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大分地方裁判所 昭和30年(ワ)84号 判決 1961年3月17日

原告 日米興産株式会社

被告 国

訴訟代理人 中村盛雄 外一名

主文

被告は原告に対し金百五十二万二千六百八円及びこれに対する昭和二十七年十一月一日より右完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は五分し、その三を原告、その余を被告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立。

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し金四百二十九万千七百二十三円及びこれに対する昭和二十七年十一月一日より右完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求め、

被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二、主位的請求原因

(一)  昭和二十一年頃原告(当時の商号日鮮救援株式会社)は国より当時大分県速見郡日出町海岸に沈没していた旧日本海軍の航空母艦海鷹の引上解体作業を請負い、以後その作業に従事し、昭和二十四年十月十日までその解撤発生材(屑鉄)合計約四千三百三十七屯七百八十瓩を国より買受け、次いで同年十二月二十八日同屑鉄約千六百屯を代金五十万二千円で同様に買受け、何れもこれが所有権を取得し、右日出海岸に集積保管していた。

(二)(1)  しかして原告は右屑鉄のうち二千屯余につき訴外甘粕海事工業所こと岡地広と売買契約を締結し未だその引渡をしないうち右岡地は昭和二十四年十一月二十二日、同月二十八日の二回にわたり訴外株式会社関西製鋼所(以下訴外会社という)と右屑鉄のうち合計千屯につき代金は何れも一屯あたり千五百円合計百五十万円で売買契約を締結した。ところがその直後合意の上右千屯分につき原告と岡地との売買契約を解除し、訴外会社に対しては原告自ら売主となることとした。そして原告は訴外会社より右売買代金全額につきその支払を受けた。

(2)  そこで原告は昭和二十七年八月二十九日までに訴外会社に対し右層鉄千屯のうち九百二屯四百四十四瓩を引渡し、残数量は九十七屯五百五十六瓩となつたにかかわらず訴外会社に更に七十屯の引渡未了分があると主張して紛議を生じ、同年九月二日双方互譲して原告は訴外会社に対し百二十屯を引渡すこととなつた。そしてその後原告は訴外会社に対し同年九月三日鶴丸に四十八屯五百六十四瓩、同月十四日進徳丸に四十三屯五百二十瓩を船積のうえ引渡し、更に同月十二日、二屯六百二十五瓩、同月十三日、一屯六百十六瓩を引渡し、合計九十六屯三百二十五瓩の引渡を了したので、結局原告の訴外会社に対する引渡未了数量は二十三屯六百七十五瓩となつた。

(三)  しかるに、訴外会社は原告が売渡した屑鉄につきなお引渡未了数量百十八屯九百九十二瓩が存するとして、原告及び訴外岡地広を相手どり、昭和二十七年九月十五日大分地方裁判所杵築支部に対し仮処分を申請し、同裁判所は昭和二十七年(ヨ)第一〇号事件として、同日、「被申請人等の占有する大分県速見郡日出町日出小学校裏海岸(別紙見取図の箇所)にある旧航空母艦海鷹の解体せる古鉄屑、数量百十八屯九百九十二瓩に対する被申請人等の占有を解き申請人が委任する執行吏の占有に付する。但し執行吏は申請人の申出があつた場合は申請人をして解体する作業並びにその鉄屑につき保管させることができる」との仮処分決定をした。そして大分地方裁判所執行吏田部直(以下本件執行吏という)は申請人より前記仮処分決定の執行委任を受け、同日前記日出町日出小学校裏海岸において、原告所有にかゝる屑鉄につき仮処分決定を執行し、原告の占有を解いたうえ同執行吏の占有に移し、訴外会社の申出により同会社をして解体作業を許し且その屑鉄の保管を命じた。

(四)  ところが訴外会社は右執行の翌日たる昭和二十七年九月十六日保管を命ぜられた屑鉄を大阪市に搬出すべく船積を始めたので、原告は翌十七日前記執行吏に対しその差止めを請求したが、同執行吏は前記仮処分決定には屑鉄の保管場所の記載がないから搬出は自由であり差止めはできないとして申入れを拒絶した。そこでやむなく原告は同月二十二日同執行吏に対し仮処分物件の点検の申立をしたところ、同執行吏は翌二十三日申請人たる訴外会社の代表者坂本照夫を取調べたうえ、仮処分物件のうち約五十屯は九月十九日頃住吉丸、同月二十一日頃宝山丸にて二回にわたり運搬し、訴外会社の所在地(大阪市)において保管中であり、仮処分の残余物件は二、三日中に積込を終了して運搬の予定である旨の調書を作成したのみで、訴外会社の行う搬出を全面的に容認した。そこで訴外会社は以後同年十月十六日までの間に、さきに原告が訴外会社に対し引渡を了していた屑鉄約三百三十屯の残量十二屯とともに本件仮処分物件として保管中の原告所有の屑鉄百七十五屯三百二十六瓩を大阪港、下関港その他に搬出し、売却した。その後に至つて同年十一月十四日、同執行吏は原告に対し、「右仮処分決定執行事件は申請人たる訴外会社から執行委任の取消を受けたので同執行吏占有中の仮処分物件は被申請人たる原告に還付する。」旨の執行委任消滅と物件返還の通知をしたのであるが、前叙の如く仮処分物件は全部搬出のうえ売却されているので、被告は前記屑鉄百七十五屯三百二十六瓩の返還を受けえずその所有権を喪失した。

(五)  しかして本件執行吏か前記仮処分決定により仮処分物件につき訴外会社をして保管をなさしめる場合は執行現場である日出町日出小学校裏海岸において保管せしむべき義務あるにかゝわらず、右のように同執行吏が訴外会社において仮処分物件を右の保管場所と異なり、しかも同執行吏の職務執行区域外に搬出するのを知りながらこれを容認し、原告の搬出差出の請求をも斥け、何らの措置を講じなかつたのはその義務を怠つたものであり同執行吏はこれがために前記屑鉄百七十五屯三百二十六瓩について執行委任消滅後その引渡が不能となつたのである。よつて同執行吏は国の機関としてその職務を行うについての右の故意にも近い重過失により違法に原告に対し右屑鉄の所有権を喪失せしめたのであるから、これにより原告の蒙つた損害は被告国において賠償すべき義務がある。

(六)  原告は以上のとおり鉄屑百七十五屯三百二十六瓩の所有権を喪失したのであるが、前記のとおり当時原告は訴外会社に対し二十三屯六百七十五瓩の屑鉄の引渡義務を負うていたから結局原告は前記執行吏の不法行吏により右引渡未了分を差引いた残数量百五十一屯六百五十一瓩相当分の損害を蒙つたことゝとなる。しかして屑鉄一屯の時価は金三万千円であり、これより運賃、諸雑費及び利潤等千五百円、更に屑鉄の通称小バラシ(小片に解撤すること)に要する費用千二百円を控除すると一屯あたりの損害は二万八千三百円となるからその損害は合計金四百二十九万七千百二十三円となる。

(七)  よつて、原告は被告に対し右金四百二十九万千七百二十三円とこれに対する本件執行吏の不法行為後にあたること明らかな昭和二十七年十一月一日より右完済にいたるまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、主位的請求原因に対する被告の答弁及び抗弁。

(一)  請求原因(一)の事実中原告が旧日本海軍の航空母艦海鷹の解撤発生材(屑鉄)約四干三百三十七屯七百七十八瓩の所有権を取得した事実は否認し、約千六百屯につき原告と被告間に売買契約の締結された事実は認める。

尤も被告国が昭和二十四年十月十日原告主張の屑鉄につき国有財産売買の形式をとつたことがあるけれども、当時被告国は原告(当時の商号日鮮サルベージ株式会社)に旧空母海鷹の引上解撤工事を請負わせ引上解撤によつて生じた発生材(屑鉄)は国の所有に属し、たゞ該発生材の現実の管理と、その売却処分方を原告に委託し、原告よりその売却の都度買主、価格等の報告を受け、引揚解撤請負代金支払の際、右売却代金との差額を支払つて清算していたのであつて、たゞ経理操作の方法として、昭和二十四年十月十日にいたり国有財産売買の形式により、原告において売却処分済の屑鉄相当量を原告に売渡したことゝし、原告が売却した代金相当額を国に支払うこととし同年十二月二十日までにその清算をすましたにすぎない。したがつて原告において屑鉄四千三百三十七屯七百七十八瓦の所有権を取得するいわれがない。

(二)  請求原因(二)の事実は否認する。

同(三)の事実中原告主張の日に、その主張のような仮処分申請及び仮処分決定がなされ、原告主張の執行吏が右仮処分決定の執行をしたことは何れもこれを認めるがその余は不知。

同(四)ないし(六)の事実は何れも否認する。

(三)  仮りに本件執行吏に原告主張の所為ありとしても同執行吏の行為に違法のかどはない。即ち本件仮処分決定に先だち昭和二十七年八月二十九日本件仮処分申請と同一の当時者間で同一の申請人から同一の権利関係につき大阪地方裁判所に対し仮処分申請(同年(ヨ)第一六二二号)がなされ、同日同裁判所により「被申請人等は申請人が大分県速見郡日出町日出海岸において鉄屑百六十七屯採取のため旧空母海鷹を解体する作業並びにその鉄屑の運搬作業を妨害する一切の行為をしてはならない」旨の仮処分決定がなされており、この仮処分決定(以下先行仮処分決定ともいう。)は被申請人に一定の不作為を命ずるものと異り、申請人が一定の行為を為すにあたつてこれを認容することをも命ずるものであるところ、本件処分決定は被申請人等がこれに違背し申請人の右仮処分決定通りの解体作業及び解体屑鉄を運搬するための作業を妨害する行為に出たので、これを排除し右仮処分決定の目的を達するため更になされたものであるから、本件仮処分決定は先行仮処分決定の内容と低触しない範囲でのみ効力を有すると解すべきである。したがつて申請人たる訴外会社が本件仮処分物件を執行吏の職務区域内たると区域外たるとを問わず他の場所に搬出運搬することは依然許容されたところというべきであるから、本件執行吏の原告主張のような行為に違法のかどがあるということはできない。

(四)  本件仮処分決定の執行された後訴外会社が日出海岸より搬出した屑鉄総量は二百二十一屯九百六十七瓩であるところ、訴外会社は原告よりなお屑鉄百十八屯九百九十二瓩の引渡を受くべきものあり、さらに本件仮処分決定当時、日出海岸で引渡を受けていた屑鉄三百三十屯のうち同海岸に残存していたものが百六十屯あり、訴外会社が右合計二百三十四屯九百九十二瓩の範囲内である屑鉄二百二十一屯九百六十七瓩を搬出し売却しても権利実行の範囲内に属し、原告に何ら損害は生じない。

(五)  本件執行吏に原告主張のような過失があつたとしても、本件仮処分決定に表示された屑鉄百十八屯九百九十二瓩を超える分についての損害は同執行吏の行為に基因するものではない。何となれば右執行吏はその限度の数量の屑鉄について執行をしたのであるから、たとえ訴外会社がこれを超過して搬出しても前記仮処分決定の執行とは無関係である。

(六)  仮に原告主張の損害が全部同執行吏の行為に基因し発生しているとしても、原告は金百七十八万円の限度でしか損害の賠償を請求できない。即ち、

原告は訴外会社が本件屑鉄を搬出したので同会社社長坂本照夫を横領又は窃盗の疑で大分地方検察庁杵築支部に告訴し、該告訴事件はその後原告と訴外会社との間に金二百万円で被害を弁償することによつて和解が成立した。したがつてそれ以上の損害があつたとしても超過部分については損害賠償義務が免除されたことになるところ、本件損害は本件執行吏の保管義務違反と訴外会社の不法な売却処分行為との共同不法行為によるものであるから、訴外会社が免除をうけた損害賠償の債務額はその負担部分を限度に同執行吏も賠償義務を免れることになり、本件においては直接の損害を与えたのは訴外会社の売却処分行為であり、執行吏の違法行為は関係がないのでその負担部分は皆無というべきであり、したがつて被告も前記超過部分につき免除をうけたことになり、しかして訴外会社は右金二百万円のうち金二十二万円を原告に支払済であるので、被告は残額百七十八万円の限度でしか賠償義務はない。

右主張が容れられないとしても、直接の侵害者たる訴外会社と金二百万円で和解を成立せしめていながら、同執行吏の軽微な過失をとらえて本件の如く右和解金額に倍する賠償請求をすることは信義則に反するので被告の損害賠償義務も前記百七十八万円の限度にとゞまるべきである。

(七)  また、以上すべて理由なきものとしても、次の如き過失があるので、損害賠償の額を定めるにつき斟酌さるべきである。本行執行吏は本件仮処分決定に表示された数量に合致するものと思料して執行にあたつたが、その際原告側に対し超過執行しているならば裁判所に異議を申立てるよう説得しているのであるから、かゝる説得を受け、且弁護士に直ちに相談しながら、執行方法に関する異議を申立て超過数量について搬出を防止すべき措置をとらず、損害を発生又は拡大させている点に過失がある。

第四、被告の抗弁に対する原告の反駁

(一)  被告主張にかゝる第三の(三)の抗弁につき、

(1)  被告主張にかゝる先行仮処分決定と本件仮処分決定の内容はその間に矛盾低触は存しない。何故ならば先行仮処分決定にいう「旧空母海鷹を解体する作業並びにその鉄屑の運搬作業」とは海鷹を解体してその屑鉄を大阪や門司に船積して搬出することではなく、本件現場即ち日出海岸における解体作業及びそれと必要一体をなすか又は保管乃至将来の搬出に必要なる本件現場での運搬作業を指すことは明らかであるからである。

(2)  前記両仮処分決定の間に原告主張のような矛盾低触が存するとしてもその限度で先行する仮処分決定がむしろ後行する本件仮処分によつて修正されたものとしてその効力を否定さるべきである。

(3)  仮に本件仮処分決定が先行仮処分と低触しその限度でその効力を否定されるとしても、執行吏には両決定の効力を判断する権限はないから本件執行吏はその職務執行区域内において執行吏保管中の仮処分物件を占有すべき義務があり、職務執行区域外への搬出はこれを差止むべきであり、しかる以上本件仮処分決定の効力如何は同執行吏の違法行為に基く本請求には影響するところがない。

(二)  被告主張第三の(四)の抗弁事実はこれを否認する。

(三)  被告主張第三の(五)の抗弁事実はこれを否認する。本件執行吏は本件仮処分決定表示の屑鉄百十八屯九百十二瓩につき正確に検量せず、原告の異議にもかゝわらず、当時日出海岸にあつた全部の屑鉄に対して執行をしたのである。

(四)  被告主張第三の(六)の抗弁事実は否認する。被告主張のような和解契約は成立するにいたらなかつたものである。原告は訴外会社より金十万円の支払をうけたことはあるが、これは原告がした被告主張の如き告訴事件の費用の一部として受領したにすぎない。

仮に被告主張のような和解契約が成立したとしても、訴外会社が約旨通りに履行しない場合は右契約を解消せしめる約があり、その後訴外会社の不履行により該契約は消滅している。

(五)  被告主張の第三の(七)の抗弁事実は否認する。被告主張のように、仮処分物件の超過執行につき、原告が執行方法に関する異議を申立てたにしても超過数量の検量は執行裁判所が許す検証、鑑定の方法が同裁判所が命ずる執行吏の検量にまつことになり、該検量の結果なくしては具体的に他に超過部分を解く方法はないのであるから、本件の場合かゝることを要求することは無理であり、過失はない。

第五、予備的請求原因。

(一)  仮に被告の主張の如く、訴外会社は先行仮処分決定によつて自由に本件仮処分物件を搬出することができ後行する本件仮処分決定は右に低触する範囲において効力なく、したがつて本件執行吏に何等責任がないとすれば、原告は予備的に次の如き請求原因を主張する。

昭和二十七年八月二十九日訴外会社から自己を申請人とし、原告及び岡地広を被申請人として大阪地方裁判所に対し提起した妨害禁止の仮処分申請事件(同年(ヨ)第一六二二号)につきこれを担当した同裁判所裁判官坂速雄は「被申請人等は申請人が大分県速見郡日出町の日出海岸(別紙見取図ABCDの箇所)において鉄屑六十七屯採取のため旧空母海鷹を解体する作業並びにその鉄屑の運搬作業を妨害する一切の行為をしてはならない」旨の仮処分決定をしたが、右は何等の管轄権なくして発布されたものであり、又申請人がその理由において求めていないのに拘らず、海鷹を解体する作業の外にその屑鉄を申請人の欲する場所に自由に搬出することを許容する不法な断行の仮処分決定であり、さらに次いで、同年九月十五日前記と同一当事者間の仮処分申請事件につき、これを担当した大分地方裁判所杵築支部裁判官岡崎与六は前記先行仮処分決定のあつたことを知りつゝこれと低触しその範囲において無効である本件仮処分決定をなした仮処分物件に対する原告の占有を解き、これを執行吏の占有に移すことを命じその結果原告は本件執行吏に仮処分物件に対する占有を移されたうえ、先行仮処分決定により訴外会社から右物件を搬出売却される受忍しなければならなくなつたわけである。右は国家公務員たる両裁判官の著しい不注意により違法な仮処分決定がなされたことに基くものであるから、これによつて生じた損害につき被告において賠償すべき義務があり、その損害は主位的請求原因として述べたところと同一である。

(二)  仮に右主張が理由がないとすれば、本件執行吏は昭和二十七年九月十五日訴外会社より本件仮処分決定の執行委任を受け、即日原告より仮処分物件の占有を自己に移したところ、同年十月十四日訴外会社が右執行委任を取消したのであるから、同執行吏は右物件を原告に返還すべき義務あるところ、右物件は既述の如く同執行吏の責に帰すべき事由により当時既に訴外会社によつて他に売却処分され、返還義務を履行することは不可能となつた。執行吏は国の執行機関であるから、原告は被告に対し右履行に代る損害賠償義務あるところ、これによつて蒙つた損害は右と同一である。

第六予備的請求原因に対する答弁。

(一)  原告主張事実(一)のうち、その主張する各日に、主張のような各仮処分申請及び各仮処分決定があつたことは認めるが、その余は否認する。

(二)  原告主張事実(二)は争う。本件執行吏は自己の責に帰すべき事由により仮処分物件の返還義務が履行不可能になつたのではなく、訴外会社の不法な売却処分行為により履行不能にいたつたものである。

第七、証拠の提出並びにその認否。<省略>

理由

第一、主位的請求について

一、原告が昭和二十一年頃来被告より大分県速見郡日出町海岸に沈没していた旧日本海軍所属航空母艦海鷹の引揚解撤工事を請負いその作業に従事していたことは当事者間に争なく、原告が右解撤発生材である屑鉄を同町小学校裏海岸にある別紙見取図ABCDの箇所及びその附近に集積保管していたことは被告の明らかに争わないところである。

二(一)  ところで訴外株式会社関西製鋼所が昭和二十七年九月十五日日出町海岸において原告が集積保管していた屑鉄中に引渡を受くべき屑鉄百十八屯九百九十二瓩が存するとして、原告及び岡地広を被申請人として大分地方裁判所杵築支部に対し原告主張のとおり仮処分申請をなし、原告主張のとおり、本件仮処分決定がなされ大分地方裁判所執行吏田部直は右訴外会社の委任を受けて日出町海岸において本件仮処分決定の執行をなしたことは当事者間に争いがない。

(二)  しかして成立に争のない甲第五乃至第八号証原本の存在並びに成立につき争いのない甲第十六第十七号証第二十一、第二十二号証証人井上金治(第一回)同江崎角次(第一回)同藤井清秀、同千田専治郎の各証言によると次の事実を認めることができ右認定を左右するに足る証拠はない。

本件執行吏は、昭和二十七年九月十五日午後五時頃本件仮処分決定執行のため申請人代理人千田専治郎を伴い日出町海岸の執行現場に赴き、右仮処分決定に表示された別紙見取図記載ABCDの箇所に存する屑鉄百十八屯九百九十二瓩につき執行しようとしたところ、被申請人側立会人との間に多少の紛争があつたが、仮処分物件が引揚解撤された屑鉄であり早急に検量し難いところから、双方立会人の説明のみで結局検量を行わず、公示札に仮処分決定に表示された屑鉄の所在場所、数量等を記したのみで別紙見取図記載の箇所に存する屑鉄全部につき原告の占有を解きその保管に移し、申請人である訴外会社の申出により訴外会社をして解体作業並びにその屑鉄につき保管せしめることとして所定の執行を終了した。ところが訴外会社は翌十六日に前記執行現場において仮処分物件である屑鉄を船積して搬出を始めたので、被申請人たる原告会社の井上金治及び同会社の委任を受けた弁護士藤井清秀が、本件執行吏に会つてその差止方を要求したが、同執行吏は本件仮処分決定に基き申請人に解体する作業並びにその屑鉄の保管を命じているから、申請人において船積して搬出することはかまわぬ旨答えてこれを拒絶した。そこでやむなく同月二十三日前記藤井弁護士は本件執行吏に対し仮処分物件点検申請をなしたところ、同執行吏は、同日訴外会社代表取締役坂本照夫から事情を聴取したのみで、仮処分物件約五十屯は同月十九日頃住吉丸、二十一日頃宝山丸で二回に運搬し訴外会社肩書地に保管中、但し確実なる屯数は後日書面で提出するが残物件は二、三日中に積込終了運搬の予定なる旨を記載した点検調書を作成し、以後も船積による搬出を容認して何等の方法を講ぜず、ために本件仮処分物件たる屑鉄は下関、大阪方面に搬出され他に売却されるにいたつたこと。

(三)  しかして、昭和二十七年十月十四日訴外会社代表取締役坂本照夫は同執行吏に対し本件仮処分執行の解放申請書を提出し、同年十一月十二日に同執行吏は原告に対し、「本件仮処分決定執行事件は申請人たる訴外会社から執行委任取消を受けたので、同執行吏占有にかゝる仮処分物件は被申請人たる原告に還付する。」旨通知したが、該仮処分物件は訴外会社より他に売却され、原告がその引渡をうけることは不能に帰してしまつたことは成立に争いのない甲第九乃至第十二号証、同第十三号証の一、二、第二十三号証及び証人井上金治(第一回)の証言によつてこれを認めることができ、この認定に反する証拠は他に存しない。

三、しかるところ、原告は訴外会社は右の期間に本件執行現場より鉄屑を百八十七屯三百二十六瓩を搬出したのであつてそのうち百七十五屯三百二十六瓩は仮処分により執行吏の保管に付せられた原告所有の鉄屑鉄であると主張し、右訴外会社の搬出を本件執行吏が容認し何らの措置を講じなかつたことにより原告の右鉄屑に対する所有権を喪失したという。

そこまず右搬出した屑鉄のうち原告の所有に属しかつ仮処分により執行吏の保管に付されたものゝ存否、数量について検討する。

(一)、原告は前記のとおり航空母艦海鷹の引揚解撤工事を請負い、その作業に従事している間右解撤発生材である屑鉄を本件仮処分執行現場及びその附近に集積保管していたのであり、また成立に争いのない甲第二十四号証の一乃至三、同第二十五号証、証人長浜正澄、同井上金治(第一回)の各証言に弁論の全趣旨を合わせ考えると、原告は右屑鉄等を集積保管しつゝある間国の委託により逐次他に売却処分しておつたところ、昭和二十四年十月十日被告国との間にそれまで原告が他に売却済の屑鉄等合計約四千三百三十七屯七百七十八瓩を代金五百七十三万五百四十円で買受けたことゝし請負代金と清算し、次いで同二十四年十二月二十八日更に売却処分未了の屑鉄約千六百屯を代金十九万三百七十三円で買受けその所有権を取得し、本件仮処分執行当時に原告が執行現場に保管していた屑鉄は原告において後に買受けた屑鉄のみであることが認められ右認定を左右するに足る証拠は存しない。

(二)、しかしながら本件仮処分執行当時執行現場附近に原告が既に訴外会社に引渡を了した屑鉄がなお存在しており、本件仮処分執行後訴外会社は右引渡済屑鉄をも本件仮処分の対衆となつた屑鉄とともに搬出したこと原告の自認するところであるから被告は本件仮処分後本件執行現場及びその附近より二百二十一屯九百六十七瓩を搬出していることを自認してはいるけれどもその範囲内であるからといつて原告主張の数量の屑鉄がすべて原告所有の屑鉄と速断することはできない。

(三)、ところで、原告は本件仮処分執行後訴外会社が本件執行現場及びその附近より搬出したのは少くとも百八十七屯三百二十六瓩であり、そのうち本件執行現場以外に存していたものは十二屯を超えないものであるからこれを差引いた百七十五屯三百二十六瓩は原告所有の鉄屑であると主張し、成立に争いのない甲第二十六号証及び証人井上金治(第三回)の証言により成立の認められる甲第三十一号証、右証言竝びに証人楠木正義同大沢幸太郎の証言に弁論の全趣旨を綜合すると、訴外会社は昭和二十七年九月十六日より同月十八日までの間住吉丸で二十二屯百六十四瓩、同月十七日より同月二十一日までの間宝山丸で五十六屯八百四十九瓩、同月二十一日より同月二十四日までの間鶴丸で十五屯六百一瓩、同月二十一日より同月二十六日までの間日之出丸で三十五屯六百四瓩、同月二十七日より十月二日までの間興栄丸で二十屯三百四十五瓩、十月九日より同月十六日までの間喜代丸で二十四屯二百五十瓩、以上合計百七十四屯八百十三瓩を船積搬出したほか同二十七年十月六日頃興生丸にて十二屯を超える屑鉄を船積搬出していることが認められるのであるが、いずれの搬出屑鉄が本件仮処分物件であるか或はそれ以外のものであるかを明認するに足る証拠は存しない。この点に関し原告主張に副う証人沼口了同笠置広次、同井上金治 (第二回)、同江崎角次(第二回)の各証言はたやすく措信できないし、また被告主張のように本件仮処分物件以外になお百十六屯存在したとの証人坂本照夫の証言も措信できない。

(四)、しかしながら成立に争いのない甲第三乃至第五号証、証人井上金治の証言(第三回)とこれにより昭和二十七年九月十七日当時の本件執行現場の写真であることの認められる甲第三十三号証及び証人坂本照夫、同千田専治郎の各証言を綜合すると、訴外会社が昭和二十七年八月二十七日大阪地方裁判所に仮処分を申請した当時は目測で本件執行現場附近に原告所有の屑鉄は仮処分の目的とした百六十七屯の何倍かゞ存在し、本件仮処分を申請した当時においてなお引渡を受くべき数量は百十八屯九百九十二瓩であり、別紙見取図表示ABCDの四ケ所以外にも屑鉄の山はあつたけれども右四ケ所をもつて合計約百二十屯位の鉄屑は存在するものとして、右引渡未了分の引渡を得られなくなることをおそれて右の箇所に集積してある屑鉄について本件仮処分の申請をなしたものであることが認められ、また訴外会社が本件仮処分決定に基き許容されたところとして該仮処分物件たる屑鉄全部を含め、前認定の数量の屑鉄を日出町海岸より船積のうえ搬出したことは既に認定したところであり、右ABCDの箇所以外にはさしてみるべき屑鉄の存在していたとは認め得ないから、本件仮処分の対衆となりかつ訴外会社が本件仮処分決定の日以後搬出した原告所有の屑鉄は少くとも百十八屯九百九十二瓩は下らないものと認めることができる。しかし右認定の限度を超える原告主張の数量についてはこれを確認することができない。

四、してみると、原告は右認定の屑鉄を訴外会社が他に搬出売却したことによつてその所有権を喪失したわけであるがこれが本件執行吏の不法行為に基因するものであるかどうかについて判断する。

本件仮処分決定が原告主張のとおりのものであることは前記のとおり争いないところ、右仮処分決定によれば、これが執行委任を受けた執行吏が仮処分物件の占有を取得しこれを申請人に保管せしめるにあたつては、執行吏はその保管の方法、場所等に特段の注意を払いその毀損散逸の虞れのないよな措置を講ずべきであり、特に保管物件を自己の職務執行管轄区域外に搬出せられるときはこれを阻止すべき義務あるものと解するのを相当とする。しかるに前認定の事実によれば本件執行吏は前記仮処分物件を申請人に保管せしめながら申請人が本件執行吏の職務執行管轄区域外である大阪市方面に船積搬出することを確知しながらその保管場所には何らの制約ないものとしてこれを阻止すべき何らの方法をも講じなかつたため申請人たる訴外会社においてこれを他に売却し、原告がこれによつて仮処分物件の所有権を喪失するに至らしめたものであるから本件執行吏が本件仮処分決定の趣旨を誤解し申請人に加功し申請人の不法な搬出を容認したものといわなければならない。したがつて本件執行吏は申請人である訴外会社とともに各自その損害につき責に任じなければならない。

この点に関し、被告は本件仮処分決定に先だち昭和二十七年八月二十九日本件仮処分申請と同一の当事者間において同一の申請人の申請に基き同一の係争権利につき大阪地方裁判所は、「被申請人は申請人が大分県速見郡日出町海岸において鉄屑百六十七屯採取のため旧空母海鷹を解体する作業並びにその鉄屑の運搬する作業を妨害する一切の行為をしてはならない」旨の仮処分決定をしたが、右決定は本件仮処分物件を自由に他の場所に搬出することを許容するものであるところ、被申請人等がこれに違背する行為に出たので、これを排除するため第二次の本件仮処分申請に及んだものであるから、本件仮処分決定は第一次の仮処分決定の内容と低触しない範囲のみでその効力を有すると解すべく、従つて申請人が本件仮処分物件を執行吏の職務区域内たると区域外たるとをとわず日出海岸から他の場所に搬出運搬することは依然許容されたところというべきである旨主張するのでこの点につきさらに考えてみるに、

被告主張の日にその主張のような仮処分決定がなされたことは当事者に争いがないが、成立に争いのない甲第三号証によれば右仮処分を申請するに至つた理由は右申請時が降雨少く風波の静かな季節で解体作業をなすに好時期でありこの期を外すと長く海中におかれる結果腐蝕も甚だしいというにあることは明らかであり他に保管の場所が日出町海岸にあることが申請人に著しい損害を与えるというにあるものでないことは明らかであり、このことと先行仮処分決定主文とを併せて考察すれば、右第一次の仮処分決定にいう「旧空母海鷹を解体する作業並びにその鉄屑の運搬作業」とはあくまで日出町海岸における解体作業及びそれに附随する集積保管のために必要な同所での運搬作業を指称するものと解釈すべきであり、このように解するときは本件仮処分決定とはその間に低触するところなく本件仮処分決定の効力には何らの影響がない。

五、そうすると、本件執行吏は被告国の機関としてのその職務の執行をなすに当り右の過失により不法に原告の屑鉄に対する所有権を喪失せしめたのであるからこれにより蒙つた損害につき被告はこれが賠償すべき義務がある。

よつてその損害の数額については次に判断する。

(一)、被告はこの点に関し訴外会社は原告に対し引渡を求め得べき屑鉄が百十八屯百九十二瓩あるをもつてこの限度内での搬出は結局原告に損害を蒙らしめないと主張し原告は引渡すべき屑鉄は二十三屯六百七十五瓩であると主張する。

成立に争のない乙第一号証の一、八、同第二号証、証人井上金治(第一、第三回)の証言とそれにより成立を認めうる甲第十五号証、昭同第三十号証(同第三十二号証はその控)、証人長浜正澄の証言を綜合すると、昭和年二十七年八月二十九日大阪地方裁判所が仮処分決定をなした当時における原告の訴外会社に対する屑鉄の引渡未了数量は百六十七屯五百五十六瓩であつたが、これよりさき同二十五年三月頃訴外会社が原告から買受けた門司市青浜海岸所在の屑鉄につき七十屯超過して引渡をうけたかどうかという問題について双方協議のうえ、訴外会社が原告から引渡を受けることとなつていた日出町海岸所在の本件屑鉄より差引き引渡を受ける旨の合意ができたところ、右仮処分決定後更に右七十屯につき紛争を生じ、本件屑鉄の引渡未了額につき、訴外会社は百六十七屯位と主張し、原告はこれより七十屯を差引くべき旨争つたが、同二十七年九月二日、双方話合のうえ互譲して訴外会社が原告から引渡を受くべき屑鉄の残量を百二十屯とし以後これによるべき旨約したことが認められ、右認定に低触する証人坂本照夫、同富田昇の供述部分は信用しない。

そして、成立に争のない甲第二十六号証、証人坂本照夫の証言により成立を認めうる乙第十八号証を併せ考えると、訴外会社は同二十七年八月二十八日より同年九月三日までに鶴丸で四十九屯八百一瓩、その後同年九月中に進徳丸で四十二屯九百六十七瓩、合計九十二屯七百六十八瓩の屑鉄を前記百二十屯の一部(但しうち二屯はすでに引渡を受けておつたもの)として搬出していることが認められるので、これを差引いた九十屯七百六十八瓩を右百二十屯より差引いた残数量二十九屯二百三十二瓩が引渡未了分の屑鉄数量であるとしなければならない。

右認定に低触する証人大沢幸太郎の証言及びそれにより成立を認めうる甲第二十七号証を根拠として、原告は他に同二十七年九月十二日二屯六百二十五瓩、同月十三日一屯六百十六瓩の屑鉄を搬出している旨主張するが、右証拠のみによつては該事実を肯認するに足らない。

しかるときは、被告が搬出し売却した前記認定の百十八屯九百九十二瓩のうち右に認定した二十九屯二百三十二瓩は結局訴外会社に引渡すべき数量であつたことゝなるからこれを控除した残額八十九屯七百六十瓩が原告の蒙つた損害といわねばならない。

(二)、しかして、鑑定人島田文男の鑑定の結果、証人井上金治(第三回)の証言によれば、本件不法行為時における本件屑鉄は一屯当り購入価格二万一千円であり、運賃、諸雑費及び利潤等千五百円と小バラシ費用千二百円を差引くと一屯当りの本件現場渡価格は一万八千三百円を下らないことが認められこれを超えるものであることの確証はない。しかして他に特別の事情の主張はないから前記八十九屯七百六十瓩では金百六十四万二千六百八円の限度で損害額を認定せざるを得ない。

右が本件執行吏が本件仮処分執行にあたり過失により違法な職務取扱をなし原告に蒙らしめた損害としなければならない。

(三)、損害額を右のとおり認定するときは訴外株式会社と原告との間に和解契約又は免除があつたことの抗弁は判断を要しないので、次に被告の原告が訴外会社より金二十二万円の賠償支払を受けたとの抗弁について考えるに、原告の蒙つた損害は本件執行吏と訴外会社において各自全額賠償すべきものであること前記のとおりであるところ、証人後藤久馬一の証言によれば損害賠償債務金十二万円の支払のなされた事実を認め得るので、この限度においては被告の損害賠償債務も消滅したものといわねばならないが、その余の金二万円についてはこの点に関する証人米田恒治の証言は直ちに採用しがたく他にこれを認める証拠も存しない。

(四)、被告は更に原告が本件執行吏から裁判所に異議を申立てるよう説得され、かつ弁護士に直ちに相談しながら執行方法に関する異議を申立搬出を防止すべき措置をとらず損害を発生又は拡大させている点に過失があるので損害賠償の額を定めるにつき斟酌すべき旨主張するが、訴外会社が本件仮処分決定に表示された屑鉄を搬出した数量は百十八屯九百九十二瓩を超える部分についてはこれを認め得ないのであり、右抗弁の判断を要しないが、さらに原告において執行方法に対する異議を申立て執行停止の法律的手段をとつたものとしても、右認定数量の屑鉄を搬出したことから生ずる損害についてはこれを防止することは必ずしも可能とはいえないから、右の如き執行方法に対する異議を申立て執行停止の措置をとらなかつたことは斟酌すべき限りではない。

第二、予備的請求について。

一、原告はまず前記二個の仮処分事件担当裁判官の過失を主張して損害の賠償を被告に求めるものであるところ、右は本件仮処分決定が一部無効とみられるべき場合を前提とするものであるから本件仮処分を前記のように無効としない以上この点について判断を要しない。

二、次に原告は、本件執行吏の執行委任消滅による仮処分物件の返還義務の履行不能を主張して被告に対し損害賠償を求めるものであるところ、その損害の主位的請求において主張したと同一の損害に帰着すること主張自体明白であるから、主位的請求の場合において認容した損害の数額を超える部分は更に判断の要なく理由なきものとせねばならない。

第三、よつて、原告の本訴請求は金百五十二万二千六百八円及びこれに対する本件不法行為後であること明らかな昭和二十七年十一月一日より右完済にいたるまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度では理由があるのでこれを認容し、その余は失当として棄却することゝし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条、第八十九条を適用し、仮執行の宣言は相当でないから申立を却下し主文の通り判決する。

(裁判官 綿引末男 奥輝雄 芥川具正)

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