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和歌山地方裁判所 平成8年(わ)597号 判決 1997年3月28日

本店所在地

和歌山県伊都郡高野口町大字名倉七四番地

高野口観光株式会社

右代表者代表取締役

毛芝好博

本籍

和歌山県伊都郡高野口町大字名倉七四番地

住居

同町大字向島二〇〇番地

会社役員

毛芝秀雄

昭和九年四月二七日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮﨑昭出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人高野口観光株式会社を罰金一二〇〇万円に、被告人毛芝秀雄を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人毛芝秀雄に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人高野口観光株式会社(以下「被告人会社」という。)は、肩書地に本店を置き、遊技場等の経営などを業とするもの、被告人毛芝秀雄は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括していたものであるが、被告人毛芝秀雄は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  平成四年七月一日から平成五年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が五一一九万八八五一円でこれに対する法人税額が一八二一万一五〇〇円であるのに、売上の一部を除外するなどして所得の全部を秘匿したうえ、同年八月三一日、和歌山県那賀郡粉河町粉河八〇七番地所在の所轄粉河税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が六三五万六五五八円でこれに対する法人税額が零円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一八二一万一五〇〇円を免れた

第二  平成五年七月一日から平成六年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が六〇四〇万二五八三円でこれに対する法人税額が二一五九万六三〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、同年八月三一日、前記粉河税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七八四万二四五二円でこれに対する法人税額が一九〇万一三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額二一五九万六三〇〇円との差額一九六九万五〇〇〇円を免れた

第三  平成六年七月一日から平成七年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が六一九二万一三四八円でこれに対する法人税額が二二〇七万九四〇〇円であるのに、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、同年八月三一日、前記粉河税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二六五六万一三二一円でこれに対する法人税額が八八一万九四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額二二〇七万九四〇〇円との差額一三二六万〇〇〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示各事実について、被告人会社代表者毛芝好博及び被告人毛芝秀雄の当公判廷における各供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)甲乙に記載の次の番号の各証拠

判示第一の事実について

甲2、5、8ないし46、乙2ないし16、19

判示第二の事実について

甲3、6、8ないし46、乙2ないし16、19

判示第三の事実について

甲4、7ないし46、乙2ないし16、19

(法令の適用)

刑法は、平成七年法律第九一号附則二条二項、三項により、同法による改正後のもの

被告人会社関係

罰条 各事業年度ごとに法人税法一五九条一項、一六四条一項、いずれも情状により同法一五九条二項を適用

併合罪の処理 刑法四五条前段、四八条二項(各罪所定の罰金額を合算)

宣告刑 罰金一二〇〇万円

被告人毛芝秀雄関係

罰条 各事業年度ごとに法人税法一五九条一項

刑種の選択 いずれも懲役刑

併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

宣告刑 懲役一年

刑の執行猶予 刑法二五条一項(三年間)

(量刑の事情)

本件は、被告人毛芝秀雄が被告人会社の代表者として、三事業年度にわたり、被告人会社のパチンコ店経営による所得の全部又は一部を除外して確定申告をし、その法人税合計五一一六万円余を脱税したという事犯である。

納税は国民等の義務であり、脱税は国民等全体の犠牲において、不当に利益を得るものであって、国家財政の基盤を危うくするばかりでなく、過少申告による脱税は、申告納税制度をその根幹から破壊する反社会的な行為というべきところ、被告人毛芝秀雄は、長男の毛芝好博や従業員に指示して、コンピューターを操作させ、売上の一部を除外したデータを打ち出させる方法により、長期間脱税を繰り返していたものであって、犯行は計画的であり、その態様は悪質であること、ほ脱税額は前記のとおり相当に多額であって、三事業年度のほ脱率は、一〇〇パーセント、約九一パーセント、約六〇パーセントといずれも高いこと、脱税の動機は、被告人毛芝秀雄夫婦の老後の蓄えを残したいという考えや他のパチンコ業者が脱税しているなら自分もしようと思ったからというものであって、酌むべき点に乏しいことなどを考え併せると、犯情はよくなく、被告人毛芝秀雄及び被告人会社の刑事責任は軽くはないといわざるをえない。

しかしながら、被告人毛芝秀雄及び被告人会社は、本件を反省して事実を素直に認め、各事業年度についていずれも修正申告をし、脱税した法人税の本税についてはもちろん重加算税や延滞税についても納付をすませ、さらに法人特別税、消費税について本税及び重加算税や延滞税の納付をすませ、法人事業税、法人県町民税についても本税等の納付をすませていること、被告人毛芝秀雄は、本件の発覚後被告人会社の代表者を辞しており、今後の税務申告が適正になされるようにしたいと考えていること、被告人毛芝秀雄には、昭和五五年までに業務上過失傷害罪等により四回罰金刑に処せられた以外に前科がないこと、被告人会社には、本件が新聞報道されたことにより、売上が落ちるなどの影響が生じていることなどの被告人毛芝秀雄及び被告人会社のために酌むべき事情も認められるので、被告人毛芝秀雄及び被告人会社をそれぞれ主文の刑に処し、被告人毛芝秀雄についてはその刑の執行を猶予することとする。

(検察官の科刑意見 被告人会社について罰金一五〇〇万円、被告人毛芝秀雄について懲役一年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 森岡安廣)

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