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大阪地方裁判所 平成10年(ワ)4645号 判決 1999年7月14日

原告

近畿交通共済協同組合

ほか一名

被告

ゼネラル化成株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは、原告近畿交通共済協同組合に対し、各自、金一〇三万三一六六円及びこれに対する平成九年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告株式会社大幸商運に対し、各自、金一三六万一四五七円及びこれに対する平成八年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの、その余を被告ら負担とする。

五  この判決は、一、二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

1  被告らは、原告近畿交通共済協同組合に対し、各自、金一七二万九七四九円及びこれに対する平成九年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは、原告株式会社大幸商運に対し、各自、金二〇七万二一八五円及びこれに対する平成八年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、次の交通事故により損傷を受けた車両の所有者である原告株式会社大幸商運(以下「原告大幸商運」という。)及び対人・対物共済契約を締結していた原告近畿交通共済協同組合(以下「原告共済」という。)から運転者である被告松原孝宏(以下「被告松原」という。)及び同被告の使用者である被告ゼネラル化成株式会社(以下「被告ゼネラル化成」という。)に対し、損害賠償あるいは保険代位による求償を求めた事案である。

一  争いのない事実等(証拠により認定する事実は証拠を掲記する。)

1  (本件事故)

(一) 日時 平成八年九月二七日午後五時ころ

(二) 場所 大阪市港区南市岡三丁目市道高速道路西大阪線西下二・八キロポスト

(三) 加害車両 被告松原運転の普通貨物自動車(なにわ一一せ一八九五)(以下「被告車両」という。)

成本勝海(以下「成本」という。)運転の普通貨物自動車(泉一一い七九九七)(以下「原告車両」という。)

(四) 被害車両 小池健一運転、椎葉和行・田岡健一同乗、株式会社トヨタレンタリース(以下「トヨタレンタリース」という。)所有、石黒豊治使用の普通貨物自動車(なにわ四五に五〇六八)(以下「被害車両」という。)

(五) 態様 被告車両が本件事故現場において、その荷台から荷物(ウレタン製のマットを円筒形に丸めたもので、直径約一メートル、高さ約一メートルのもの)を落下させたが、被告車両の後方を進行していた被害車両が被告車両から落下した荷物に気付いて停止したところ、被害車両の後方を進行していた原告車両が被害車両に衝突した。

2  (成本及び原告大幸商運の責任)

(一) 原告車両の運転手である成本は、被告車両の落下物を見て停止した被害車両に衝突したものであり、前方注視義務違反がある。

(二) 成本は原告大幸商運の従業員であり、本件事故はその事業の執行中に生じたものである。

3  (被告ゼネラル化成の責任)

被告松原は被告ゼネラル化成の従業員であり、本件事故はその事業の執行中に生じたものである。

4  (原告共済の求償権)

(一) 原告共済は、原告大幸商運との対人共済契約に基づき、小池健一、椎葉和行、田岡健一の損害合計二五二万二〇六八円を支払った(甲一、八ないし一〇の各1ないし5)。

(二) 原告共済は、原告大幸商運との対物共済契約に基づき、トヨタレンタリースの損害のうち、免責分を超える部分一九四万六九六五円を支払った(甲一、一一の1、2、一二)

(三) 右支払の最終日は平成九年一月二一日である(前掲証拠)。

5  (自賠責保険金の支払)

原告共済は、次のとおり合計一八八万六一一八円の自賠責保険金の支払を受けた。

(一) 小池健一について 七八万一〇四九円

(二) 椎葉和行について 七六万八一八九円

(三) 田岡健一について 三三万六八八〇円

三  争点

1  被告松原の責任

被告松原は、荷台に貨物を積むときは、貨物の積載を確実に行う等積載している物の転落もしくは飛散を防ぐために必要な措置を講ずる義務(道路交通法七一条四号)及び高速道路において自動車を運転しようとするときは、貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては高速道路において積載している物を転落させもしくは飛散させることを防止するための措置を講ずる義務(同法七五条の一〇)があるにもかかわらず、これを怠った過失により、貨物を荷台から落下させ、本件事故を発生させた。

2  損害

(一) 被害車両側 四五一万九〇三三円

(1) 小池健一 一〇二万八六四九円

<1> 休業損害及び慰謝料 八三万円

<2> 治療費 一九万八六四九円

(2) 椎葉和行 九九万四五八九円

<1> 休業損害及び慰謝料 八〇万円

<2> 治療費 一九万四五八九円

(3) 田岡健一 四九万八八三〇円

<1> 休業損害及び慰謝料 四〇万円

<2> 治療費 九万八八三〇円

(4) トヨタレンタリース 一九九万六九六五円

<1> 車両代金(全損) 一八〇万円

<2> 代車料 一六万円

<3> レッカー代 三万六九六五円

(二) 原告大幸商運 三一五万三六四三円

(1) 車両修理費 二四五万七四二六円

(2) 休車損害 六九万六二一七円

(三) 弁護士費用

(1) 原告共済 一五万円

(2) 原告大幸商運 一八万円

3  負担割合、過失割合

(原告ら)

本件事故は、高速道路において、被告松原が道路上に荷物を落下させたために、後続車両が追突するに至った場合であるから、当事者間の負担割合ないし過失割合は、被告側六割、原告側四割である。

(被告ら)

被告車両は、積載物を落下させたが、被害車両は特に無理をすることなく、これを回避しているのであり、成本の車間距離不足、前方不注視ないし結果回避義務違反がなければ、本件事故は発生していないものであり、被告松原の行為は、被害車両が回避に成功した時点で結果発生との間の因果関係が切断されたものといえる。

仮に、被告車両が本件事故発生について寄与があるとしても、極めて間接的な寄与に止まる。

第三判断

一  争点1(被告松原の責任)

被告松原が高速道路において走行中の被告車両の荷台から荷物を落下させたこと、これにより後続の被害車両が停止し、その後続車であった原告車両が被害車両に衝突したことは当事者間に争いがなく、本件事故は右荷物の落下を原因として発生したことは明らかであるから、被告松原には右落下について過失責任が認められる。

二  争点2(損害)

1  被害車両側 四五一万九〇三三円

(一) 小池健一 一〇二万八六四九円(甲四の1ないし5)

(二) 椎葉和行 九九万四五八九円(甲五の1ないし6)

(三) 田岡健一 四九万八八三〇円(甲六の1ないし6)

(四) トヨタレンタリース 一九九万六九六五円(甲七の1ないし4)

2  原告大幸商運 三一五万三六四三円

(一) 車両修理費 二四五万七四二六円(甲一三)

(二) 休車損害 六九万六二一七円(甲一四、一五)

三  争点3(負担割合・過失割合)

本件事故は、被告松原の積載物落下の過失、成本の前方注視義務違反の過失により生じたものであり、両者は共同不法行為責任を負うところ、証拠(乙一、証人成本勝海、証人小池健一)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場は高速道路であり、最高速度を時速六〇キロメートルに制限されており、二車線のうち追越車線を、被告車両、被害車両、原告車両の順でそれぞれ時速約七〇キロメートルで走行していた。

2  被告車両と被害車両の車間距離は約五〇メートル、被害車両と原告車両の車間距離は約二〇メートルであった。

3  被告車両の後続車両である被害車両を運転していた小池健一は、被告車両の荷物が縛ってなく、シートも掛けていなかったことから荷物が落ちそうだなと感じ、それを注意しており、荷物が落下すると同時に、ブレーキを最初は軽く、次に強く踏み、落下した荷物の前で止まろうとしたとき、後続の原告車両に追突された。

以上の事実が認められる。

右に認定した事実によれば、本件事故は被告車両からの荷物の落下が原因となって生じているものではあるが、その後続車両である被害車両は落下した荷物に衝突することなくて停止し得たものであり、本件事故については、原告車両運転の成本の車間距離不足及び前方不注視の過失が大きな原因をなしているというべきであるから、本件事故についての原告側と被告側の負担割合及び過失割合は、原告側六割、被告側四割と認めるのが相当である。

四  前記認定の割合によれば、原告共済の求償債権は、人身分支払額合計二五二万二〇六八円から受領した自賠責保険金一八八万六一一八円を控除した残額にトヨタレンタリースに対し支払った一九四万六九六五円の合計二五八万二九一五円の四割である一〇三万三一六六円となる。

なお、原告共済は、保険金の支払の限度で原告大幸商運の損害賠償請求権を代位取得するものであって、弁護士費用は取得しないから、弁護士費用の請求は理由がない。

五  おなじく、原告大幸商運の損害賠償請求権は、前記三一五万三六四三円の四割である一二六万一四五七円に弁護士費用一〇万円を加算した一三六万一四五七円となる。

(裁判官 吉波佳希)

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