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大阪地方裁判所 平成4年(わ)265号 判決 1992年11月26日

本籍

大阪府阪南市鳥取一〇三五番地

住居

同市鳥取六一七番地の一アヴァンセ杉谷三〇二号

無職

杉谷百登美

昭和一九年九月二〇日生

主文

被告人を懲役一年六か月と罰金二五〇〇万円に処する。

この罰金を全部納めることができないときは、二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、所有の不動産を平成二年一月及び二月を引渡時として売却譲渡したものであるが、全国自由同和会和歌山県経済商工連合会会長であった坂本肇、同連合会事務局長であった谷口清次、同連合会の事務に関与していた北田叔男、被告人と同居していた木大士と共謀して、被告人の所得税を免れようと企て、平成二年分の総合課税の総所得金額が二一九万九四〇〇円(別紙1の(一)総所得金額計算書参照)、分離長期譲渡所得金額が五億六七二二万七五二円であった(別紙1の(二)修正損益計算書参照)のに、虚偽の領収書を作成して架空の譲渡原価を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿して、平成三年三月一四日、大阪府泉佐野市下瓦屋三丁目一番一九号の所轄泉佐野税務署において、同税務署長に対し、その総合課税の総所得金額が二一九万九四〇〇円、分離長期譲渡所得金額が六四九二万三六七七円で、これに対する所得税額が一四二五万七七〇〇円(ただし、申告書では、計算誤りにより、税額一四二三万七〇〇円と記載したもの)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を経過させた。その結果、平成二年分の正規の所得税額一億三九八三万二〇〇〇円との差額一億二五五七万四三〇〇円(別紙2税額計算書参照)を免れた。

(証拠)

(注) 括弧内の漢数字は、証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書(五七から六一)

2  門脇一八(二〇)、楠本一夫(二一、二二)、道浦暁子(二三)、嶋田健哉(二四)、淡路登規子(三四)、村岡清和(三六)、木寛邦(三七)、坂本肇(六四、六六から六八)、谷口清次(八五、八六、八八)、北田叔男(九八)、木大士(一〇八から一一〇)の検察官調書

3  査察官調査書(一三から一七)

4  脱税額計算書(五)

5  証明書(六)

(法令の適用)

1  罰条 刑法六〇条、所得税法二三八条一項、二項

2  刑種の選択 懲役刑と罰金刑を併科

3  換刑処分 刑法一八条

4  刑の執行猶予 懲役刑について刑法二五条一項

(量刑事情)

本件は、被告人が、給与所得のほかに、所有不動産を譲渡したことに関して、五億六七二二万円余りの所得を得ながら、同居していた共犯者木の勧めに従い、脱税を組織的に請け負っていた同和団体に依頼して、架空の土地造成費用の計上により、所得の一部を除外して申告し、一億二五五七万円余りの所得税を脱税したという所得税法違反の事案であり、その脱税額が高額であるばかりか、ほ脱率も八九・八パーセントと極めて高率であって、納税義務に著しく違反する悪質な脱税行為である。

しかし、他方、被告人は、共犯者木の勧めに従って脱税を依頼したとはいえ、具体的な脱税工作には関与していないこと、既に本税及び附帯税の全額を納付していること、被告人は、本件脱税工作に関して同和団体に支払った謝礼金について、一部は返還を受けることができず、結局損害を被った形になっていること、これまで前科前歴はなく、社会人として特に問題のない生活を送ってきたこと、更に、本件について反省も認められること等被告人のために酌むべき事情も認められるので、これらの事情を総合考慮して、被告人を主文の懲役刑と罰金刑に処し、懲役刑については、その執行を猶予するのが相当と判断する。

(出席した検察官宮下凖二、弁護人樽谷進)

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 竹田隆 裁判官 平島正道)

別紙1の(一) 総所得金額計算書

<省略>

別紙1の(二) 修正損益計算書

<省略>

別紙2 税額計算書

<省略>

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