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大津地方裁判所 平成6年(わ)334号 判決 1997年3月05日

国籍

韓国

住居

滋賀県草津市渋川二丁目七番二〇号

職業

パチンコ店経営

被告人

松原政夫こと 張一竜

一九二二年二月二八日生

主文

被告人を懲役一年及び罰金二〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(犯罪事実)

被告人は、滋賀県草津市渋川二丁目七番二〇号に居住し、同市大路二丁目一〇番三号において、「平和会館」の名称でパチンコ業を営んでいる者であるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成二年分の総所得金額が一億一、二九三万九、九九六円であったにもかかわらず、平成三年三月一五日、同市大路二丁目三番四五号所在の所轄草津税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が四、三九一万九、〇四二円で、これに対する所得税額が一、七四三万八〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五、一九四万七、〇〇〇と右申告税額の差額三、四五〇万九、〇〇〇円を免れ

第二  平成三年分の総所得金額が八、四〇一万四、四四一円であったにもかかわらず、平成四年三月一六日、前記税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二、四一八万六、一六一円で、これに対する所得税額が七七七万三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三、七六八万五、五〇〇円と右申告税額との差額二、九九一万二、五〇〇円を免れ

第三  平成四年分の総所得金額が一億九、〇二五万七、五三七円であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三、三五九万五、三九一円で、これに対する所得税額が一、二三一万七、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額九、〇六四万八、〇〇〇円と右申告税額との差額七、八三三万一、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

判示全事実につき

一  第一〇回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の大蔵事務官質問てん末書四通(乙三、四、六、七)、検察官調書(乙八)

一  第六回ないし第九回公判調書中の証人松原秀信こと張秀信の供述部分

一  第五回、第六回公判調書中の証人猪村猛人の供述部分

一  第二回ないし第四回公判調書中の証人岡田勇の供述部分

一  第四回、第五回公判調書中の証人藤原正光の供述部分

一  第七回公判調書中の証人横山重光の供述部分

一  松原康子こと金順の大蔵事務官質問てん末書三通(甲三一、三二、三四)、検察官調書(甲三五)

一  松原秀信こと張秀信の大蔵事務官質問てん末書六通(甲三六ないし四一)、検察官調書(甲四二)

一  報告書(甲四六)

一  査察官調査書一〇通(甲二四ないし三〇、四七ないし四九)

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面(甲八)

一  証明書(甲九)

一  仮受・仮払消費税元帳一冊(平成七年押第三一号の9)

一  クリアーファイル一冊(同押号の15)

判示第一の事実につき

一  松原康子こと金順の大蔵事務官質問てん末書(甲三三)

一  脱税額計算書(甲一)

一  証明書二通(甲四、七)

一  総勘定元帳(自平成二年一月一日至平成二年一二月三一日)一冊(同押号の1)

一  売上等集計表(写)一三枚(同押号の4)

一  売上等集計表(写)一〇枚(同押号の5)

一  売上等集計表(写)一二枚(同押号の6)

一  ノート一冊(同押号の7)

判示第二及び第三の事実につき

一  ファックス文書一二枚(同押号の8)

一  手帳一冊(同押号の11)

一  アウトプットデータ八綴(同押号の12)

一  アウトプットデータ一八綴(同押号の13)

一  アウトプットデータ一一綴(同押号の14)

判示第二の事実につき

一  脱税額計算書(甲二)

一  証明書(甲五)

一  総勘定元帳(自平成三年一月一日至平成三年一二月三一日)一冊(同押号の2)

一  手帳一冊(同押号の10)

判示第三の事実につき

一  脱税額計算書(甲三)

一  証明書(甲六)

一  総勘定元帳(自平成四年一月一日至平成四年一二月三一日)一冊(同押号の3)

(弁護人の主張に対する判断)

第一  弁護人は、「売上金」の勘定科目の金額を争う。そして、被告人は、本件起訴にかかる逋脱の事実自体は認めるものの、その金額は本件起訴にかかる金額を下回る旨の供述をする。そこで、以下、この点について検討する。

一  (平成二年分について)

1 平成二年分については、被告人の妻松原康子こと金順(以下、「康子」という。)と被告人の長男松原秀信こと張秀信(以下、「秀信」という。)とが、平成二年二月二〇日から同年一二月三一日までの間の「平和会館」の真実の売上金と逋脱分を除外した売上金を記録した前掲売上等集計表(写)(前同押号の4ないし6、以下、「売上等集計表」といい、「売上等集計表」間の特定は押収番号で示す。)により同期間の真実の売上金の額と認定した。

なお、「売上等集計表」に記載のない平成二年一月一日から同年二月一九日までの間については、被告人の申告した売上金の額を真実の売上金の額と認定した。

しかるところ、弁護人は、それでは証明不十分であり、かつ、それを補強する証拠に乏しい旨主張する。

2 ところで、康子および秀信は、「売上等集計表(前同押号の4)」は、「平和会館」の真実の売上金を記帳したものであり、そこから売上除外額を引いて確定申告分の売上金を記帳したのが「売上等集計表(前同押号の6)」である。」旨の供述をする。そして、後者に記帳された売上金額、すなわち、真実の売上金から一日当たりパチンコ一五万円、パチスロ一〇万円、合計二五万円を控除した金額が公表金額とほぼ一致する。なお、前掲総勘定元帳一冊(同押号の1)が公表帳簿であり、これに消費税を控除する前の売上金額に算出し直したものを記帳したのが、前掲仮受・仮払消費税元帳一冊(平成七年押第三一号の9)であり、同元帳に記載された金額が公表金額である。

ただ、「売上等集計表(前同押号の6)」に記載された二五万円を除外した売上金額とは異なった金額が公表金額として計上されている箇所が存在する。しかし、次のような理由から除外額が二五万円でないことに合理性を見いだすことができ、被告人が意図的に同額で調整を行っていたものと認められる。

三月一五日、同月一六日、同月一七日(五万円の売上除外)

通常の三分の一程度の売上金のため減額

三月二〇日、同月二六日、四月一七日、同月二五日、同月三〇日、五月八日、同月一五日、同月一九日、六月二日、同月五日、同月一六日、同月二六日、七月一日、同月七日、同月一〇日、同月一五日、同月一七日、同月一八日、同月二三日、同月二四日、同月三一日、八月四日、同月一二日、同月一六日、同月一七日、同月一八日、同月一九日、九月一日、同月四日、同月一一日、同月一七日(二五万円以上の売上除外)

祭日(春分の日)や火曜日、土曜日が多く、通常日より売上金が多くて増額

三月三〇日、九月六日、同月一四日、同月一五日、同月一六日(売上水増)

公表の売上金が前月から激減したため、あるいは、通常の日より売上金が極端に少なかったため、売上除外の発覚を怖れて調整水増

なお、「売上等集計表(前同押号の4)」に記載された売上金額と公表金額の差額が、二五万円から百円単位または千円単位で異なる日もある。これは、康子または秀信が真実の売上金額から二五万円を控除して公表帳簿の売上金を算出する際、誤算または誤記したものと認める。

3 また、康子が、平成二年四月一日から同月三〇日までの間の「平和会館」の日々の現金入出金状況を記帳した前掲ノート一冊(前同押号の7)と前記「売上等集計表(同押号の4)」とで記帳時期が重なる平成二年四月一日から同月三〇日までの間の日付と金額が一致する。

すなわち、康子や被告人の捜査段階における供述から右ノートの記載内容が正確であることが認められるほか、同ノートに当座入金のあったことが記載されている点については、記載された日時に信用金庫の被告人名義の当座預金口座に記載どおりの金額が入金されていることが裏付けられているもので、そのノートの記載内容と一致する「売上等集計表(同押号の4)」の記載内容も信用するに値するものと認められるのである。

4 以上のとおり、康子および秀信が、「売上等集計表(前同押号の4)」の売上金は真実の売上金を記帳したものである旨供述し、その「売上等集計表(前同押号の4)」に記帳された売上金額と公表金額の売上金額との差額が、おおむね一日当たり二五万円と定額か、あるいは、右定額でないことに合理性があり、しかも、「売上等集計表(前同押号の4)」に記帳された売上金額と康子が記帳した前掲ノート一冊(同押号の7)とで記帳時期が重なる期間の日付と金額が一致しているうえ、「売上等集計表(前同押号の4)」の売上金額が虚偽であることを疑わせる事情も存しないのであるから、「売上等集計表(前同押号の4)」に記帳された売上金額が「真実の売上金額」と認めることができるのである。

5 そうすると、別紙1-1記載のとおり、消費税額を計算して税抜き処理後の平成二年分における売上除外額は、一億〇、〇六五万三、三七〇円となり、これに公表売上額二一億〇、八〇〇万七、一四八円を加えると、真実の売上金額は、二二億〇、八六六万〇、五一八円となり、結局、別紙2-1記載のとおり、その逋脱税額は前判示第一事実記録のとおりとなる。

二  (平成三年・四年分について)

1 平成三年・四年分については、前掲手帳二冊(前同押号の10および11、以下、「岡田ノート」という。)により同期間の真実の売上金の額と認定した。なお、「岡田ノート」に記載のない平成三年一月一日から同月三月三一日までの間については、被告人の申告した売上金の額を真実の売上金の額と認定した。

しかるところ、弁護人は、「岡田ノート」についても、その作成の目的・経過が不明であるとして、その証明力には疑問があること、従って、それでは証明不十分であり、かつ、それを補強する証拠がない旨主張する。

2 ところで、証人岡田勇は、公判廷において、「岡田ノート」は、「平和会館」の営業状況を把握するため、島金庫のコンピューターに記録されたパチンコ台とスロット台の売上金および割数をそのまま書き写すことを同会館の責任者であった岡田勇がその上司である藤田係長から指示されて記帳することになったものであること、ただ、実際の記帳自体は主として岡田勇自身が、しかし、時にはその他の従業員が岡田勇に代ってなしたこともある旨供述していること、右供述と右記載の体裁と過去の暦とを照合した結果を総合すると、「岡田ノート」は、平成三年四月一日から平成五年四月七日までの間の「平和会館」の営業状況のうちの「日付」、「パチンコ台売上金・割数」、「スロット台売上金・割数」、「粗利の現金額」を記載したものであることが認められる。

また、前掲各証拠によると、「割数」とは、営業状況の目安となるもので、「割数」が、パチンコの場合は一六〇未満、スロットの場合は一四〇未満、になると店に利益が発生していることを示すこと、また、島金庫のコンピューターとは、パチンコ台とスロット台から出た玉およびコインの数を記録するコンピューターのことであり、その誤差は通常は五、〇〇〇円程度までで、一万円を超える誤差が出る頻度は少なく、その記録は正確なものであることが、それぞれ認められる。

そして、「岡田ノート」の平成三年一〇月一五日のパチンコ台とスロット台の売上金の記載には千円単位以下がない概数の、同年一二月一〇日は十万円単位以下がない概数の、平成五年四月六日は万円単位以下がない概数の、記載となっている営業日もあるが、概数の記載となっているのは、この三日間のみであることから見ても、最小単位を百円として島金庫のコンピューターの売上金を正確に記録したものと云える。

もっとも、証人岡田勇は、公判廷において「岡田ノートでは、百円単位まで売上金を記載した場合でも、自分が記憶だけに基づいて適当な数字を記載していることがある。」旨の供述もする。

しかし、スロット台の売上を「岡田ノート」と公表帳簿と比較すると、平成三年九月九日、同月一〇日、一〇月八日、平成四年四月二六日、六月一六日の五日間を除いては完全に一致している。従って、少なくともスロット台についてはほとんどの営業日において、概数ではなく正しい売上金が記載されていると云えるとともに、島金庫のコンピューターの売上金の打ち出しはパチンコ台とスロット台とが同時に行われることから、スロット台について正確であればパチンコ台についても正確であると云える。

また、スロット台の売上が「岡田ノート」と公表帳簿とで違っている前記五日間についても、平成三年九月九日と平成四年四月二六日の場合は、パチンコ台の売上が前者は四〇万円、後者は六〇万円ちょうどであり、平成三年九月一〇日と同年一〇月八日の場合は、いずれも火曜日で通常より売上金が多く、平成二年において火曜日に一度に多額の売上除外を行っていること前記のとおりであり、いずれも単純に概数を記載したものとは考えられない。

また、平成四年六月一六日の場合は、差額は一、〇〇〇円に過ぎず、概数を記載したものではなく、公表帳簿の誤記と認められる。

従って、証人岡田勇の公判廷における「自分が記憶だけに基づいて適当な数字を記録していることがある。」との右供述は信用できない。

以上のとおりの「岡田ノート」の作成の目的と作成に至った経緯、そして、その記載内容からすれば、「岡田ノート」は、原則として「平和会館」の真実の売上金の額を記録したものと認められる。

3 ところで、前掲ファックス文書一二枚(前同押号の8)は、「平和会館」の一日の営業が終了した後、岡田勇自身か、同会館の他の従業員が、前記島金庫のコンピューターに記録された売上等を被告人方にあててファックスで送信した文書であることは、前記各証拠により明らかであるところ、これと「岡田ノート」の売上金額、割数や現金額を比較すると、パチンコ台とスロット台の現金残高を合計する際の誤算による誤記を除けば完全に一致する。

そして、島金庫のコンピューターの記録が正確なこと前記のとおりであることから、これと記載を同じくする「岡田ノート」の記載も正確なものと云い得る。

さらにまた、前掲アウトプットデータ(同押号の12ないし14)は、「平和会館」内の遊戯台と遊戯台の間にある「サンドイッチ」と呼ばれる機械内のコンピューターが記録した売上金額、割数を表示したもので、その記録は一日に若干の誤差を生ずることがあっても、原則として島金庫のコンピューターの記録と一致することが、前記各証拠により認められ、後者と同様正確なものであり、これと「岡田ノート」の売上金額、割数を比較すると、コンピューターの読取エラーと思われる点を除けば一致し、「岡田ノート」の記載が正確なものと云い得る。

4 ところで、「岡田ノート」の売上金と前記公表帳簿の売上金(税込み)を比較すると、平成三年分は、スロット台の売上金は両者の金額がほぼ一致し、パチンコ台の売上金は公表金額は「岡田ノート」の売上金からおおむね一日当たり四〇万円が控除され、また、平成四年分は、スロット台の売上金は両者の金額がほぼ一致し、パチンコ台の売上金は公表金額は「岡田ノート」の売上金からおおむね一日当たり六〇万円が控除され、いずれも規則性のあることが認められる。

しかし、以下の営業日においては、売上除外額が右の定額とは異なった額になっているが、それは前記平成二年分と同様に決算調整がなされたことによるものと認められ、売上除外の方法に合理性・規則性が保たれている。

(平成三年)

七月一二日、九月一〇日、一〇月八日(四〇万円以上の売上除外)

火曜日が多く、通常日より売上金が多くて増額

五月三〇日、同月三一日、九月二七日、一〇月二五日、一二月一二日、同月一三日(二〇万円の売上除外)

売上が極端に少ないため半分に減額

(平成四年)

四月一二日、同月一三日、同月二一日、七月四日、八月二一日(四〇万円の売上除外)

公表帳簿で一か月の売上が二億を下回ったため、売上が大きくなっても目立たない本来売上の多い火曜日や土曜日に一部減額

なお、一部の営業日(たとえば、平成三年六月四日)には、売上除外額が、四〇万円または六〇万円の額から百円単位で違っていることがあるが、それは計算間違いか誤記によるものと認められる。

5 また、「岡田ノート」の記載内容には、次のような疑義のある箇所がないではないが、以下のとおり、それにはそれなりの原因のあることであり、「岡田ノート」の記載内容の信頼性を損なわしめるものとは認めがたい。(スロット台の売上金の誤記)

「岡田ノート」のスロット台の売上について

平成三年一二月三日 七〇六五(七〇六、五〇〇円)

平成四年四月二六日 一三八八(一三八、八〇〇円)

平成四年七月一一日 一〇六五(一〇六、五〇〇円)

と記載され、他の営業日と比べて「平和会館」の大幅な赤字となっている。

しかし、パチンコ台とスロット台について、それぞれ公表の売上金額を記載した前掲クリアーファイル一冊(前同押号の15)の同一日付のスロット台の売上は

平成三年一二月三日 一七〇六五(一、七〇六、五〇〇円)

平成四年四月二六日 一三八八〇(一、三八八、〇〇〇円)

平成四年七月一一日 一〇六五〇(一、〇六五、〇〇〇円)

と記載されているところから、平成三年一二月三日は百万円の桁の一の数字を、平成四年四月二六日と同年七月一一日については千円の桁の零の数字を、それぞれ書き落としたものと認められる。

(日付の間違い)

「岡田ノート」のたとえば、平成三年六月一二日のスロット台の売上が、公表帳簿の同月一六日のスロット台の売上に一致している。逆に、「岡田ノート」の同月一六日のスロット台の売上が、公表帳簿の同月一二日のスロット台の売上に一致している。そこで、平成三年六月一二日と同月一六日については、日付を間違えて記載したものと推測され、これに基づきパチンコ台の売上についても平成三年六月一二日と同月一六日を入れ換えると、その除外額はそれぞれ四〇万円となり、日付の間違いであることが明らかである。

そうした日付の間違いの箇所は以下のとおりである。

平成三年六月一二日は、平成三年六月一六日に

六月一六日は、 六月一二日に

八月 五日は、 八月 六日に

八月 六日は、 八月 五日に

九月一一日は、 九月一四日に

九月一三日は、 九月一一日に

九月一四日は、 九月一六日に

九月一六日は、 九月一三日に

一〇月 五日は、 一〇月 七日に

一〇月 七日は、 一〇月 五日に

一一月 二日は、 一一月 四日に

一一月 四日は、 一一月 二日に

一一月二六日は、 一一月三〇日に

一一月二七日は、 一一月二六日に

一一月三〇日は、 一一月二七日に

(以上、改訂後の除外額は四〇万円)

平成四年一月一一日は、平成四年一月一三日に

一月一三日は、 一月一一日に

二月一四日は、 二月一五日に

二月一五日は、 二月一八日に

二月一八日は、 二月一四日に

三月二〇日は、 三月二三日に

三月二一日は、 三月二〇日に

三月二二日は、 三月二一日に

三月二三日は、 三月二二日に

七月 六日は、 七月 七日に

七月 七日は、 七月 六日に

八月 三日は、 八月 四日に

八月 四日は、 八月 五日に

八月 五日は、 八月 三日に

九月二二日は、 九月二八日に

九月二五日は、 九月二二日に

(九月二五日は売上の記載欠落)

一〇月 五日は、 一〇月 六日に

一〇月 六日は、 一〇月 五日に

(以上、改訂後の除外額は六〇万円)

6 以上のとおり、証人岡田勇が「岡田ノート」は「平和会館」の営業状況を把握するため、島金庫のコンピューターに記録された売上金および割数をそのまま書き写すことを同会館の責任者であった同証人がその上司である藤田係長から指示されて記帳することになったものである旨供述し、右により記載された売上金額が、被告人方に報告するため送信されたファックス文書や「サンドイッチ」のコンピューターに記録された売上金額と一致し、さらに、「岡田ノート」に記載されたスロット台の売上金は公表帳簿に記載された売上金額とほぼ一致する一方、パチンコ台の売上金と公表帳簿の売上金とは、おおむね一日当たり四〇万円ないし六〇万円の一定額の差となっているのであり、これら事実に「岡田ノート」記載の売上金額が虚偽であることを疑わせるに足りる事情は存しないことを合わせ総合すると、「岡田ノート」に記載された売上金額は全体として真実の売上金額と認めることができるのである。この点に関する弁護人の前記主張は採用できない。

なお、「岡田ノート」に記載のない平成三年一月一日から同年三月三一日までの間については、被告人の申告した売上金の額を真実の売上金の額と確定したこと、前記のとおりである。そして、「岡田ノート」の平成三年一〇年一五日のパチンコ台とスロット台の売上金の記載には千円単位以下がない概数の、同年一二月一〇日は十万円単位以下がない概数の記載となっていること、また、平成四年九月二五日は売上金の記載が欠落していること、前記のとおりである。また、それ以外に、同年一月一七日、同月二二日、四月六日、同月一七日、同月二四日、一〇月二日、同月三〇日、同月三一日、一二月四日、同月一六日等にも売上金の記載が欠落している。これら概数の記載となっている場合や記載が欠落している場合についても、同様に、真実の売上金額を確定する証拠がないことに帰するので、公表帳簿の売上金の額を真実の売上金の額と認定した。

7 そうすると、別紙1-2記載のとおり、消費税額を計算して税抜き処理後の平成三年分における売上除外額は、九、四五一万七、三五三円となり、これに公表売上額二三億一、六三一万二、一一九円を加えると、真実の売上金額は、二四億一、〇八二万九、四七二円となり、結局、別紙2-2記載のとおり、その逋脱税額は前判示第二事実記載のとおりとなる。

同様に、別紙1-3記載のとおり、税抜き処理後の平成四年分における売上除外額は、一億七、六一五万一、八九八円となり、これに公表売上額二四億七、二一四万円一、六三六円を加えると、真実の売上金額は、二六億四、八二九万二、八一一円となり、結局、別紙2-3記載のとおり、その逋脱税額は前判示第三事実記載のとおりとなる。

第二 しかるところ、弁護人は、「岡田ノート」や前掲ファックス文書(前同押号の8)およびアウトプットデータ(同押号の12ないし14)、クリアーファイル(同押号の15)の押収方法は違法であり、証拠能力はない旨主張する。

しかしながら、右各証拠物(以下、本件証拠物という。)は、平成五年五月一三日、大阪国税局査察部(以下、査察部という。)職員が、大阪地方裁判所裁判官が発付した臨検・捜索・差押許可状に基づいて差し押さえたものであり、その令状発付後の臨検・捜索・・差押の過程に違法な点を見いだすことができないこと、しかし、これらは(その中にクリアーファイル(同押号の15)が含まれるかどうかは別論として、仮に、含まれるとしても)、その前から、大阪国税局課税第二部資料調査課(以下、資料調査課という。)職員により、事実上差し押さえられ、右令状に基づく差押は、資料調査課からの返還の手続後に引き続いてなされたものであるうえ、右令状を請求する際には疎明資料の一部として、資料調査課が入手していた資料の一部(「岡田ノート」)の写しを提出していたことが認められること、とはいえ、仮に、資料調査課の資料入手の手段に任意の調査の限界を超えた違法な点があったとしても、資料調査課とは目的・性格の異なる別個独立の組織体の職員である査察部職員が、右手続の瑕疵の存在を知ることなく行動していたものであることから、このような瑕疵をもって令状主義の精神を没却するような重大な違法であるとは云い難いことは、本件証拠物の証拠決定の際に、当裁判所が述べているとおりである。

第三 なお、弁護人は、平成二年度については、草津税務署による税務調査が行われ、本件起訴に用いられた同じ資料によって、草津税務署の指導のもとに修正申告がなされているが、同じ資料を用いながら、なぜ、草津税務署と査察部の税額および売上除外額が異なるのかの説明がない旨主張する。

しかし、税務署の行う税務調査と査察部の行う査察調査とは、別個独立の機関が行うもので、相互に関連性は全くないし、当然のことながら査察部が税務署の調査内容に拘束されることもない。従って、本件平成二年分の税額および売上除外金額が、査察部の調査に基づく金額と草津税務署の調査に基づく修正申告の金額と異なり、しかも、査察部の調査に基づく金額に従った本件公訴事実記録の逋脱税額のとおり、当裁判所が前掲関係各証拠により認定したこと、前記のとおりであるとしても、そこに何ら不都合・不合理な点はない。

第四 さらに、弁護人は、本件は、「平和会館」の売上除外額が松原商事株式会社(以下「松原商事」と略称する。)に流入されたことを前提としているはずのところ、松原商事への資金流入額は本件起訴の売上除外額より少なく、しかも、財産の増加がないのであるから本来の売上除外額は、起訴されている金額より少ないはずである旨主張し、被告人も「「平和会館」の簿外現金は、全額、松原商事に対する貸付金となっている。」旨公判廷で供述する。

ところで、検察官の損益法に基づく立証に対し、弁護人主張の財産法に基づく反証が許されるか否かの点はともかくとして、「平和会館」の売上除外額が松原商事に対する貸付金となっているとする点の確証はないばかりか、前掲各証拠はおよび証人髭正博の公判廷における供述によれば、「松原商事」と「平和会館」の経営の収支は渾然一体となって明確に区別されることもなく、両者とも杜撰な運営がなされていたことが認められるところ、秀信は、「平和会館」の簿外現金は、松原商事の運転資金のほか、被告人の自動車の購入や借入金の返済、さらに、大阪での商品取引にも費消した旨、査察調査段階において述べていることを合わせ総合すると、「平和会館」の簿外現金が、全額、松原商事に対する貸付金となっているということの前提自体採り得ないと云うべきで、この点に関する弁護人の主張も採用できない。

(適用法令)

一  罰条 所得税法二三八条(懲役刑と罰金件を併科)

二  併合罪の処理 懲役刑につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に加重)

罰金刑につき 同法四五条前段、四八条二項

三  労役場留置 同法一八条

四  刑の執行猶予 同法二五条一項

五  訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、被告人が三期合計で一億四、二七五万二五〇〇円にも上る多額の税額を逋脱したという事案であり、その逋脱率も高く、申告納税制度の根幹を揺るがすものとして、その刑事責任は決して軽くはない。他方、被告人は、昭和三四年二月四日に外国人登録法違反の罪で罰金一万円に処せられたほかは前科はなく、また、本件逋脱にかかる所得税、重加算税、過少申告加算税等の合計二億三、六五〇万四九〇〇円を納付済みであること、被告人の年齢その他、諸般の事情を考慮して、主文のとおり量定した。

(検察官内上和博、弁護人佐々木寛各出席)

(求刑-懲役一年六月・罰金三、〇〇〇万円)

(裁判官 山田賢)

別紙 1-1

自 平成2年1月1日

至 平成2年12月31日

<省略>

別紙 1-2

自 平成3年1月1日

至 平成3年12月31日

<省略>

別紙 1-3

自 平成4年1月1日

至 平成4年12月31日

<省略>

別表2-1

<省略>

別表2-2

<省略>

別表2-3

<省略>

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