大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成3年(ヲ)5163号 決定 1991年6月11日

主文

相手方は別紙物件目録一記載の建物の占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならない。

理由

一  申立の趣旨及び理由の要旨

申立人は主文同旨の決定を求め、その理由として概略次のように主張した。

申立人は、平成二年八月三〇日、相手方を債務者兼抵当権設定者として、別紙物件目録二記載の土地(以下「本件土地」という)及び同目録三記載の建物(以下「本件建物」という)について、債権額金五億八〇〇〇万円の共同抵当権を設定したが、その後相手方が申立人に無断で地上建物を取り壊したため、本件土地のみについて競売を申立てた。ところが、相手方は差押登記の後である平成三年六月四日頃から本件土地上に建物の基礎工事を開始し、同月八日頃に別紙物件目録一記載の建物(以下「本件建物」という)を建築した。右の行為は明らかに競売の妨害を企図したものであつて、右建物に第三者が入れば尚更不動産の売却は困難になるから、相手方による占有移転の禁止の命令を求める。

二  当裁判所の判断

(1) 本件記録によれば、競売申立て前の平成三年三月二五日には本件土地は更地であつたが、同年六月四日頃から本件土地上に建物基礎工事が開始され、同月七日頃本件建物が建築されたこと及び平成二年八月三〇日に本件土地と地上建物につき申立人を抵当権者とする第一順位の共同抵当権が設定されたこと並びに本件土地につき差押登記が同年五月二八日なされ、開始決定正本が同月三一日に相手方に対し送達されたことがいずれも認められる。

(2) 抵当権が設定されても設定者はその物件の使用権限は失うわけではないが、競売手続が開始され差押登記がなされた後は、その権限はおのずから制限を受けるものというべきであつて、差押時点で更地である土地に建物を建設する行為は、建物収去が引渡命令としては不可能で、買受人は訴訟を提起する必要があることからいつて、かなり重大なことといえる。また、差押及び開始決定の送達と本件建物の建設の時期が接着していることからみて本件建物の建築は執行妨害の意図による可能性が強いと認められる。

したがつて、もともと申立人の抵当権で把握されていたのは底地としての当該土地に留まること(尤も、申立人はこのほかに建物について敷地利用権を別個に抵当権で把握していたのであるから、相手方が一方的に建物を取り壊した場合は抵当権者は更地としての価値を把握できるといつてよい)を考慮してもなお、著しく価格減少行為といわざるを得ない。

そうすると、相手方のこれ以上の価格減少行為を禁止する必要があることが認められ、第三者が関与することによつて建物収去が困難になるのを防ぐために本件建物の占有移転の禁止を求める申立人の申立ては理由がある。

よつて、民事執行法一八八条、五五条により、主文の通り決定する。

(裁判官 富川照雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例