも転換社債と同程度のものと誤信せしめられて、各ワラントを購入するに至っている。このような、勧誘、販売行為は、原告らの自己責任による自主的投資判断を不可能ならしめるものであり、前記証取法五〇条一項五号(改正後六号)、公正慣習規則第九号六条等に違反するとともに、説明義務違反として違法である。

また、原告X3に勧誘したグラフテックワラントは、右勧誘時において、権利行使の残存期間が二年六か月しかなく、権利行使価格が三六七〇円であるのに、勧誘時の株価は一九六〇円で、マイナスパリティ四九・四四ポイント、プレミアム五六・四四ポイントというものであり、当時のグラフテックの株価がバブル崩壊の過程で全体的に下落していたことを考え併せると、右ワラントは欠陥商品というべきものであり、このような商品を勧めるにつき、権利行使価格と株価の上昇の見込みとの関係、即ち、株価が権利行使価格を期限内に上回る期待が低くなり、あるいは期待がなくなった場合には、ワラント価格は限りなく零に近づくこと等を何ら説明しないままなした勧誘が違法であることは明白である。

(三) 断定的判断の提供

断定的判断を提供して顧客を取引に勧誘する行為は、証取法五〇条一項一号に違反するものであり、特に、外貨建ワラントにおける断定的判断の提供は、それ自体で高度の違法性を帯びる。

本件において、原告らは、いずれも、被告担当従業員より、「これは絶対に儲かります。損はさせません。」(原告X1)、「必ず儲かる。」(原告X2)、「短期間で必ず儲かる商品です。」(原告X3)などといった断定的判断の提供を受け、これを信じて勧誘されるがままにワラントを購入している。

(四) 押付販売、欺瞞的勧誘

投資家の信頼を利用して熟慮期間を与えることなく承諾を迫る押付販売、ハイリターンの側面のみの過大な強調を伴った欺瞞的勧誘、取引内容を理解できないことを理由に取引を拒否している顧客に対する執拗な勧誘は、投資家の自由な投資判断を阻害する不当かつ不公正な勧誘として、是認されえないものであり、このような不当勧誘によるワラントの販売行為は違法である。

本件において、原告らは、いずれも執拗かつ欺瞞的な勧誘を受け、熟慮する機会と期間も与えられず、押し切られてワラントの購入に至っている。

(五) 回転売買(過当売買)

証券会社が、手数料や利鞘による自己の利益を得るため、量及び頻度において、過当な取引を誘引、実行した場合、顧客に対する損害賠償責任を免れない(チャーニングの法理)。特に、外貨建ワラントの場合、売却後さほどの期間を置かない同一銘柄の再購入、売却とほぼ同時の他の銘柄の購入、証券会社の利鞘が当該取引による顧客の利益を上回る取引等が頻繁に行われている場合には、特段の事情が立証されない限り、当該一連の取引の誘引、実行は、強度の違法性を帯びる。

本件において、原告X2、原告X3に関して、明らかに過当な取引が行われており、特に原告X3については、売買の頻度も高く、売却後に当該売却代金を充てての他の銘柄の購入が頻繁に行われており、まさに回転売買というべき取引が行われている。

(六) 過大なマークアップ・暴利行為

相対売買において証券会社が利鞘を取り過ぎることは、顧客の信頼と無知につけ込む背任的行為であり、暴利行為とすらいうべきものである。そして、例えば一〇%を超えるような過大なマークアップ(同じ時点での時価との差)が行われている場合には、もはや当該販売行為は暴利行為に他ならず、忠実義務ないし誠実・公正義務に違反し、違法である。

本件において、被告会社は、本件ワラントの仕入れ値を明らかにしておらず、勧誘時においても被告会社が得る利鞘を開示していないが、このような開示拒否は、本件において過大なマークアップが行われていたことを推定させる。

(七) 損害拡大の放置、助言義務違反

一般投資家は、専門家たる証券会社への信頼を基礎に、証券購入時のみならず、購入後においても、証券会社に対して価格の推移や売り時の判断等についての適切な情報提供を期待しており、とりわけ勧誘による購入の場合には、購入後の情報提供が取引の前提とされているといってもよい。特に外貨建ワラントの場合は、他の証券にもまして、購入後の価格情報の提供や売却時期の適切な助言を必要不可欠とする取引であった。積極的な勧誘により取引をさせておきながら、後は一切関知せずに損害の拡大を放置することは、忠実義務、誠実・公正義務に照らしても、信義則上、許されるものではなく、違法性を生ぜしめるというべきである。

本件において、被告会社は、原告らが独自に価格情報の入手や値動きの分析検討をなし得るだけのワラント取引についての理解、知識、能力を持たないことが明白であるにもかかわらず、購入後の適時の価格情報の提供を怠り、かえって価格の問い合わせや売却の打診に対して損失発生の責任が表面化することを避けるために曖昧な説明をなし、よって売却のタイミングを失わしめて損失を拡大せしめている。また、原告X1がワラントの追加購入を申し出た際、右ワラントは大きなマイナスパリティ状態になっていたのであるから、被告Y1は、不合理な取引に入ろうとしていることについて注意を喚起すべき助言義務(あるいは説明義務)を負っていたのであり、それにも関わらず原告X1の申出に同意を与えた被告Y1の行為は、右義務違反として違法である。

3 被告らの責任

被告会社は、最大手の証券会社として、外貨建ワラントの引受け、国内持込み、勧誘、大量販売を組織的に行ったものであって、前項記載の違法行為については、被告会社自身が不法行為責任を負う。また、被告Y1ら被告会社従業員は、前項記載の違法行為を行ったのであるから、被告Y1自身は不法行為責任を負い、被告会社は使用者責任を負う。更に、被告会社は、原告X1との間で、ワラントの売買契約を結び、取引を行った際に、前項記載の違法行為を行ったのであるから、原告X1に対し、証券取引における売買契約上の債務不履行責任を負う。

4 損害

(一) 原告X1

取引損 一三二〇万一三九三円

弁護士費用 一二九万円

計 一四四九万一三九三円

なお、本件の請求一四一九万一三九三円は内金請求である。

(二) 原告X2

別紙原告X2ワラント取引一覧表記3、4、10、12、13及び15記載の取引による取引損 四六四〇万六〇五三円

弁護士費用 四六四万円

計 五一〇四万六〇五三円

(三) 原告X3

別紙原告X3ワラント取引一覧表12、19、20及び22記載の取引による取引損 二三八八万三八一二円

弁護士費用 二三〇万円

計 二六一八万三八一二円

(被告らの主張)

(一) 原告X1関係

原告X1は、投資経験も長く、証券取引に関する知識も豊富な投資家である。被告Y1は、原告X1にワラントを勧めるに当たり、ワラントの基本的な商品性、特にそのリスク面についても丁寧に説明し、原告X1はそれらを十分に理解した上で、ワラントを購入する投資判断を行ったものであり、被告Y1に違法行為は一切ない。よって、被告らは不法行為責任を負わないし、被告会社は債務不履行責任を負わない。

(二) 原告X2関係

被告会社担当者が原告X2にワラントを勧めるに当たっては、その商品性、特にリスクについて十分説明の上で行っており、原告X2はそれを理解した上で購入しているのであるから、何ら違法とされる点はない。また、女性である原告X2と、男性名義で取引したのは、原告X2の要求によるものであり、今になって原告X2から問題とされるいわれはないし、しかも、右社内ルール違反は、取引そのものの効力に何ら消長を来すものではなく、原告X2の損害との間の因果関係もない。よって、被告会社は不法行為責任を負わない。

(三) 原告X3関係

被告会社担当者は、ワラントを勧めるに当たり、原告X3に対しその商品性、危険性を十分に説明し、原告X3は十分それを理解し承知の上でワラントを購入している。よって、被告会社は不法行為責任を負わない。

三  争点

1  本件ワラント購入の勧誘行為は適合性の原則に違反し違法であったか否か。

2  本件ワラント購入の勧誘行為は説明義務に違反し違法であったか否か。

3  本件ワラント購入の勧誘行為は断定的判断の提供に当たり違法であったか否か。

4  本件ワラント購入の勧誘行為は押付販売、欺瞞的勧誘に当たり違法であったか否か。

5  本件ワラント購入の勧誘行為は回転売買(過当売買)に当たり違法であったか否か。

6  本件ワラント購入の勧誘行為は過大なマークアップ・暴利行為に当たり違法であったか否か。

7  本件ワラント購入後、被告らに、損害拡大の放置、助言義務違反として違法な点があったか否か。

第三争点に対する判断

一  前記争いのない事実、証拠(各項末尾掲記の各証拠、弁論の全趣旨)によれば、次の各事実が認められる。

1  原告X1関係

(一) 原告X1の属性、投資経験等

原告X1は、大正一一年生まれであり、平成二年一月当時、六七歳であった。原告X1は、平成五年ころまでa株式会社(以下「a社」という。)の、平成元年ころまでb株式会社(以下「b社」という。)の各代表取締役の地位にあり、平成元年ころには、少なくとも三、四〇〇〇万円の年収がある資産家であった。

原告X1は、昭和五八年ころより、被告会社の難波支店、堺支店及び大阪支店において、原告X1、a社及びb社名義の各取引口座を開設し、現物株式、転換社債、投資信託、債券等の売買を内容とし外国証券を含む証券取引を始めた。右証券投資の資金には、原告X1及び右各会社の余剰資金が充てられ、平成元年一二月ころの被告会社に対する投資総額は、個人名義で約四、五〇〇〇万円、a社名義で約五、六〇〇〇万円であり、原告X1は、一度に五〇〇〇万円の投資をしたこともあった。右取引において、原告X1は、被告担当者と相談しそのアドバイスに従ったところ、損失を受けたという経験もしており、また、約一一〇〇万円の投資をして、約四か月間で五〇〇万円以上の損失を受けたこともあった。また、原告X1は、基本的には被告会社の従業員から勧誘されたものを購入していたが、自ら銘柄を指定して取引をすることも相当あり、自発的に、株式のいわゆる「ナンピン買い」をしたこともあった。なお、原告X1は、信用取引をした経験はなかった。

原告X1は、新聞や、被告会社から購入した「ファミコントレード」を通じて株価の動きを把握しており、堺支店も頻繁に訪れ、被告会社から野村総合研究所の情報資料や会社四季報を入手し、あるいは被告会社主催の講演会に出席するなどして、右取引の参考にしていた。また、原告X1は、被告会社から送られてきた書類には目を通し、必要なものは綴ることを習慣としていた。

(甲イ一、乙イ一、二の1ないし3、三、四、一八、原告X1本人、被告Y1本人)

(二) 本件ワラント取引に至る経過

被告Y1は、平成元年一一月に堺支店に転勤となり、前任者から引継ぎを受け、原告X1の担当者となった。被告Y1は、ベルリンの壁の崩壊等の世界情勢を受けて、原告X1に対し、ドイツ株等の購入を勧誘し、原告X1は、平成元年一二月二七日にa社名義でジャーマニーファンドを二一二三万六三二五円で、平成二年一月五日に同社名義でジーメンス株を二五八七万九二一八円で、同月九日に原告X1個人名義でダイムラーベンツ株を一四七四万八三一四円で、それぞれ購入した。右のうちジャーマニーファンドは、原告X1の指示で平成元年一二月二九日に売却され、五六一万七七七一円の利益が出た。なお、その後、被告Y1が、原告X1に対し、ジーメンス株等の追加購入を勧めたところ、原告X1は、値段が高いのではないかと言い、購入を断ったことがあった。

また、原告X1は、平成二年一月一二日、ダイムラーベンツ株の受渡しの際、外国証券取引口座設定約諾書(乙イ五)に署名捺印し、被告会社に提出した。

(乙イ三ないし五、一七、被告Y1本人)

(三) ワラント取引における勧誘及び説明内容等

(1)① 平成二年一月一一日の夕方、被告Y1は、原告X1の自宅に電話し、東西ドイツの統一等の相場環境からすると商社株が有望であること及びワラントの方が株式よりも投資効率がよいことから、三井物産ワラントの購入を勧めた。それに対し、原告X1は、商社株が有望であることについては同意したものの、ワラントについては、「ワラントは危険が大きいものと聞いている。ワラントの投資はどうかな。」という反応を示したため、被告Y1は、原告X1に対し、ワラントは、新株引受権付社債から分離されたもので、ワラント取引はその新株引受権の売買であること、ワラントは一定の期間である権利行使期間内に、一定の価格である権利行使価格をもって、発行企業の新株を引き受ける権利であること、ワラント価格は株価の上下の動きに連動し、より大きく動くギアリング効果があること、権利行使期限を過ぎると、経済的な価値がなくなること、三井物産ワラントは外貨建ワラントであり、為替の影響も受けること、ワラント価格は額面に対するパーセンテージで表され、それをポイントという用語で表示すること、当日の三井物産の株価は一三二〇円であり、三井物産ワラントの権利行使価格は一一三八円であること、三井物産ワラントの権利行使期限は平成五年一月二二日であることなどをそれぞれ説明し、一〇〇〇万円以上の投資の場合ドルによる買い付けができて有利であることから、一〇〇〇万円ほどの投資を勧めた。原告X1は、被告Y1の説明を聞き、一〇〇〇万円強の三井物産ワラントを購入することとし、当時保有していた東洋信託銀行の転換社債とトヨタ自工、安田火災、日本郵船の端株を売却して、右購入代金に充てることとした。この電話に要した時間は、約二、三〇分であった。

そして、被告Y1は、翌一二日の午前九時ころ、三井物産ワラントの正確な単価を確認した上で、再び原告X1宅に電話し、単価が三一・五ポイントであること及び購入代金に充てる転換社債及び端株の概算売却金額を伝え、前記第二の一3(一)(1)記載のワラント取引につき確認の約定を取り、執行した。

翌一三日、被告会社は、原告X1に対し、「三井物産ワラント五〇〇〇ドル、数量44、単価31・50%、償還日平成五年一月二二日」といった記載のある取引報告書(甲イ四の1)を原告X1に送付した。また、右ワラントの受渡日は、平成二年一月一八日であった。

(甲イ四の1、乙イ三、九、一七、被告Y1本人)

② (証拠判断)なお、原告X1は、右のころ被告Y1より電話で二回ワラントの勧誘を受けた事実はあるが、最初の電話の際には、ワラント債は分からないから嫌だという返答をして断り、一分も経たないうちに電話を切り、二回目の電話は、その翌日a社において会議をしていた際にかかってきたものであり、その際に、被告Y1が「とにかく買ってください。損はさせません。転換社債と同じようなものです。」としつこく勧めるので、会議中であったことや、直前のジャーマニーファンドの取引で利益を得ていたことから、仕方がなく購入を承諾した旨供述する。

しかしながら、前記(一)及び(二)で認定したところによれば、原告X1は、積極的に情報を収集した上で、ある程度自己の判断で投資活動を行っていた者であると認められるところ、そのような者が、前日に「ワラントは分からない。」と言って勧誘を断ったにもかかわらず、翌日何の説明も求めずに、会議中にかかってきた電話によってワラントの購入を了承するとは考え難く不自然であること、原告X1が従前の株取引等で損失を受けた経験があることなどに鑑みれば、被告Y1が「損はさせません。」と説明し、原告X1がそのような説明をにわかに信用することも考え難いこと、後記(2)で認定するように、原告X1は、平成二年一月二四日にワラント取引に関する説明書の交付を受け、同月二六日には「コウシキゲン5・1・22」の記載があるワラント預かり証の交付を受けており、説明書の交付の際には被告Y1から重ねてワラントについて説明を受けているが、ワラントの説明が不足しているなどの異議を全く述べておらず、かえって「ワラントに関しては理解している。」旨述べていること、右供述においては、当然行われたはずである購入代金に関するやり取りについて何ら触れるところがないなどその信用性に疑問な点があること、他方、被告Y1が、銘柄として商社が有望である旨勧め、原告X1がそのことに同意したことは、前記(二)で認定したドイツ株の取引の経緯からすれば自然であるし、被告Y1は、翌日の午前九時に原告X1宅に電話した理由につき、営業上前日に購入の確認を取っていたものを延ばすことは考えられない旨供述しており(被告本人Y1一八回九丁以下)、右供述は合理的であって信用できることなどからすれば、結局、被告Y1の供述に比して、原告X1の供述は採用できない。

(2)① 平成二年一月二四日、被告Y1は、a社に原告X1を訪ね、原告X1に対し、ワラントの概要、ワラントには行使期間があり期間中に行使しないとワラントの経済価値がなくなること、ワラントは株式の数倍の早さで動くという特徴があるハイリスク、ハイリターンの商品であることなどが記載されたワラント取引に関する説明書(乙イ六とほぼ同様のもの。以下「説明書」という。)を交付した上で、説明書に基づき、ワラントの仕組みと内容について説明を行った。その際に、原告X1は、「ワラントに関しては理解している。」旨述べ、何らの異議を言わずに、右説明書末尾にミシン目で綴じられている「ワラント取引に関する確認書」(乙イ七)に署名捺印して提出した。また、同月二六日、原告X1は、被告会社より、「コウシキゲン5・1・22」の記載があるワラントの預かり証の交付を受けた。

(乙イ六、七 九、一七、被告Y1本人)

② (証拠判断)なお、原告X1は、被告会社より説明書の交付を受けたことや、被告Y1から説明書に基づき説明を受けた事実はない旨供述する。

しかし、原告X1が署名捺印している右確認書には、「私は、貴社から受領したワラント取引に関する説明書の内容を確認し」た旨読みやすい位置に記載されており、原告X1は右記載を読み、その内容を了解した上で署名捺印を行ったものと認められるから、原告X1は説明書の交付を受けたものと認めるのが相当である。

また、前記(1)で認定したとおり被告Y1は原告に対し電話での説明をしているものの、ワラントが複雑な商品であることを考えれば、重ねて説明書に基づき説明をしたとしても不自然ではないし、右で述べたとおり、原告X1は説明書の交付を受けているのであるから、交付を受けたこと自体を否定する原告X1の供述よりも、説明書を交付し、その説明書に基づき説明を行ったとする被告Y1の供述の方が信用できる。

よって、原告X1の右供述は採用できない。

(3) 原告X1は、平成二年一月五日にa社名義でジーメンス株(ドイツ株)を買い付けて以後、その価格が新聞にもファミコントレードにも掲載されないため、ファクシミリによってその価格を連絡するよう被告会社に依頼し、被告Y1は、ほぼ毎日これを履行していた。そして、同月一二日にワラントを買い付けた後は、ワラント価格も新聞等に掲載されないことから、原告X1は、同じ用紙で日々のワラント価格の連絡を受けていた。また、この他にも、被告会社は、平成二年二月末日から三か月ごとに、ワラントの保有顧客に対して、保有ワラントの時価を「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面(乙一五の1)によって通知するシステムを採用し、原告X1にも同月二八日を作成基準日とするものを手初めとして以後継続的に送付しているが、右書面の裏面には、ワラントの意味・価格・変動や危険性について説明、解説がなされている。

三井物産ワラントの価格は、同年三月ころにかけて急落し、その後やや回復した時期もあったが、同年七月ころには、再び一三ポイントくらいまで下がった。原告X1は、これ以上は下がらないと考え、自らの判断で、ナンピン買いをすることとし、被告Y1に「これだけ下がったんだから買ってもいいのではないか。」と言い、被告Y1もそれに同意見である旨言ったため、同月二三日に売却していたタンデムファンドの売却代金の一部を充てて、同月二五日、前記第二の一3(一)(2)記載のとおり三井物産ワラントを購入した。

(甲イ一、八、乙イ一〇、一一ないし一四、一五の1ないし3、一六、一七、一九、原告X1本人、被告Y1本人)

2  原告X2関係

(一) 原告X2の属性、投資経験等

原告X2は、昭和六年生まれであり、c高等学校を卒業後、就職経験を持たないまま、d大学を卒業したC(以下「C」という。)と結婚した。Cは、e株式会社(以下「e社」という。)の経営者であり、原告X2はe社の名目上の取締役である。また、原告X2は、X2家において所有しているマンションからの賃料収入を管理しており、X2家には右収入やe社の報酬等の資産があった。X2家の資産運用については専ら原告X2が行い、法人であるe社の資産運用についてはCが行っていた。なお、原告X2の自宅と、e社の本社事務所の建物とは、隣り合っている。

原告X2は、三〇年ほど前、義兄の知人の外務員に勧められて、大阪屋証券で少しばかり株式を購入した経験があったが、しばらくして株式購入を辞め、それ以降は昭和六一年の今回の取引まで株取引は行っておらず、また、信用取引を行った経験も全くなかった。他方、Cは、昭和五〇年代前半ころ、業者の口車に乗って金の海外先物取引を行い、数百万円の損を出し、詐欺で警察に届出をしたことがあったが、証券取引の経験は従前は全くなかった。

(甲八九、甲ロ一、乙ロ一八、証人C、原告X2本人)

(二) 取引経過等

(1) D(以下「D」という。)は、昭和五七年に被告会社に入社し、神戸支店に営業課従業員として在籍していた者であるが、昭和六一年七月ころ、原告X2から被告会社に対し資料請求がなされたことから、原告X2宅を訪問した。Dは、原告X2に対し、一〇〇〇万円くらいの資金によるポートフォリオ運用(複数銘柄の株式に分散投資をすることにより、リスクを軽減させるという投資理論に基づき、毎月又は二か月に一回、複数銘柄をパックで買い付ける運用)による投資を勧めたところ、原告X2は、八〇〇万円くらいで検討する旨返答し、結局、同月一四日、原告X2は、Dが勧めた四銘柄(呉羽化学等)を計八〇〇万六一〇七円で購入した。その後、原告X2は、Dの勧めにより、同年八月一一日に、右四銘柄を計八一三万四六〇一円で売却し、一二万八四九四円の利益を得、同日新たに六銘柄(鹿島建設等)の株式を計七三六万二四五七円で購入した。原告X2は、Dの勧めにより、同年九月一〇日、右六銘柄を計八六四万九七八四円で売却し、一二八万七三二七円の利益を得、同日新たに五銘柄(大成建設等)の株式を計八五八万五四七二円で購入した。右購入資金には、主に賃貸マンションの収入等を元に蓄積していた資金が充てられた。

(甲ロ二、乙ロ一の1、一四、一八、証人D、原告X2本人)

(2) Dは、前項記載のポートフォリオ運用により利益が出ていることもあって、それ以外の取引も勧めることとし、昭和六一年八月二〇日、原告X2宅において、原告X2に対し、大成建設の転換社債五〇〇〇万円分の購入を勧めたところ、原告X2は、法人であるe社でないと資金を調達できない旨述べ、CをDに紹介した。そして、同日、e社は大成建設の転換社債を五〇〇〇万円分購入し、これにより、e社と被告会社との間の取引が開始した。また、同日、原告X2は、東京ガス二万株を一九一六万二五〇〇円で購入した。

その後、e社(C)は、Dの勧めにより、被告会社との間で、一度に四〇〇〇万円を超える取引を同年九月中に一〇回行ったのを初め、多額の取引を継続的に頻繁に行い、同年一〇月一日からはほぼ数千万円単位の信用取引も開始し、これを継続した。また、同年九月二四日、熊谷組外貨建ワラントを五九九万四四五〇円で購入し、二日後に売却し、一九五万三九九二円の利益を出し、その後も、同年一一月一三日に積水ハウスワラントを購入し、同年一二月一〇日売却して一六万円ほどの損失を受けるなど、数度にわたって、ワラント取引を行った。右ワラント取引の際、Dは、Cに対し、ワラントは値動きが大きいなどの、ワラントについての概略の説明をした。なお、Dは、同年夏ころからワラントの顧客への勧誘を始めたが、このころまでに三回にわたり計三時間くらいの勉強会でワラントの学習をしていた。

他方、原告X2は、同年一二月までの間に、前記ポートフォリオ運用による株の取引のほかにも、転換社債の取引を行うなどした。右転換社債は、原告X2が、買い付けた株が一時的に値下がりしたような場合に、Dに対し、新発の転換社債を希望したため、Dが、その要望に応じて勧めたものであり、原告X2は、転換社債についての一応の理解はあり、安全なものであると認識していて、、右投資のために預金を担保にして銀行から一〇〇〇万円の金を借り入れたこともあった。そして、原告X2は、慎重な性格で、自ら取引銘柄を指定したりするようなことはなく、Dの進めるままに証券取引を進めていった。

また、原告X2は、e社と被告会社との間の証券取引については、あまり把握しておらず、e社が信用取引やワラント取引を開始したことは知らなかった。Cも、原告X2と被告会社との間の証券取引については、十分な認識がなく又余り知ろうともしなかった。これらの事情については、証券会社の担当者も認識していた。

(甲八九、甲ロ一、二、四、六、二二、乙ロ九、一〇、一六ないし一八、証人D、証人C、原告X2本人)

(三) ワラント取引における勧誘及び説明内容等

(1)① 昭和六二年一月から同年三月にかけて、原告X2は、Dに対し、新発の転換社債の配分を希望していたが、Dは、それに代わるものとして、投資効率と銘柄がよい神戸製鋼所ワラントを勧めることとした。なお、当時の相場状況は好調であり、神戸製鋼所ワラントについても、Dは、利益が取りやすいものであり、当然儲かるという予想を持っていた。

そして、Dは、同年三月四日、原告X2に電話をして、原告X2に対し、「儲かるものがありますからちょっとやりませんか。」と神戸製鋼所ワラントを勧めた。そして、同日、Dは、原告X2宅を訪れ、原告X2に対し、ワラントというのは新株を引き受けることのできる権利であること、ハイリスク、ハイリターンで株と対比して三倍程度の値動きの激しさがあること、行使期限が来れば権利の売買であるので無価値になること、ワラントについては新聞に値段が載っていないので被告会社に電話で聞いてほしいことなど、ワラントについての概略的な事柄を口頭で説明した後、直ちに引き続いて神戸製鋼所ワラントの有利性を特に強調した。当時、原告X2は、ワラントについての基礎知識は有しておらず、右説明は口頭で行われ、説明資料などは、当時顧客用のものが作成されていなかったこともあって、用いられなかった。そこで、原告X2は、右ワラントの有利性についての印象のみが残り、右説明がなされたときに、原告X2は、特に質問等はしなかった。

また、被告会社は、その取引開始基準として、女性によるワラント取引は原則として禁止する旨定めていたため、このころ、Dは、原告X2に対し、夫のC名義で取引をするように勧めた。もっとも、Dは、何故女性によるワラント取引が原則的に禁止されているかについての説明はしなかった。それに対し、原告X2は、息子のB名義で取引をするように提案し、結局、原告X2は、B名義で神戸製鋼所ワラントを購入することとなった。原告X2は、同月六日、右ワラントを、Dの勧めにより売却し、一〇〇万五九六八円の利益を得た後である、同年三月九日、原告X2は、総合取引申込書(乙ロ四)にB名義で署名し、被告会社に渡した。

同年四月末ころ、原告X2が買ったX2家の証券を、Cがe社の信用取引の代用証券に振り替えたことから、原告X2は、e社が信用取引をしていることを初めて知った。原告X2は、信用取引は大変に危険なものと認識していたので信用取引を嫌悪していたことと、X2家の財産を会社の財産に流用する形になったことから、激怒してCに対し、「会社を潰す気か。」などと言って大喧嘩をするに至った。原告X2は、Cに対し、信用取引をやめるように迫ったが、その後も、Cは、信用取引を継続し、この喧嘩の後は、証券取引についての話は、Cの方からはほとんどしないようになった。

その後、原告X2は、Dの勧誘により、B名義で、別紙原告X2ワラント取引一覧表2ないし6記載のとおりのワラント取引を行った。

また、原告X2は、森精機ワラントを購入した同年一〇月七日、被告会社から、ワラントの概要、ワラントには行使期間があり期間中に行使しないとワラントの経済価値がなくなること、ワラントは株式の数倍の早さで動くという特徴があるハイリスク、ハイリターンの商品であることなどが記載された説明書(乙ロ七)の交付を受け、右説明書の末尾に綴じ込まれた「ワラント取引に関する確認書」(乙ロ八)にBの名で署名し、被告会社に渡した。また、右に先立つ同年九月八日、Cも、右とほぼ同じ内容の説明書(乙ロ一二)の交付を受けた。なお、被告会社が顧客に交付するための説明書を作成したのは、同年九月ころのことであった。

(甲八九、甲ロ一、四、六ないしないし一五、一八、証人D、証人C、原告X2本人)

② (証拠判断)なお、原告X2は、右のワラント購入の経緯につき、Dから、電話で勧められて購入したのであり、それ以上ワラントについての説明はなく、ワラントという商品名もはっきり言われなかった旨供述する。しかし、証券会社の営業担当者が、商品名すらはっきり口にせずに購入を勧め、転換社債については一応の理解を有し、新発の転換社債を要求するなどしていた原告X2が、一〇〇〇万円近い額の投資を行うに際して、その商品名が何であるかの確認すら行わずに購入するということは、いずれも考え難いこと、原告X2は、取引の当初にDから新聞に値段は載っていない旨の説明を受けたことは認めている(甲ロ一)こと、原告X2がB名義で署名している外国証券取引口座設定約諾書(乙ロ六)の日付が昭和六二年三月四日となっており、その日のうちにDが原告X2宅を訪れた可能性が高いことなどからすれば、原告X2の右供述は採用できない。

更に、原告X2は、説明書の交付を受けた事実を否定し、確認書一枚だけが送られてきてそれに署名した旨供述するが、右確認書には、「私は、貴社から受領したワラント取引に関する説明書の内容を確認し」た旨読みやすい位置に記載されており、原告X2は右記載を読み、その内容を了解した上で署名捺印を行ったものと認められるから、原告X2は説明書の交付を受けたものと認めるのが相当であり、原告X2の右供述は採用できない。

(2) 平成元年五月、原告X2に対する被告会社の担当者がDからE(以下「E」という。)に変わることとなり、EとDは、原告X2及びCに引継ぎの挨拶に行った。この際、原告X2から、Eに対し、X2家のことについては原告X2に、e社のことについてはCに連絡するようにという話があり、Dに対しては、「手数料をたくさんとって。」という苦情が出た。Eは、Dより、原告X2は、損益に厳しく、文句の電話をかけたりするので注意すること、また、比較的利益の出やすい商品を希望してくる人ではあるが、e社との間では大きな取引をしているので、ないがしろにせずできるだけ希望に添うようにした方がよいといった引継ぎを受けた。

原告X2は、Eの勧誘により、Bの口座で、平成元年六月七日にニチレイワラントを購入するなど、別紙原告X2ワラント取引一覧表7ないし11のとおりの取引を行った。そして、同年一一月一日、Eは、被告会社神戸支店で力を入れて勧誘していた東急不動産ワラントを原告X2に勧め、同日、原告X2は右ワラントを購入した。また、Eは、同年一二月一三日、「上場日に売却してはどうか。」などと言って、大阪ガスワラントを勧誘し、同日、原告X2は、右ワラントを購入した。Eは、この頃は、頻繁に原告X2に連絡をして、ワラントの価格を伝えていた。なお、e社(C)は、同年一二月ころを最後に、Eが勧誘をしても、被告会社との間で、新規の取引をほぼ行わなくなった。

(乙ロ一ないし一八、証人D、証人E、証人C)

(3) 平成二年八月半ばころ、Eは、原告X2が頻繁にワラントが値下がりしたことについての苦情を言ってきたことから、被告会社神戸支店の営業課長をしていた上司であるF(以下「F」という。)とともに原告X2宅を訪れ、原告X2に対し、ワラントが値下がりしている理由などにつき、ワラントのリスクなども含めて、長時間にわたって、ワラントの理論価格、権利行使価格等が記載されている一覧表などを示しながら説明をした。

その後、Eは、同年八月二七日、Fとともに、原告X2宅を訪れ、B同席の下で、原告X2に対し、富士通ワラントを勧めた。その際、原告X2は、「一〇〇%儲かるのか。」などと質問し、それに対しFは、「一〇〇%ということは有り得ないが、新発なので自信がある。」などと言い、結局、原告X2は、同日、右ワラントを購入した。

また、Eは、同年九月七日、Fとともに、原告X2宅を訪れ、原告X2に対し、イトマンワラントを勧め、翌八日、原告X2は、右ワラントを購入した。イトマンワラントは、しばらくしてから値上がりし、四〇万円ほどの利益を出す状況になったので、Fが原告X2に対し、「四〇万円くらい値上がりしていますがどうされますか。」と言ったが、原告X2は売却しなかった。その後の同月一六日、日本経済新聞にイトマンの不動産投資の問題が載り、イトマンワラントの値段は下がった。

(甲ロ二〇、乙ロ一五、一九、二〇、証人E、証人F、証人C)

3  原告X3関係

(一) 原告X3の属性、投資経験等

原告X3は、昭和四年生まれであり、f株式会社(以下「f社」という。)の従業員であった昭和五二年、熔鉱炉の築造等を業とする株式会社g(以下「g社」という。)に出向し、取締役総務部長として同社の経理を含む総務部門を担当し、その後昭和五九年にf社を退職した後も、g社に平成元年一一月まで勤務した。原告X3は、g社を退職後、h株式会社に入社し、平成三年二月末まで勤務し、その後は貸保管庫業を自営している。原告X3は、f社に三二年間勤め、g社に出向する前の一〇年余りの間は、支店長の地位にあった。

また、原告X3は、g社の代表取締役社長であったGが代表取締役をしており、G家の資産を運用するための会社である有限会社i(以下「i社」という。)の経理を含む総務部門を、昭和六〇年ころから担当していた。

原告X3は、g社に出向していた昭和五五年一〇月、被告会社姫路支店との間で、株取引を初めて行い、その後、昭和六〇年ころまでは、国債を三回購入したほかは、株取引は一度行っただけであった。

原告X3は、昭和五九年にf社を退職した際、約二一〇〇万円の退職金を受領したが、右退職金は、後記(二)及び(三)記載の原告X3の証券取引の資金に充てられた。

(甲ハ一、原告X3本人)

(二) 取引経過等

(1) 原告X3がg社及びi社の経理部門を含む総務担当者として証券取引にも関与していた昭和六一年六月ころ、被告会社姫路支店の営業課長をしていたH(以下「H」という。)が、g社を訪問し、原告X3に会った。同年八月一四日、Hが原告X3に勧めたことにより、三菱重工の転換社債を、i社が一〇〇万円、原告X3個人が一〇〇万円、それぞれ購入し、H担当の、i社及び原告X3個人との取引が始まった。原告X3は、Hの勧めにより、同年一一月一八日、東海リース株を一一〇万円で購入し、同年一二月一日に売却して二七万五六〇〇円の利益を上げた。また、昭和六二年二月からは、H担当の、被告会社とg社との取引も増え始めた。

また、昭和六二年七月二〇日ころ、Hは、原告X3に対し、日本信販ワラントを勧め、その結果、g社は、同月二二日、右ワラント六三五万八八〇〇円で購入した。

その後、原告X3は、主にHの勧めにより、同年一二月ころまでの間に、現物株式、投資信託、転換社債などの取引を行った。

また、原告X3は、同年一二月一五日、g社及びi社の、被告会社との間における有価証券取引代理人になった。

なお、i社は、被告会社神戸支店において、昭和六一年五月ころ、ロームワラントを購入していたが、ロームワラントも含めた被告会社神戸支店の預かり資産は、昭和六三年一一月三〇日、姫路支店に移転された。

(乙ハ三、四、一五、一六、一八、証人H、原告X3本人)

(2) (証拠判断)なお、原告X3は、g社の日本信販ワラントの購入には関わっていない旨供述するが、この点に関するHの供述は具体的であること、原告X3が取引をした日に、g社又はi社も取引をしている場合が散見され(乙ハ一四ないし一六)、また、原告X3がg社における取引についてもHに礼を述べていること(乙ハ一七)などからすれば、g社における証券取引のほとんどは原告X3が窓口であったと認められるので、Hの供述の方が信用できるというべきであり、原告X3の右供述は採用できない。

(三) ワラント取引における勧誘及び説明内容等

(1)① 原告X3は、昭和六一年七月ころ、g社を訪れたHに対し、「神戸支店で買ったロームワラントが随分値下がりしている。これは最後にはただになるだろう。どうしたらよいだろうか。」という相談を持ちかけた。Hは、取引の中心を神戸支店から姫路支店に移してほしいと考えていたため、原告X3に対し、ワラントには行使期限、行使価格というものがあり、最終的に株価が行使価格を上回っていない場合はゼロになってしまうこと、為替も関連すること、値動きも激しいことなどをワラントのリスクを強調して説明した。そして、Hは、ロームワラントの価格、行使期限等を調べた上で、数日後、g社を訪れ、原告X3に対し、ロームワラントが三割ほど値下がりしていたことを伝え、行使期限までにはまだ間があるのでしばらく様子を見てはどうかなどと提言した。

(乙ハ一八、証人H、原告X3本人)

② (証拠判断)なお、原告X3は、右のようなやり取りにつき、記憶がなく、ロームがワラントであるとの認識もなかった旨供述する。しかし、原告X3も、i社がロームという銘柄のものを持っていたという認識があり、Hとの話の中でロームの話題が出たことは認めている(原告X3本人二六回九丁以下)のであるから、ロームという銘柄の商品が何であるかについて、原告X3が認識し、Hとの話の中で言及されたと考えるのが自然であること、原告X3のこの点に関する供述が曖昧であり、Hの供述の方が信用できることからすれば、原告X3の右供述は採用できない。

(2) 前記(二)で述べたとおり、昭和六二年七月二〇日ころ、Hは、g社との取引として、原告X3に対し、日本信販ワラントを勧め、その際に、右ワラントの行使価格、行使期限、単価、為替などを説明した。

(乙ハ一八、証人H)

(3)① Hは、昭和六二年一二月二〇日、原告X3に対し、電話で、住友建設ワラントを勧めた。原告X3は、住友建設ワラントの単価が高いという理由で最初は躊躇していたが、Hが、ワラントは単価が高い方が株価との連動性が高くて資金効率もよい旨説明したところ原告X3は納得し、結局、同日、右ワラントを二八〇万九七七〇円で購入した。右電話の時間は、一〇分から一五分ほどであった。

(乙ハ一八、二〇、証人H)

② (証拠判断)なお、原告X3は、住友建設ワラントにつき、ワラントだとは思っていなかった旨供述するが、昭和六三年八月三一日に被告会社に送付された原告X3の署名捺印がある、預かり証券と預かり金銭の照会状に対する「回答書」(乙ハ二〇)には、「スミトモケンセツワラント、数量一二ワラント」という記載があり、原告X3はそれを確認した上で、署名捺印をし、被告会社に返送し、特段異議も述べていないことが認められるので、原告X3の右供述は到底採用できない。

(4)① 原告X3は、被告会社より、昭和六三年二月一五日、ワラントの概要、ワラントには行使期間があり期間中に行使しないとワラントの経済価値がなくなること、ワラントは株式の数倍の早さで動くという特徴があるハイリスク、ハイリターンの商品であることなどが記載された説明書(乙ハ八)の交付を受け、右説明書の末尾に綴じ込まれた「ワラント取引に関する確認書」(乙ハ九)に署名し、被告会社に渡した。

(乙ハ八、九、証人H)

② (証拠判断)なお、原告X3は、右説明書の交付を受けた事実はなく、確認書に署名をしたのは、平成三年一一月二〇日である旨供述するが、後記(7)で述べるように右供述は採用できない。

また、原告X3は、Hが担当者である間、Hに対し、何度もワラントの説明書を持ってくるように顔を見るたびに要求したが、その都度言を左右にされ、結局説明書の交付を受けることがなかったとも供述するが、右のように昭和六三年二月に説明書の交付を受けている上、営業課長であるHが、顧客の執拗な要求に応えないということは常識的に考え難く、採用できない。

(5) 昭和六三年一一月三〇日以降、原告X3は、Hの勧誘により、別紙原告X3ワラント取引一覧表2ないし5のとおりのワラント取引を行い、すべてのワラントにおいて利益を出した。

(6)① 平成元年五月ころ、Hが姫路支店から転勤することとなり、後任の営業課長であるI(以下「I」という。)が、原告X3、i社及びg社の担当者になった。

原告X3は、Iの電話による勧誘により、同年八月一日以降、別紙原告X3ワラント取引一覧表6ないし21のとおりのワラント取引を行った。なお、右ワラント取引は、別紙原告X3ワラント取引一覧表備考欄記載の通り、あるワラントの売却代金で、次のワラントを購入する形で行われた。

なお、被告会社は、原告X3が神戸製鋼ワラントを購入した直後である平成二年の初めころから、原告X3に対し、原告X3が保有しているワラントの銘柄、権利行使期限、ワラント数、購入時の明細及び時価評価などを記載した「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面(甲ハ六の1ないし3)を送付するようになった。

(甲ハ二、六の1ないし3、証人I、原告X3本人)

② (証拠判断)なお、原告X3は、日商岩井ワラントの売却及び伊藤忠商事ワラントの購入は無断でなされた旨供述するが、原告X3が特段異議を述べずその後も不二越ワラント等の購入を行っていること、後記(8)①で認定するように、原告X3が、平成三年一一月二〇日、伊藤忠商事ワラントも含めた残高承認書(乙ハ一三)に署名捺印をしていることなどからすると、原告X3の右供述は「必ず事前に本人の意思を確認して商いは執行した。」旨のIの供述(証人I・二五回六丁)に比して採用できない。

また、原告X3は、Iから、神戸製鋼ワラントの時は「必ず儲かるから。」、日本酵素ワラントとの時は「必ず儲かり神戸製鋼ワラントの損を取り戻せます。」と、それぞれ断定的な判断の提供を受けた旨の供述をするが、多少有利性を強調した事実があるにせよ、既にワラント取引による損失を受けた経験も有する(大和ハウス工業ワラント等)、原告X3に対し、Iが「必ず儲かる。」旨言って勧誘をするとは考え難く、Iの供述に比して採用できない。

(7)① 平成三年七月一九日、Iは、原告X3に、電話でグラフテックワラントの購入を勧誘し、右ワラントの権利行使価格などを伝えた。原告X3は、ワラント取引により受けた損失を補填する趣旨でIが勧めてくれているものと考え、特に質問もせずに、被告会社に預けていた株式を売却し、右ワラントを三一四万七四六二円で購入した。

なお、右グラフテックワラントの権利行使期限は平成六年一月一八日であり、購入時の株価は一九六〇円、権利行使価格は三七六〇円であって、被告会社は原告X3に七ポイントでこれを売却したものであり、パリティはマイナス四九・四四ポイント、プレミアムは五六・四四ポイントであった。

(甲ハ一、四の4、五の4、七、八、証人I、原告X3本人)

② (証拠判断)なお、原告X3は、右の勧誘の際にも、「短期間で必ず儲かるのがある。」旨断定的判断の提供を受けた旨供述するが、(6)②で述べたのと同じ理由で、採用できない。

(8)① 平成三年一一月ころ、被告会社は、原告X3に対し、社団法人日本証券業協会及び被告会社が作成した「外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書」など(甲ハ三)を送付し、原告X3はそれを読んだ。

他方、Iは、平成三年一一月に、蒲田支店へ転勤することになったため、同月一一月二〇日、原告X3に姫路支店に来てもらい、原告X3に対し、残高承認書(乙ハ一三)への署名捺印を求めた。その際、原告X3は、ワラントが値下がりしていることについて苦情を述べたが、結局、署名捺印をした。

(甲ハ三、乙ハ一三、証人I、原告X3本人)

② (証拠判断)なお、原告X3は、前記(4)①記載の「ワラント取引に関する確認書」(乙ハ九)に署名したのは平成三年一一月二〇日であり、右確認書はHではなくIに渡しており、右確認書に記載されている「説明書」というのは、少し前に送付された「外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書」(甲ハ三)であると思っていた旨供述する。しかし、乙ハ九号証の日付、送信月日、担当社印がいずれも昭和六三年二月一五日に原告X3が署名捺印をしたことを示していること(担当社印につき、証人H)、切り取り線があり、その大きさからしても甲ハ三号証の説明書には対応していない確認書を一枚だけ出されて、原告X3が署名することは考え難いこと、原告X3が平成三年一一月二〇日に署名捺印していることが明らかな残高承認書(乙ハ一三)と混同しているおそれがあること、原告X3は、g社に在籍していた昭和六三年には乙ハ九号証になされているような署名はしておらず、乙ハ二号証及び同六号証の書面になされているような署名をしていた旨供述するが、昭和六三年八月三一日に被告会社に送付された書面(乙ハ二〇)には乙ハ九号証になされているような署名がなされており、原告X3の署名に関する供述は不合理であること、原告X3は、Iとはg社で会った旨供述し、当時の手帳(甲ハ九)に、「5時すぎ野村/姫路」という記載があるが、原告X3がその時間に被告会社姫路支店を来訪するという趣旨にもとれることなどからすれば、Iの供述と対比して、原告X3の供述は採用できない。

二  ワラントの特質について

1  前記争いのない事実、証拠(甲二ないし四、五八の1、甲ハ三、乙イ六、乙ロ七、一二、乙ハ八、一一、弁論の全趣旨)によれば、ワラントは、次のような性質を有していることが認められる。

(一) ワラントは、一定の権利行使期間内に一定の権利行使価格で一定の数量の新株を引き受けることができる権利であり、ワラントを有する者は、その発行会社の株価が権利行使価格を上回っている場合には、ワラントを行使することにより、市場でその銘柄の株式を購入するのに比べ割安にこれを取得することができるが、株価が権利行使価格を下回っている場合には、これとは逆にワラントを行使することが経済的に無意味になる。したがって、ワラントは、まず、新株引受権を行使して得られる利益相当額、すなわち、株価から権利行使価格を差し引いた額に引受株数を乗じた額(パリティ)の価値を有するが、実際の取引においては、権利行使期間の終期までの株価の上昇を期待して、右のパリティに株価上昇の期待値(プレミアム)が付加された価格で取引されており、ワラントの価格はパリティにプレミアムを付加した金額である。そして、株価が権利行使価格を下回っている場合でも、市場において、権利行使期限の終期までに株価が上昇して権利行使価格を上回る可能性があるという期待感がある限り、プレミアムが存しワラントが価値を有することになる。

また、ワラントは、権利行使期間が経過すれば無価値になる。

(二) ワラントの価格は、一般的には発行会社の株価の変動に応じて上下するが、右の価格にはプレミアムの部分もあるため、株価の変動と必ずしも連動しない場合もあり、複雑な要因による値動きをする。特に、ワラントは権利行使期間が経過すれば無価値になるから、権利行使の残存期間の長短は、プレミアム価格形成の大きな要因となりうるものであり、株価が権利行使価格を下回ったまま、権利行使の残存期間が僅かになれば、その間の株価上昇期待分が少なくなるだけ、価格が下がり、その売却も困難になるし、権利行使期間内において、株価が権利行使価格を下回ったまま権利行使期間を経過することが確実になったときは、ワラントは無価値になる。また、外貨建ワラントの価格は、為替変動による影響を受けることもある。

そして、ワラントの価格の変動は、株価の変動に比べて数倍大きくなる傾向があり(ギヤリング効果)、投資金額に比して高い利益を得る可能性がある反面、激しく値下がりする危険性もあり、場合によっては投資金額の全額を失うこともある。しかも、前記のとおり権利行使期間が経過すれば無価値になることから、ワラントは、同額の資金で株式の現物取引を行う場合に比べて、ハイリスク・ハイリターンな特質を有する商品である。

(三) ワラント取引において利益を得る方法としては、①ワラント自体を購入価格以上の価格で売却する方法、②実勢株価が権利行使価格を超えて十分に高い水準になったとき、ワラントを行使して新株を取得した上、これを売却する方法、の二通りの方法がある。

2(一)  なお、原告らは、ワラントの特質、危険性として、外貨建ワラントは、市場外で、店頭取引、相対取引として売買されるので、その価格決定過程が極めて不明朗であり、証券会社による恣意的な操作が行われやすい特質を有している旨主張する。しかし、本件で問題となっているワラント取引において、原告らが主張するような価格の恣意的な操作が行われたことを認めるに足りる証拠はないから、原告らの右主張は採用できない。

(二)  また、原告らは、外貨建ワラントの特質、危険性として、価格開示が不十分であると主張する。しかし、先に認定したとおり、原告X1は、被告会社からほぼ毎日のように書面でワラント価格の連絡を受けていたこと、原告X2は、Eらから電話でワラント価格を聞いていたこと、原告X1及び原告X3は、平成二年の初めころから、被告会社より、ワラントの時価評価などを記載した「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面の送付を受けていたことなどの事実が認められ、これらの事実によれば、顧客は、被告会社からいつでもワラント価格の情報を得ることができたことが認められるから、原告らの右主張は採用できない。

三  証券取引の勧誘における証券会社等の義務

一般に、証券投資は、本来危険を伴うものであって、証券会社から提供される情報等も経済情勢や政治状況等の不確定な要素を含む将来の見通しの域を出ないのが実情であり、投資者自身において、当該取引の危険性とそれに耐えうる財産的基礎を有するか否かを自ら判断して、自己の責任において行うべきものである(自己責任の原則)。

しかしながら、証券会社が法律により証券業を営むことを許されていて、証券市場を取り巻く政治、経済情勢はもちろん、証券発行会社の業績、財務状況等について高度の専門的知識、豊富な経験、情報等を有する上、一般投資家との取引を通じ手数料などの形で利益を上げている一方で、多数の一般投資家が証券取引の専門家としての証券会社の推奨、助言等を信頼して証券市場に参入している状況の下においては、このような投資者の信頼が十分に保護されなければならないというべきである。

そして、証取法五〇条一項一号、六号(平成三年法律第九六号による改正前の五号)、一五七条二号(平成四年法律第七三号による改正前の五八条二号)及び健全性省令二条一号(平成三年大蔵省令第五五号による改正前の一条一号)が、証券会社等による断定的判断の提供、虚偽の表示又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示等を禁止し、本件の各勧誘当時の通達(昭和四九年一二月二日蔵証第二二一一号大蔵省証券局長通達「投資者本意の営業姿勢の徹底について」)が、証券会社の投資勧誘に際しては、投資者の意向、投資経験及び資力等に最も適した投資が行われるよう十分配慮すること(適合性の原則)、特に、証券投資に関する知識、経験が不十分な投資者及び資力に乏しい投資者に対する投資勧誘については、より一層慎重を期することなどを要請し、日本証券業協会が定めた公正慣習規則第九号が、ワラント取引などの一定の危険性の高い証券取引にかかる契約を締結しようとするときは、顧客に対し、あらかじめ所定の説明書を交付し、当該取引の概要及び当該取引に伴う危険に関する事項について十分説明するとともに、取引開始に当たっては、顧客の判断と責任において取引を行う旨の確認を得るため、顧客から確認書を徴求するものとすると規定しているのも、前記の観点から投資者の保護を図ったものといえる。

もっとも、これらの法令、通達、協会規則等は、公法上の取締法規又は営業準則としての性質を有するものであり、これらの定めに違反した行為が私法上も直ちに違法と評価されるものではないが、これらの法令等は、多数の一般投資者が証券会社の推奨、助言等を信頼して証券取引を行っているという状況の下で、投資者の信頼を十分に保護するために制定されたものであるから、証券会社やその使用人は、投資者に投資商品を勧誘する場合には、投資者が当該取引に伴う危険性についての的確な認識を形成するのを妨げるような虚偽の情報又は断定的判断等を提供してはならないことはもちろん、投資目的、投資経験、財産状況等に照らして明らかに過大な危険性を伴う取引を積極的に勧誘することを回避すべき注意義務を負うというべきであるし、また、取引に伴う危険性が高い投資商品を投資者に勧誘する場合には、信義則上、特段の事情のない限り、当該商品の概要を説明した上で、投資者の職業、年齢、財産状態、投資経験、投資目的等の具体的状況に応じて、投資者が当該取引に伴う危険性について的確な認識を形成するに足りる情報を提供すべき注意義務(説明義務)を負うというべきであり、証券会社等がこれらの義務に違反して投資勧誘に及んだと判断されるときは、右勧誘行為は私法上も違法となるといわなければならない。

四  争点1(本件ワラント購入の勧誘行為は適合性の原則に違反し違法であったか否か)について

原告らは、一般個人投資家は、そもそも外貨建ワラントにつき適合性を有しておらず、特別な事情が認められない限り、一般個人投資家への積極的勧誘によるワラント取引は適合性の原則に反し違法である旨主張するので検討する。

確かに、ワラントは、値下がりする場合には下落幅が大きく、場合によっては投資金額の全額を失う危険性もあり、かつ、権利行使期間が経過すれば無価値になる点で、同額の資金で株式の現物取引を行う場合に比べてハイリスクな特質を有する。しかし、他方、ワラントは、法令上その売却が是認されており、購入勧誘を禁止する法令も存しない上、値上がりする場合は株式の数倍の値上がりをしてハイリターンを期待することもできる商品であり、かつ、危険性に関しても損失は最大で投資金額に限定されるもので、投資商品としての合理性を有するということができる。また、外貨建であるからといって、投資商品として不合理なものであるといえないことは、前記二2で述べたことに照らして明らかである。

したがって、およそ一般的に外貨建ワラントの一般個人投資家への勧誘が原則的に適合性の原則に反し違法であるということはできず、当該一般個人投資家の具体的な職業、年齢、理解力、財産状態、投資目的、投資経験、投資資金の性格等に照らし、外貨建ワラントを積極的に勧誘することが、明らかに過大な危険を伴うものと評価される場合に、適合性の原則違反として、私法上違法と評価されることになるというべきである。

そこで、本件につき検討する。

(一)  原告X1関係

原告X1は、a社及びb社の代表取締役をしていた者であり、ワラントの勧誘を受けたころにも、a社の代表取締役であり、その前年度の年収が少なくとも三、四〇〇〇万円ほどある資産家であって、五年以上の投資経験を有し、自ら積極的に株価等の情報収集を行い、投資資金には会社又は個人の余剰資金を充てていた。また、年齢は六七歳とやや高齢であったが、その理解力に問題があったとは認められない。これらの事実によれば、ワラントへの投資金額等証拠上認められる全事情によっても、原告X1に対するワラントの勧誘につき、それが適合性の原則に違反し違法であるということはできない。

(二)  原告X2関係

原告X2は、ワラントの勧誘を受けたころ、多額の賃料収入等をはじめとするX2家の財産を管理しており、夫のCがe社の経営者であったこともあって、相当の資産を有しており、投資資金には主に賃料収入等の資金が充てられた。また、原告X2は、現物株式の購入を行った経験もあり、被告会社に対し、自ら資料請求を行い、担当者に対し、新発の転換社債を希望するなど、投資意欲も持ち合わせていた。これらの事実によれば、ワラントへの投資金額の他、原告X2に就職経験がないこと等証拠上認められる全事情によっても、原告X2に対するワラントの勧誘につき、それが適合性の原則に違反して直ちに違法であるということはできない。

なお、原告X2が女性であり、被告会社において女性によるワラント取引を原則として禁止する旨の取引開始基準が定められていた事実は認められるが、当該投資者の個別的な属性を除外して、一般的に女性がワラント取引についての適合性を有していないとはいえないから、原告X2が女性であることをもって直ちに適合性原則に違反し違法であると解することはできず、右事情は、後述の説明義務違反の点と相関的に考察すれば足りる。

(三)  原告X3関係

原告X3は、f社の元支店長であり、ワラントの勧誘を受けたころには、g社及びi社の経理部門も含めた総務担当者として、証券取引にも関与していた。原告X3は、f社の退職金を投資資金に充てたが、g社やh株式会社に勤務し、その後貸保管庫業を自営しているのであるから、退職金が生活資金のすべてというわけではなかった。これらの事実によれば、ワラントへの投資金額の他、投資資金の一部に退職金が充てられたこと等証拠上認められる全事情によっても、原告X3に対するワラントの勧誘につき、それが適合性の原則に違反し違法であるということはできない。

(四)  前記(一)ないし(三)によれば、原告らのこの点に関する主張はいずれも失当である。

五  争点2(本件ワラント購入の勧誘行為は説明義務に違反し違法であったか否か)について

(一)  原告らは、本件のワラント取引において、被告従業員から、ワラント取引の危険性や問題点の説明は全くなされておらず、説明義務違反ないし虚偽表示として違法である旨主張するので検討する。

(二)(1)  まず、三で述べたとおり、証券会社は、ワラントのような危険性の高い商品を勧誘する場合には、信義則上、特段の事情のない限り、当該商品の概要を説明した上で、投資者の職業、年齢、財産状態、投資経験、投資目的等の具体的状況に応じて、投資者が当該取引に伴う危険性について的確な認識を形成するに足りる情報を提供すべき注意義務(説明義務)を負う。

そして、二1で述べたワラントの特質、危険性に鑑みれば、株式の取引経験のある原告らに対しては、ワラントの概要とともに、株式にはないワラントの危険性の重要な点として、第一に、ワラントの価格は原則的に株価に比してその数倍の値動きをすること、第二に、権利行使期間を経過するとワラントは無価値になることの少なくとも二点につき、原告らの属性、適合性の程度に応じて、具体的に原告らが十分理解できる程度に説明すべき義務があるというべきである。

(2)  他方、原告らは、被告らにおいて、商品そのものの内容につき、新株引受権であることの具体的な意味、現に勧誘する当該ワラントの権利行使価格、権利行使期限、権利行使による取得株数、権利行使に関する払込代金の額を明示した上、これらに即して権利内容や時価算定方法を具体的に説明する必要があり、また、株価が権利行使価格を下回れば理論価格はゼロとなり、この場合にはプレミアムのみによって価格が形成されることや為替リスクについての説明も必要である旨主張する。しかしながら、権利行使による取得株数や権利行使に関する払込代金の額の不知は購入者に不測の損害を与えるものではないし、権利行使価格、権利行使期限等の具体的数値や、株価が権利行使価格を下回れば理論価格はゼロとなり、この場合にはプレミアムのみによって価格が形成されることや為替リスクの存在などは、ワラントの危険性を認識させる上で必要不可欠のものとまではいえないから、投資者の自己責任の原則に従い、権利内容や時価算定方法も含めて、被告らからワラントの概要及び前記二点の説明を受けたことに基づき、原告らにおいて自ら必要であると判断すれば、被告らに更なる説明を要求すべき事項である。よって、ワラントの概要及び前記二点の説明を的確に行えば、これらの点に関しては、特段の事情がない限り、被告らに説明義務があるとまでは認められないというべきである。

また、原告らは、店頭取引、相対取引であること及びその具体的な意味についての説明も不可欠である旨主張する。しかしながら、前記二2(一)で述べたように、店頭取引や相対取引であることは、特に外貨建ワラントの危険性の内容となるものではないから、やはり、被告らに説明義務があるとは認められない。

更に、原告らは、権利行使期限到来前であってもワラントが無価値同然となることがあり得ることを説明すべきである旨主張する。しかし、前項の第二の説明(権利行使期間を経過するとワラントは無価値になること)がなされれば、通常右のことについては大まかに理解することができるといいうるから、権利行使期間が極めて短期間しか残存していないとか、顧客の方から積極的にその点についての説明を求めていたなどの特段の事情のない限り、そのような説明をするまでの義務が被告らにあるとまでは認められない。

(三)  なお、原告らは説明書及び確認書が取引に遅れて交付、徴求されている点が公正慣習規則に違反する旨主張するが、右規則が説明書の交付及び確認書の徴求を義務付けているのは、説明が適切になされることを担保するためにすぎず、口頭であれ適切な説明がなされれば、説明書の交付等が取引に遅れたことを私法上違法と解すべき理由はない。

(四)  そこで、本件において、被告らが、原告らに対し、ワラントの概要を説明し、かつ、株式にはないワラントの危険性の重要な点として、前記(二)(1)記載の二点(特段の事情が認められるような場合には、その他の点も含めて。)を、原告らが具体的に理解できる程度に説明したか否かについて検討する。

(1) 原告X1関係

前記一1(三)(1)①で認定したように、被告Y1は、原告X1に対し、平成二年一月一一日、電話で、約二、三〇分ほどの時間をかけて、ワラントは、新株引受権付社債から分離されたもので、ワラント取引はその新株引受権の売買であること、ワラントは一定の期間である権利行使期間内に、一定の価格である権利行使価格をもって、発行企業の新株を引き受ける権利であること、ワラント価格は株価の上下の動きに連動し、より大きく動くギアリング効果があること、権利行使期限を過ぎると、経済的な価値がなくなることなど、ワラントの概要及び前記(二)(1)記載の二点などの説明をしている。

そして、a社の現役の代表取締役であり、積極的に情報収集を行う投資態度を有し、自発的にナンピン買いを行うなど証券取引の経験を相当程度有しているなどの原告X1の属性に鑑みれば、電話による説明書を用いない説明であったとはいえ、右説明をもって原告X1が具体的に理解できる程度の説明はなされているというべきである。このことは、原告X1が、平成二年一月二四日に説明書の交付を受け、同月二六日には「コウシキゲン5・1・22」の記載があるワラント預かり証の交付を受け、説明書の交付の際には被告Y1から重ねてワラントについて説明を受けているが、ワラントの説明が不足していたなどの異議を特段述べておらず、かえって「ワラントに関しては理解している。」旨述べていることからも裏付けられるといってよい。

そして、右の点に、被告Y1が、原告X1に対し、ワラントの購入時に比較的接着した時点である平成二年一月二四日に説明書の交付をし、それに基づき再度説明を行っていることを併せ考えれば、原告X1に対する勧誘に関して、被告らに説明義務違反を認めることはできない。

なお、被告会社が原告X1に対し同年一月一三日に送付した取引報告書には、「償還日平成五年一月二二日」という若干誤解を招きかねない記載があるが、同月二六日に交付したワラント預かり証には「コウシキゲン5・1・22」という記載があるから、被告Y1の説明及び説明書の記載と相まって、原告X1が右の点につき誤解することはないといえ、このことによって、前記認定は左右されないというべきである。

(2) 原告X2関係

前記一2(三)(1)①で認定したように、Dは、原告X2に対し、昭和六二年三月四日、来宅の上、ワラントというのは新株を引き受けることのできる権利であること、ハイリスク、ハイリターンで、株と対比して三倍程度の値動きの激しさがあること、行使期限が来れば、権利の売買であるので無価値になることなど、ワラントの概要及び前記(二)(1)記載の二点などの概略的な一応の説明をしている。

しかしながら、先に述べたように、Dは、右の点につき、被勧誘者の属性、適合性の程度に応じて、被勧誘者が具体的に理解できる程度に説明すべき義務があるところ、社内の取引開始基準に適合しないだけではなく、就職経験がなく社会経験に乏しい上、証券等の取引経験も豊富とはいえず、Dの勧誘に従って比較的慎重な取引を行ってきたなどの原告X2の属性に鑑みれば、説明書等の資料を用いずになされた説明で、原告X2が具体的に理解できる程度の説明がなされたとは直ちにいい難いところである。そして、Dは、新発の転換社債に代わるものとしてワラントを勧め、また、Dの認識として勧誘した神戸製鋼所ワラントは利益が取りやすいものであり当然儲かるという予想を持っていたことから、ワラントのリスク面(株式以上に値下がりすること及び行使期限が来れば無価値になること)についての概略的な説明に引き続いて直ちに、右ワラントのリターン面に重点を置いて、特にその有利性を強調したため、原告X2には右ワラントの有利性についての印象のみが残ったものであって、結局、原告X2が十分適正に理解できるような形での説明がなされなかったことは容易に推測できるところである。更に、当時、原告X2は、安全なものと認識していた転換社債を希望しており、他方、信用取引については危険であると認識していたのでe社が信用取引を行っていることを知った際には激怒してCと大喧嘩をしたように、堅実で安全な取引を望んでいたのであるから、そのような者が、特に質問等をなすこともなく口頭の説明を受けただけでワラントの購入に至っていることからすれば、原告X2において、Dの説明によって、実際にワラントの危険性を認識するには至らなかったと考えるのが自然である。

これらのことからすれば、Dのワラント勧誘行為においては、原告X2が理解するに足りる程度の説明がなされなかったものと認めるのが相当であり、説明義務に違反して違法であるといわざるを得ない。(なお、平成二年八月の時点で、原告X2が、ワラントの値下がりについて頻繁にクレームを付け、FとEが、原告X2に対し、長時間にわたって改めてワラントの説明をしていることは、当初におけるDのワラントの説明が不十分であったことを、かえって裏付けているともいいうるところである。)

ところで、右で述べたとおり、Dの最初のワラント勧誘行為は、説明義務に違反し違法であると解されるところ、その後、大阪ガスワラントの取引に至るまでの間に、被告会社従業員から特にワラントについての説明はなされていない。また、被告会社は、神戸製鋼所ワラントの取引から半年以上が経過した昭和六二年一〇月七日、原告X2に対し説明書を交付しているが、ワラント取引を開始してから半年以上経って説明書を交付しても、原告X2の性格等の属性に照らし、説明書に目を通さないことが十分予想されるところであり、現に目を通したことを認めるに足りる証拠もないから、単なる説明書の交付だけで説明義務が果たされたことになるとは解されない。よって、大阪ガスワラントまでの各ワラントの勧誘には、いずれも、被告会社従業員に説明義務違反が認められ、その内別紙原告X2ワラント取引一覧表3、4、10、12及び13のワラントの勧誘の違法をいう原告X2の主張は理由がある。なお、原告X2とCが、ワラントも含めた証券取引について、相談等を行っていたことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、先に認定したように、原告X2とCは、互いの取引についてあまり把握しておらず、信用取引のことで原告X2とCが大喧嘩した昭和六二年四月以後は、証券取引の話をCはなるべくしないようにしていたのであり、証券会社の担当者もこのことは認識していたのであるから、Cの存在によって右認定は左右されないというべきである。

もっとも原告X2は、平成二年八月の時点で、E及びFから、長時間にわたってワラントについての説明を受け、ワラントというものを理解するに至っている(原告X2本人二一回二四丁参照。なお、右E及びFの説明は、原告X2のワラントが値下がりしていることについてのクレームに対して、わざわざEが上司のFを同伴した上で、ワラントの理論価格、権利行使価格等が記載されている一覧表を示しながらなしたものであるから、その説明は原告X2が理解できる程度になされたものと認められる。)のであるから、その後になされたワラント取引については、被告会社従業員に説明義務違反は認められない。よって、その後になされたイトマンワラントの勧誘の違法をいう原告X2の主張は理由がない。

(3) 原告X3関係

前記一3(三)(1)①、同(4)①で認定したように、Hは、昭和六一年七月ころ、g社において、原告X3から、「ロームワラントが随分値下がりしている。これは最後にはただになるだろう。どうしたらよいか。」という相談を持ちかけられたことから、原告X3に対し、ワラントには行使期限、行使価格というものがあり、最終的に株価が行使価格を上回っていない場合はゼロになってしまうこと、値動きも激しいことなど、ワラントの概要及び前記(二)(1)記載の二点などをワラントのリスクを強調して説明し、また、被告会社は、本件損害賠償請求の対象である神戸製鋼ワラントの取引の前である昭和六三年二月一五日、原告X3に対し、ワラントの概要及び前記(二)(1)記載の二点などについて記載された説明書を交付している。

そして、f社の元支店長であり、現役の総務担当取締役であって、証券取引の経験もないわけではなく、ロームワラントについて原告X3が持ちかけた相談内容からすればワラントについての一定の知識を有していたと認められるなどの原告X3の属性に鑑みれば、右の程度の説明をもって、具体的に原告X3が理解できる程度の説明はなされたというべきである。

そして、右の点に、原告X3が、本件損害賠償請求の対象である神戸製鋼ワラントの取引以前に、一一銘柄ものワラントの取引を行っており、特に阪神電気鉄道ワラントでは、四日間で約一七九万円の利益を得て、そのハイリターンの面を認識したのであるから、ハイリスクの面についても当然認識したはずであること、住友建設ワラントの取引の時点から神戸製鋼ワラントの取引まで二年近くの間があるから、ワラントについて自発的に研究すべき時間が十分にあったことなどを併せて考えれば、原告X3に対する、少なくともグラフテックワラント以外の勧誘に関して、被告会社に説明義務違反を認めることはできない。

もっとも、原告X3は、グラフテックワラントの勧誘に際して、右ワラントの勧誘時の状況に鑑みれば、右ワラントは欠陥商品というべきものであり、少なくとも右ワラントの権利行使価格と株価の上昇の見込みとの関係、即ち、株価が権利行使価格を期限内に上回る期待が低くなり、あるいは期待がなくなった場合には、ワラント価格は限りなく零に近づくこと等を説明すべきであった旨主張するので、更に検討する。

前記一(三)(7)①で認定したように、原告X3への勧誘時のグラフテックワラントの権利行使の残存期間は二年六か月ほど、購入時の株価は一九六〇円、権利行使価格は三七六〇円、パリティはマイナス四九・四四ポイント、プレミアムは五六・四四ポイントであった。しかしながら、右のような状況にあったからといって、右ワラント取引で利益を得ることが合理的な程度に可能であったことは、例えば三井物産ワラントの価格推移表(乙イ一九)を見ても明らかであり、これをもって欠陥商品であるということはできない。

また、原告X3は、ワラント自体をごく短期間のうちに売却し利益を得るという取引を繰り返しており、そのような取引傾向からすれば、権利行使の残存期間が二年六か月であり、仮に、株価が権利行使価格を下回り、かつ、権利行使期間が二年を切るようになった銘柄は、取引される割合が大きく低下する傾向が認められる余地があるとしても(甲五八の1参照)、未だ六か月間は十分取引が可能なのであるから、その残存期間につき原告X3に注意を促すべきであるとまではいえない。

そして、右の点に、原告X3が、右グラフテックワラントの勧誘を受けるまでに、Hからワラントの説明を受け、被告会社より説明書の交付も受けていること、原告X3が、既に二一銘柄ものワラント取引を行っており、最初の住友建設ワラントの取引の時点から三年半もの間があるから、ワラントについて自発的に研究すべき時間が十分にあったこと、被告会社より一年以上にわたって定期的に「ワラント時価評価のお知らせ」の送付を受け、その価格の推移につき明確に認識し、損失を受けていることも十分に認識していたこと、原告X3は、損失補填の趣旨でIがグラフテックワラントを勧めてくれているのだと思い右ワラントを購入しているが、Iが「必ず儲かる。」旨の断定的判断の提供をしたとまでは認められないから、右誤解につきIに責任があるとはいえず、また、原告X3の誤解につきIが認識していたとも認められないこと及びf社の元支店長であることなどの原告X3の属性を併せて考えれば、本件のグラフテックワラントの勧誘に際して、権利行使価格と株価の上昇の見込みとの関係、即ち、株価が権利行使価格を期限内に上回る期待が低くなり、あるいは期待がなくなった場合には、ワラント価格は限りなく零に近づくこと等について、Iの側から積極的に説明すべき特段の事情があったとまでは認められないというべきである。

よって、原告X3に対する、グラフテックワラントの勧誘に関しても、被告会社に説明義務違反を認めることはできない。

(4) 前記(1)ないし(3)によれば、説明義務違反について、原告X2の主張は(2)で述べた限度で理由があるが、原告X1及び原告X3のこの点に関する主張はいずれも失当である。

六  争点3(本件ワラント購入の勧誘行為は断定的判断の提供に当たり違法であったか否か)について

原告らは、本件のワラント取引において、被告会社従業員から、それぞれ断定的判断の提供を受けた旨主張する。

思うに、断定的判断の提供による勧誘として違法と評価すべきか否かについては、相当程度の有利性の強調がいわゆるセールストークとして社会的に許容されていることなどに鑑みると、勧誘文言のみにとらわれることなく、被勧誘者の属性、なされた説明の程度、勧誘の態様等一切の具体的事情を総合考慮して、社会的相当性の逸脱の有無を判断すべきである。

そこで、本件につき検討するに、先に認定したところによれば、被告会社従業員が、原告らに対し、文言上断定的な形で勧誘をした事実は認められないし、多少有利性を強調して勧誘した点はあるにせよ、原告らのそれぞれの属性、原告らに対してなされたワラントについての説明の程度等に鑑みれば、社会的相当性を逸脱して違法であるといえるような勧誘が行われたことを認めるに足りる証拠はない(なお、前項で述べたとおり、原告X2に対するワラントの勧誘に、説明義務違反が認められる点があるが、断定的判断の提供がなされたものとして特に右とは別個に違法として評価すべき勧誘は認められない。)。

よって、この点に関する原告らの主張はいずれも失当である。

七  争点4(本件ワラント購入の勧誘行為は押付販売、欺瞞的勧誘に当たり違法であったか否か)について

原告らは、被告会社従業員から、いずれも執拗かつ欺瞞的な勧誘を受け、熟慮する機会と期間も与えられず、押し切られてワラントの購入に至ったものであり、右勧誘は押付販売、欺瞞的勧誘に当たり違法である旨主張する。

しかしながら、営業活動として社会的に相当と認められる範囲内であれば勧誘が違法と評価されることはないというべきであるところ、本件において、Eが原告X2に対し勧誘した東急不動産ワラントも含め、右社会的相当性を逸脱して違法であるといえるような執拗又は欺瞞的な勧誘が行われたことを認めるに足りる証拠はない。また、原告らがワラントの購入を拒否しているのに無理やり購入を押し付けたような事実を認めるに足りる証拠もない。

よって、この点に関する原告らの主張はいずれも失当である。

八  争点5(本件ワラント購入の勧誘行為は回転売買(過当売買)に当たり違法であったか否か)について

原告らは、原告X2、原告X3について、手数料や利鞘による被告会社自身の利益を得るため、明らかに過当な取引が行われており、特に原告X3については、売買の頻度も高く、売却後に当該売却代金を充てての他の銘柄の購入が頻繁に行われており、右はまさに回転売買というべき取引であり、強度の違法性を帯びている旨主張する。

思うに、一人の顧客に対する多数回の勧誘が直ちに違法になるわけでは勿論ないが、顧客の犠牲の下で専ら手数料を稼ぐ目的で勧誘を行ったり、勧誘した取引がその内容等からして明らかに不合理であったり、勧誘手段が不当であったなどの特段の事情が認められる場合には、その勧誘は社会的相当性を逸脱し、違法の評価を免れないというべきである。

そこで本件についてみるに、確かに、原告X3のワラント取引は、前記一(三)(6)①で認定したように、あるワラントの売却代金で、次のワラントを購入する形で行われている場合がほとんどであり、原告X2のワラント取引においても、そのような形がみられる。しかし、ある銘柄の売却と同時に、他の銘柄の購入を勧めることは不自然なことではないし、原告X3に関しては、前記四ないし七で述べたように、その取引が不当な勧誘手段によるものであるとも認められない。また、原告X2、原告X3が勧められたワラント取引の中で、同一銘柄を短期間で買い直させるなどといった不合理なものは見当たらない上、そもそもワラントは行使期限の制限があるのであるから、株式などと異なり、長期間所持しておくことが予定されていない有価証券であるともいい得るところである。その他、原告X2及び原告X3のそれぞれの属性、投資額等に照らしても、本件のワラント取引に関して、右特段の事情を認めるに足りる証拠はないものといわざるをえない。

よって、この点に関する原告らの主張はいずれも失当である。

九  争点6(本件ワラント購入の勧誘行為は過大なマークアップ・暴利行為に当たり違法であったか否か)について

原告らは、本件ワラント購入の勧誘行為は、相対売買において利鞘を取りすぎているものであり、過大なマークアップ・暴利行為に当たり、忠実義務ないし誠実・公正義務に違反し、違法であった旨主張する。

しかし、本件の各ワラント取引において、被告会社が、暴利行為といえるほど過大な利鞘を取っていたことを認めるに足りる証拠はない。

よって、この点に関する原告らの主張はいずれも失当である。

一〇  争点7(本件ワラント購入後、被告らに、損害拡大の放置、助言義務違反として違法な点があったか否か)について

原告らは、被告会社は、原告らに対し、購入後の価格情報の提供や売却時期の適切な助言をなすべき義務があるにもかかわらず、購入後の適時の価格情報の提供を怠り、かえって価格の問い合わせや売却の打診に対して損失発生の責任が表面化することを避けるために曖昧な説明をなし、よって売却のタイミングを失わしめて損失を拡大せしめた旨主張する。

しかしながら、そもそも、証券会社が顧客である投資者に対し、取引終了後に、その購入した商品の価格等の情報を積極的に提供し、あるいは売却の時期を勧告をする義務を負担するといえるかに疑問がある上、本件においては、原告X1は、被告会社からほぼ毎日のように書面でワラント価格の連絡を受け、平成二年二月末日からは定期的に、被告会社より、ワラントの時価評価などを記載した「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面の送付を受けていたし、原告X2は、Eらからほぼ毎日のように電話でワラント価格を聞いていたし、原告X3は、本件損害賠償請求の対象である神戸製鋼ワラントの取引直後である平成二年の初めころから、原告X1と同様に、「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面の送付を受けていたのであるから、原告らはいずれも適時に価格情報の提供を受けているといえるし、また、右のような情報を受けている以上は、売り時は原告ら自らが判断すべきであって、被告会社従業員に売り時につき助言を与える法的な義務があるとは到底いえないから、原告らが主張するような違法な点は認められない。

また、原告X1は、ワラントの追加購入を申し出た際、三井物産ワラントは大きなマイナスパリティ状態になっていたのであるから、被告Y1は、不合理な取引に入ろうとしていることについて注意を喚起すべき助言義務(あるいは説明義務)を負っていたのであり、それにも関わらず原告X1の申出に同意を与えた被告Y1の行為は右義務違反として違法である旨主張する。

しかしながら、三井物産ワラントの当時の状況に鑑みれば、右ワラントの権利行使期限はあと二年六か月残存しており、この期間のうちに値上がりして利益を出す可能性がなかったとはいえず、被告Y1が原告X1の申出に同意したことは特段不合理な判断ともいえないし、まして、原告X1の投資について積極的に研究するなど姿勢・属性等や、原告X1が被告会社からの書面による連絡によりワラント価格を毎日のように把握していたことに照らせば、ワラントの購入を申し出た原告X1に対し、被告Y1が、あえて、購入を希望しているワラントの具体的な危険性(マイナスパリティであること等)を喚起すべき法的な義務があったとはいえず、原告X1のワラントの追加購入に関して、被告らに違法な点は認められない。

よって、この点に関する原告らの主張はいずれも失当である。

一一  原告X1の予備的請求について

原告X1は、被告会社に対し、予備的に、売買契約上の債務不履行に基づく請求をしているが、これまで述べてきたことによれば、被告会社に売買契約上の注意義務に違反するような点が認められないことは明らかであるので、右請求は失当である。

一二  原告X2の取引上の損害額及び被告会社の責任

原告X2は、別紙原告X2ワラント取引一覧表記載の3、4、10、12及び13記載の取引により、計四〇一九万六三六〇円の損害を受けた。右損害は、D及びEの説明義務違反による勧誘という不法行為によるものであるから、その使用者である被告会社は使用者責任を負う。

一三  過失相殺

原告X2は神戸製鋼所ワラントを勧誘された際にDからワラントについての一応の概略的な説明を受けており、その説明を十分に理解することができなかったにも拘わらず、何らの質問もすることなく、安易にワラントを購入し、その後も、特にワラントについて詳しい説明を求めたり、自ら調査研究したりすることをせずに、ワラント取引を続けていること、原告X2が、損害賠償の対象となるワラントの各取引より以前に行った神戸製鋼所ワラントの取引で、二日間で一〇〇万円を超える利益を上げ、また、損害賠償の対象となる東急不動産ワラント及び大阪ガスワラントの各取引以前に行った阪神電鉄ワラントの取引で、四日間で三六〇万円を超える利益を上げ、そのハイリターンの面を右各取引の際に認識したのであるから、ハイリスクの面についても当然認識すべきであったこと、損害賠償の対象となるアサヒビールワラント、東急不動産ワラント及び大阪ガスワラントの各取引より前である昭和六二年一〇月に、原告X2は、被告会社から、ワラントの概要及び危険性等が記載された説明書の交付を受けており、原告X2としても説明書に目を通してワラントについて理解すべきであったにも拘わらずこれを怠り、更に、受領した説明書の内容を確認したなどの記載のある確認書に署名押印した上被告会社に提出していることなどに照らせば、原告X2にもその損害発生について少なからぬ落ち度があるというべきであり、原告X2の右落ち度の他、本件における勧誘行為の違法性の程度などの本件に顕れた一切の事情を考慮すると、過失相殺として、原告X2に生じた前項記載の取引上の損害額から六割を減ずるのが相当である。これによれば、被告会社の支払義務のある金額は一六〇七万八五四四円である。

一四  弁護士費用

原告X2が、本件訴訟の提起、追行を、弁護士に委任したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、本件事案の内容、本件訴訟の経過及び認容額等諸般の事情を考慮すると、D及びEの不法行為と相当因果関係があり、被告会社が賠償すべきである原告X2の弁護士費用は、合計一五〇万円とするのが相当である。

一五  附帯請求の起算日

附帯請求の起算日は、不法行為の場合その損害発生時というべきであるところ、本件においては、各ワラントが売却された時点で損害が発生したものと考えられるから、日本ビクターワラント及び山之内製薬ワラント分(過失相殺後の損害額計一三九万六三七〇円及びそれに対応する弁護士費用一三万〇二七〇円の合計一五二万六六四〇円)については平成三年五月七日、アサヒビールワラント及び東急不動産ワラント分(過失相殺後の損害額計一三八八万六二九八円及びそれに対応する弁護士費用一二九万五四八一円の合計一五一八万一七七九円)については同年一二月二七日、大阪ガスワラント分(過失相殺後の損害額七九万五八七六円及びそれに対応する弁護士費用七万四二四九円の合計八七万〇一二五円)については同月三〇日が、それぞれ附帯請求の起算日となる。

一六  結論

以上によれば、原告X2の被告会社に対する請求は、損害金一七五七万八五四四円及び内金一五二万六六四〇円に対する平成三年五月七日から、内金一五一八万一七七九円に対する同年一二月二七日から、内金八七万〇一二五円に対する同月三〇日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、原告X2のその余の請求並びに原告X1及び原告X3の請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 坂本倫城 裁判官 黒野功久 裁判官 横路朋生)

<以下省略>

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