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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)1188号 判決 1993年12月09日

原告 倉光寛 他二一名

原告ら訴訟代理人弁護士 宇津呂雄章

同 今西康訓

被告 株式会社朝日住建

右代表者代表取締役 松本喜造

右訴訟代理人弁護士 今口裕行

主文

一  被告は、原告倉光寛に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告堀江敏樹に対し、金一三二万五〇〇〇円及び内金一二五万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告堀江悦子に対し、金一三二万五〇〇〇円及び内金一二五万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、原告恒崎道子に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告は、原告伊地知幸紀に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告は、原告今中太郎に対し、金二一二万円及び内金二〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  被告は、原告今中千鶴子に対し、金五三万円及び内金五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

八  被告は、原告尾谷勝三に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

九  被告は、原告平川静秋に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一〇  被告は、原告三仲葉子に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一一  被告は、原告岡村一郎に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一二  被告は、原告田原祥一郎に対し、金二六五万円及び内金二五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一三  被告は、原告高智誠一に対し、金一〇六万円及び内金一〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一四  被告は、原告丸野祐子に対し、金一〇六万円及び内金一〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一五  被告は、原告橋本宰に対し、金六三万六〇〇〇円及び内金六〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一六  被告は、原告橋本惠以子に対し、金九五万四〇〇〇円及び内金九〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一七  被告は、原告谷村洋人に対し、金二一二万円及び内金二〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一八  被告は、原告日賀野文彦に対し、金一五九万円及び内金一五〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一九  前掲各原告のその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。

二〇  訴訟費用は、原告松永行雄、同山上正、同久保敬一及び同岡田充に関する部分は、右原告らの、その余の部分は、これを五分し、その四をその余の原告らの、その余を被告の各負担とする。

二一  この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告倉光寛に対し、金九三六万円及び内金八八六万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告堀江敏樹に対し、金四六六万円及び内金四四一万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告堀江悦子に対し、金四六六万円及び内金四四一万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、原告恒崎道子に対し、金九三二万円及び内金八八二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告は、原告伊地知幸紀に対し、金九六二万円及び内金九一二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告は、原告今中太郎に対し、金七七〇万円及び内金七三〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  被告は、原告今中千鶴子に対し、金一九二万円及び内金一八二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

八  被告は、原告尾谷勝三に対し、金九五四万円及び内金九〇四万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

九  被告は、原告平川静秋に対し、金九五二万円及び内金九〇二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一〇  被告は、原告三仲葉子に対し、金九五〇万円及び内金九〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一一  被告は、原告岡村一郎に対し、金九四八万円及び内金八九八万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一二  被告は、原告田原祥一郎に対し、金九四八万及び内金八九八万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一三  被告は、原告高智誠一に対し、金四二〇万円及び内金三九五万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一四  被告は、原告丸野祐子に対し、金四二〇万円及び内金三九五万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一五  被告は、原告橋本宰に対し、金三一七万円及び内金二九七万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一六  被告は、原告橋本惠以子に対し、金四七五万円及び内金四四五万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一七  被告は、原告谷村洋人に対し、金九五六万円及び内金九〇六万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一八  被告は、原告松永行雄に対し、金九五二万円及び内金九〇二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

一九  被告は、原告山上正に対し、金九五二万円及び内金九〇二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二〇  被告は、原告日賀野文彦に対し、金九五八万円及び内金九〇八万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二一  被告は、原告久保敬一に対し、金九五二万円及び内金九〇二万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二二  被告は、原告岡田充に対し、金九五四万円及び内金九〇四万円に対する昭和六三年一〇月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  原告らは、各自、被告から、別紙売買契約一覧表のとおり、別紙第一物件目録記載の各建物(以下、同目録記載の一棟の建物を「本件マンション」という。)を買受け、その所有者となった。但し、別紙第一物件目録八記載の建物の買主は、訴外亡三仲國男及び原告三仲葉子であり、右訴外人が死亡して、同人の持分は、右原告が相続して、単独所有者となった。(契約締結日につき<証拠略>、その余の事実は争いがない。)

二  本件マンションの南側には、別紙第二物件目録記載の各土地(以下「本件南側土地」という。)がある。(争いがない。)

被告は、訴外株式会社相実(以下「相実」という。)から、昭和六一年四月二八日に同目録一記載の土地を、同年三月三一日に同目録二ないし四記載の各土地をそれぞれ買受け、その所有権を取得した。(被告が右土地の所有権を取得したことは争いがなく、その余の事実につき<証拠略>)。

また、同目録五記載の土地は、もと里道であったが、昭和六一年四月一五日、相実が兵庫県知事に対して用途廃止処分を申請し、同月二八日付で右里道は用途廃止処分となり、その後、昭和六二年三月一九日、被告が右土地の所有権を取得した。(争いがない。)

三  被告は、昭和六三年一〇月二八日、訴外安田建工株式会社(以下「安田建工」という。)に対し、本件南側土地を代金四億九七一〇万七〇〇〇円で売却した。(代金額につき乙三、その余の事実は争いがない。)

なお、右売買契約書第一二条には、安田建工が本件南側土地に建築する建物の高さを本件マンションの二階以上の眺望を阻害しない高さに制限する建築制限条項が設けられている。

安田建工は、本件南側土地上に鉄筋コンクリート造一部鉄骨鉄筋コンクリート造地下二階付五階建のマンションの建設を計画し、平成元年八月一〇日、建築確認を受けて着工し、平成二年一〇月頃、右マンション(以下「本件南側マンション」という。)が完成した。(争いがない。)

四  安田建工が昭和六三年一二月本件マンションの区分所有者等に対し本件南側マンションの建設の概要を説明し、概要説明書を配布したことから、原告らの一部が中心になって、本件南側マンションの建設により従来どおりの眺望を享受できなくなる本件マンションの区分所有者約四〇戸により、平成元年一月、奥山の夜景と安全を守る会(以下「守る会」という。)が結成され、守る会は、本件南側マンションの建設に伴う眺望権侵害防止及び交通事故防止を目標に、種々の陳情や抗議活動を展開し、安田建工に対し、同年二月二三日、本件南側マンションの建設の資料提供、被告と安田建工との間の本件南側土地の売買契約の内容説明、眺望阻害及び交通安全についての意見開陳などを要求したが、安田建工は、右要求に応じなかった。

また、守る会は、同日、被告に対し、本件南側土地の売買契約の内容説明及び資料の提供等を要求したが、被告は、右要求に応じなかった。(争いがない。)

そして、守る会の会員は、同年四月三日、神戸地方裁判所に兵庫県知事に対する里道用途廃止処分無効確認訴訟(同庁同年(行ウ)第一四号事件)を提起し、同年一〇月三一日、同裁判所尼崎支部に、安田建工に対する建築工事続行禁止仮処分命令申請事件(同支部同年(ヨ)第二一四号事件)を提起した。

右里道用途廃止処分無効確認訴訟については、平成二年七月二五日、訴え却下の判決言渡しがあり、建築工事続行禁止仮処分命令申請事件については、同年六月四日、当事者間に和解が成立して終了した。(争いがない)

五  本件南側マンションが建設されたため、本件マンションの原告らの各建物からの大阪湾及び大阪平野に対する眺望は、従前より阻害されることになった。(争いがない。)

第三争点

一  被告は、原告らに対し、眺望をキャッチフレーズとして本件マンションの各建物を販売し、本件南側土地を購入して取得していながら、、安田建工に対し本件南側土地を売却したが、このことが被告の原告らに対する不法行為となるか。

二  原告らは、次のとおりの損害を被ったか。

1  財産的損害

本件マンションの原告らの各建物からの眺望が本件南側マンションのため阻害されたことにより、原告らの各建物の財産的価値のうち、購入代金額の二〇パーセントに相当する金額が失われた。

2  精神的損害

原告らは、次のことにより、各自三〇〇万円に相当する精神的な損害を被った。

(一) 被告は、安田建工による本件南側マンションの建設に際し、原告らの、被告と安田建工との間の本件南側土地の売買契約の内容説明及び資料提供の要求に対し不誠実な態度をとった。

(二) 原告らは、安田建工による本件南側マンションの建設に伴い、陳情・調査のため、芦屋市役所や兵庫県土木事務所等に相当回数赴いた。

(三) 原告らは、里道用途廃止処分無効確認訴訟のため、神戸地方裁判所に相当回数出頭・傍聴した。

(四) 原告らは、建築工事続行禁止仮処分命令申請事件のため、同裁判所尼崎支部の審尋期日・和解期日に相当回数出頭した。

(五) 原告らは、守る会を結成し、検討会や打合会に相当回数出席した。

3  弁護士費用

原告らは、原告ら訴訟代理人らに本件訴訟提起を委任し、弁護士費用として、各自五〇万円を負担している。

第四争点に対する判断

一  争点一について

1<証拠略>によれば、被告による本件マンションの宣伝は、本件マンションからの夜景写真を配したパンフレットを用い、「バルコニー越しに望む遥か大阪湾の素晴らしい眺望が優雅な暮らしを演出します。」などの説明のもとにされ、被告の販売担当者は眺望が良いことを強調したこと、原告らは、購入に際し、被告の販売担当者に本件南側土地の将来の利用方法について質問し、被告の販売担当者は、本件南側土地は半分が市有地であり又は里道が通っているので、建物が建つことはないとか、大きな建物を建築することはできないとか、低層のスーパーマーケット位しか建たないとか、被告が購入して又は所有しているので、二階建てまでしか建築しないとか、駐車場として利用する計画があるとかの説明をしたこと、本件マンションは交通の便に恵まれていない高台に建設されており、それでも原告らが購入を決意した動機の第一は、眺望が良いことであることが認められる。

右認定によれば、被告は、本件マンションを販売するに際し、本件マンションからの眺望をセールスポイントの中心に置き、本件南側土地については、種々の理由を挙げて、本件マンションの眺望を阻害する建物が建築される可能性がないと説明しており、本件マンションを購入した原告らは、右説明によって、本件南側土地に本件マンションの眺望を阻害する建物が建築される可能性がないと信じて、本件マンションからの眺望の良さを動機の第一として本件マンションの購入を決意したものである。そして、被告は、昭和六二年三月一九日までに本件南側土地のすべての所有権を取得したのであるから、本件南側土地に建物が建築されることによって本件マンションからの眺望が阻害される可能性はないという原告らの信頼は、被告によって確実に保証できる状況になったものということができる。このような経緯からすると、原告らの右信頼は、法的に保護されるべきものであり、被告には、原告らに対し、本件南側土地に本件マンションの眺望を阻害する建物を建築しないという信義則上の義務があると解すべきである。なお、被告は、本件南側土地を安田建工に売却する際に、売買契約書に前記建築制限条項を設けているので、被告自身が、本件南側土地に本件マンションの眺望を阻害する建物を建築することが原告らとの関係において許されないと考えていたことは、明らかであり、被告が前記義務を認識していたことが推認されるところである。

従って、被告が本件南側土地に本件マンションからの眺望を阻害する建物を建築することは、右信義則上の義務に反するので、原告らに対して違法な行為になると解され、また、被告が本件南側土地に本件マンションからの眺望を阻害する建物を建築することと同視される行為をすることも、同様に、原告らに対して違法な行為になるというべきである。

2 被告と安田建工との間の本件南側土地の売買契約書には前記建築制限条項が設けられているが、被告の業務室長の証人中野寿也は、右契約の解釈として、右建築制限条項に関わらず、安田建工が本件マンションの住民と話し合って建築制限を越えて建築することは自由である旨証言しており、右売買契約書によれば、右建築制限条項に加えて「万一、甲(被告)に対し迷惑及び損害が生ぜしめた時は、(安田建工は、)その損害を賠償するものとする。」との条項があることからすると、被告は、本件南側土地の売買に際し、安田建工が右建築制限条項を遵守せず、本件マンションの眺望を阻害する建物を建築する場合があることを想定していたことは明らかである。さらに、右売買契約書添付の図面には、建築制限内の建物より一階高い建物の概形が点線で図示されているが、右点線で図示された建物の高さは、本件南側マンションの建築概要説明書中の「高サ関係説明図」と対比すると、本件南側マンションと本件マンションからの眺望を阻害する程度においてほぼ一致しており、被告は、売買契約当時から本件南側マンションが現在の高さで建築されることを認識していた疑いがある。もっとも、このことは、他に補強する証拠がないので、確認するには至らない。しかし、被告は、マンション建築・販売の専門業者であり、本件南側土地の売買代金額及びマンションの建築費等から分譲販売で採算がとれる販売面積がどの位であるかは承知しているはずである(前記建築制限条項に従った建物を建築しても、分譲販売して採算が合うならば、被告が安田建工に右建築制限条項の遵守を求めなかった理由は考えられない。)から、前記売買契約書における損害賠償義務条項の存在も考慮すれば、被告は、少なくとも、本件南側土地を安田建工に売却する際、安田建工が現在の高さで本件南側マンションを建築することを予測することが可能であったというべきである。従って、安田建工が現在の高さの本件南側マンションを建築することが予測可能であったのに、被告は、安田建工にし、本件南側土地を売却したものである。

そして、守る会が平成元年二月二三日被告に対し、安田建工との間の売買契約の内容説明等を要求した際、被告は、右要求に応ぜず、前記建築制限条項の存在を公けにしなかったが、被告が右建設制限条項を公けにしていれば、既に認定した経緯から、建築工事続行禁止仮処分申請事件は、原告らに有利に推移したものと思われ、ひいては、安田建工が現在の高さで本件南側マンションの建築を強行することはできなかった可能性が高いというべきである。そうとすれば、被告は、右建築制限条項を公けにすれば、安田建工が本件南側マンションの建築を強行することができなくなる可能性が高いことを承知の上で、右建築制限条項を公けにしなかったものと推測されるところである。

以上のとおり、被告は、安田建工が本件マンションからの眺望を阻害する本件南側マンションを建築することを予測することが可能であったにもかかわらず、本件南側土地を安田建工に売却したものであり、また、前記建築制限条項を公けにすれば、安田建工が本件南側マンションの建築を強行することができなくなる可能性が高かったにもかかわらず、右建築制限条項を公けにしなかったものであるから、結局、被告は、安田建工が本件マンションからの眺望を阻害する本件南側マンションを建築することを容認して、本件南側土地を安田建工に売却したと解すべきである。

従って、被告の本件南側土地の売却は、被告が本件南側土地に本件マンションの眺望を阻害する建物を建築することと同視される違法な行為であると認めるべきであり、原告らに対して違法な行為になるものである。

二  争点二について

1  財産的損害

<証拠略>によれば、原告ら(但し、後記四名を除く。)は、本件南側マンションの建設によって各自の建物からの眺望が阻害され、財産的損害を被ったことが認められ、その損害額は次のとおりであると認定する。なお、原告松永行雄、同山上正、同久保敬一及び同岡田充については、金銭に評価しうる程度に眺望が阻害されたと認めるに足りる証拠がない。

原告名 金額

倉光寛 二五〇万円

堀江敏樹 一二五万円

堀江悦子 一二五万円

恒崎道子 二五〇万円

伊地知幸紀 二五〇万円

今中太郎 二〇〇万円

今中千鶴子 五〇万円

尾谷勝三 二五〇万円

平川静秋 二五〇万円

三仲葉子 二五〇万円

岡村一郎 二五〇万円

田原祥一郎 二五〇万円

高智誠一 一〇〇万円

丸野祐子 一〇〇万円

橋本宰 六〇万円

橋本惠以子 九〇万円

谷村洋人 二〇〇万円

日賀野文彦 一五〇万円

2  精神的損害

原告ら主張の精神的損害は、被告が原告らの請求に応ぜず原告らに協力しないという、いわゆる不当抗争についてのものであるが、被告が原告らの請求に応じ原告らに協力する実体上の義務があると認識していたことを認めるべき証拠はないので、その余について判断するまでもなく、精神的損害は認められない。

3  弁護士費用

1において財産的損害を認めた原告らについて、本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、次のとおりである。

原告名 金額

倉光寛 一五万円

堀江敏樹 七万五〇〇〇円

堀江悦子 七万五〇〇〇円

恒崎道子 一五万円

伊地知幸紀 一五万円

今中太郎 一二万円

今中千鶴子 三万円

尾谷勝三 一五万円

平川静秋 一五万円

三仲葉子 一五万円

岡村一郎 一五万円

田原祥一郎 一五万円

高智誠一 六万円

丸野祐子 六万円

橋本宰 三万六〇〇〇円

橋本惠以子 五万四〇〇〇円

谷村洋人 一二万円

日賀野文彦 九万円

(裁判長裁判官 大島崇志 裁判官 岸本一男 裁判官 吉崎敦憲)

別紙 売買契約一覧表

(購入者)(契約締結日)(売買代金)

倉光寛 昭和六二年六月一五日 二九三〇万円

堀江敏樹 堀江悦子 昭和六〇年一一月二八日 二九一〇万円

恒崎道子 昭和六〇年一二月二三日 二九一〇万円

伊地知幸紀 昭和六一年一月二五日 三〇六〇万円

今中太郎 今中千鶴子 昭和六〇年一一月二五日 三〇六〇万円

尾谷勝三 昭和六二年一月三一日 三〇二〇万円

平川静秋 昭和六二年二月二四日 三〇一〇万円

三仲國男 三仲葉子 昭和六〇年一〇月三〇日 三〇〇〇万円

岡村一郎 昭和六一年一月二五日 二九九〇万円

田原祥一郎 昭和六〇年四月二一日 二九九〇万円

高智誠一 丸野祐子 昭和六〇年九月一三日 二四五〇万円

橋本宰 橋本惠以子 昭和五八年一月八日 二二一〇万円

谷村洋人 昭和六一年一月一九日 三〇三〇万円

松永行雄 昭和六〇年八月三一日 三〇一〇万円

山上正 昭和六二年五月一八日 三〇一〇万円

日賀野文彦 昭和六二年三月二三日 三〇四〇万円

久保敬一 昭和六二年六月一五日 三〇一〇万円

岡田充 昭和六二年六月二五日 三〇二〇万円

別紙 第一~三物件目録<省略>

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