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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)1947号 判決 1993年9月30日

大阪市鶴見区放出東一丁目二九番一〇号

原告

株式会社コジット

右代表者代表取締役

久保博一

右訴訟代理人弁護士

正木孝明

名古屋市昭和区恵方町一丁目三五番地

被告

富士パツクス販売株式会社

右代表者代表取締役

森則昭

名古屋市守山区守山字山王一番三号

被告

株式会社サンオクタニ

右代表者代表取締役

佐藤明

東京都台東区根岸二丁目二番四号

被告

ポライト産業株式会社

右代表者代表取締役

相馬繁隆

右三名訴訟代理人弁護士

塩見渉

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告富士パツクス販売株式会社は、別紙物件目録一記載の商品の広告に「すのこ&バスマット」という表示をし、又はこれを表示した同商品を販売、拡布してはならない。

二  被告株式会社サンオクタニは、別紙物件目録二記載の商品の広告に「すのこバスマット」という表示をし、又はこれを表示した同商品を販売、拡布してはならない。

三  被告ポライト産業株式会社は、別紙物件目録三記載の商品の広告に「さわやかバスすのこ」という表示をし、又はこれを表示した同商品を販売、拡布してはならない。

四  被告らは、原告に対し、それぞれ金三四〇万円及びこれに対する平成四年三月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告は、業として、家庭日用雑貨品を主とするアイデア商品を主として次の販売ルートにより卸販売する会社である(甲一~一一、一五、一七、証人由良恂一)。

(一) 原告が、自社商品の販売促進用チラシを作成し、これを地域の婦人会、自治会や職場の労働組合、生協等の団体に対し、直接又は同団体に商品を納入している業者(以下「職域業者」という。)を通じて配付したうえで団体毎に注文を取り、右団体経由で一般消費者に商品を販売する方法(以下「職域販売」という。)。

(二) 原告から商品を仕入れる催事業者が、スーパーマーケットやデパートからその店舗の一部を催事販売場として借受け、同所で催事業者が一般消費者に原告から仕入れた商品を販売する方法(以下「催事販売」という。)。その場合、主に原告に専属する催事業者は原告が作成した対象地域配付用のチラシを利用し、その他の催事業者は原告から仕入れる商品と他業者から仕入れる商品を掲載した独自のチラシを作成して広告宣伝する。

(三) 通信販売による方法。その場合、原告は、自社商品を通信販売業者が作成するカタログに掲載してもらい、通信販売業者経由で需要者に商品を販売する。

2  原告は、平成三年初めころ、布製バスマットと水草製すのこを組合せた別紙原告商品目録記載の商品(以下「原告商品」という。)を開発し、同年六月二一日以降、「すのこバスマット」という商品名(以下「原告表示」という。)で原告商品の販売を開始し、同年八月二一日から本格的にこれを販売した(甲一九、証人由良)。

3  被告らの行為

被告らは、いずれも原告と同様の販売形態で、業として、家庭日用雑貨品を卸販売する会社であるが、

(一) 被告富士パツクス販売株式会社(以下「被告富士パツクス」という。)は、平成三年一二月ころから、「すのこ&バスマット」という商品名(以下「被告表示一」という。)で、別紙物件目録一記載の商品(以下「被告商品一」という。)を販売し、

(二) 被告株式会社サンオクタニ(以下「被告サンオクタニ」という。)は、平成三年一〇月ころから「すのこバスマット」という商品名(以下「被告表示二」という。)で、別紙物件目録二記載の商品(以下「被告商品二」という。)を販売し、

(三) 被告ポライト産業株式会社(以下「被告ポライト産業」という。)は平成三年一二月ころから「さわやかバスすのこ」という商品名(以下「被告表示三」といい、被告表示一ないし三をまとめて「被告ら表示」という。)で、別紙物件目録三記載の商品(以下「被告商品三」といい、被告商品一ないし三をまとめて「被告ら商品」という。)を販売していたが、現在はすのこのみを販売している(甲一二~一四、証人奥谷清)。

二  請求

原告は、原告商品形態ないし原告表示がいわゆる周知性を取得したこと、被告らが原告表示と同一又は類似の被告ら表示を使用して原告商品形態と同一又は類似の被告ら商品を販売する行為が不正競争防止法一条一項一号に該当することを理由に、被告らに対し、被告ら表示の使用停止等を求めるとともに、不正競争防止法一条の二第一項に基づき、被告らの右各行為により原告に生じた営業上の損害金各三四〇万円(被告ら商品の一個当たりの販売利益三四〇円×各被告の販売個数一万セット)及びこれに対する平成四年三月一四日(被告らに対する最終の訴状送達日の翌日)から年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めた。

三  争点

1  原告商品の商品形態は、原告の商品であることを示す表示として広く認識されるに至ったか。

2  原告表示は、原告の商品であることを示す表示として広く認識されるに至ったか。また、原告表示は、原告商品の形態と相まって、原告の商品であることを示す表示として広く認識されるに至ったか。

3  原告表示を付した原告商品と被告ら表示を付した被告ら商品の間に誤認混同のおそれがあるか。

4  被告らが損害賠償責任を負担する場合、原告に生じた損害金額。

第三  争点に対する判断

一  争点1(原告商品形態による周知性取得の有無)について

1  当事者の主張

(原告)

(一) 原告商品は、従来公衆浴場等では使用されていたが家庭用には販売されていなかった「すのこ」を「バスマット」と組合せ、これを一体の商品として商品化したものであり、風呂上がりに「すのこ」の上で体を拭いた場合に感じられる足の裏の爽快感を家庭で気軽に味わうことができ、かつ、すのこから漏れた水によっても床が濡れないという点で実用新案にも匹敵する新規商品である。また、原告商品のすのこは、従前から我国にあった竹を編んだすのこではなく、従来香港で玄関の泥よけマットとして使用されていた水草製すのこを採用した点でも新規商品である。

(二) 原告は、すのこを現地で製造する際、現地(中国)の外注先に材料をチェックさせてトゲ等の処置をし、輸入時に害虫駆除をするなどして製品開発に苦労をするとともに、広告宣伝にも努力した結果、その努力の甲斐あって、原告商品は販売を開始した平成三年六月二一日からわずか四か月で約一〇万セットという爆発的な売れ行きを示し、翌四年一月二七日までに二二万六八三三セットが販売された。

(三) このように、「すのこ」と「バスマット」を組合せた原告商品の商品形態は、ピンクのバスマットと茶色のすのこという色の組合せと相まって自他識別機能、出所表示機能を獲得し、被告ら商品の販売が開始された平成三年一〇月ころまでには、職域業者、催事業者及び通信販売業者といった取引業者の間で、原告の商品であることを示す表示としていわゆる周知性を取得していた。

(被告ら)

(一) 原告商品の形態は、単に普通のバスマットと普通のすのこを組合せたものに過ぎず、両者はもともと分離した別個の商品であって一体として固着しているものではないから、両者を組合せたものが一つのまとまりのある商品形態と観念されるかどうかは疑問である。仮に、バスマットとすのこの組合せを一つの商品形態と考えるとしても、それは、既存の商品二個を販売の便宜上組合せたありきたりの形態に過ぎないことに加え、すのこをバスマットに組合せて使用することが古くから家庭及び公衆浴場等で通常行なわれてきたこと、すのこもバスマットも家庭日用雑貨品として同一の商品売場で取り扱われており、顧客の求めに応じて一緒に販売されていたことが自明であることに鑑みると、原告商品の右商品形態に特殊性あるいは独自性があるとはいえない。また、ピンクのバスマットと茶色のすのこという原告商品の色彩の組み合せも、バスマットのピンク及びすのこの茶色という個々の色が普通の色であり、その組合せにも特異な点はなく、ごくありふれた二色の組合せに過ぎないものであるから、これにより自他識別機能、出所表示機能を取得することもない。

(二) 水草製すのこについても、天然水草を編んで作ったすのこが、日本でも古くから「コイヤのバススノコ」等の名称により各地の家庭日用雑貨品店で販売されており、従来、大は公衆浴場用から小は家庭用まで風呂場用品として使用されてきたこと、被告ポライト産業の取引先であるカム・チ・ホン・マッティング社も三〇年以上にわたり水草製すのこを製造し、昭和五九年ころからは日本にも出荷していることを考慮すると特に独自性があるとはいえず、また、すのこの材料に関するトゲ等の処置と害虫駆除の点は、いずれも以前から輸入に当たり考慮されてきた当然の処理であり、原告独自の商品開発ではない。なお、仮にこれらの点で独自の処理があったとしても、原告商品の商品形態の周知性取得とは無関係である。

(三) 被告サンオクタニは、原告が本格的に原告商品を販売する前の平成三年八月中旬には、既に取引先から被告商品二の持込みを受けてパンフレット作成等の販売の段取りをしており、原告が原告商品の形態が周知性を取得したと主張する同年一〇月下旬ころには、現実に被告商品二を販売していたものであるから、バスマットとすのこを組合せた商品は、当初から複数の業者によって取り扱われていたものである。また、アイデア商品業界では、一般に商品と特定の業者との関連性は切断されており、特定の業者の商品がその業者の商品として周知性を取得することは通常不可能であるところ、原告は、通常のアイデア商品の販売活動の一環として行われるパンフレット・カタログ等の配付による商品紹介広告以上には、原告商品の宣伝広告活動をしていない。

2  判断

(一) 原告は、平成三年二月ころ原告商品を開発し、同年六月二一日からその販売を開始したが、それ以前には、バスマットとすのこを組合せて一つの商品とした家庭向け風呂場用品は国内で市販されていなかったこと、原告商品は、同年八月二一日から本格的な販売が開始されたが、同日から同年九月二〇日までに三万七〇三七セット、同年九月二一日から同年一〇月二〇日までに六万一〇八一セットが売れ、被告サンオクタニが同年一〇月ころ被告商品二の販売を開始するまでには既に一〇万セット以上が販売されていたこと、原告商品は、別紙「販売個数一覧表」記載のとおり、同年一〇月二一日から一一月二〇日までの一か月で五万セット余、同月二一日から一二月二〇日までの一か月で三万九〇〇二セットが売れる爆発的ヒット商品となり、発売から約一年三か月を経た平成四年九月二〇日までには計三六万八六七九セットという大量の販売実績を上げたこと、アイデア商品業界では、特定の商品が六か月間で一〇万個以上売れた場合には通常ヒット商品という評価を受けること、これに対し、被告ら商品の販売数は、被告サンオクタニで八〇〇〇セット、他の被告で各一万セット程度に過ぎないことが認められる(甲一九、証人由良、奥谷)。

しかし、原告商品は、縦四五センチメートル×横七〇センチメートルのピンク色の普通のバスマットと縦三六センチメートル×横六〇センチメートルの水草製すのこを組合せて一つの商品としただけのもので、すのことバスマットはもともと別々の商品で、各々を単品で使用することも可能であること、すのこは、原告自ら「昔なつかしいお風呂屋さんのマット」と宣伝するように(甲一)、従来から公衆浴場等で用いられていた麻等の植物繊維を粗いむしろ状に編んだすのこを小型化した形態であって特に独創的なものではなく、バスマットも極くありふれた布製マットであること、すのこをバスマット上に載置して使用することは、風呂上がりの身体から流れ落ちた水分で床が濡れないようにするため、従来から公衆浴場等で行なわれてきた工夫であることが認められ(甲一~一一、一九、検甲一の1~3、証人由良、奥谷、弁論の全趣旨)、原告商品の形態に特に独創性があるとも、これが原告独自の工夫であるとも認めることはできないうえ、色彩についても、ピンクがバスマット等の洗面用品、風呂場用品に多用される色であり、すのこの茶色もすのこの素材の色そのものであり、従来から公衆浴場等で用いられてきた植物繊維製すのこの色と同じであることからみて、右二色の組合せも、特に人の目を惹くような特徴があるということもできない。

また、バスマットとすのこを組合せた商品を原告の次に発売した被告サンオクタニは、平成三年八月中旬ころには、取引先の訴外古屋産業株式会社から商品見本の持込みを受けてその販売を決定し、同年九月にはパンフレット、チラシを作成し、同年一〇月には実際に被告商品二の販売を開始したものであるから(証人奥谷)、バスマットとすのこを組合せた商品形態が原告により独占的に使用されていた期間は、原告商品の販売が開始された同年六月二一日から約四か月間、本格的な販売が開始された同年八月二一日から約二か月間に過ぎず、原告商品の商品形態が、原告によって特定の商品形態として長年継続的かつ独占的に使用されてきたということもできない。また、アイデア商品業界では、ヒット商品が出た場合、その発売から二か月後位には、他社が同一の商品を類似の名前で発売するのが通常であり、たとえヒット商品であっても爆発的な売れ行きを上げるのは発売後一年または一年半程度であり、その後は急速に売れ行きが落ちる傾向がある(証人由良)。

また、原告は、職域団体への宣伝のため、中央に原告商品の写真、その下に商品名である原告表示及び価格を掲載し、左上隅に小さく「株式会社コジット」と記載した原告商品のチラシ約二〇〇万枚を作成、配付したが、二〇〇万枚という枚数は職域販売用チラシとしてはむしろ通常の配付枚数であること、原告商品は、スーパーマーケットやデパートの催事販売用のチラシでも、他の商品より大きな写真が掲載されるなど中心商品扱いをされていたが、元来、スーパーマーケット、デパート等の催事販売用のチラシは、「アイデア商品バザール」等と銘打って、キッチン用品、バス・トイレ用品、収納用品、修理用品等の各種アイデア商品を約一〇〇~一五〇種類掲載するもので、特定の商品だけを重点的に広告するものではなく、原告商品と同様の大きさで扱われている中心商品は他にも多数あることが認められ(甲一~一一、証人由良)、これによれば、原告が、取引先である職域業者や催事業者等に対し、原告商品について、モニター間の評判や「大ヒットするから間違いない。」等のセールストークを伝えていたことを考慮しても、原告は、アイデア商品の販売活動として通常作成するチラシに掲載する以上には、原告商品の販売促進のために、特別な広告宣伝活動をしてはいないというべきである。

また、前記のとおり大幅な売上実績を示した原告商品も、後から参入した被告ら商品もともに、需要者の購入が一巡した最近では急激に売上高が減少し、すのこ単品での販売の方が良好な販売実績を示す傾向にあることが認められる(甲一九、証人由良、奥谷、弁論の全趣旨)。

以上の諸事実を併せ考えると、原告商品が大幅な売上実績を上げることができたのは、これまで家庭用風呂場用品として一般的には販売されていなかった水草製すのこを中国から輸入することにより安価に売出した着想(アイデア)にあると考えるのが相当である。しかし、水草製すのこそれ自体の形状・形態等に特別な特徴があるとも、それとバスマットを組合せて一つの商品として売出したことに特別な着想があるとも認めることはできない。

結局、本件全証拠によっても、原告商品の商品形態が、需要者である一般消費者はもとより、取引者である職域業者、催事業者及び通信販売業者の間においても、原告の発売する商品の商品表示としての機能を取得した事実も、そうした表示としていわゆる周知性を取得した事実も認めることはできない。

(二) 原告は、原告商品のすのこは、従来香港で玄関の泥よけマットとして売られていた天然水草を編んだ敷物を採用したものであり、従前公衆浴場等で使用されていた麻製のすのことは、素材が異なる点で特殊かつ独自な工夫があると主張するが、水草製すのこは、従来から日本に輸入され、麻製のすのこと同様に国内で販売されていたことが認められるうえ(乙一四、弁論の全趣旨)、麻製のすのこと水草製すのこでは、麻と水草という素材に違いがあるとしても、植物繊維を目の粗い簀状に編んで作った敷物という基本的形態及び色彩(その素材繊維の色である茶色)は殆ど変わらないものであるから、原告商品のすのこの素材として水草を用いたことが、直ちに需要者または取引者に対して新規な印象を与えるとは認めることができず、右が商品表示性及び周知性を基礎付けるに足りる特殊かつ独自な工夫であるということもできない。

また、原告は、中国の外注先に対し、水草製すのこの仕上げに際し、手でならしてトゲを確認するように指示したり、輸入に当たり害虫駆除の対策を講じるよう要請する等の企業努力を行なったことが特殊かつ独自な工夫に当たると主張するが、これらは風呂場用すのこを輸入するに際して行われるべき当然の処理と認められるから(乙一四、証人奥谷)、特にこれらが商品表示性及び周知性を基礎付けるに足りる原告独自の工夫ということもできない。

二  争点2(原告表示及び原告商品形態による周知性取得の有無)について

1  当事者の主張

(原告)

「すのこ」とは、国語辞典によれば、「竹を並べて編んだもの」を意味するが、原告商品の場合は、竹ではなく水草を編んだものという、従前我国に存在する「すのこ」とは全く別の材料で編成された物品を「すのこ」と命名したのであるから、これが単なる普通名称ないし品質表示でないことは明白である。

したがって、「すのこバスマット」という原告表示は、原告商品の商品形態の新規性と相まって、原告の商品であることを示す表示として、取引者の間で広く認識されるに至っていた。

(被告ら)

「すのこ」とは、「広辞苑(第四版)」によれば、<1>「竹や葦で編んだ簀」及び、<2>「水切りのため竹や板を間をすかせて張った床・縁または台」を意味するところ、原告商品の「すのこ」は、天然草を編んだ簀という意味で、<1>の「すのこ」に該当し、また、水切りのため間をすかせて張った台という意味で、<2>の、「すのこ」にも該当する。

したがって、「すのこバスマット」という原告表示は、単に「すのこ」と「バスマット」という対象商品の普通名詞を併記したものに過ぎず、何ら新規性も特異性もないから、自他の識別力を有しない。

2  判断

「すのこ」とは、<1>「竹や葦で編んだ簀」、<2>「水切りのため竹や板を間をすかせて張った床・縁または台」を意味すると認められ(昭和五八年一二月六日発行・広辞苑第三版一二九九ページ)、必ずしも原告が主張する「竹を並べて編んだもの」のみには限定されず、葦で編んだ簀も「すのこ」というと考えられるところ、「葦」とは、「イネ科の多年草。各地の水辺に自生。世界で最も分布の広い植物。地中に扁平な長い根茎を走らせて大群落を作る。高さ約二メートル。茎に節を具え葉は笹の葉形。秋、多数の細かい帯紫色の小花からなる穂を出す。茎で簾を作る。」を意味し(同三六ページ)、「簀」とは、「篠竹、葦または割竹であらく編んだむしろ」を意味するものであるから(同一二六二ページ)、原告商品の「すのこ」のように天然水草を目の粗いむしろ状に編んで作った敷物は、前記<1>でいう「すのこ」に含まれると解するのが相当であり、これによれば、原告表示中の「すのこ」という部分は、原告商品を構成する水草製すのこを指称する普通名称であり、原告が主張するように、国語にいう「すのこ」とは別個の物品に「すのこ」という名前を付けたものであるとは認められない。

原告商品は、<1>水草製すのこと<2>バスマットを組合せたものであり、「すのこバスマット」という原告表示は、原告商品を構成する<1>部分の普通名称「すのこ」と<2>部分の普通名称「バスマット」を単純に併記したものであって、原告商品の実体を明確簡単に表現したものに過ぎず、何人がこれを使用しても差支えない通常の表現であるから、特別の事情のない限り、原告表示が自他を識別する機能を有しているとは認められず、また、原告商品の形状形態に特別な特徴があると認められないことは前記一で判示したとおりであり、結局、原告表示が原告商品の形態と相まっても、原告の商品であることを示す表示として、需要者又は取引者の間でいわゆる周知性を取得したと認めることもできない。

第四  結論

以上の次第で、原告商品の形態ないし原告表示が原告の商品であることを示す表示として周知性を取得したと認めることができないものであるから、これを前提とする原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 阿多麻子)

<省略>

物件目録一

添付図面に示す形態を有する、風呂場用のバスマットと水草製すのこを組合せたもの(同図面に示すように、バスマットの上にすのこを載置した状態での使用を予定する。)。

物件目録二

添付図面に示す形態を有する、風呂場用のバスマットと水草製すのこを組合せたもの(同図面に示すように、バスマットの上にすのこを載置した状態での使用を予定する。)。

<省略>

<省略>

物件目録三

添付図面に示す形態を有する、風呂場用のバスマットと水草製すのこを組合せたもの(同図面に示すように、バスマットの上にすのこを載置した状態での使用を予定する。)。

原告商品目録

添付図面に示す形態を有する、風呂場用のバスマットと水草製すのこを組合せたもの(同図面に示すように、バスマットの上にすのこを載置した状態での使用を予定する。)。

<省略>

販売個数一覧表

<省略>

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