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大分地方裁判所 昭和30年(ワ)106号 判決 1955年7月11日

原告

右代表者

法務大臣

花村四郎

右指定代理人福岡法務局訟務部付

検事

川本権祐

右指定代理人同局

法務事務官

小倉馨

右指定代理人大分地方法務局

法務事務官

鏡正己

右指定代理人熊本国税局

大蔵事務官

黒木正美

右指定代理人同局

大蔵事務官

高橋左伝

名古屋市瑞穂区亀城町四丁目七番地

被告

玉木良雄

右訴訟代理人弁護士

田島好文

右当事者間の昭和三十年(ワ)第一〇六号土地建物所有権移転登記手続等請求事件につき当裁判所は昭和三十年六月二十日終結した口頭弁論に基いて次の通り判決をする。

主文

被告は訴外大分市大字大分一、九八八番地の三首藤克人に対し別紙目録記載の宅地及び建物につき所有権移転登記手続をしなければならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告指定代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、別紙目録記載の宅地及び建物はいずれも訴外大分市大字大分千九百八十八番地の三首藤克人の所有である。

二、しかるに同訴外人は右宅地二筆及建物を自己名義に登記手続をなすことを避けて、いずれもこれを所有者でない被告の所有名義に登記手続をした。即ち、

右宅地二筆は右首藤克人が昭和二十七年十月三十一日大分市荷揚町一〇九番地国家善明より買受けその所有権を取得したものであつて、右国家善明より被告に真実右所有権が譲渡されていないにもかかわらずその様に仮装して昭和二十八年七月二十日被告のために売買を原因とする所有権移転登記がなされ、

又前記建物は右首藤克人が建築をしてその所有権を取得したものであるのに何等所有権を有しない被告の所有であるものの様に仮装し昭和二十八年七月二十日被告の為にその所有権保存登記がなされた。

三、ところで右首藤克人は昭和二十七年及び昭和二十八年分所得税について大分税務署長に対し昭和二十八年三月十日昭和二十七年分所得税額を金二百十一万七千二百十円と申告し、又昭和二十九年三月十四日、昭和二十八年分所得税額を金百八十六万七千六百円と申告した。そこで調査したところ、右申告は事実と相違するので、大分税務署長は昭和三十年二月二十二日同人の昭和二十七年分所得税額を金九百五十四万二千九百三十円、同重加算税額を金三百七十一万二千五百円と、又昭和二十八年分所得税額を金二千五百十二万七千八百七十円、同重加算税額を金一千百六十二万二千円とそれぞれ更正及決定をなし、即日右首藤克人に右更正及決定の通知をした。しかるに同人は前記申告にかかる昭和二十七年分所得税金二百十一万七千二百円及昭和二十八年分所得税金百八十六万七千六百円のうち金八十六万七千六百円をそれぞれ納付したのみでその残額については納期日を経過してもいまだにその納付をしない。

四、ところが右首藤克人の資産として現在のところ本件不動産の外は宅地百六十坪八合二勾及建物三棟、鉱泉地一坪があるのみで皆無に等しく関係当局としては前記国税を徴収するため本件不動産に対し国税徴収法にもとずき滞納処分の執行を為さざるを得ないのであるが、その前提として実体関係に符合しない前記各登記を改めて実体関係に符合させるため、原告は民法第四百二十三条にもとずき前記首藤克人に代位して被告に対し主文同旨の登記手続を求めるため本訴に及んだと述べ、

立証として、

甲第一号証の一乃至三、同第二、第三号証、同第四号証の一乃至三、同第五号証の一、二、同第六、第七号証、同第八号証の一、二、同第九号証を提出した。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、原告主張の請求原因中本件物件の所有名義人が被告である点は認めるがその余の部分は全然知らないと述べ、証拠の認否に対する答弁はない。

理由

原告提出の証拠の成立について被告は明らかに争わないのみか争わんとする意思の見るべきものもないからその成立を認めたものと言わざるを得ない。ところで原告の全立証によれば原告主張の請求原因事実を認めるのに十分で、右認定を覆すに足る何等の証拠もない。そこで原告の本訴請求を理由ありと認めて認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 中西孝)

不動産目録

大分市大字大分字荷揚町百九番の弐

一、宅地 九拾四坪四勺

同所百九番の六

一、宅地 八拾壱坪四合五勺

同所百九番の弐、百九番の六

家屋番号同市壱区東弐〇番の弐

一、木造瓦葺弐階建店舗兼居宅 壱棟

建坪 五拾参坪壱合五勺

外弐階 五拾五坪

附属

木造瓦葺弐階建店舗兼居宅 壱棟

建坪 四拾坪弐合五勺

外弐階 弐拾五坪六勺

以上

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