大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成3年(ワ)1190号 判決 1993年12月21日

大阪市東成区深江南一丁目二番一一号

原告

瓜生製作株式会社

右代表者代表取締役

瓜生卓郎

右訴訟代理人弁護士

藤原光一

守口建治

谷口由記

右輔佐人弁理士

西澤茂稔

大阪府東

大阪市西岩田三丁目五番五五号

被告

ヨコタ工業株式会社

右代表者代表取締役

横田一夫

右訴訟代理人弁護士

深井潔

右輔佐人弁理士

辻本一義

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は別紙物件目録(一)及び(二)記載の油圧式トルクレンチを製造し、販売してはならない。

二  被告は前項記載の油圧式トルクレンチを廃棄せよ。

三  被告は原告に対し金三〇〇〇万円及びこれに対する平成三年三月五日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有している。(争いがない)

考案の名称 油圧式トルクレンチ

出願日 昭和五八年三月四日(実願昭五八-三二一〇一)

出願公開日 昭和五九年九月一九日(実開昭五九-一四〇一七三)

出願公告日 平成元年九月四日(実公平一-二九〇一二)

設定登録日 平成二年四月一八日

登録番号 第一八一三八七六号

実用新案登録請求の範囲

「ロータにて回動されるライナーにまゆ形をした空洞を形成し、この空洞の内周面に設けた四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし、かつこれと平行なる直線上に位置せしめて短軸線に対して非対称に形成し、また主軸に嵌挿したる二枚の羽根は主軸中心線上を通り、かっこの羽根間の主軸外周面に形成されるシール面とを具備し、このシール面を主軸中心を通る直線即ち羽根溝の中心を通る直線に直交する直線よりライナー室と同じ値だけ位置をずらした平行なる直線上に位置せしめ、かつライナー室内に主軸を同心的に配置し、ロータにて回動されるライナー一回転に対し一打撃を得るようになした油圧式トルクレンチ。」(別添実用新案公報(一)参照)

二  本件考案の構成要件を分説すると次のとおりである。(甲二)

A  ロータにて回動されるライナーにまゆ形をした空洞を形成していること。

B  この空洞の内周面に設けた四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめていること。

C  ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし、かつこれと平行なる直線上に位置せしめて短軸線に対して非対称に形成していること。

D  また主軸に嵌挿したる二枚の羽根は主軸中心線上を通り、かつこの羽根間の主軸外周面に形成されるシール面とを具備していること。

E  このシール面を主軸中心を通る直線即ち羽根溝の中心を通る直線に直交する直線よりライナー室と同じ値だけ位置をずらした平行なる直線上に位置せしめていること。

F  ライナー室内に主軸を同心的に配置していること。

G  ロータにて回動されるライナー一回転に対し一打撃を得るようになしたこと。

H  油圧式トルクレンチであること。

三  本件考案の目的、作用効果は次のとおりである。(甲二)

1  目的(公報(一)1欄21~24行)

二枚のブレードを用いライナー一回転に一打撃を打つことにより油圧室打撃トルク発生装置内の油圧をあまり高めることなく安定した高トルクを得られるようにしたものである。

2  作用効果(公報(一)6欄18~28行)

(一) ライナーの一回転に対し、一回パルスを発生させるのみとなり、従って一パルスのトルクが大きくなる。

(二) 主軸・ライナーとも部品が略対称形のためバランスが良く、二枚の羽根によりライナー室の内圧上昇が偶力として働くため効率が良く、強力な打撃力(トルク)を得ることができる。

(三) 一枚羽根の場合、軸の円周方向に片側のみ回転力が働くため、軸受けに片よりが働き回転力にロスがあったがこの点においても有利である。

(四) 二枚羽根のため、シール性が良く、内圧上昇の効率が良くなる。

四  被告は、昭和六〇年九月頃から、別紙物件目録(一)及び(二)記載の油圧式トルクレンチ(以下両者をまとあて「被告製品」という)を、業として、製造、販売している。(争いがない)

五  被告製品は本件考案の構成要件A、B、D、F、G及びHを具備している。(争いがない)

六  請求の概要

被告製品が本件考案の技術的範囲に属することを理由に、被告製品の製造販売の停止等を求めるとともに、本件考案の出願公告日の翌日である平成元年九月五日から平成三年一月末日までの間の実施料相当損害金三〇〇〇万円の支払を求める。

七  主な争点

1  被告製品が本件考案の構成要件C及びEを具備するか。

(一) 右各構成要件のシール面には、被告製品のようにライナー中心を通る短軸線に交わるものは含まれないか。

(二) 右シール面がその中間点においてライナー中心を通る短軸線と交わる被告製品の構成は、右各構成要件といわゆる均等と評価できるか。

2  被告製品は本件考案を利用したものといえるか。

3  被告製品が本件考案の技術的範囲に属する場合、被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(被告製品が本件考案の構成要件C及びEを具備するか)

1  右各構成要件のシール面には、被告製品のようにライナー中心を通る短軸線に交わるものは含まれないか。

(原告の主張)

(一) 同構成要件中のシール面は、実用新案登録請求の範囲の記載から明らかなように、「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」構成のシール面を「具備する」、すなわち全ての断面という限定をせずに、「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」部分があるものであって、その構成を採ることによって、一回転につき二回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有するものである。

被告製品は、右シール面がその中間点一点においてのみライナー中心を通る短軸線と交わるけれども(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)、その余のいかなる点においても「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」のであって、被告製品はそのようなシール面を「具備」するがために、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有するのである(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5のシール面は一回転につき二回ライナーと主軸のシール面が一致するが、一回転一打撃の作用効果に影響を及ぼさない部分である)。したがって、被告製品は本件考案の構成要件C及びEを具備する。

実用新案登録請求の範囲にいう「シール面」は、全て断面におけるシール面(シールポイント)を意味しているものである。本件実用新案登録出願願書添付の明細書は、本件考案の構成及び作用効果を最も的確かつ容易に理解できる表現形式として、断面の状態で説明し、断面図を添付しているのである。そして、その第2図(公報(一)四~五頁の断面図)でも明らかなように、四つのシール面は断面におけるシール面(シールポイント)を意味しているのである。実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明中に、長手方向の「全ての」断面において、二つのシール面が短軸線に対して位置がずれている旨を示唆する記載は全くない。

被告主張のように、シール面を一連で一本のものとして解釈すると、実用新案登録請求の範囲にいう「ずらす」という意味が理解できなくなってしまう。蓋し、右「ずらす」というのは、シール面(シールポイント)を結ぶ直線をライナー内周面短軸線より位置をずらし、かつ、これと平行なる直線上に位置せしめて短軸線に対し非対称に形成することであり、短軸線より位置をずらすという意味は、原告のようにシール面を断面で捉らえてこそ正しい理解が得られるのである。

(二) 被告は、乙第四号証(別添実用新案公報(二))の原告の実用新案登録出願(本件考案の後願)の第3図(A)と第4図(A)のシール面の構造が被告製品のシール面構造そのものであるので、原告が同じ構造のシール面の技術を再度重複して出願する筈がないことを理由に、原告はこの後願の考案は先願の本件考案とは異なるものと認識していた筈であり、この原告の両出願内容からみて、被告製品のシール面構造は本件考案とは異なる構造であると考えることができると主張する。

しかし、実用新案法二六条で準用する特許法七〇条一項には、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基いて定めなければならない。」と規定されており、技術的範囲を定めるのに後願の考案が影響することはない。同一人が前後して二つの出願をしたからといって、その出願人がその二つの出願の考案が異なるものと認識していたと考えるのは早計である。すなわち、一般に、先の出願の明細書や図面に記載していない実施例が、その考案に含まれることを確認するために後日新たな出願をすることはよくあることである。これは、出願人としては、先の考案と同一であるとの理由で拒絶されてもよく、また、万一先の考案に新たな考案が加わっているとして登録されてもよいとの考えから、屡々行われていることであるし、また、同一人が前後して二つの出願をする必要性がある場合もある。本件原告の右後願はまさに原告において後願を行う必要があった場合である。

すなわち、原告が本件考案を出願しそれが昭和五九年九月一九日に出願公開された後、昭和六〇年九月三〇日に被告は被告製品と同一構造の油圧式トルクレンチにつき特許出願をしたのであるが、原告としては、本件実用新案登録出願がシール面の全体形状を限定していないことから、被告出願の油圧式トルクレンチが本件考案の技術的範囲に含まれると考えていたが、念のために、シール面の全体形状において被告製品の構成と同一のもの(公報(二)第3図(A)、第4図(A))及び他のもの(同公報第3図(B)及び(C)、第4図(B)及び(C))を後願として昭和六一年八月四日に出願したのである。そして、被告は、原告が右後願の出願をした後に、シール面の全体形状が被告製品と異なる六種類のものについて特許出願し、国内優先権主張をしたが、右六種類のものについては、原告の右後願出願後の出願であり、国内優先権主張の基礎とされた被告の先願には記載されていなかったことから、国内優先権を否定されたものであり、この点においても原告の右後願が功を奏しているのである。

したがって、原告の右後願を根拠とした被告の右主張は失当というべきである。

(被告の主張)

(一) 実用新案登録請求の範囲中の「空洞の内周面に設けた四つのシール面」との記載、考案の詳細な説明中の「この二の羽根9、9の間の主軸外周面には主軸外端面より少し突出したシール面7a、7b(7aの誤記と認められる)を形成するが、の(「この」の誤記と認められる)両シール面7a、7b(7aの誤記と認められる)間を結ぶ直線はこれと平行なる主軸中心を通る直線とはある一定の間隔を有して中心線よりいずれか片方に寄るものとし、かつ中心線と、主軸中心とシール面とを結ぶ直線とのなす角度を“a”とするものである。」(公報(一)3欄27~34行)、「互いに対向するライナーのシール面8b、8b及び主軸のシール面7a、7aが夫々中心を通す直線より数度偏心せしめているので両シール面7a、8a間に隙間が生じ」(公報(一)5欄28~31行)、「対向する二つのシール面の中心をライナー室中心を通る直線より数度偏心させ」(公報(一)6欄14~16行)との記載に照らして考えると、本件考案の「シール面」は夫々一連で一本のものを意味していると解すべきであり、実用新案登録請求の範囲にいう「二つのシール面を……位置をずらし」との構成は、一連で一本のものとしてのシール面の位置を、短軸線より一方に寄り、かつ、その寄る程度はどの部分であっても一定の角度“a”を保つように全体としてずらすことである。したがって、被告製品のようにライナー中心を通る短軸線に交わるシール面は、本件考案の構成要件C及びEのシール面には含まれない。

(二) なお、本件考案の出願当時、油圧式トルクレンチにおいて、一回転一打撃の構造が周知であったことは勿論(乙一二、一三、一六)、羽根を二枚にすることも(乙一五)、羽根を四枚にすることも(乙一四)周知であったから、一回転一打撃の作用効果を有する構成は全て本件考案の技術的範囲に含まれるかの如くいう原告主張は明らかに誤りである。

本件考案出願当時の油圧式トルクレンチのシール機構においては(乙一二~一六)、シール面の中心線はいずれもライナー室中心を通る直線と平行に設けるという技術思想しかなく、本件考案においてもライナー室中心を通る直線と平行に設けるという構成以外の構成を示唆する記載はないから、当然、本件考案も、シール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるという従来技術を前提とした上で、このシール面をどちらか一方にずらした(偏心させた)ところに新規性・進歩性があるのである。

他方、被告製品の、シール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるのではなく、これと傾斜させることとする技術思想は、被告側が初めて創作したものである。

(三) 右被告の見解が正しいことは、次の諸事実からも明らかである。すなわち、

(1) 原告は、本件考案の出願後に乙第四号証の実用新案登録出願をしているが(公報(二))、この後願の願書添付図面には、同考案の実施例として被告製品のシール面の構造と同一のものが図示されている(第3図(A)と第4図(A))。その上、本件実用新案登録請求の範囲には、「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし」と記載しているのに対し、被告製品の構成を含む原告の右後願の実用新案登録請求の範囲には、「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線に対して交わるようにして配設し」と記載していた。このように原告自ら出願の後願の実用新案登録請求の範囲の記載によっても、短軸線上に近接してある他の二つのシール面の構成は、被告製品においては「短軸線に対して交わる」ものであり、本件考案の「短軸線より位置をずらし」の構成とは異なるものであることが明らかである。この事実からみても、原告自身本件考案のシール面の構造と被告製品のシール面の構造とは、技術的に異なる構造のものと認識していたことは明らかである。

(2) 被告は、被告製品の構造につき、日本国特許庁、アメリカ合衆国特許商標庁、欧州特許庁、カナダ国特許庁、中華民国(台湾)経済部中央標準局及び大韓民国特許庁に対し特許出願していたところ、いずれの国においても、既に本件考案が公知資料として認識されている状況下において、被告製品の構造に新規性と進歩性が認められ、すべて審査にパスしている。これは、本件考案のシール面を「ずらす」構成は、一連で一本のシール面の位置を全体としてずらしたものであり、被告製品のシール面はこのような「ずらす」構成を採用せず、「傾斜させる」構成を採用したものであって、両構成間には技術的差異があると認められたからに他ならない。

(3) 更に、原告は、「イ号物件・・は、現実には、製作上の欠点を有するのである。すなわち、シール突条はシールさせるという目的から、もともと製作上高度の精度が要求されるところ、さらに、イ号物件の場合には、シール面がライナー内周面および主軸外周面という曲面であるため、シール突条をこの曲面に沿って斜めに設けなければならないため、製作技術上、非常に精度の高い工程を経なければならず、主軸面の切削及びライナー鋳型成型において加工性に劣り、製作上の欠点を有しているのである(当業者においては、このような加工性に劣る構造は回避するのが一般である)。」と主張している(原告準備書面〔第九回〕五頁)。原告の主張によっても、本件考案と被告製品を比較した場合、被告製品は、理論上回転バランスがよいとのメリットを有するが、加工性に劣り製作上の欠点を有しているというものであり、この本件考案と被告製品との作用効果の差異は両者の構成が異なることから生じる結果であり、原告自ら両者の構成が異なるものであることを明示するものである。

2  右シール面がその中間点においてライナー中心を通る短軸線と交わる被告製品の構成は、本件考案の構成要件C及びEといわゆる均等と評価できるか。(原告の主張)

仮に実用新案登録請求の範囲にいうシール面が被告主張のとおりであるとしても、本件考案は、二枚のブレード(羽根)を用いて、ライナー一回転につき主軸とライナーの各シール面を一回だけ一致させることにより、一回転につき一打撃を得る作用効果を有するものであり、被告製品も、右シール面がライナー中心を通る短軸線の中間点一点においてのみ交わる(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)以外は、その余のいかなる点においても「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」のであって、被告製品はそのようなシール面を具備するがために、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有しており、課題解決のための技術原理は本件考案と全く同一である。

本件考案と被告製品の相違点である、シール面の中間点一点においてのみ交わる(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)という技術思想は、一回転につき二打撃を発生させるという従来技術そのものであり、一回転一打撃という目的上何ら作用効果を有せず、その技術的課題の解決には寄与しない部分に過ぎず、実用新案登録請求の範囲にいうシール面を被告製品の構成に置換しても全体の作用効果には差異は生じない。そして、当業者において、本件実用新案公報の開示を得た場合、右シール面の中間点がライナー中心を通る短軸線と交わる被告製品の構成を採っても、一回転一打撃という全体の作用効果上同一の結果を得ることが出来ることに容易に想到することができる。しかも、被告製品には、製作過程上及び構造耐力上の問題点があることから、当業者としてはその問題点に気付いて、そのような構成は回避しようとするのが一般であり、敢えてその構成を採用するためには、他になにか優れた作用効果等がなければならないが、優れた点はなにもない。

したがって、右シール面の中間点がライナー中心を通る短軸線と交わる被告製品の構成は、本件考案の構成要件C及びEといわゆる均等と評価されるべきである。

(被告の主張)

本件考案のシール面の中心はライナー室中心を通る直線より数度偏心させており、この偏心のために主軸の回転バランスが悪くなって、作動時に偏心に起因する振動が生じる。特に機種が大型になるに従ってこの振動は大きくなり、作業員に対し大きな悪影響を与える。これに対し、被告製品ではシール面の中心はライナー室中心を通る直線上に位置して全く偏心させていないため、偏心に起因する振動が生じないという格別優れた効果を奏している。このように本件考案の構成を採用せず、被告の構成を採用したことにより格別優れた効果を奏する以上、均等と評価されるべきいわれはない。

二  争点2(被告製品は本件考案を利用したものといえるか)

(原告の主張)

仮に被告製品が本件考案に比し回転バランスが良いとしても、それは右シール面がその中間点においてのみライナー中心を通る短軸線と交わり(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)、短軸線に対しずれない構成を採ったことによるものである。しかし、被告製品も中間点一点(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)以外は、その余のいかなる点においても「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」構成のシール面を具備している。

本件考案は、一回転一打撃の作用効果を得るために、主軸及びライナーの長手方向の断面において二つのシール面を結ぶ直線がライナー内周面短軸線に対してずれている構成のシール面を具備することが必須の構成要件であり、被告製品も、一回転一打撃の作用効果を得るために、この構成を全部含んでいるといえる。

してみると、被告製品は、右にいう「ずらす」という本件考案の要旨全部を含んだ上、長手方向の中間点一点において、いわゆる「ずらさない」という新たな技術的要素を付加したものといえる。そして右付加部分は、一回転一打撃を得るという目的及び作用効果上の本質的部分には全く寄与しない技術的要素である。

したがって、被告製品は本件考案の構成を全部一体性を失うことなく含んでいるから、本件考案を利用するものであり、利用発明として本件考案の技術的範囲に属するものというべきである。

(被告の主張)

利用関係が成立するためには、被告製品が本件考案の要旨全部(全ての構成要件)を具備し、更に新たな技術的要素を付加したものであることが必要である。ところが、被告製品は本件考案の構成要件C及びEを欠如するものであるから、本件考案との間にこのような利用関係が成立しないことは明らかである。

三  争点3(被告が賠償すべき原告に生じた損害金額)

(原告の主張)

被告は、本件考案の出願公告日の翌日である平成元年九月五日から平成三年一月末日までの間、被告製品を合計五〇〇〇個製造し、一個一〇万円で販売し、原告はこれにより少なくとも実施料相当額三〇〇〇万円(実施料率は販売価格の六%が相当)と同額の損害を被った。

第四  争点に対する判断

一  争点1(被告製品が本件考案の構成要件C及びEを具備するか)

1(同構成要件のシール面には、被告製品のようにライナー中心を通る短軸線に交わるものは含まれないか)

本件実用新案登録請求の範囲には、「・・・空洞の内周面に設けた四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面を・・・形成し・・・」と記載されており、特にシール「面」と記載されていることから、右にいう夫々の「シール面」は、一定の広がりをもつものであり、かつ、右実用新案登録請求の範囲の記載からみて、それはライナー内周面(及び主軸外端面)においてその軸心線方向に連続した形状のものを指称しているものと認めるのが相当である。また、本件考案の実施例に関し、考案の詳細な説明中に、「この二の羽根9、9の間の主軸外周面には主軸外端面より少し突出したシール面7a、7b(7aの誤記と認められる)を形成するが、の(「この」の誤記と認められる)両シール面7a、7b(7aの誤記と認められる)間を結ぶ直線はこれと平行なる主軸中心を通る直線とはある一定の間隔を有して中心線よりいずれか片方に寄るものとし、かつ中心線と、主軸中心とシール面とを結ぶ直線とのなす角度を“a”とするものである。」(公報(一)3欄27~34行)、「短軸方向に対向する二つのシール面8a、8aは、キヤビテイ中心を通る短軸線よりも右もしくは左(ライナーの回転によって方向が変位する)にある一定間隔だけ位置がずれた前記短軸線と平行なる直線上にあってしかもキヤビテイ短軸線と、キユビテイ(「キヤビテイ」の誤記と認められる)中心とシールポイント8aとを結ぶ直線とのなす角度が“a”となるように定めるものであり」(公報(一)3欄43行~4欄7行)、「互いに対向するライナーのシール面8b、8b及び主軸のシール面7a、7aが夫々中心を通す直線より数度偏心せしめているので両シール面7a、8a間に隙間が生じ」(公報(一)5欄28~31行)、「対向する二つのシール面の中心をライナー室中心を通る直線より数度偏心させ」(公報(一)6欄14~16行)と記載されており、かつ、願書添付図面(公報(一)四~五頁)第2図は、すべてライナー又は主軸の軸心線に対し垂直な断面形状での説明であるが、その断面形状の記載に際して、特にその断面位置を所定の位置に限定する旨の記載はなく、記載自体からみて任意の位置での断面形状についての記載(どの位置での断面形状も同じものとしての記載)と認められる。

以上の事実に加えて、<1>本件考案出願当時の油圧式トルクレンチのシール機構においては、シール面の中心線はいずれもライナー室中心を通る直線と平行に設けるという技術であり(乙一二~一六)、本件考案の詳細な説明中においてもライナー室中心を通る直線と平行に設けるという構成以外の構成を示唆する記載はないから、当然、本件考案も、シール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるという従来技術を前提としたものと解さざるを得ないこと、他方、被告製品の、シール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるのではなく、これと傾斜させることとする技術思想は、被告側が初めて創作したものであること(弁論の全趣旨)、<2>原告は、本件考案の出願後に乙第四号証の実用新案登録出願をしているが(公報(二))、この後願の願書添付図面には、同考案の実施例として被告製品のシール面の構造と同一のものが図示されている(第3図(A)と第4図(A))上、本件実用新案登録請求の範囲には、「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし」と記載しているのに対し、被告製品の構成を含む原告の右後願の実用新案登録請求の範囲には、「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線に対して交わるようにして配設し」と記載していたこと、<3>本件考案出願当時、一般に、被告製品のように短軸線上に近接してある他の二つのシール面が短軸線に対して交わる構成の場合には、シール面がライナー内周面及び主軸外周面という曲面であるため、シール突条をこの曲面に沿って斜めに設けなければならないため、製作技術上、非常に精度の高い工程を経なければならず、主軸面の切削及びライナー鋳型成型において加工性に劣り、製作上の欠点を有している(当業者においては、このような加工性に劣る構造は回避するのが一般である)と認識されていたこと(原告準備書面〔第九回〕五頁)を併せ考えると、本件実用新案登録請求の範囲にいう「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし、かつこれと平行なる直線上に位置せしめて短軸線に対して非対称に形成し」との構成は、一連で一本のものとしてのシール面の位置を、全体として、ライナー中心を通る短軸線よりずらし、かつ、これと平行なる直線(どの位置においても、短軸線とシールポイントとを結ぶ直線とのなす角度が“a”となる関係にある直線)上に位置せしめたものと解すべきである。したがって、被告製品のようにライナー中心を通る短軸線に交わる直線上に位置するシール面は、右の関係を生じることは絶対にないから、本件構成要件C及びEのシール面には含まれないといわざるを得ない(乙二九判定書参照)。

そうすると、被告製品は、本件考案とは構成そのものを異にし、その技術的範囲に属しないものというべきである。

原告は、本件考案の技術的範囲は、全ての断面という限定をせずに、軸心方向に対し垂直な断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている部分があるということが必須構成要件であり、それによって一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有するものは、本件考案の技術的範囲に含まれる旨、また被告製品に右交わる点が唯一点あることによって、技術的本質には何ら影響はなく、被告製品全体の作用効果も一回転一打撃を有するもので、本質的には同一である旨主張する。しかしながら、軸心方向に対し垂直な断面において二つのシール面が短軸線に対してずれている部分があることによって、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有するものは、すべて本件考案の技術的範囲に含まれると解することは許されず、本件考案は、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を得るために、「ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし、かつこれと平行なる直線上に位置せしめ」る構成(二つのシール面はライナー中心を通る短軸線より同一方向に平行に位置をずらす構成)を採用したのであり、他方、被告製品においては、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を得るという目的は同一であるが、その作用効果を得るために、ライナー(主軸)中心を通る短軸線とシール面の中間点が交わる点を中心にしてシール面を傾斜させる(右交点より先の直線とそれより後の直線傾斜角度は同一であるが、方向は正反対となる)構成を採用したものであり、右構成を採用したことにより、本件考案が二つのシール面をライナー中心を通る短軸線より同一方向に位置をずらす構成を採用したことに起因する重量バランスの不均等によって起こる回転振動を避止できるという本件考案にはない独自の効果を得ることができると認められるから(甲二、一一~一四、一五、一八、一九、乙四、六~一一の各1、2、一二~一七、一八の1、2、一九の1~4、二〇~二五、三〇)、原告の右主張はとうてい採用できない。なお、原告被告双方が実施した工具振動レベルの測定結果(甲一五、一八、一九、乙三〇)からは、測定対象工具中の動きのある箇所の全ての部位で振動が発生するため、本件で問題のライナーと主軸のシール機構部分から発生する振動のみを区分して測定することができないので明確な結論は得がたいけれども、少なくとも無負荷時においては原告製品より被告製品の方が振動が少ないと認められる。そして、無負荷時にはその工具自身の構造のみに起因する振動が生じていると考えられるのであり、工具の使用時には、無負荷時にも作業員はその工具を握持してその振動を受けるから、無負荷時の振動の多寡は重要な考慮要素となることは明らかである。

2(右シール面がその中間点においてライナー中心を通る短軸線と交わる被告製品の構成は、本件考案の構成要件C及びEといわゆる均等と評価できるか)

原告は、仮に実用新案登録請求の範囲にいうシール面が被告主張のとおりであるとしても、本件考案は、前記構成を採ることによって、二枚のブレード(羽根)を用いて、ライナー一回転につき主軸とライナーの各シール面を一回だけ一致させることにより、一回転につき一打撃の作用効果を有するものであり、被告製品も、右シール面がその中間点においてのみライナー中心を通る短軸線と交わる(別紙添付図面第6図〔断面図〕5-5)以外は、その余のいかなる点においても「長手方向の断面において、二つのシール面が短軸線に対してずれている」のであって、被告製品はそのようなシール面を具備するがために、一回転につき一回だけライナーと主軸のシール面が一致して一回転一打撃の作用効果を有しており、課題解決のための技術原理は本件考案と全く同一であり、本件考案のシール面を被告製品の構成に置換しても全体の作用効果には差異はなく、当業者において、本件実用新案公報の開示を得た場合、被告シール面の構成を容易に想到することができるから、被告シール面の構成は、本件考案の構成要件C及びEといわゆる均等と評価されるべきであると主張する。

しかしながら、<1>本件考案の二ブレード式インパルスレンチは、内周面とメインシャフトに形成したシール部をいずれも偏心させているため、重量バランスに不均衡を生じ回転振動の原因となるという問題があったが、シール面をその中間点(ライナー中心を通る短軸線と交わる点)を中心に傾斜させた直線上に位置させる構成を採用することによって、この問題を解決したのが被告製品であり、被告製品の右構成においてはライナーの重量バランスが安定し、回転振動を生じる原因を避止できるので、労働衛生上、手指障害対策等に大きな効果を発揮するし、また、被告製品では、そのため二枚のブレードに油圧力が均等に作用するので、本件考案のものより、ライナーの回転の慣性力が大となり、強力な打撃(締めつけ)トルクが得られる等の、本件考案にない作用効果が得られること(甲二、一一~一四、一五、一八、一九、乙四、六~一一の各1、2、一二~一七、一八の1、2、一九の1~4、二〇~二五、三〇)、<2>前記のとおり、本件考案出願当時の油圧式トルクレンチのシール機構においては、シール面の中心線はいずれもライナー室中心を通る直線と平行に設けるという技術であり、本件考案の詳細な説明中においてもシール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるという構成以外の構成を示唆する記載は全くなく、被告製品の、シール面をライナー室中心を通る直線と平行に設けるのではなく、これと傾斜させることとする技術思想は、被告側が初めて創作したものであって、本件考案出願当時、一般に、被告製品のように短軸線上に近接してある他の二つのシール面が短軸線に対して交わる構成の場合には、シール面がライナー内周面及び主軸外周面という曲面であるため、シール突条をこの曲面に沿って斜めに設けなければならないため、製作技術上、非常に精度の高い工程を経なければならず、主軸面の切削及びライナー鋳型成型において加工性に劣り、製作上の欠点を有している(当業者においては、このような加工性に劣る構造は回避するのが一般である)と認識されていた等の事情に照し、被告製品の右構成が推考容易と考えることもできないこと、これらの事実関係が認められる以上、原告の均等の主張は採用できない。

3(結論)

以上のとおりであるから、被告製品が本件考案の構成要件C及びEを具備するということはできない。

二  争点2(被告製品は本件考案を利用したものといえるか)

利用関係が成立するためには、被告製品が本件考案の要旨全部(全ての構成要件)を具備していることが必要である。ところが、前記のとおり、被告製品は本件考案の構成要件C及びEを欠如するものであるから、本件考案を利用する関係が成立しないことは明らかである。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 阿多麻子)

物件目録(一)

一 名称 油圧式トルクレンチ(製品名・2ブレード式インパルスレンチ)

二 形状 ピストル型

三 形状・構造は別紙図面のとおり

第1図はレンチ全体の断面図、第2図はライナーの断面図、第3図はメインシャフト(主軸)の斜視図、第4図はメインシャフト(主軸)の側面図、第5図は油圧パルス発生装置の断面図でA、B、C、Dの各図はライナー一回転中のメインシャフト(主軸)とライナーの位置関係の変化を示す。第6図は主軸を回転軸線に直角に断面した断面図。

四 図面中の数字及び記号の説明

1はレンチ本体、2はモータ、3は油圧パルス発生装置、4はハンドル、5は給気口、6は排気口、7は正逆回転切換バルブ、8はスロットルレバー、9はライナーケース、10はライナー、11はメインシャフト(主軸)、12はライナー上板、13はライナー下板、14はメインシャフトの溝部、15はバネ、16は羽根(ブレード)、17は出力調整弁挿入孔、18は導孔、19は出力調整弁、20は重量バランス孔、21はOリングを示す。a、b、c、dはライナーのシール面、x、yはメインシャフトのシール面を示す。

五、構成及び作用効果は次のとおりである。

(一) 構成

1 ロータにて回動されるライナーにまゆ型をした空洞を形成し、この空洞の内周面に四つのシール面を形成し、

2 この四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、

3 ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面(第2図のc及びd)のそれぞれを、長手軸心線とライナー回転軸線とを通る平面(仮想面)に投影した場合に、回転軸線に交わり、かつ、二つのシール面が一致するようライナー内周に相対向して形成し、すなわち、回転軸線に交わる点を除き、回転軸線のいかなる点で回転軸線に直角に(第5図の如く)断面しても、二つのシール面はライナー内周面の中心を通る短軸線に対し同方向に位置をずらし、かつ、該短軸線に平行な直線上にあり、短軸線に対して非対称に形成し、

4 また、主軸に嵌插した二枚の羽根は主軸中心線上を通り、かつ、この羽根間の主軸外周面にシール面を形成し、

5 主軸の二つのシール面(第2図ないし第4図のx、y)のそれぞれを、主軸中心を通る直線すなわち羽根溝の中心を通る直線と主軸回転軸線とを通る平面(仮想面)に投影した場合に、回転軸線に対しライナーのシール面と同じ角度で傾斜して交わり、かつ、二つのシール面が一致するよう主軸外周面に形成し、すなわち、主軸回転軸線に交わる点を除き、主軸回転軸線のいかなる点で主軸回転軸線に直角に(第5図の如く)断面しても、主軸の二つのシール面は、主軸中心を通る直線すなわち羽根溝の中心を通る直線に直交する直線(前記ライナー内周面の中心を通る短軸線に同じ)よりライナー室と同じ値だけ位置をずらした直線上に形成し、

6 かつ、ライナー室内に主軸を同心的に配置し、

7 ロータにて回動されるライナー一回転に対し、一打撃を得るようになした、

8 油圧式トルクレンチ

(二) 作用効果

1 ライナーの一回転に対し一回の打撃(パルス)を発生させるために、一打撃(パルス)の打撃力(トルク)が大きくなる。

2 また、主軸、ライナーとも部品は略対称形のため、バランスが良く、二枚の羽根によりライナー室の内圧上昇が偶力として働くため効率が良く、強力な打撃力(トルク)を得ることができる。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

第6図

<省略>

物件目録(二)

一 名称 油圧式トルクレンチ(製品名・2ブレード式インパルスレンチ)

二 形状 ストレート型

三 形状・構造は別紙図面のとおり

第1図はレンチ全体の断面図、第2図はライナーの断面図、第3図はメインシャフト(主軸)の斜視図、第4図はメインシャフト(主軸)の側面図、第5図は油圧パルス発生装置の断面図でA、B、C、Dの各図はライナー一回転中のメインシャフト(主軸)とライナーの位置関係の変化を示す。第6図は主軸を回転軸線に直角に断面した断面図。

四 図面中の数字及び記号の説明

1はレンチ本体、2はモータ、3は油圧パルス発生装置、5は給気口、6は排気口、7は正逆回転切換バルブ、8はスロットルレバー、9はライナーケース、10はライナー、11はメインシャフト(主軸)、12はライナー上板、13はライナー下板、14はメインシャフトの溝部、15はバネ、16は羽根(ブレード)、17は出力調整弁挿入孔、18は導孔、19は出力調整弁、20は重量バランス孔を示す。a、b、c、dはライナーのシール面、x、yはメインシャフトのシール面を示す。

五、構成及び作用効果は次のとおりである。

(一) 構成

1 ロータにて回動されるライナーにまゆ型をした空洞を形成し、この空洞の内周面に四つのシール面を形成し、

2 この四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、

3 ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面(第2図のc及びd)のそれぞれを、長手軸心線とライナー回転軸線とを通る平面(仮想面)に投影した場合に、回転軸線に交わり、かつ、二つのシール面が一致するようライナー内周に相対向して形成し、すなわち、回転軸線に交わる点を除き、回転軸線のいかなる点で回転軸線に直角に(第5図の如く)断面しても、二つのシール面はライナー内周面の中心を通る短軸線に対し同方向に位置をずらし、かつ、該短軸線に平行な直線上にあり、短軸線に対して非対称に形成し、

4 また、主軸に嵌插した二枚の羽根は主軸中心線上を通り、かつ、この羽根間の主軸外周面にシール面を形成し、

5 主軸の二つのシール面(第2図ないし第4図のx、y)のそれぞれを、主軸中心を通る直線すなわち羽根溝の中心を通る直線と主軸回転軸線とを通る平面(仮想面)に投影した場合に、回転軸線に対しライナーのシール面と同じ角度で傾斜して交わり、かつ、二つのシール面が一致するよう主軸外周面に形成し、すなわち、主軸回転軸線に交わる点を除き、主軸回転軸線のいかなる点で主軸回転軸線に直角に(第5図の如く)断面しても、主軸の二つのシール面は、主軸中心を通る直線すなわち羽根溝の中心を通る直線に直交する直線(前記ライナー内周面の中心を通る短軸線に同じ)よりライナー室と同じ値だけ位置をずらした直線上に形成し、

6 かつ、ライナー室内に主軸を同心的に配置し、

7 ロータにて回動されるライナー一回転に対し、一打撃を得るようになした、

8 油圧式トルクレンチ

(二) 作用効果

1 ライナーの一回転に対し一回の打撃(パルス)を発生させるために、一打撃(パルス)の打撃力(トルク)が大きくなる。

2 また、主軸、ライナーとも部品は略対称形のため、バランスが良く、二枚の羽根によりライナー室の内圧上昇が偶力として働くため効率が良く、強力な打撃力(トルク)を得ることができる。

3 一枚羽根の場合のように軸受けに片寄りが働いて回転力にロスが生じることがない。

4 二枚羽根のために、シール性が良く、内圧上昇の効率が良くなる。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

第6図

<省略>

公報(一)

<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告

<12>実用新案公報(Y2) 平1-29012

<51>Int. Cl.4B 25 B 21/02 識別記号 庁内整理番号 B-7726-3C <24><44>公告 平成1年(1989)9月4日

<54>考案の名称 油圧式トルクレンチ

<21>実願 昭58-32101 <55>公開 昭59-140173

<22>出願 昭58(1983)3月4日 <43>昭59(1984)9月19日

<72>考案者 龍野光司 奈良県生駒郡安堵村笠目682-9

<71>出願人 瓜生製作株式会社 大阪府大阪市東成区深江南1丁目2番11号

<74>代理人 弁理士 林清明

審査官 後藤正彦

<56>参考文献 特公 昭40-20633(JP、B1)

<57>実用新案登録請求の範囲

ロータにて回動されるライナーにまゆ形をした空洞を形成し、この空洞の内周面に設けた四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、ライナー内周面短軸線上に近接してある他の2つのシール面をライナー中心を通る短軸線より位置をずらし、かつこれと平行なる直線上に位置せしめて短軸線に対して非対称に形成し、また主軸に嵌挿したる2枚の羽根は主軸中心線上を通り、かつこの羽根間の主軸外周面に形成されるシール面とを具備し、このシール面を主軸中心を通る直線即ち羽根溝の中心を通る直線に直交する直線よりライナー室と同じ値だけ位置をずらした平行なる直線上に位置せしめ、かつライナー室内に主軸を同心的に配置し、ロータにて回動されるライナー1回転に対し1打撃を得るようになした油圧式トルクレンチ。

考案の詳細な説明

本考案は油圧式トルクレンチに関し、その目的は2枚のブレードを用いライナー回転に-打撃を打つことにより油圧室打撃トルク発生装置内の油圧をあまり高めることなく安定した高トルクを得られるようにしたものである。ニユーマチツクツールのトルクレンチに於いては、ロータの回転力により機械的な方法で打撃力を発生せしめ、これを利用して所望のトルクに変換している。従つてこの機械的な方法で打撃トルクを得る方式では、その打撃音が騒々しく、騒音公害の起因ともなり、又打撃による振動にて作業者がけんけんわん症候群或は、白ろう病にかかる虞がある。

このため最近では、打撃トルクを得る方法として油圧を用い、騒音と振動を防ぐ方式のトルクレンチが有望視され、開発されている。しかし油圧打撃トルク発生装置として主軸に一枚のブレードを設けたもの、複数枚例えば特公昭41-5800の如く四枚のブレードを設けたもの等があるが、前者では主軸を嵌挿した回転自在なるライナー内即ち打撃トルク発生装置の油圧が高くなりシール方法がより精密かつ強固な構造になると共にブレードには主軸円周方向に片側のみに圧力が働き主軸のかたよりが出力の損失トルクのバラツキ又焼付等偶力が生じる欠点がある。また後者ではライナーの1回転に対し少なくとも2回の打撃が発生するためライナー及びケースの回転質量の慣性が少なく打撃トルクが低くなる。また特公昭40-20633号公報記載のものはエヤーモータにより回転されるライナーを持つ空気トルクレンチを開示している。ライナーはその外周面に4つのシールポイントを持ち、それらのシールポイントはライナー室の中心を通過する直線に対し2、3度偏心しており、またメインシヤフトに設けられた4つのブレードを持つているからライナーの回転は衝撃を起こすことを特徴とし、従つてこれは4ブレード式であつても特殊なスロツト形状によつてライナー1回転に対し2パルスを発生するようになしたものである。

本考案はこれに鑑みてライナー内の主軸には2枚の羽根(ブレード)を設けるが、ライナー1回転に対し1パルスのみ発生させ、この1回のパルスによるトルクを大きくするようにして上述の欠点を解消せんとするものである。

以下本考案を図示の実施例に基づいて説明する。

図において1は油圧式トルクレンチの本体で、この本体内に高圧空気の供給、停止を行なうメインバルブ2と正逆回転切換バルブ3を設けると共に、このバルブ群より送気される高圧空気に回転トルクを発生せしめるようにしてロータ4を本体1内に設け、一般的ニユーマチツクツールのモータ構造を有している。

ロータ4の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧室打撃トルク発生装置5は本体1の先端部に突設されたフロントケース6内に設ける。

この油圧式打撃トルク発生装置5はライナーケース12内に内口径が主軸7に対して偏心したるライナー8を主軸7に対して回動自在に設け、このライナー8内にトルクを発生せしめるための作動油を充填密閉し、主軸7に中心を通る直径線上に相対向した2枚つの羽根挿入溝7b、7bを設け、各溝内にばねSにて常時主軸外周方向に突出するようにして、しかも厚さが溝幅より小なる羽根9を嵌挿して設けると共に、この2の羽根9、9の間の主軸外周面には主軸外端面より少し突出したシール面7a、7bを形成するが、の両シール面7a、7b間を結ぶ直線はこれと平行なる主軸中心を通る直線とはある一定の間隔を有して中心線よりいずれか片方に寄るものとし、かつ中心線と、主軸中心とシール面とを結ぶ直線とのなす角度を”a”とするものである。

また二枚の羽根9を互いに対向方向に突出するようにして設けた主軸7を嵌合するライナー8は第2図に詳示する如く断面まゆ形のライナー室を形成し、且この対向するくびれ部内周面を他部の内周面より山形状に突出せしめてシール面8a、8bとする。だ円形のキヤピテイ内周面に設けるシール面8a、8bのうちキヤピテイ長軸方向に対向する2つのシール面8b、8bはキヤピテイ中を通る一直線上に位置するものであるが、短軸方向に対向する2つのシール面8a、8aは、キヤピテイ中心を通る短軸線よりも右もしくは左(ライナーの回転によつて方向が変位する)にある一定間隔だけ位置がずれた前記短軸線と平行なる直線上にあつてしかもキヤピテイ短軸線と、キユピテイ中心とシールポイント8aとを結ぶ直線とのなす角度が”a”となるように定めるものであり、従つてキヤピテイ内周面に4箇所設けられるシール面8a、8bのキヤピテイ周囲方向のシール面間距離はキヤピテイ長軸線を挟む両側のものは即ち長軸線を介して対向するシール面間隔は等しいものとなるが短軸線を介して対向するシール面間隔は不等となる。該シール面8aはライナー室内に嵌挿された主軸7の外周をライナー8が回動するとき主軸7のシール面7aと接触もしくは近接され、両シール面7a、8aにて上記室を2分するように気密的にシールが行なわれるようにする。そしてライナー8の内周面のうち略対向する両シール面の中間位置に羽根9の先端と接触し、上記ライナー室を2枚の羽根9と両シール面7a、8aとにより2室又は4室に一時的に分けるようになす山形状のシール面8bが形成されるが、この両シール面8b、8bは互いに該室の中心を通る直線状にその中心を一致せしめて対設されている。さらにこのライナー8の一方のシール面8b部にライナー室と平行して即ちライナーの軸心に平行して出力調整弁挿入孔10を穿孔すると共に、該孔10の奥部に上記山形状シール面8bを挟んで主軸のシール面、羽根により分割される少なくとも2室間に該各室と出力調整弁挿入孔10とが導通するようポートP1、P2を形成し、且該孔内に出力調整弁11が可調整的に嵌合されている。

従つて今メインバルブ2及び切換バルブ3を操作して圧力空気を本体1内のロータ室へ導入するとロータ4は高速で回動する。このロータの回動力はロータ軸に設けられたライナー8に伝達される。このライナー8はその外周を筒状のライナーケース12にて回動自在に支持され、該ケースの両端面にライナー上蓋13、ライナー下蓋14が設けられてライナー室内に充満される作動油は密封されるようになつている。このライナー8の回動によりライナー室の断面形状は第2図A~Dに示す如く変化する。第2図Aでは主軸にパルス即ち打撃力が発生した状態でこれよりライナーが90度づつ回転した状態が夫々同図B、C、Dに示されている。打撃時の第2図Aでは主軸のシール面7aと羽根9は夫々ライナー8のシール面8aと8bに接し、ライナー室は一直線上に対向する羽根9、9を挟んで左右に2室に分けられ、且シール面7a、8aにてさらに左右室が上下に高圧室Hと低圧室Lとに分けられ実質的に羽根の両側に高圧室Hと低圧室Lとが形成される。そしてさらにロータ4の回動にてライナー8を回動させると衝撃の瞬間の直前において主軸7のシール面7aとライナー側のシール面8aにて分離された2室のうち高圧室Hの体積は減少され、低圧室Lの体積は増加し、羽根を挟んだ2室が完全に封止状態になつた時高圧室にて高圧を発生せしめ、この油圧をもつて羽根9の側面を低圧室側へ瞬間的に挿圧し、羽根を嵌挿した主軸にその打撃力を伝達し、主軸に所望の間歇的なトルクが発生して主軸を回動させ、所望の作業を行なわしめる。そして羽根の打撃にて主軸にトルクを発生させた後、さらにライナーが90度回動すると第2図Bに示す如くライナー室は主軸の羽根とシール面8bとにより前記の羽根を挟んで形成された高圧、低圧両室間が互いに導通し、一室となり、ライナー室全体が同圧の2室に分けられ、主軸にはトルクが発生せず、ライナーはロータの回動によりさらに回転する。このようにしてライナーがさらに90度即ち打撃時より180度回転すると第2図Cに示す如くになる。この状態では互いに対向するライナーのシール面8b、8b及び主軸のシール面7a、7aが夫々中心を通す直線より数度偏心せしめているので両シール面7a、8a間に隙間が生じ、ライナー室は主軸と上下の羽根9、9にて左右の2室に分けられた状態であり実質的には第2図Bの打撃時より90度回転時と同じ状態となりライナー室全体に圧力変化が生じず同圧となつているためライナーはフリーに回動する。さらにライナーが90度回転し、打撃時より270度回転した状態は同90度回転した状態と実質的に同一となり、単に出力調整弁位置が上下逆になつているに過ぎない。この第2図Dの状態よりライナーがさらに回動するとライナー室は羽根を挟んで左右に2室に分割されていたものが羽根とライナー側のシール面8bと、また主軸・ライナー側の両シール面7a、8aとが互いに接触してライナー室は4室即ち2つの高圧室と2つの低圧室となり羽根を挟んで両側室に圧力差が生じこれにより前述の如くして打撃力が発生するもので、このようにしてこのライナー1回転により強力な打撃を1回発生せしめるものである。そしてこの打撃力の調整は上記出力調整弁11にて行なうもので、これは従来と同じ方法で行なわれるのでその詳細説明を省略する。

而して本考案による時は内部に主軸を嵌し、ライナー自身ロータにて回動自在になしたるライナーのまゆ形をした内周面に、少なくとも4つのシール面を形成し、且対向する2つのシール面の中心をライナー室中心を通る直線より数度偏心させ、また主軸に2の羽根とこの羽根間の外周面に主軸中心を通る直線より数度偏心させていることによりライナーの1回転に対し、1回パルスを発生させるのみとなり、従つて1パルスのトルクが大きくなる。又主軸・ライナーとも部品が略対称形のためバランスが良く、2枚の羽根によりライナー室の内圧上昇が偶力として働くため効率が良く、強力な打撃力(トルク)を得ることができ、また1枚羽根の場合、軸の円周方向に片側のみ回転力が働くため、軸受けに片よりが働き回転力にロスがあつたがこの点においても有利であり、さらに2枚羽根のため、シール性が良く、内圧上昇の効率がよくなる等数々の利点を有する。

図面の簡単な説明

第1図は油圧式トルクレンチの一実施例の断面図、第2図はライナー部の断面図で、各図は打撃発生の状態を示す説明図である。

1……本体、2……メインバルブ、3……正逆回転切換バルブ、4……ロータ、5……油圧室打撃トルク発生装置、7……主軸、7a、8a、8b……シール面、8……ライナー、9……羽根、10……出力調整弁挿入孔、P1、P2……ボート、H、L……ライナー室、11……出力調整弁、12……ライナーケース、13……ライナー上蓋、14……ライナー下蓋。

第1図

<省略>

第2図A

<省略>

第2図B

<省略>

公報(二)

<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公開

<12>公開実用新案公報(U) 昭63-27267

<51>Int. Cl.4B 25 B 21/02 識別記号 庁内整理番号 B-6826-3C <43>公開 昭和63年(1988)2月23日

<54>考案の名称 油圧式トルクレンチ

<21>実願 昭61-119563

<22>出願 昭61(1986)8月4日

<72>考案者 龍野光司 奈良県生駒郡安堵町笠目682-9

<71>出願人 瓜生製作株式会社 大阪府大阪市東成区深江南1丁目2番11号

<74>代理人 弁理士 林清明 外1名

<57>実用新案登録請求の範囲

ロータにて回動されるライナーにまゆ形をした空洞を形成し、この空洞の内周面に設けた四つのシール面のうち、ライナー内周面の長手軸心線上のシール面をこの直線上に位置せしめ、ライナー内周面短軸線上に近接してある他の二つのシール面をライナー中心を通る短軸線に対して交わるようにして配設し、かつ短軸線に対して非対称とするとともに主軸に主軸中心線上を通る線上に嵌挿したる二枚の羽根と、この羽根間の主軸外周面に形成されるシール面とを具備し、かつこのシール面を主軸中心を通る直線と交わる方向に、しかもライナー室の軸線と交わるシール面と同じ値にその交わる角度を合わせて、ロータにて回動されるライナーの一回転にて一打撃を得るようになした油圧式トルクレンチ。

図面の簡単な説明

第1図は本考案油圧式トルクレンチの一実施例の断面図、第2図はライナー部の断面図を示し、各図は打撃発生の状態を示す説明図、第3図は主軸の展開図、第4図はライナーの展開図である。

1は本体、2はメインバルブ、3は正逆回転切換バルブ、4はロータ、5は油圧室打撃トルク発生装置、7は主軸、7a、8a、8bはシール面、8はライナー、9は羽根、10は出力調整弁挿入孔、P1、P2はボート、H、Lはライナー室、11は出力調整弁、12はライナーケース、13はライナー上蓋、14はライナー下蓋。

第2図

<省略>

第2図C

<省略>

第2図D

<省略>

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

実用新案公報

<省略>

<省略>

<省略>

公開実用新案公報

<省略>

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例