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名古屋高等裁判所金沢支部 平成3年(ネ)63号 判決 1994年12月26日

《目次》

主文

事実

第一 当事者の求めた裁判

一 一審原告らの控訴の趣旨

二 右に対する一審被告の答弁

三 一審被告の控訴の趣旨

四 右に対する一審原告らの答弁

五 一審被告の民事訴訟法一九八条二項による申立

六 右申立に対する一審原告らの答弁

第二 当事者の主張

一 当事者の主張

二 一審原告ら中の承継

三 一審被告の民事訴訟法一九八条二項の主張

第三 証拠

理由

第一 判断の前提となる事項

一 事実認定に供した証拠

二 小松飛行場の現況、沿革、使用状況の概要

三 一審原告らの居住関係の概要

第二 差止請求

一 自衛隊機の差止請求

二 米軍機の差止請求

第三 過去の損害賠償請求の根拠

一 人格権、環境権及び平和的生存権

1 人格権

2 環境権

3 平和的生存権

二 一〇・四協定

三 根拠法令

第四 侵害行為

一 飛行騒音

二 地上音

三 航空機の墜落等の危険

四 振動・排気ガス

第五 被害

一 総論

二 生活妨害、睡眠妨害

1 睡眠妨害を除く生活妨害

2 睡眠妨害

三 身体被害

1 一審原告ら小松飛行場周辺住民の訴え

2 健康被害等に関する各種研究(谷口調査研究を除く)の成果

3 谷口調査研究について

(一) 谷口調査研究作成の経緯

(二) 原審谷口調査の内容

(三) 当審谷口調査の内容

4 服部報告について

5 当裁判所の判断

四 その他の被害

五 結論

第六 騒音対策

一 総論

二 周辺対策

三 音源対策等

第七 違法性

一 総論

二 公共性

三 昭和四八年環境基準及び一〇・四協定

四 損害賠償請求の当否

五 損害賠償における周辺対策の評価

六 地域性、先(後)住性及び危険への接近

1 地域性、先(後)住性

2 危険への接近

第八 将来の損害賠償請求に係る訴え

第九 消滅時効

第一〇 一審被告の責任

第一一 損害賠償額の算定

第一二 結論

判決

当事者 別紙当事者目録記載のとおり(平成三年(ネ)第五九号事件控訴人兼同年(ネ)第六三号事件被控訴人〔訴訟承継人を含む〕を以下「一審原告らⅠ」、平成三年(ネ)第五九号事件控訴人のうちその余の控訴人を以下「一審原告らⅡ」といい、これらを合わせて「一審原告ら」という。又、平成三年(ネ)第五九号事件被控訴人兼同年(ネ)第六三号事件控訴人国を以下「一審被告」という。)

主文

一  平成三年(ネ)第五九号事件につき

1  原判決を次のとおり変更する。

2  一審原告らの自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び騒音到達禁止請求に係る訴えをいずれも却下する。

3  一審原告らの平成六年三月二四日以降に生ずるとする将来の損害賠償請求に係る訴えをいずれも却下する。

4  一審被告は、次項の五名を除外した一審原告らⅠ又はその承継人に対し、本判決別紙第二損害賠償額一覧表中「一審原告氏名」欄記載の各一審原告に対する次の(一)ないし(三)の金員をそれぞれ支払え。

(一)  「損害賠償額(合計)」欄記載の金員。

(二)  「期間種別B」欄記載の各期間に対応する「慰謝料月額」欄記載の各月額に対して、それぞれ発生する月の翌月一日以降各支払済みまで年五分の割合による金員。

(三)  「A期間慰謝料額」欄記載の金員に対する、一審原告番号(1)ないし(12)の一審原告らについては昭和五〇年一〇月八日以降、その余の一審原告らについては昭和五九年二月七日以降各支払済みまで年五分の割合による金員。

5  一審被告は、一審原告亡森久子の承継人森惣太郎及び同久保奈保子並びに一審原告前田澄代、同越田荘司及び同竹下正人に対し、前期一覧表中の右各一審原告に対応する「損害賠償額(合計)」欄記載の各金員及び同「A期間慰謝料額」記載の金員及びこれに対する昭和五九年二月七日以降各支払済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

6  一審原告らⅠ及び一審原告らⅡ(当審における新請求を含む)のその余の請求をいずれも棄却する。

7  一審原告らのアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び騒音到達禁止請求に係る本件控訴をいずれも棄却する。

二  平成三年(ネ)第六三号事件につき

本件控訴をいずれも棄却する。

三  第一、二審の訴訟費用中、一審原告らⅠと一審被告との間に生じたものは、これを三分し、その一を同一審原告らの、その余を一審被告の、一審原告らⅡの控訴費用は、同一審原告らの各負担とする。

四  この判決は、本判決別紙第二損害賠償額一覧表中の「損害賠償額(合計)」欄記載の各金員の支払いを求める部分に限り、仮に執行することができる。

〔用語解説及び略語表〕

本判決で用いる騒音の単位の意味内容及び本文中に特記する以外の条約、法律等の名称の略語は、原判決四頁九行目末尾の次に「以下A回路で測定したものは、「デシベル(A)」と表示する。但し、測定時の回路の区別が明らかでないものについては、単に「デシベル」と表示する。」を付加し、同末行「三六三頁、三六四頁」とあるのを「三六九頁、三七〇頁」と、同七頁五行目「三六・〇」とあるのを「三六・五」と各改めるほかは、原判決「(用語解説)」及び「(略語表)」(原判決四頁初行冒頭以下同九頁末行末尾まで)の記載と同一であるから、これを引用する。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  一審原告らの控訴の趣旨(平成三年(ネ)第五九号)

1  原判決中、一審原告らと一審被告に関する部分を次のとおり変更する。

(一) 一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、小松飛行場において、毎日午後零時三〇分から同二時まで及び毎日午後六時から翌日午前七時までの間、一切の自衛隊及びアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機(以下、自衛隊の使用する航空機を「自衛隊機」、アメリカ合衆国軍隊の使用する航空機を「米軍機」という。)を離着陸させたり、そのエンジンを作動させたりしてはならない。

(二) 一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、小松飛行場の使用により、毎日午前七時から午後零時三〇分まで及び毎日午後二時から同六時までの間、一審原告らの居住地に対し、七〇ホン(A)を超える一切の右各航空機の発する騒音を到達させてはならない。

(三) 一審被告は、一審原告らに対し、それぞれ二四〇万円及び内二〇〇万円に対する別紙当事者目録(一)ないし(三)記載の一審原告らにつき昭和五〇年一〇月八日から、その余の一審原告らにつき昭和五九年二月七日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  一審被告は、一審原告らに対し、別紙当事者目録(一)ないし(三)記載の一審原告らについては昭和五〇年一〇月八日から、その余の一審原告らについては昭和五九年二月七日から、一審被告が自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、前記1(一)及び(二)の各措置をさせるまでの間、毎月末日限り各二万円及びこれに対するそれぞれの発生月の翌月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(遅延損害金につき当審において請求を拡張)。

3  訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。

4  仮執行宣言

二  右に対する一審被告の答弁

1  一審原告らの控訴をいずれも棄却する。

2  一審原告らの当審における新請求をいずれも棄却する。

3  控訴費用は一審原告らの負担とする。

4  担保を条件とする仮執行免脱宣言

三  一審被告の控訴の趣旨(平成三年(ネ)第六三号)

1  原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

2  一審原告らⅠの請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも一審原告らⅠの負担とする。

四  右に対する一審原告らⅠの答弁

1  一審被告の控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は一審被告の負担とする。

五  一審被告の民事訴訟法一九八条二項による申立

1  一審原告らⅠは、一審被告に対し、本判決別紙第三仮執行金額一覧表中の各一審原告らに関する「合計」欄記載の各金員及びこれに対する平成三年三月一四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  仮執行宣言

六  右申立に対する一審原告らⅠの答弁

右申立をいずれも棄却する。

第二  当事者の主張

一  当事者双方の主張は、当審において一審原告らが別冊「一審原告ら最終準備書面」、一審被告が別冊「一審被告最終準備書面」及び同「一審被告最終準備書面引用図表」各記載のとおり主張し、さらに次に付加訂正するほかは、原判決事実摘示のうち、一審原告らと一審被告に関する部分(理由部分を含め、以下の原判決の引用においても同様。)の記載と同一であるから、これを引用する。

1  一審原告らの主張

(一) 原判決一三頁二行目冒頭以下同四行目末尾までの部分を削除し、同一四頁四行目及び同一五頁六行目に各「ソビエト」とあるのをいずれも「旧ソビエト地域」と、同一九頁一〇行目「三〇個所」とあるのを「三〇か所」と、同二三頁一〇行目「加賀緑野」とあるのを「加賀平野」と各改める。

(二) 原判決三五頁初行「基づき、」とあるのを「基づく」と、同六行目「権利としての」とあるのを「権利として憲法前文、九条、一三条に根拠を有する」と、同行「保有しいる」とあるのを「保有している」と各改める。

(三) 原判決三六頁初行末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「小松市等小松飛行場周辺の八市町村が一審被告(防衛施設庁長官)との間で昭和五〇年一〇月四日に締結した「小松基地周辺の騒音対策に関する基本協定書」及びこれに付属する小松市長、名古屋防衛施設局長間の「協定書」(以下これらを合わせて「一〇・四協定」という。)は、一審被告が小松飛行場周辺において、航空機騒音に係る環境基準(昭和四八年一二月二七日環境庁告示第一五四号、以下「昭和四八年環境基準」という。)を昭和五八年一二月二六日までに達成することを誓約したものである。即ち一〇・四協定は、地方公共団体が、その構成員である一審原告ら住民の福祉の増進を目的として、住民のために一審被告と対等の立場で締結した公害防止に関する契約であるから、法的拘束力を有する。

右自治体の構成員である一審原告らは、右協定による利益を享受し得る立場にあるから、別冊「一審原告ら最終準備書面」をもって、受益の意思表示をする。」

(四) 原判決三九頁初行「各二万円宛の金員」とある次に「及びこれに対する各損害金発生月の翌月一日から同措置がなされるまでの間、民法所定年五分の割合による遅延損害金(一審原告らは、当審において右遅延損害金の支払いを求める請求を追加した。)」を付加し、同三行目から同四行目にかけて「平成二年三月一七日」とあるのを「平成六年三月二四日」と改める。

2  一審原告らの主張に対する一審被告の認否

原判決四二頁七行目から同八行目にかけて「一一月三〇日」とあるのを「一月三〇日から同年一二月一日まで」と、同一〇行目「七月二五日」とあるのを「四月二五日」と各改め、同四三頁初行「六月七日まで」とある部分の次に「、平成二年は四月一七日から同月二五日まで、平成三年は五月一三日から同月二五日まで、平成四年は四月六日から同月八日まで及び六月一日から同月一二日まで」を付加し、同二行目「ソビエト」とあるのを「旧ソビエト地域」と改め、同四七頁一〇行目冒頭以下同四八頁初行末尾までの部分を削除する。

3  一審被告の主張

(一) 原判決四九頁七行目冒頭以下同五〇頁九行目末尾までの部分を削除し、同一〇行目「(2)」とあるのを「(一)」と、同末行「公権力の行使」以下同五一頁四行目末尾までの部分を「、公権力の行使に当たる行為である、防衛庁長官の自衛隊機の運航に関する権限の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含するから、民事上の請求としては不適法である。」と、同五行目「(三)」とあるのを「(二)」と各改める。

(二) 原判決五一頁八行目末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「(一) 米軍機の差止請求について

一審原告らの差止請求中、米軍機に係る部分は、一審被告に対し、その支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであるから、主張自体失当として棄却を免れない。」

(三) 原判決五一頁九行目全部を「(二) 人格権、環境権、平和的生存権及び一〇・四協定について」と改め、同五二頁四行目末尾の次に行を改め、「一〇・四協定の法的性質は、小松飛行場周辺住民の良好な生活環境を保全するために、一審被告が同飛行場周辺の航空機騒音防止対策に関する総合的施策を有効適切に実施するに当たっての行政上の目標を示した、いわゆる紳士協定であるから、同協定に昭和四八年環境基準の達成を期するという内容があるからといって、これが法的拘束力を有するものではない。」を付加する。

(四) 原判決五二頁五行目「(二)」とあるのを「(三)」と、同五三頁五行目「(三)」とあるのを「(四)」と、同一〇行目「(四)」とあるのを「(五)」と、同五六頁四行目「不可決」とあるのを「不可欠」と、同五八頁四行目「(五)」とあるのを「(六)」と、同九行目「(六)」とあるのを「(七)」と各改める。

(五) 原判決五九頁八行目「昭和五〇年一〇月四日」以下同九行目「基本協定』」までの部分を「一〇・四協定」と改める。

二  一審原告ら中の承継について

一審原告らのうち、本判決別紙第四記載の各被承継人らは、同別紙「死亡年月日」欄記載の各年月日に死亡し、同別紙「承継人」欄記載の各承継人が、それぞれ右被承継人の権利、義務を法定相続分に従って承継した。

三  一審被告の民事訴訟法一九八条二項の主張

一審原告らⅠは、一審被告に対し、平成三年三月一三日仮執行宣言を付した原判決に基づき、本判決別紙第三記載の各一審原告らに対応する「元金」、「遅延損害金」及び「執行費用」(同欄記載の各一審原告らの執行手数料額に、執行官旅費二九六円、同補助者日当一万三五〇〇円の合計一万三七九六円を当時の執行債権者二七〇名で除した五一円〔一円未満四捨五入〕を加えた額)の各欄記載の金額の合計である「合計」欄記載の金額を強制執行した。

従って、一審被告は、原判決中、右金額の支払いを命ずる部分が変更される場合には、民事訴訟法一九八条二項に基づき、一審原告らⅠに対して、それぞれ右「合計」欄記載の各金員及びこれに対する執行の日の翌日である平成三年三月一四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三 証拠

証拠関係は、原審及び当審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一  判断の前提となる事項

一  事実認定に供した証拠

本判決においても、事実認定に供した証拠については、次に付加訂正するほかは、原判決六〇頁六行目冒頭以下同六五頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決六〇頁九行目「本件訴訟記録」とあるのを「原審及び当審訴訟記録」と改め、同六一頁七行目上段末尾の次に「、第二一二号証」を付加し、同下段「原告」とあるのを「原審・当審における一審原告」と改め、同行末尾の次に行を改め、同上段に「甲E第二一三号証、第二一六号証の一、二」を、同下段に「当審証人服部真の証言」を、同九行目上段末尾の次に「、第二一一号証」を各付加し、同下段「証人」とあるのを「原審・当審証人」と改める。

2  原判決六二頁八行目証拠欄末尾の次に「、第三七四号証、第三九三、第三九四号証」を、同末行証拠欄末尾の次に「第二一一号証」を各付加する。

3  原判決六三頁二行目証拠欄「当裁判所の」とあるのを「原審における」と改め、同一一行目証拠欄末尾の次に行を改め、「当審における検証の結果(平成五年七月二七日、同月二八日の各検証期日に各々現地で騒音測定したもの。)」を付加する。

4  原判決六三頁一二行目証拠欄「当裁判所の」とあるのを「原審における」と、同証拠欄末行末尾を「原審検証結果(原判決中「各検証の結果」とあるのを右のとおり読み替える)」と各改める。

5  原判決六五頁末行の次に行を改め、次のとおり付加する。

6

当審における検証の結果(次のとおり各現場で実施したもの。)

平成五年七月二七日に、安宅海浜公園、一審原告辰己國雄方居宅、小松市鶴ヶ島移転跡地、日末小学校、末佐美保育園、一審原告山崎勉方居宅において、同月二八日に臼井正方居宅、丸の内定点(小松市丸の内二丁目)、小松高等学校、小松市民センターにおいて、関係家屋や地域の状況の見分、飛行機騒音の測定等の検証を実施した。

当審検証結果

7

一審原告福田俊保、同翫正敏、同森惣太郎、同谷口堯男、同幸塚廣之助、同村田數子、同木下久次、同田中外喜雄、同竹田勝克、同近藤伶子、同荒井冨美子

原審における一審原告ら各本人尋問の結果(原判決中「原告ら各本人尋問の結果」とあるのを右のとおり読み替える)

8

一審原告辰己國雄、同小山比朗志、同一色真一、同金谷外喜恵、同山崎勉

当審における一審原告ら各本人尋問の結果

二  小松飛行場の現況、沿革、使用状況の概要

右については、次に付加訂正するほかは、原判決六六頁三行目冒頭以下同七三頁九行目末尾までの記載と同一であるので、これを引用する。

1  原判決六六頁六行目「第三〇二号証の一、二」とある次に「、第三七四号証」を付加する。

2  原判決六六頁末行「平成元年三月末」とあるのを「平成六年一月末」と、同六七頁四行目「約四二四万七四〇〇平方メートル」とあるのを「約四四〇万八二〇〇平方メートル(運輸省行政財産約四六万五〇〇〇平方メートルを含む)」と、同六八頁末行「主力装備」とあるのを「主要装備」と、同七〇頁五行目「『小松基地周辺の」以下同六行目「という。)」までの部分を「一〇・四協定」と各改める。

3  原判決七一頁八行目冒頭以下同末行末尾までの部分を次のとおり改める。

「平成三年三月三一日現在、小松基地にはF四EJ全天候ジェット戦闘機(ファントム)二二機、F一五J全天候ジェット戦闘機(イーグル)一八機を主力とし、他にT三三A(ジェット練習機)一〇機、V一〇七(ヘリコプター)三機、MU二(捜索機)二機の合計五五機が配備されている。その後ジェット練習機としてT四が導入された(その機数は不明である)が、本件口頭弁論終結時である平成六年三月現在においても、右配備規模にはほとんど変動がないものと考えられる。」

4  原判決七三頁七行目「国内線として四路線(合計一日九往復)」とあるのを「平成六年三月現在、小松・広島間のコミューター便を含む国内線として六路線(合計一日一五往復)」と改める。

5  原判決七三頁九行目末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「4 小松飛行場の設備・管理に関する法律関係

(一) 自衛隊機使用の法律関係

前記のとおり、小松飛行場は、一審被告(防衛庁長官)が航空自衛隊基地として設置し、航空自衛隊が維持、管理に当たっている飛行場であるが、自衛隊機使用に関する法律関係を更に詳述すれば、次のとおりである。

(1) 小松飛行場の設置・管理の法律関係

(ア) 我が国における飛行場の設置・管理、航空活動の維持・運営は、航空法によって規定されているが、自衛隊機については、その任務の特殊性に鑑み、自衛隊法一〇七条一項、四項により、右航空法の適用が大幅に除外されている。

(イ) 防衛庁長官は、自衛隊法一〇七条五項に基づき、「飛行場及び航空保安施設の設置及び管理の基準に関する訓令」(昭和三三年防衛庁訓令第一〇五号)を定めているが、これによれば、飛行場及び航空保安施設の設置者を防衛庁長官とするほか、飛行場の設置基準、進入表面、航空保安無線施設の設置基準等、飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する基準等に関する諸規定が置かれ、航空機の安全運航が図られている。

防衛庁長官は、小松飛行場についても、右訓令の基準に準拠して、飛行場の名称、位置及び所在地、設置の概要並びに着陸帯、進入表面等の利用上の特記事項等を告示している。

(ウ) 右訓令一三条に基づき、小松飛行場の管理者は、航空自衛隊小松基地司令とされている。同司令が有する管理権は、小松飛行場を同訓令三条の設置基準に適合するよう維持すること、点検、清掃等により同飛行場の設備の機能を確保すること等、飛行場の施設を整備、維持することを内容としている。

(2) 自衛隊機の運航権限

自衛隊は後述とおり、我が国を防衛することを主たる任務としている(自衛隊法三条)が、自衛隊機は、右任務を確実かつ効果的に遂行するために一審被告がこれを保有し、運航するものである。そして、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する防衛庁長官(自衛隊法八条)は、「航空機の使用及びとう乗に関する訓令」(昭和三六年防衛庁訓令第二号)二条七号所定の航空機使用者(小松飛行場にあっては、第六航空団司令及び小松救難隊長)に個々の自衛隊機を運航する権限を与えており、同訓令三条により、同使用者が自衛隊機を使用できる場合が規定されている。

このように、自衛隊機の航空活動については、前述のとおり、自衛隊の任務の特殊性から、運航に関する諸規定を含め、航空法の適用が大幅に除外されているが、その一方で、任務の円滑な遂行と運航の安全性の確保を目的とする内部規定が定められており、小松飛行場においても、これら諸規定に従って、防衛庁長官の権限の委任を受けた第六航空団司令及び小松救難隊長の指揮の下に自衛隊機の運航が行われている。

(3) 一審被告の航空交通管制権

自衛隊機の飛行についても、航空法九七条により運輸大臣による飛行計画の承認を受けなければならないが、運輸大臣は、同法一三七条三項、同法施行令七条の二に基づき、小松飛行場に係る航空交通管制業務について、航空路管制業務を除き、飛行場管制業務、進入管制業務、ターミナル・レーダー管制業務及び着陸誘導管制業務を防衛庁長官に委任し、同法施行規則一九九条二項に基づく「航空管制業務に関する告示」(昭和三七年運輸省告示第一四一号)等によって、小松飛行場の右管制業務を行う機関を航空自衛隊小松管制隊とした。これにより、小松飛行場に離着陸するすべての航空機に対しては、航空路管制業務は東京管制区管制所が、その余の飛行場管制業務等は航空自衛隊小松管制隊が行っている。

(二) 米軍機使用の法律関係

(1) 米軍の小松飛行場に対する使用権の内容

前記のとおり、小松飛行場は、昭和五七年一一月一五日地位協定二条一項(a)に基づき、日米共同訓練実施のために、同協定二条四項(b)の適用ある施設及び区域としてその一部(原判決別冊「被告最終準備書面引用図表」第1図の緑斜線部分)が米軍に提供され、米軍による使用が認められている。これらアメリカ合衆国に使用が許される施設等の管理については、地位協定三条一項において、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」と定められている。

(2) 米軍機の運航権限

右地位協定により、小松飛行場における米軍機の運航権限は、米軍の専権に属する。

なお、米軍機と我が国の航空機との航空活動に伴う種々の面での法的調整を図るために、航空法制定と同時に「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」(昭和二七年法律第二三二号)が制定され、米軍機の運航に関しては、前記提供目的の実現のために行われる場合には、航空法所定の運輸大臣の規制権限についてもいくつかの適用除外事項が定められ、それによって、米軍への施設及び区域の提供目的と我が国領空における航空機の運航の安全等との調整が図られている。」

三  一審原告らの居住関係の概要

右については、当裁判所も原判決七三頁末行冒頭以下同七五頁六行目末尾までの記載と同一であると判断するので、これを引用する。

第二  差止請求

一  自衛隊機の差止請求

1  一審原告らは、人格権、環境権、平和的生存権及び一〇・四協定に基づく契約違反を根拠として、妨害排除ないしは妨害予防請求として一審被告に対し、小松飛行場における一定の時間帯における自衛隊機の離着陸及びエンジン作動の差止め並びに騒音の到達禁止(以下これらを合わせて「本件自衛隊機の差止請求」という。)を求めている。

2  そこで、仮に一審原告ら主張に係る右権利侵害が認められるとしても、これを根拠として民事上の差止請求が許されるか否かを判断する。

自衛隊法三条によれば、自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる旨を定め、同法第六章は、自衛隊の行動として、防衛出動(七六条)、命令による治安出動(七八条)、要請による治安出動(八一条)、海上における警備行動(八二条)、災害派遣(八三条)、領空侵犯に対する措置(八四条)等の各種の行動を規定している(右の行動に必要な情報の収集、隊員の教育訓練も自衛隊の行動に含まれる。)。そして、自衛隊機の運航は、右のような自衛隊の任務、特に主たる任務である我が国の防衛を確実、かつ効果的に遂行するため、防衛政策全般にわたる判断の下に行われるものであり、右任務の遂行のため、一般の航空機と異なる特殊の性能、運航及び利用の態様等が要求される(自衛隊法一〇七条一、四項)。かかる自衛隊機の運航の特殊性に応じて、防衛庁長官は、前記のとおり、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊に課せられた右任務の遂行のため自衛隊機の運航を統括し、その運航の安全及び運航に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有するものとされている(同法八条、一〇七条五項)。

このように、自衛隊機の運航は、防衛庁長官の右権限の下において行われるが、その性質上必然的に騒音等の発生を伴うものであり、防衛庁長官は、右騒音等による周辺住民への影響にも配慮して自衛隊機の運航を規制し、統括すべきものである。しかし、自衛隊機の運航に伴う騒音等の影響は飛行場周辺に広く及ぶことが不可避であるから、自衛隊機の運航に関する防衛庁長官の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民の受忍を義務付けるものといわなければならない。そうすると、右権限の行使は、右騒音等により影響を受ける周辺住民との関係において、公権力の行使に当たる行為というべきである。

ところが、一審原告らの本件自衛隊機の差止請求は、必然的に防衛庁長官に委ねられた右自衛隊機の運航に関する権限の行使の取消変更ないしはその発動を求める請求を包含することになるといわなければならないから、行政訴訟としていかなる要件の下にいかなる請求ができるかはともかくとして、民事上の請求としては不適法というべきである(最高裁平成五年二月二五日第一小法定判決・民集四七巻二号六四三頁参照)。

3 一審原告らは、自衛隊の存在自体が憲法前文ないし九条に違反しているから、この点についての憲法判断がなされたうえ、直ちに右差止請求が認容されるべきであると主張する。

しかしながら、我が国の裁判所が有する違憲立法審査権は、あくまでも具体的な事件の処理に必要な限りにおいてのみなされる付随的審査権であるところ、右判示したところによれば、一審原告らの右憲法上の主張にかかわらず、本件自衛隊機の差止請求に係る訴えは、訴訟物たる権利そのものが訴訟物としての一般的適格性を欠くものとして、不適法とされるものである。即ち、本件では、自衛隊機の運航の性質を検討することによって、自衛隊機の運航に対する防衛庁長官の権限行使は、周辺住民に対する関係では公権力の行使に当たると判断され、その結果、民事上の請求としてなされた一審原告らの本件自衛隊機の差止請求に係る訴えは不適法であるとの結論に達した以上、更に進んで、右自衛隊の憲法適合性の有無についての判断を行う必要はなく、又行うべきではないといわざるを得ない。一審原告らの右主張は採用できない。

4  一審原告らは、自衛隊演習地内における実弾射撃訓練が公権力の行使に当たらないとした、いわゆる日本原最高裁判決(最高裁昭和六二年五月二八日第一小法定判決・裁判集民事一五一号六一頁)の判示内容に照らせば、自衛隊機の運航そのものは、単なる事実行為であり、又自衛隊員に対する防衛庁長官の航空機の運航命令は、内部関係における職務命令に過ぎず、自衛隊法上付近住民に受忍義務を負わせるべき明文の規定は存在しないのであるから、前掲自衛隊法上の諸規定に基づく防衛庁長官の権限の行使は、対外的に公権力の行使としての意味を持つものではなく、従って、本件自衛隊機の差止請求が認められるべきであると主張する。

しかしながら、右日本原最高裁判決は、国がその公用財産である演習場を自衛隊員の教育訓練という供用目的に従い、通常の用法によって自ら使用する実弾射撃訓練が公権力の行使に当たらないとして、同行為の差止めを求める行政訴訟(無名抗告訴訟)を不適法とした原審の判断を是認した事案である。そして、実弾射撃訓練は、演習場という公用財産において、自衛隊員に対する教育訓練の一環として行われ、しかも不可分一体となるべき何らの行政法上の規制・権限も存しない単なる事実行為であって、これに伴い周辺住民に対する受忍を義務付けるものではないのに対し、自衛隊機の運航は、前述のとおり、それ自体種々の行政法上の規制・権限に基づいて行われ、しかも飛行場周辺を広く飛行することによって、騒音等による影響について、周辺住民に対し受忍を義務付けるものである。このように、実弾射撃訓練と自衛隊機の運航とでは、その適否が問題となる自衛隊の行為の性質、態様は明らかに異なっているから、いずれも自衛隊の活動であるからといって、これらを同一視することができないことは、明らかである。

このように、前記日本原最高裁判決は、本件とは事案を異にするから、本件においてこれを適用すべき余地はなく、又先に認定したとおり、実定法たる自衛隊法上は、受忍に関して直接明分の規定がないとはいえ、自衛隊機の運航について防衛庁長官に、防衛出動等各種の緊急的権力活動の権限が与えられていることは、国民に対し、当然これら自衛隊の活動によって発生する不利益の受忍を義務付けているのに他ならない。このように、自衛隊機の運航は、公権力の行使に当たると認めることができるから、この点に関する一審原告らの主張は採用できない。

5  以上のとおりであるから、一審原告らの本件自衛隊機の差止請求に係る訴えは、爾余の点の判断をするまでもなく、不適法として却下を免れない。よって、原判決中、右差止請求を棄却した部分は、取り消されなければならない。

二  米軍機の差止請求

1  一審原告らは、本件において米軍機の運航に伴う騒音による被害を主張して、前記人格権等を根拠に、一審被告に対し、小松飛行場における一定の時間帯における米軍機の離着陸及びエンジン作動の差止め並びに騒音の到達禁止(以下これらを合わせて「本件米軍機の差止請求」という。)を求めるものである。

ところで、一審原告らは、自己に対する被害を直接に生じさせているのが米軍機であると明確に主張しているから、一審原告らが一審被告に対してその主張するような差止請求をすることができるためには、一審被告が第三者である米軍機の運航等を規制し、制限することのできる立場にあることを要するものというべきである。ところが、前記のとおり、小松飛行場使用に係る一審被告と米軍との法律関係は、安保条約及び地位協定に基づくものであるから、一審被告は、条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、米軍の小松飛行場に対する管理運営の権限を制約し、その活動を制限することができないところ、関係条約及び国内法令には、右のような特段の定めはない。

そうすると、一審原告らの本件米軍機の差止請求は、一審被告に対してその支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものというべきであるから、爾余の点の判断をするまでもなく、主張自体失当として棄却を免れない(前記最高裁平成五年二月二五日判決参照)。

2 以上のとおりであるから、原判決が一審原告らの本件米軍機の差止請求に係る訴えを不適法として却下したのは、相当ではないけれども、右却下部分を取り消して一審原告らの請求を棄却することは、不利益変更禁止の原則に反する結果となる。

よって、この点については、一審原告らの控訴を棄却するべきである(前記最高裁平成五年二月二五日判決参照)。

第三  過去の損害賠償請求の根拠

一  人格権、環境権及び平和的生存権

当裁判所も、以下に述べる一審原告らの生活利益の侵害に対する損害賠償請求については、人格権を根拠とすれば足り、環境権及び平和的生存権を請求の法的根拠とすることはできないと判断するところ、その理由は、次のとおりである。

1  人格権

原判決七七頁二行目から同三行目にかけて「差止請求権や」とある部分、同七行目「差止請求権及び」とある部分をいずれも削除するほかは、原判決七六頁四行目冒頭以下同七八頁初行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

2  環境権

原判決七八頁四行目「ことであるが、」の次に「環境という概念自体漠然としており、」を付加するほかは、同三行目冒頭以下同七九頁初行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

3  平和的生存権

一審原告らは、平和的生存権は平和的手段によって戦争及びその危険の存しない良好な環境を享受し、かつこれを支配することのできる権利であって、憲法前文、九条、一三条にその根拠を有し、軍事施設の存在や軍事行動によって、右平和的な環境が侵害されるときは、個々の国民は、右平和的生存権に基づいて右侵害行為の排除を求めることができると主張する。

日本国憲法が国民主権主義とともに、国際的恒久平和主義の理念を基盤としていることは、その前文、九条の記載から明らかであり、この点に関しては、異論を見ない。しかしながら、平和という概念は、万人によってその実現を希求されるべき究極の理想ではあるものの、あくまでも理念ないし目的としての抽象的概念に止まっており、それ自体が具体的な意味、内容を有するものではなく、各自の信条、世界観、価値観によって、多義的な解釈を可能とするものである。そして、こうした多義性、抽象性から、具体的に平和を実現する手段、方法についても、多岐にわたる考えが成り立ちうるが、そのいずれが正当であるか、又、そのいずれが優れているかを憲法前文、九条から直ちに導き出して断ずることはできない。そして、憲法前文も、日本国民がこうした理念としての恒久の平和を念願することを宣言するものの、これをどのような形で具体的に実現させるのかについては、具体的な規定を設けていない。結局憲法の規定する平和主義は、憲法自体が理念とする国民主権主義に基づき、国民の付託を受けた国会ないし内閣が、憲法前文ないし九条の理念を尊重し、その政治責任において実施される諸施策によって、具体的に実現が図られるべきものであると解され、その具体的な内容を直接憲法前文ないし九条から導くことはできないといわなければならない。

又憲法一三条は、なるほど憲法が保障する種々の基本的人権に対し、総則的な意味を持つ規定ではあるものの、前述のとおり、平和という概念が多義的、抽象的である以上、やはり平和的生存権の具体的意味、内容を導く根拠とはなり得ない。

従って、平和的生存権については、一審原告らが主張するように、個々の国民が平和的手段によって戦争及びその危険の存しない良好な環境を享受し、かつこれを支配することができ、軍事施設の存在や軍事行動によって、右平和的な環境が侵害されれば、これを排除できるという、私法上一定の法的給付を請求しうるような具体的な権利と認められないことはもとより、訴訟において、違法性の判断基準として私法上の行為を規律する性質のものと認めることもできない。当審証人鴨野幸雄の証言も右認定及び判断を左右しない。

4  一審原告らの有する権利に触れるまでもなく、本件自衛隊機及び米軍機の差止請求が認容できないことは、先に認定したとおりである。そうすれば、本件航空機騒音による一審原告らの生活利益の侵害は、環境権、平和的生存権が認められなくとも、人格権の侵害として判断すれば足りるものと認められるから、以下損害賠償請求は、これを根拠に判断をすすめることとする。

二  一〇・四協定

1  一〇・四協定が一審被告(防衛施設庁)と小松市を含む小松飛行場周辺八市町村(現在は三市五町)との間に締結された協定であることは当事者間に争いがなく、甲H第六号証によれば、一〇・四協定(基本協定書)は、小松飛行場周辺の騒音対策を積極的に推進するため、右当事者がその基本的事項に関し、協定するというもので、その具体的な内容は、概略次のとおりであると認められる。

(一) 一審被告は、昭和四八年環境基準に従って、公共用飛行場の区分第二種Bについて定められている期間内(一〇年以内)に、すみやかに同基準の達成を期する。

年次計画については、以下にあげるもののほか、音源対策等を総合勘案する必要があるため、引き続き検討し、協議を続けることとする。

(二) 生活環境整備法四条の住宅防音工事及び同法五条の移転補償については、現行の第一種、二種区域内について、それぞれ昭和五三年度を完了予定とする。

(三) 小松飛行場周辺における騒音の測定は、常時実施するものとし、その管理は一審被告、石川県及び周辺市町村共同で行う。

(四) 右調査の結果に基づいて、少なくとも年一回騒音コンターの見直しを行う。

(五) 障害防止工事は、一審被告が原因者であるとの認識のもとに実施するものとし、障害防止の機能回復に必要な施設の更新に要する経費については、一審被告が措置するとともに、維持管理費の拡大に努める。

右項目の具体的な裏付けに関しては、具体的条件の回答でなすものとする。

2  一審原告らは、一〇・四協定は、一審被告が昭和五八年一二月二六日までに、小松飛行場周辺において昭和四八年環境基準を達成することを約した、公害防止に関する契約で、法的拘束力があるから、本件損害賠償請求の根拠となりうると主張する。

しかしながら、当裁判所は、後述のとおり、一〇・四協定は、それが達成を期するとされている昭和四八年環境基準とともに、法的拘束力がないと判断するものである。従って、一審原告らの右主張は採用できない。

三  根拠法令

当裁判所も前記認定の小松飛行場における自衛隊機、米軍機の使用権限等を勘案すれば、これら航空機の離着陸に伴う騒音が同飛行場周辺住民に危害を生じさせるおそれがある場合、即ち、周辺住民に受忍限度を越えた被害を生じさせている場合には、国家賠償法二条一項、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(以下「民事特別法」という。)二条が適用されると判断するところ、その理由は、原判決一一三頁四行目冒頭以下同一一七頁六行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

第四  侵害行為

一  飛行騒音

小松飛行場及びその周辺における航空機の飛行並びに飛行騒音の実態についての当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決一一七頁九行目冒頭以下同一五八頁三行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一二〇頁七行目から同八行目にかけて「第三五二号証」とある部分以下同八行目末尾までの部分を「第三五二号証、第三七五号証、第三八二号証、原審証人村田博生、同佐藤壽一及び当審証人渋谷正勝の各証言、原審・当審における一審原告ら各本人尋問の結果、」と、同一二一頁八行目冒頭以下同末行「配備されている。」までの部分を「前記のとおり、平成六年三月現在、F四EJ、F一五Jを中心に約五五機の航空機が小松基地に配備されている。」と、同一二二頁初行「民航機としては、」以下同三行目から四行目にかけて「運航している。」までの部分を「民航機は、平成六年三月現在、国内線ではB七四七SR(一日五往復)、B七六七(一日二往復)、B七三七(一日一往復)、A三〇〇(一日二往復)、A三二〇(一日三往復)、JS三一(一日二往復)、国内線ではB七六七(一週二往復)が運航している。」と各改め、同一二三頁初行「現に、」の次に「原審・当審における一審」を、同二行目「T三三A、」の次に「T四、」を各付加し、同七行目「数往復」とあるのを「十数往復」と改める。

2  原判決一二四頁一〇行目「緊急発進」以下同一二五頁初行末尾までの部分を「緊急発進(対領空侵犯措置)は、昭和五五年度ないし平成三年度では、年間平均約一三八回であるが、特に平成二年度が八五回、同三年度が五八回に止まっていることからも明らかなように、その回数は近年顕著に減少している。災害派遣は、昭和六三年度が七件(航空機延数一五機)、平成二年度が五件(航空機延数三一機)であった。」と、同一二七頁四行目「昭和四七年八月」とあるのを「昭和四九年八月」と各改める。

3  原判決一二八頁三行目「第三五一号証、」の次に「第三七四号証、第三九三、第三九四号証、」を付加し、同行「証人村田博生及び同佐藤壽一」とあるのを「原審証人村田博生、同佐藤壽一及び当審証人渋谷正勝」と改める。

4  原判決一二九頁三行目末尾の次に「又、平成三年度の月別一日当たり平均騒音発生回数は、小島町が約25.8回、伊切町が約25.0回という数値であった。」を付加し、同四行目「昭和六二年度」とあるのを「平成三年度」と、同五行目「環境基準」とあるのを「昭和四八年環境基準」と、同六行目「同引用図表第31表」とあるのを「本判決別紙第五」と各改め、同九行目以下同一三〇頁初行までの括弧書き部分を削除し、同二行目「昭和五六年度」以下同行「昭和六二年度」までの部分を「昭和五六年度、同五八年度ないし同六二年度及び平成元年度ないし同三年度」と、同三行目「四九回」とあるのを「四七回」と各改める。

5  原判決一三一頁三行目「昭和六三年度」とあるのを「平成四年度」と、同四行目から同五行目にかけて「被告最終準備書面引用図表第30表」以下同六行目末尾までの部分を「本判決別紙第六記載のとおりである。」と、同七行目から同八行目にかけて「約一七七六回(一日平均約五八回)」とあるのを「約一八〇七回(一日平均約六〇回)」と、同一三二頁初行から同二行目にかけて「若干の増加傾向があり、」以下同四行目「なっており、」までの部分を「若干の増加傾向があったが、その後は減少傾向が続いている。そのため昭和六一年度ないし平成四年度の七か年の一か月当たりの平均管制航空交通量の平均は、約二〇六九回(一日平均約六九回)程度となっており、」と、同六行目「三か年」とあるのを「七か年」と、同行「約一〇〇回」とあるのを「約九四回」と各改める。

6  原判決一三三頁初行から同二行目にかけて「昭和六二年度まで」とあるのを「平成三年度まで(昭和六三年度を除く)」と、同二行目「別紙第五」とあるのを「本判決別紙第七の1・2」と、同四行目「一七分五〇秒」とあるのを「一八分〇九秒」と、同四行目から同五行目にかけて「一二分二二秒」とあるのを「一三分二〇秒」と、同六行目「右別紙第五」とあるのを「右別紙第七の1・2」と、同末行「約二四秒」とあるのを「約二六秒」と、同一三四頁初行「約一九秒」とあるのを「約二〇秒」と各改め、同行「更に、」以下同三行目末尾までの部分を削除する。

7  原判決一三四頁五行目から同六行目にかけて「昭和六二年度」とあるのを「平成三年度」と、同六行目「定時測定点」とあるのを「常時測定点」と、同八行目「昭和五六年度及び五七年度」とあるのを「昭和五六年度、五七年度及び六三年度」と各改め、同一三五頁全部を本判決別紙第八と差し替え、同一三六頁初行「昭和六二年度」とあるのを「平成三年度」と、同二行目「被告最終準備書面引用図表第32表」とあるのを「本判決別紙第九」と、同三行目「七七ないし八四」とあるのを「七六ないし八四」と、同行「八四ないし八七」とあるのを「八〇ないし八七」と、同九行目「昭和六二年度」とあるのを「平成三年度」と各改め、同末行末尾の次に「昭和六三年度については、資料が見当たらない。」を付加し、同一三七頁全部を本判決別紙第一〇と差し替え、同一三八頁初行「昭和六二年度」とあるのを「平成三年度」と改め、同四行目の括弧書き部分を削除する。

8  原判決一三九頁八行目「約一〇〇回」とあるのを「約九四回」と改め、同一四〇頁二行目末尾の次に行を改め、「なお、常時測定点における平成元年度から同三年度までの曜日別平均騒音発生回数も、右と比較して大きな変化は認められない。」を付加する。

9  原判決一四三頁九行目「第六航空団指令」とあるのを「第六航空団司令」と改める。

10  原判決一四九頁六行目「証人」とあるのを「原審証人」と改め、同行「佐藤壽一」とある次に「、当審証人奥村回及び同篠塚徹」を付加し、同行「原告」とあるのを「原審における一審原告」と改める。

11  原判決一五二頁六行目「七月」とある次に「、平成二年四月ないし同五年八月」を、同八行目「表②」とある次に「及び別冊『一審原告ら最終準備書面』一八八ないし一九三頁の第一ないし第四表」を、同一五三頁初行「ことである。」の次に「又、右平成二年四月から同五年八月までに一審原告らが実施した騒音測定調査によれば、一審原告らが丸の内定点と称する小松市丸の内二丁目所在の騒音測定点(WECPNL八〇以上同八五未満の地域)における一日当たりの七〇デシベル(A)以上の平均(測定時間が午前中の一部に止まったものを除外した三〇回の平均)騒音発生回数は93.2回で、最大は一五三回に及んでいる。」を各付加する。

12  原判決一五四頁二行目「検証結果」とあるのを「原審検証結果」と、同一〇行目「もっとも、」以下同一五五頁初行末尾までの部分を「もっとも、窓を閉めた室内で測定したところ、住宅防音工事が実施してあった一審原告澤田榮太郎方では約三三デシベル(A)、同防音工事を実施していなかった同福田俊保方では約一八デシベル(A)の遮音効果が得られた。」と、同九行目「しかし、」以下同一五六頁三行目末尾までの部分を「しかし、窓を閉めることによって室内では、相当程度の遮音効果を生み、特に防音工事を実施した家屋の場合には、おおむね三〇デシベル(A)前後の遮音効果が得られていると認められる。もっとも、特別な防音工事を実施しなくとも、通常の建物の構造によっても一定の遮音効果は得られること、室外の騒音が激しい場合には、防音工事を施した室内であっても、ジェット戦闘機が離着陸時に発する特有の金属的な音質を完全には遮音できる訳ではないこと、人間は自宅にいる時間だけを取っても、常に窓を閉めた室内で生活している訳でなく、又、そのような生活を他から強制されるべきものでもないことに照らせば、騒音被害を評価するに当たっては、右住宅防音工事の効果のみを過大に評価できない。」と各改める。

13  原判決一五六頁末行「昭和六二年」とあるのを「平成三年」と、同一五七頁一〇行目「昭和六三年度」以下同一五八頁初行「資料はないので、」までの部分を「昭和六三年度には、F一五Jの本格的運用が始まったことに伴い、管制回数が増加したものの、その後は再び相当程度管制回数が減少している。しかし、騒音量の変化を明らかにする確たる資料はなく、右数値それ自体も右昭和四五年以降の平均値と比較して、顕著に相違するほどではないので、」と各改める。

二  地上音

右に対する当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決一五八頁五行目冒頭以下同一六三頁二行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一五八頁六行目「証人」とあるのを「原審証人」と、同七行目「及び同佐藤壽一」とあるのを「、同佐藤壽一及び当審証人渋谷正勝」と各改める。

2  原判決一六〇頁九行目冒頭以下同一六一頁二行目末尾までの部分を次のとおり改める。

「なお、一審原告らの中でも特に小松飛行場に近接した地域に居住している一審原告福田俊保は、原審において、自衛隊機のエンジン調整音による被害を強く訴える供述をしている。しかし、乙第三七号証の一ないし五、第三四七号証、原審における一審原告福田俊保本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、サイレンサー(F四EJ、F一五J用各二基)は、同装置内でエンジン調整を行う場合には、同所から半径五〇〇メートル離れた円周上に七〇デシベル(A)を越える騒音を到達させないという消音性能を有するものとして設計され、しかも基地境界線からつとめて五〇〇メートルをおいて設置するよう、航空幕僚長からの通達により指導されており、小松基地においても、基地のほぼ中央に設置されていること、一審原告福田自身サイレンサーによる騒音軽減の効果があることを認める供述をしていることが認められる。これらをも勘案すれば、サイレンサーによる騒音軽減の効果は、それなりにあがっているものと認められる。」

3  原判決一六一頁四行目から同五行目にかけて「その約三〇分前の午前七時四〇分ころ」とあるのを「その約二、三〇分前の午前七時四〇ないし五〇分ころ」と、同一六二頁三行目「検証結果」とあるのを「原審検証結果」と各改める。

三  航空機の墜落等の危険

右についての当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決一六三頁四行目冒頭以下同一六四頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一六三頁五行目「証人吉村俊雄」とあるのを「原審証人吉村俊雄」と、同行「原告村田数子」とあるのを「原審における一審原告村田數子」と、同七行目「平成二年」とあるのを「平成六年三月」と、同行「九回」とあるのを「一〇回」と各改める。

2  原判決一六四頁末行末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「なお一審原告らは、軍用機につき墜落等の大事故の発生する確率は民間機のそれの一〇〇倍に達しているから、自衛隊機墜落の危険は現実のものとなっている旨主張し、甲K第一五号証中には、右に沿う記載がある。しかしながら、同記載は、F四E(航空自衛隊が使用するF四EJのみに限らない趣旨と考えられる)の設計基準(飛行大事故発生率一〇万時間当たり14.5回)と民間機の実績(同一〇万時間当たり0.15回)といった、本来性質の異なる事項を単純に比較するものであって、その手法自体容易に左袒できないばかりか、そもそも右設計基準ないし事故の実績なるものを的確に裏付ける文献、資料も紹介されていないから、同記載は措信できないというべく、他に一審原告らの右主張を認めるに足る証拠はない。従って、一審原告らの右主張は採用できない。」

四  振動・排気ガス

右に対する当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決一六五頁三行目冒頭以下同一六七頁五行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一六五頁三行目「陳述書、」とある次に「乙第三六八号証、」を付加する。

2  原判決一六六頁六行目末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「(2) 右報告に引き続き、大阪府立大学工学部では、財団法人航空公害防止協会の委託を受けて昭和四四年一二月二四日から同四五年五月三一日にかけて右大阪国際空港周辺において、家屋の振動の調査を行ったが、前回の測定法のうち、地面の振動測定については、加速度計ピックアップの信頼性がないとして、測定結果を取り消したうえ、①航空機通過による家屋の振動は、航空機の近接とともに増加し、直上を通過して数秒後に最大となり、のち減衰すること、②振動加速度は上下方向のものが水平方向よりやや大きいこと、③振動は不規則振動であって、その振動数は非常に高く、かつ広帯域にわたって分布し(三〇ないし三〇〇〇ヘルツ)、ほとんど音圧の周波数分布の範囲に対応していること、家屋部材の振動数は五〇ヘルツ以上、加速度振幅の最大値は一五〇ガルであること、④不規則振動のうち卓越振動がかなり明瞭にあらわれること、⑤同一箇所の速度加速度の対数値は、概して音圧レベルに比例しているようであること、⑥測定した機種のうち、振動レベル、振動加速度の最大値を示したのが前記コンベア八八〇であり、これに続くものは三発ジェット機ボーイング七二七で、ターボプロップ機、プロペラ機による振動は小さいことを発表し、本調査で測定された振動によって、建造物に被害が生ずる場合もあると考えられると結んでいる。

(3) 又、昭和五一年六月に財団法人航空公害防止協会が発表した「航空機騒音による家屋振動の調査報告書」によれば、財団法人小林理学研究所が運輸省航空局の委託を受けて、昭和五〇年一〇月一五日福岡空港周辺の木造家屋について航空機飛来時の騒音及び建物振動を調査した結果、航空機の通過に伴い屋根瓦、建屋内柱に振動が観測され、しかもいずれの振動とも、音圧レベルに比例していることが明らかとなった。」

3  原判決一六六頁七行目「(2)」とあるのを「(4)」と改める。

4  原判決一六七頁四行目冒頭の前に「甲K第一三号証及び弁論の全趣旨によれば、ジェット機の排気ガス中に含まれる汚染物質は、一酸化炭素、炭化水素、窒素化合物が主要なものであり、離陸するB七四七ジェット旅客機一機の排出する一酸化炭素は、排気量一六〇〇CCの乗用自動車に換算すれば、三〇四台分に相当すること、羽田空港の昭和四八年一〇月の一日平均離着陸機数二一三機(B七〇七、B七二七、B七三七、B七四七、DC八各ジェット機合計一六六機、YS一一ターボプロップ機四七機)につき排気ガス中に含まれる一日当たりの汚染物質総排出量(一〇〇〇メートルを越える地点で排出された分を除く)は、一酸化炭素が10.31トン、炭化水素が6.205トン、窒素化合物が3.16トンに及ぶことがそれぞれ認められる。しかしながら、」を付加する。

第五  被害

一  総論

当裁判所も、航空機騒音等による一審原告らの個々の被害については、各一審原告に共通する最小限度の被害を想定することができ、同被害の限度で一審原告らの被害を認定する限りでは、各一審原告ごとに、現実に受けている被害を個別具体的に立証する必要がないこと並びに航空機騒音が人体に与える影響及び航空機騒音の特色については、次に付加訂正するほかは、原判決一六七頁八行目冒頭以下同一七四頁八行目末尾までの記載と同一であると判断するから、これを引用する。

1  原判決一六七頁末行から同一六八頁初行にかけて「基本とするものであって、このような被害については、」とあるのを「基本とするものであるところ、こうした被害はその性質上、飛行場周辺の広範な地域に対して及ぼされるものであるうえ、一審被告において後述する種々の周辺対策を講じていることからも明らかなように、会話妨害、電話聴取妨害等というような一定の類型化が可能であるともいえるものである。従って、」と改め、同一六八頁六行目「原告に」とある次に「共通する」を、同七行目「生じていること」とある次に「、即ち最小限度の生活被害が生じていること」を、同九行目「いうべきである。」とある次に「従って、右共通の損害が漠然としたものであって、認められないとする一審被告の主張は採用できない。」を各付加し、同九行目から同一〇行目にかけて「事柄である」以下「検討したとおり、」までの部分を「事柄であり、あくまでも被害の証明度を軽減したり、立証責任を転換するものではなく、又前述のとおり、」と改める。

2  原判決一七一頁八行目「内蔵」とあるのを「内臓」と改め、同一七二頁六行目「因子として」を削除する。

二  生活妨害、睡眠妨害

1  睡眠妨害を除く生活妨害

右生活妨害についての当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決一七四頁一〇行目冒頭以下同一九六頁一〇行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(一) 原判決一七四頁一〇行目「1」とあるのを「(一)」と、同一七五頁初行「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と、同三行目「(一)」とあるのを「(1)」と、同一〇行目「(二)」とあるのを「(2)」と、同一七八頁九行目「(三)」とあるのを「(3)」と各改める。

(二) 原判決一七九頁七行目「2」とあるのを「(二)」と、同末行「(一)」とあるのを「(1)」と、同一八〇頁初行「(1)」とあるのを「(ア)」と、同一八一頁一〇行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同一八三頁初行から同二行目にかけて「23.8パーセント」とあるのを「23.5パーセント」と、同一八四頁九行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と、同一八五頁二行目「(二)」とあるのを「(2)」と、同四行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同一八六頁五行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同一八七頁五行目「航空騒音」とあるのを「航空機騒音」と、同六行目「(三)」とあるのを「(3)」と、同八行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同一八八頁七行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同一八九頁四行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と各改める。

(三) 原判決一八九頁末行「3」とあるのを「(三)」と、同一九〇頁初行「(一)」とあるのを「(1)」と、同三行目及び同九行目に各「第三」とあるのをいずれも「第四」と、同一九一頁初行「二五秒」とあるのを「二六秒」と、同一九二頁六行目「通常」以下同七行目「少なくないこと」までの部分を「住宅防音工事が施工された部屋には、同時に冷暖房機、換気扇等の空調設備が設置されるとはいえ、夏期等においては、窓を開放した状態で生活する場合も少なくなく、又、そのことをとらえて非難されるいわれもないこと」と、同末行「否定することはできない。」とあるのを「、主観的なものであるとして、一概に否定することもできない。」と各改める。

(四) 原判決一九四頁六行目「(二)」とあるのを「(2)」と、同一九五頁八行目「WECPNL九〇以上の地域」とあるのを「大阪国際空港周辺のWECPNL九〇以上の地域」と各改める。

(五) 原判決一九六頁二行目「(三)」とあるのを「(3)」と、同七行目「騒音継続時間は一日のうちで短時間であることも」とあるのを「航空機騒音は間欠的なもので、その継続時間合計も前述のとおり一日のうちで短時間に止まっていること、視覚等聴覚以外の感覚によっても、危険を察知し、交通事故防止のために適宜の回避措置を取ることが相当程度可能であると考えられることをも」と各改める。

2  睡眠妨害

(一) 睡眠妨害についての一審原告ら小松飛行場周辺住民の訴えは、原判決一九七頁三行目「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と、同五行目「(一)」とあるのを「(1)」と、同一九八頁初行「(二)」とあるのを「(2)」と各改めるほかは、同一九七頁初行「甲E第一四九号証」以下同一九八頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(二) 騒音が睡眠に与える影響に関する研究結果等については、次に付加訂正するほかは、原判決一九九頁初行「騒音が」以下同二〇七頁六行目末行までの記載と同一であるから、これを引用する。

(1) 原判決一九九頁六行目「(一)」とあるのを「(1)」と、同二〇〇頁四行目「(二)」とあるのを「(2)」と、同五行目「五〇ないし七五フォーン」とあるのを「三〇ないし七五フォーン」と各改める。

(2) 原判決二〇〇頁一〇行「(三)」とあるのを「(3)」と、同末行「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二〇二頁四行目「(2)」とあるのを「(イ)」と各改め、同五行目「幼児」の次に「四〇名」を付加し、同末行「段階でも」とあるのを「段階では」と、同二〇三頁二行目「睡眠段階から」とあるのを「睡眠段階よりも」と各改める。

(3) 原判決二〇三頁九行目「(四)」とあるのを「(4)」と、同末行「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二〇四頁七行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同二〇五頁二行目「右(1)」とあるのを「右(ア)」と、同六行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と、同二〇六頁七行目「(4)」とあるのを「(エ)」と各改める。

(4) 原判決二〇六頁九行目「(五)」とあるのを「(5)」と、同行「右(四)」とあるのを「右(4)」と、同二〇七頁二行目「(六)」とあるのを「(6)」と各改める。

(三) そこで、一審原告ら小松飛行場周辺住民につき、睡眠妨害の被害が生じているかどうかについて検討する。

(1) 騒音の睡眠に対する影響は、右のとおりであって、現時点における研究結果によっても、騒音と睡眠妨害との間の量反応関係及び騒音による長期的影響については、いまだ明らかとなったとはいえないが、それでも騒音が睡眠を妨げる要因となりうることは、明らかであるといえる。

(2) これを小松飛行場周辺についてみるのに、前記認定のとおり、午後八時(夏期でも遅くとも同九時)から翌午前七時までの時間帯には、自衛隊機による通常訓練を実施しない旨の運航規制が行われており、これが概ね遵守されている。このほか、演習の一部、緊急発進、災害派遣等は夜間に行われるものの、その回数は多くなく、常時測定点における測定結果によっても、一日当たり0.5回程度となっており、特に緊急発進については、冷戦の終焉とともに、その回数が近年顕著に減少している。又、防音工事もそれなりの成果をあげている。これらを前提にすると、実験室における研究の成果を直ちに本件に当てはめることは相当ではない。

(3) しかも前記認定のとおり(原判示)、小松市の騒音影響調査においても、「なかなか寝つけない」、「寝ているとき目を覚まされる」と訴える者の割合は、調査対象の中で最も騒音の激しい地区であると思われる小松市浮柳町地区(調査時九〇ないし九四WECPNL)においても、順に一二パーセント、二三パーセントに止まっており、市内のより騒音の低い地区及び対照地区に至っては、〇ないし八パーセントの結論が得られている。

(4) 睡眠妨害は、主観的な要素も多分にあるところ、回数こそ減少したものの、夜間突如航空機騒音によって眠りを妨げられることが今なお皆無とはいえないであろうこと、こうした体験が人の記憶として蓄積されることによって、不快感を生じさせることが考えられないでもないこと等を参酌考慮しても、右(2)の現状及び(3)のアンケート結果を総合すれば、小松飛行場を離着陸する自衛隊機等による騒音が一審原告らに及ぼす夜間の睡眠妨害が、深刻な状況にあったとはいえない。

(5) 一審原告らの前記供述中には、仕事の都合上、日中に睡眠を取らざるを得ない生活を送っているのに、航空機騒音によってこれが妨げられることを睡眠妨害による被害として指摘するものもあるが、本件で一審原告らが主張しているのは、一審原告らに共通する最小限度の被害であるから、基本的には、大部分の者が就寝する夜間において、睡眠が妨害されるかどうかについて検討すれば足るというべきであり、右一部の者の個別事情を勘案して、周辺住民全体における被害の有無を検討することは相当ではない。

(6) 以上に照らせば、一審原告らについては、睡眠妨害の被害を認めることができない。

三  身体被害

一審原告らは、航空機騒音等により各種の身体的自覚症状、聴力障害、血圧上昇、保育園児の問題行動等の健康被害が、一審原告ら小松飛行場周辺の騒音地域周辺住民に発生していると主張するので、以下判断する。

1  一審原告ら小松飛行場周辺住民の訴え

(一) 一審原告ら小松飛行場周辺住民の心理的、情緒的障害に関する訴えは、原判決二一一頁四行目「第一九六号証の一ないし四、」を削除し、同七行目「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と、同九行目「(一) 原告ら」とあるのを「(1) 一審原告ら(当審において訴えを取り下げた者も含む)」と、同二一二頁二行目「原告」とあるのを「者」と、同三行目「(二)」とあるのを「(2)」と各改めるほかは、同二一一頁四行目「甲E第一四九号証」以下同二一三頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(二) 一審原告ら小松飛行場周辺住民の聴覚障害に関する訴えは、原判決二二〇頁七行目「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と、同九行目「(一) 原告ら」とあるのを「(1) 一審原告ら(当審において訴えを取り下げた者も含む)」と、同二二一頁二行目「(二)」とあるのを「(2)」と各改めるほかは、同二二〇頁五行目「甲E第一四九号証」以下同二二一頁五行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(三) 一審原告ら小松飛行場周辺住民のその他の健康被害に関する訴えは、原判決二五二頁四行目「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と、同六行目「(一) 原告ら」とあるのを「(1) 一審原告ら(当審において訴えを取り下げた者も含む)」と、同九行目「(二)」とあるのを「(2)」と各改めるほかは、同二行目「甲E第一四九号証」以下同二五三頁七行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

2  健康被害等に関する各種研究(谷口調査研究を除く)の成果

(一) 小松飛行場以外の飛行場周辺住民の心理的、情緒的被害に関する各種研究の結果

右研究の成果は、原判決二一六頁五行目「(一)」とあるのを「(1)」と、同二一七頁三行目「(二)」とあるのを「(2)」と各改めるほかは、同二一六頁二行目「他の」以下同二一七頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(二) 騒音が聴覚に与える影響に関する各種研究の結果

(1) 騒音が聴覚に与える影響に関するこれまでの医学的知見や実験室等における各種研究結果については、次に付加訂正するほかは、原判決二二一頁一〇行目冒頭以下同二三一頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(ア) 原判決二二二頁三行目「(一)」とあるのを「(ア)」と、同二二三頁四行目「(二)」とあるのを「(イ)」と各改める。

(イ) 原判決二二五頁八行目「(三)」とあるのを「(ウ)」と、同二二六頁初行「(1)」とあるのを「①」と各改め、同六行目「四〇〇〇ヘルツ」とある部分の前に「最も騒音の影響を受けやすいと考えられている」を付加し、同九行目「二分」とあるのを「二分間」と、同一〇行目「四分」とあるのを「四分間」と、同二二七頁初行「(2)」とあるのを「②」と、同二二八頁初行「(3)」とあるのを「③」と、同八行目「(4)」とあるのを「④」と各改める。

(ウ) 原判決二二九頁五行目「(四)」とあるのを「(エ)」と改め、同九行目「被検者」とある次に「(約七〇〇名)」を付加する。

(エ) 原判決二三〇頁末行「(五)」とあるのを「(オ)」と改める。

(2) 小松飛行場以外の飛行場の周辺住民に対する聴力障害に関する実施調査の結果は、次に付加訂正するほかは、原判決二三二頁二行目「甲D第一九号証」以下同五行目末尾まで及び同二三六頁末行冒頭以下同二四二頁五行目末尾までの記載と同一であるから、右の順序でこれを引用する。

(ア) 原判決二三二頁二行目から同三行目にかけて「甲E第一九六号証の一ないし四、」、同四行目「、原告谷口堯男本人尋問の結果」とあるのを各削除する。

(イ) 原判決二三六頁末行「(二) また、」とあるのを「(ア)」と、同二三七頁五行目「(1)」とあるのを「①」と、同八行目「(2)」とあるのを「②」と、同二三八頁四行目「(三)」とあるのを「(イ)」と、同八行目「伊丹市」とあるのを「伊丹市地区」と、同二三九頁末行「(四)」とあるのを「(ウ)」と各改める。

(三) その他の身体的影響に関する研究結果

右研究の結果は、次に付加訂正するほかは、原判決二五三頁八行目「甲C」以下同二六〇頁二行目末尾まで及び同二六二頁六行目冒頭以下同二六五頁四行目末尾までの記載と同一であるから、右の順序でこれを引用する。

(1) 原判決二五四頁初行「甲E第一九六号証の一ないし四、第一九八号証、」、同二行目末尾「、」、同三行目「原告谷口堯男本人尋問の結果」とあるのを各削除する。

(2) 原判決二五四頁五行目「(一)」とあるのを「(1)」と、同六行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二五五頁三行目「(2)」とあるのを「(イ)」と各改める。

(3) 原判決二五五頁九行目「(二)」とあるのを「(2)」と、同一〇行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二五六頁三行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同五行目「(ア)」とあるのを「①」と、同二五七頁二行目「(イ)」とあるのを「②」と各改める。

(4) 原判決二五七頁七行目「(三)」とあるのを「(3)」と、同八行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二五八頁三行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同七行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と、同末行「(4)」とあるのを「(エ)」と各改める。

(5) 原判決二五九頁三行目「(四)」とあるのを「(4)」と、同四行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同七行目「(2)」とあるのを「(イ)」と、同末行「(3)」とあるのを「(ウ)」と各改める。

(6) 原判決二六〇頁三行目「(五) 小松飛行場周辺及び」とあるのを「(5) 小松飛行場を除く」と改め、同二六二頁六行目「(2)」とあるのを削除し、同九行目から同一〇行目にかけて「前記『心理的、情緒的被害』とあるのを「前記2の(一)」と改める。

3  谷口調査研究について

(一) 谷口調査研究作成の経緯

甲E一九六号証の一ないし四、第二一二号証、原審証人河野晃の証言、原審・当審における一審原告谷口堯男本人尋問の結果、原審検証の結果及び弁論の全趣旨によれば、石川県能美郡根上町に所在する寺井病院(WECPNL七五以上同八〇未満の地域)医師である一審原告谷口らは、昭和五八年八月に内科医師、小児科医師、公衆衛生科医師等からなる騒音被害医学調査班を組織し、同病院の入院患者、一審原告ら、その家族、一審原告らの中の少なからぬ者が所属している小松・能美地区労働組合センター(以下「地区労」という。)所属の労働組合員、地域住民等を対象として、同年から同六二年にかけて、及び平成四年一〇月から同五年九月にかけて、小松飛行場周辺における航空機騒音が周辺住民の身体に及ぼす影響を中心とした各種の調査を行い、その調査結果をそれぞれ甲E第一九六号証の一ないし四(以下「原審谷口調査」という。)及び第二一二号証(以下「当審谷口調査」という。)にまとめたことが認められる。

(二) 原審谷口調査の内容

甲E第一九六号証の一ないし四、原審証人河野晃の証言、原審・当審における一審原告谷口堯男本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原審谷口調査の内容は、次のとおりであることが認められる。

(1) 心理的、情緒的被害に関する部分は、原判決二一三頁一〇行目「(1)」とあるのを「(ア)」と、同二一四頁一〇行目「(2)」とあるのを「(イ)」と各改め、同行「原告」とある次に「(当審において訴えを取り下げた者も含む)」を付加し、同二一五頁四行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と改めるほか、同二一三頁一〇行目冒頭以下同二一六頁初行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(2) 聴覚障害に関する部分は、次に付加訂正するほかは、原判決二三二頁七行目冒頭以下同二三六頁一〇行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(ア) 原判決二三二頁七行目「(1)」とあるのを「(ア)」と改め、同行から同八行目にかけて「本件原告ら九三名」とある次に「(当審において訴えを取り下げた者も含む)」を付加する。

(イ) 原判決二三四頁初行「(2)」とあるのを「(イ)」と、同六行目「(3)」とあるのを「(ウ)」と各改め、同九行目「千木野」とある前に「同市」を付加する。

(ウ) 原判決二三五頁四行目「(4)」とあるのを「(エ)」と改め、同七行目「非騒音地域のそれ」の次に「(それぞれ一九名〔30.6パーセント〕、一四名〔22.6パーセント〕)」を、同一〇行目「同様に」の次に「非騒音地域のそれ(それぞれ三名〔10.0パーセント〕、〇名)に比して」を各付加する。

(エ) 原判決二三五頁末行「(5)」とあるのを「(オ)」と改める。

(3) その他身体的影響に関する部分は、原判決二六〇頁末行「原告」とある次に「(当審において訴えを取り下げた者も含む)」を付加するほかは、同頁六行目冒頭以下同二六二頁五行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(三) 当審谷口調査の内容

甲E第一九六号証の一ないし四、第二一二号証、第二一七号証及び当審における一審原告谷口堯男本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、当審谷口調査の内容は、次のとおりであることが認められる。

(1) 右調査は、原審谷口調査のうち、調査Ⅱと呼ばれる地域住民の騒音影響調査を、その調査の対象地域をWECPNL七五以上同八〇未満の地域(寺井町、根上町、小松市)及び離着陸コースの直下にある連続した地域として選定した自治体の一定の単位区域(小松市上牧町、同市丸内町鹿小屋地区、同市浜田町第八班)に拡大して、実施したものである。

即ち、右調査は、原審谷口調査で用いたのと同一の質問用紙(甲E第一九六号証の二の資料5)を用いて、WECPNL七五以上同八〇未満の地域及び同八五以上の地域の住民に対し、アンケート形式により一八項目にわたる身体被害質問調査を行ったものである。

(2) 右調査が対象としてWECPNL七五以上同八〇未満の地域住民(二九七名)は、地区労の組合員で調査に応じた者、同八五以上の地域住民(八九名)は、同じく調査に応じた地区労組合員(二三名)及び右自治体単位区域に居住する全住民(各世帯の世帯主等六六名)である。なお対照地区住民に関する調査資料は、原審谷口調査において、非騒音地区として選定された小松市本江、同埴田及び同河田地区並びに加賀市大聖寺地区に居住し、騒音被害調査の趣旨を理解し、協力が得られた者に対する調査結果をそのまま使用した。

(3) こうして得られた被害に対する訴えにつき、その頻度を判定するために、被害が「ほとんどない」から「ひんぱんにある」までの五段階に区分し、これらに順次〇点から四点までの評価点数を付して、訴えの点数の平均値を算出し、これをWECPNL七五以上同八〇未満の地域の住民、右自治体単位区域を含む同八五以上の地域住民及び非騒音地域住民の三つの群に区分して比較検討を行うとともに、各群ごとに性別、年齢別の構成比を同じくする各五二名(男三六名、女一六名)を抽出して、その訴えの平均値の差について統計学的検定を行った。

(4) その結果、騒音地域住民は、WECPNL七五以上同八〇未満の地域、自治体単位区域を含む同八五以上の地域いずれの住民においても、生活妨害や精神的、心理的訴えとともに、「胸がドキドキする」、「頭が痛い」、「耳鳴りがする」、「食欲がなくなる」、「疲れやすい」等の身体的訴えを示す項目において、非騒音地域住民より訴えの平均値が多く、又、騒音地域内では、WECPNL七五以上同八〇未満の地域住民の平均値よりも同八五以上の地域住民の訴えの平均値が明らかに高いとの結果が得られた。同八五以上の地域住民の間では、自治体単位区域住民の方がむしろ生活妨害の訴えにおいて、地区労組合員に比して有意差が大きく、身体症状では区別がなかった。

(5) 右により、一審原告谷口は、WECPNL七五以上同八〇未満の地域を含む小松飛行場周辺住民には、非騒音地域住民に比して身体的被害がより多く発生しており、騒音レベルと身体的症状に関する住民の訴えとの間には、前者が大きくなるほど後者が大きくなるという、量反応関係の存在が確認されたと結論付けている。

4  服部報告について

甲E第二一三号証、第二一四号証及び当審証人服部真の証言並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 服部は、疫学、公衆衛生学を専攻し、騒音被害医学調査班に所属する医師であり、原審谷口調査においては、検査結果に基づき、性別、年齢等身体被害に影響を与える因子の多変量解析の作業に従事していたが、当審に至り、当審谷口調査の結果等を疫学的見地から検討した報告書(甲E第二一四号証)を作成した。

(二) 右報告は、騒音被害医学調査班による身体被害調査の意義を述べるとともに、要因と疫病との関連についてヒル(A.B.Hill)が疫学的因果関係の有無を判断するために示した九項目の指標を斟酌し、訴えの平均値と騒音との関連性の強さを見るために、該当地区の数値が対照地区のそれに比して何倍高いかということを疫学的に検討した。その結果、小松飛行場周辺において騒音と住民の身体的被害との間には因果関係が認められ、他の飛行場周辺において、航空機騒音による身体的影響を否定した調査結果(以下「ネガティブデータ」という。)については、その分析が恣意的であるとし、これら調査結果を精査すれば、身体的被害を認めることができると結んでいる。

5  当裁判所の判断

そこで、以上の認定を前提にして、一審原告ら小松飛行場周辺住民における身体的被害の有無について判断する。

(一) 身体被害に対する判断

(1) 聴覚障害について

聴覚障害に対する当裁判所の判断は、次に付加訂正するほかは、原判決二四二頁七行目冒頭以下同二五一頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(ア) 原判決二四二頁七行目「(一)」とあるのを「(ア)」と、同二四四頁七行目「被験者数が少ないことから」とあるのを「TTSの発生については、個々人の身体的条件、生活状況等が影響するところも多く、従って、こうした個別的な要因をも十分考慮しなければならないと解すべきであるが、右研究では被験者数が少なかった(五ないし六名)ため、右個別事情が平均化できたかどうかについては、少なからず疑問が残るところであって、」と各改める。

(イ) 原判決二四五頁七行目「(二)」とあるのを「(イ)」と改め、同二四六頁九行目末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「なお、一審原告らは、Leq24hは航空機騒音の評価単位としては適切ではないと主張するが、甲C第一九号証、第五〇号証、甲D第一号証、乙第一四〇号証の一ないし三、第三一四、第三一五号証の各一、二及び弁論の全趣旨によれば、右Leq24hは、生活環境に対する騒音の関わりを重視するという観点から、人体が一定の生活単位(右では二四時間)内に暴露した騒音量の合計を定量的に把握するのに便宜であり、航空機騒音について、最大騒音レベルをもってその大きさを表す単位と並んで、評価単位として確立していると認められるから、右主張は採用できない。」

(ウ) 原判決二四六頁一〇行目「(三)」とあるのを「(ウ)」と、同二四七頁七行目「前記谷口堯男らの調査結果」とあるのを「原審谷口調査」と、同一〇行目「甲第一九六号証の一」とあるのを「甲E第一九六号証の一」と、同二四八頁四行目から同五行目にかけて「右谷口堯男らによる調査結果」とあるのを「原審谷口調査」と各改める。

(エ) 原判決二四八頁七行目「(四)」とあるのを「(エ)」と、同二四九頁五行目「(五)」とあるのを「(オ)」と各改める。

(オ) 原判決二五〇頁八行目「(六)」とあるのを「(カ)」と、同二五一頁初行「谷口堯男らの前記調査結果」とあるのを「原審谷口調査」と、同行「検査精度」とあるのを「検査の手法及び精度」と各改める。

(2) その他の健康被害に対する当裁判所の判断は、次に付加訂正するほかは、原判決二六五頁六行目冒頭以下同二七一頁五行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(ア) 原判決二六五頁六行目「(一)」とあるのを「(ア)」と、同行「Ⅰ」とあるのを「1」と、同七行目「最近一〇年間」とあるのを「昭和五〇年から同五七年にかけて」と、同末行「循環器」とあるのを「循環器系」と、同二六六頁三行目「右2で」とあるのを「先に(原判示)」と、同二六七頁四行目「原告谷口堯男らによる調査結果」とあるのを「原審・当審谷口調査」と、同二六八頁四行目「(二)」とあるのを「(イ)」と各改める。

(イ) 原判決二七〇頁八行目「谷口堯男らの前記調査結果」とあるのを「原審・当審谷口調査」と改める。

(二) 一審原告らは、従来ネガティブデータとして公表されたものは、その研究の方法論が疫学的に相当ではなく、かえって同データを子細に検討すれば、一審原告らが主張する身体的被害の存在が肯定できると主張し、甲E第二一三号証及び当審証人服部真の供述中には右に沿う部分がある。

しかしながら、一審原告らも主張するように、服部は、身体的被害は、精神的・心理的被害と不可欠一体のものであると考え、疫学的因果関係判定の手法については、「否定するデータが幾万あろうと、肯定する一つのデータがあれば被害があるといえる。」、「否定するデータは、一定の条件のもとでは、被害の存する確率が九五パーセント以下であることを示したに過ぎない。」、「肯定するデータは一定の条件のもとでは、九五パーセント以上の確率で被害が存在することを示している。」等の見解に立ったうえで、原審・当審谷口調査等身体的被害の存在を肯定するデータのみを重視しているが、本件のような航空機騒音と飛行場周辺住民の健康被害との法的因果関係の有無を認定するについて、疫学的因果関係の手法が参考とされるべきであるとしても、右は、被害の存在を肯定しようとするに急な独自の見解として、採用するに由ないものである。又、甲E第二一二号証、第二一七号証及び当審における服部真の証言によれば、同証人は、ネガティブデータ(乙第一四三号証、第二二九号証、第二三三号証)については、その調査結果の一部分を取りあげて強調したり、或いは対照とすべき群を独自に取り替えたりした結果、これらの調査地点においても身体的被害の存在が肯定され、或いは同被害の発生がないとはいえないとの結論を導き出していることが認められるが、これらの結論は、本来の調査結果とは異なるものであるから、こうした結果が身体的被害を認定すべき資料として利用できるかどうかすら、そもそも疑問であるところ、その点をさておいて、仮に一審原告らの主張するように、これらネガティブデータから被害発生の可能性を読み取ることが可能であるとしても、これらは、あくまでも、航空機の騒音暴露によって、飛行場周辺の住民に身体的被害が生ずる可能性がないとはいえないとの結論を示唆したに過ぎず、ネガティブデータの結論それ自体を左右するに足るものではないから、これらから直ちに、前記各調査区域(原判示)住民について、難聴等の身体的被害が発生したとの事実を認めることはできない。

(三) 又前述のように(原判示)、原審・当審谷口調査は、小松飛行場周辺における身体的被害に関する医学的調査としては、大規模かつ、唯一のものであり、高血圧の罹患率、血圧平均値について、騒音地域が非騒音地域に比して、有意に高いことを明らかにしたものとしても、注目される。そして、当審谷口調査は、WECPNL七五以上同八〇未満の地域住民及び同八五以上の地域のうち特定の自治体単位ともいうべき地区に属する全世帯を新たに調査対象に加えたものであり、一審被告による原審谷口調査に対する批判を考慮し、同調査よりも客観性を持たせるよう、工夫、配慮が行われた面は否定できない。

しかしながら、原審谷口調査については、原判決の指摘したような精度、手法に関する問題点(以上原判示)が存することを否定できず、当裁判所も原審の判断を相当と考える。当審谷口調査についても、質問用紙の記載やその回収、分析といった調査の手法は、原審谷口調査と同様であり、又、対照地区住民の資料は、原審谷口調査におけるのと同一のものをそのまま使用しているのであるから、この点については、同調査に対するのと同じ批判が該当する。この他、甲E第二一七号証の記載及び当審における一審原告谷口本人の供述にもかかわらず、非騒音地域の調査が二月、WECPNL七五以上同八〇未満の地域の調査が一〇月から一二月にかけて行われたのに比し、これらの地域よりも騒音被害が当然大きいと考えられる同八五以上の地域の調査が、八、九月という窓を開放する機会の多い時期に実施されていること、谷口らが調査対象として選定した三つの自治体単位区域については、前述のように対象となる戸数が必ずしも多くないばかりか、多くの騒音地区自治体の中から特にこれらの地区を選定した経緯が、必ずしも明らかではないことは、いずれも右調査報告の信用性につき疑問を抱かせるものであり、これらに照らせば、当審谷口調査の結果によっても、直ちに小松飛行場周辺に居住する一審原告らにつき身体的被害が発生していると判断するには、なお疑問が残るところである。

なお、一審原告らは多変量解析の手法(数量化Ⅰ類)を用いた結果、小松飛行場周辺の騒音地域には、非騒音地域と比較して、航空機騒音による身体被害が有意差をもって存在し、しかも損害の中でも、当該地域における騒音の大きさと被害の程度について量・反応の関係が証明されたと主張するが、その解析計算の手法はともかくとして、解析の対象とされる変数の中には、前述のとおり、医師の診断書等を用いる代わりに、自衛隊機の飛行騒音が回答の対象となる騒音であることをことさら記載する等、調査に当たって被検者に与える予断(バイアス)を払拭しなかったアンケート調査の結果得られた主観的な訴えを集計したものも少なくなく、その精度に疑問があること、乙第三九七号証及び弁論の全趣旨に照らせば、当審谷口調査で得られた0.4ないし0.6の重相関係数(R)ないしこれに基づく寄与度(R2)程度では、果たして騒音と被害との間の相関関係を認めるのに十分と考えられるかどうか疑問が残ること等に照らせば、解析の基礎とされるデータについても疑問なしとはしない面があり、結局これらを勘案すれば、これらに基づいて服部らが行った多変量解析の結果についても、右疑問を払拭できない。

以上に照らせば、原審・当番谷口調査によっても、いまだ一審原告らにつき騒音等による身体被害の発生を認めることはできない。

(四) 一審原告らは、小松飛行場周辺の騒音地域住民に対する身体被害を検討するに当たっては、高感受性群と呼ぶべき、通常人よりも大きな身体被害を受けやすい子供、老人、妊婦等抵抗の弱い集団が存在すること、同集団には、より大きな身体被害が発生していることを考慮しなければならないと主張する。

しかしながら、一般論として、個々の音響の被爆者の中には、騒音暴露の被害を平均以上に受けやすい易受傷性、脆弱性という個体差が存することが学説上肯定されるにしても(乙第三九八号証)、一審原告らの主張する右高感受性群は、正規分布の場合に、平均値+標準偏差の二倍を超えて分布する2.5パーセントに該当する集団であるから、小松飛行場周辺のWECPNL七五以上の地域一万一〇〇〇世帯の中では二七五世帯がこれに該当するとして、計数上主張されているに過ぎず、高感受性群に属する集団の存在が現実に小松飛行場周辺において確認されたのかどうか、いかなる理由によりこの範囲を高感受性群と断定するのか、同集団に属する者の具体的な訴えが他の集団と比較してどのように質的・量的に異なっているのか、一審原告らの中に同集団に属する者がいるのか、又、その数、特徴はいかなるものか等については、いずれもこれを的確に認めるに足る証拠はない。さらに、前述のとおり、そもそも一審原告らは、本件の被害立証としては、少なくとも、大部分の一審原告らに共通して発生している、一定限度の基本的な生活利益についての被害の存在までは、これを立証しなければならないのであるから、このように特に被害を受けやすいという特殊な集団を想定して、同集団に発生し、或いは発生する可能性のある被害をもって、一審原告ら全体の被害立証に代え、又はこれを推認させる資料とすることはそもそも失当である。

一審原告らは、小松飛行場周辺の保育園児の問題行動から見た航空機騒音影響調査の結果(甲E第一六〇号証、第一九六号証の三、原審証人河野晃)は、高感受性群において現実に被害が発生している事実を裏付けるものであると主張するが、そもそも幼児の問題行動の原因としては、騒音等の外的な環境素因のみならず、当該幼児の遺伝・気質的素因、生育歴、家庭環境等の、いわば内的な素因も複雑に関連し合っていると考えられるところ、右調査ではこうした内的な素因に関する調査検討はなされておらず、又、原審証人河野晃の証言によっても、騒音地域の保育所(弁論の全趣旨により末佐美保育園及び牧保育園であると考えられる)および対照地区とされた非騒音地域の保育所(弁論の全趣旨により粟津保育園であると考えられる)の選定基準、保護者や保育所職員が、幼児に問題行動があるかどうかをアンケート用紙に記入する要領等については、なお検討すべき点がなくもないのであって、結局これらを勘案すれば、右調査結果によっても、高感受性群における身体的被害を認めることはできないといわなければならない。

結局一審原告らの右主張も、採用できない。

(五) 以上論じたように、一審原告らの訴え及び各種の研究成果を前提としても、小松飛行場に離着陸する航空機の騒音によって、一審原告らに健康被害その他の身体的被害が発生しているとは認められない。

四  その他の被害

当裁判所も、自衛隊機等の離着陸によっては、一審原告らの主張する振動による家屋の損傷、地価の低下、戦争の恐怖、養育・教育環境の破壊、都市環境の破壊等の被害が生じたとは認めることはできないと判断するところ、その理由は、原判決二七一頁末行「証明がない」とある次に「(航空機騒音によって自宅周辺の地価が低下したという原審証人北口良治の供述は、客観的な裏付けを欠き、又、乙第九二号証の一ないし三に照らしも採用できない。)」を付加するほかは、原判決二七一頁七行目冒頭以下同二七三頁五行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

五  結論

このように、本件では、小松飛行場周辺の一審原告らは、前記認定の自衛隊機等による航空機騒音及び振動によって、会話・電話・テレビ等の聴取や学習、読書等の生活妨害等の日常生活に対する被害並びにこれに起因する苛立ちや不快感等の情緒的、心理的被害を受けているものと認められるけれど、睡眠妨害、聴覚障害及び前記のその他の身体的被害については、これを認めることができない。

第六  騒音対策

一  総論

一審被告が講じてきた騒音対策の区分、検討方法については、原判決二七四頁五行目冒頭以下同二七五頁三行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

二  周辺対策

次に付加訂正するほかは、原判決二七五頁五行目冒頭以下同二九七頁三行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決二七六頁五行目「第二九九号証、」とある次に「第三八四、第三八五号証、第三九九号証の一ないし一八、」を付加し、同行「証人」とあるのを「原審証人」と、同八行目「及び同石井道夫」とあるのを「、同石井道夫及び当審証人篠塚徹」と、同九行目「原告ら」とあるのを「原審・当審における一審原告ら」と各改める。

2  原判決二七六頁末行「周辺対策は、」とある次に「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律(昭和二八年法律第二四六号)が規定する他は、」を付加し、同二七七頁三行目「同法」とあるのを「周辺整備法」と、同二七八頁九行目「『航空機騒音」以下同一〇行目末尾までの部分を「昭和四八年環境基準」と各改める。

3  原判決二八一頁五行目「同年」とあるのを「昭和五〇年」と、同六行目「『小松基地周辺」以下同二八二頁九行目「がある)。」までの部分を「一〇・四協定が締結された。その内容は、前述のとおりである。」と、同二八三頁八行目「生活環境法」とあるのを「生活環境整備法」と、同二八四頁三行目「前記基本協定書」とあるのを「一〇・四協定」と各改める。

4  原判決二八七頁一〇行目末尾の次に「なお、一審被告は、平成元年度からは、住宅防音工事により設置した空気調和機器で、設置後一〇年以上経過し、その機能の全部又は一部が保持されなくなったものについては取替工事をする場合に、その費用を生活環境整備法四条に基づき助成する空気調和機器機能復旧工事の助成及び生活保護法による保護を受けている世帯につき、空気調和機器使用に伴う夏期(六月から九月まで)の電気料金を助成する空気調和機器稼働費助成措置を新たに導入した。平成元年度から同四年度における前者の実施世帯数は八四〇、補助額合計は約二億九一三六万円で、後者の実施世帯数は延べ九八、補助額合計は約四六万円である。その内訳は、本判決別冊『一審被告最終準備書面引用図表』第3表の1及び3記載のとおりである。」を付加する。

5  原判決二八八頁二行目から同三行目にかけて「昭和六三年度」以下同末行「こととなる。」までの部分を「昭和五〇年度から平成四年度までに、二万一二四〇世帯(うち追加工事五七三一世帯)の住宅について一審被告の助成による住宅防音工事が完成し、それらに対する補助金総額は約四三二億九四三二万円に達しているが、新規工事は、対象地域において防音工事申請があった世帯については全部完了している。」と、同末行から同二八九頁初行にかけて「WECPNL」以下同行「完了しているが、」までの部分を「平成三年度までにWECPNL八〇以上の地域につき完了し、同四年度以降WECPNL七五以上同八〇未満の地域について追加工事に着手したが、」と、同四行目冒頭以下同六行目末尾までの部分を「一審原告ら(被承継人を含む)のうち、平成四年度までに一審被告の助成を受けて住宅防音工事を完了した者(親族名義による申請を含む)は、二二六名(二一三世帯)で、追加防音工事については一六二名(一五八世帯)である。その内訳は、本判決別冊『一審被告最終準備書面引用図表』第1表記載のとおりである。」と各改める。

6  原判決二九〇頁五行目から同六行目にかけて「昭和六三年度」とあるのを「平成四年度」と、同六行目「三六四戸」とあるのを「四一一戸」と、同行から同七行目にかけて「約五九万三七〇〇平方メートル」とあるのを「約六六万六五二九平方メートル」と、同七行目から同八行目にかけて「約八二億四一六五万円」とあるのを「約一一二億七五〇三万円」と、同九行目冒頭以下同一〇行目末尾までの部分を「一審原告らのうち、平成四年度までに一審被告から移転補償を受けて移転した者及びその内訳は、本判決別冊『一審被告最終準備書面引用図表』第1表記載のとおりである。」と各改める。

7  原判決二九一頁二行目「昭和六三年度」以下同四行目末尾までの部分を「平成四年度末までに約四三万八三二五平方メートルの土地にクロマツ、マテバシイ等約一四万一二二三本の樹木を植栽し、そのために約一億八三四六万円を支出した。」と、同五行目から同六行目にかけて「軽減に役立っていると主張するが、」とあるのを「軽減並びに景観や美観を整える等の心理的効果があると主張するが、緑地がもたらす景観上の印象以外に、」と各改める。

8  原判決二九二頁六行目「昭和六三年度」以下同行「約七億六二六七万円」までの部分を「平成四年度までに延二二万一四八九件、総額約一〇億九四七六万円」と、同八行目「被告最終準備書面引用図表第1表」とあるのを「本判決別冊『一審被告最終準備書面引用図表』第1表」と、同二九三頁四行目「照らし、」以下同六行目末尾までの部分を「照らせば、前記のとおり、住宅防音工事が順次実施され、多くの住居で室内における静穏がある程度確保されつつあることが、新たな設置申請が行われない一因として考えられるとしても、右電話機の使用上の効果を過大に評価することはできない。」と各改める。

9  原判決二九三頁七行目「防音工事、」とある次に「小中学校等における空調機器の電気料金の一部の助成、」を付加し、同末行「別冊」以下同行から同二九四頁初行にかけて「一四二五頁まで」までの部分を「本判決別冊『一審被告最終準備書面引用図表』参照(但し、同表中、第一表、第三表の1ないし3並びに第四表、第一一表、第一二表及び第一六表の各1・2を除外する。)」と改める。

10  原判決二九四頁初行から同二行目にかけて「前記」以下同三行目末尾までの部分を「後に認定するように、これを違法性阻却ないしは賠償額算定の事情として考慮するのは格別として、前記認定の本件航空機騒音(及び振動)による一審原告らの個々の被害を防止又は軽減するに足るものではない。」と改める。

11  原判決二九四頁六行目「証人石井道夫」とあるのを「原審証人石井道夫、当審証人篠塚徹」と、同八行目「工事されていれば」とあるのを「工事され、その後適切な維持管理が行われていれば、」と各改める。

12  原判決二九五頁二行目「騒音測定)」の次に、「、当審証人篠塚徹の証言、当審検証の結果及び弁論の全趣旨」を付加し、同五行目「離陸時」とあるのを「離着陸時」と改め、同行「原告竹田勝克」とある部分の前に「一審原告澤田榮太郎宅で三〇ないし三三デシベル(A)、」を付加し、同行、同六行目、同六行目から同七行目にかけて及び同八行目に各「デシベル」とあるのをいずれも「デシベル(A)」と各改め、同八行目「検証期日)」とある次に「、臼井正宅で一五ないし一六デシベル(A)以上(平成五年七月二八日検証期日)」を付加する。

13  原判決二九六頁初行「原告澤田榮太郎宅」以下同二行目「三三デシベル、」までの部分を削除し、同三行目「デシベル」とあるのを「デシベル(A)」と改め、同三行目「いずれも」とあるのを削除し、同六行目「防音効果」以下同八行目末尾までの部分を「防音効果は、決して無視できないものではあるが、これを過大視することもできない。」と改める。

三  音源対策等

一審被告の音源対策等についての当裁判所の認定、判断は、次に付加訂正するほかは、原判決二九七頁五行目冒頭以下同三〇九頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決二九七頁五行目から同六行目にかけて「第二〇六号証、」とある次に「第二一一号証、」を付加し、同八行目「証人」とあるのを「原審証人」と改め、同一〇行目「同奥村回、」とあるのを削除し、同末行「佐藤壽一」とある次に「、原審・当審証人奥村回、当審証人渋谷正勝及び同篠塚徹」を付加する。

2  原判決二九九頁六行目「第三」とあるのを「第四」と改め、同九行目末尾の次に「一〇・四協定中の『協定書』に基づき、」を付加し、同三〇〇頁二行目「しかし」以下同三行目末尾までの部分を「乙第三七六号証及び第三七九号証によれば、こうした施設も、遮音、音波の回折減衰をもたらすことによって、一定の範囲内では地上音を低減させる効果があるものと認められる。」と改める。

3  原判決三〇一頁初行、同三〇二頁二行目及び同三〇三頁初行に各「第三」とあるのをいずれも「第四」と各改める。

4  原判決三〇三頁八行目「旋回開始点が異なる。」以下同一〇行目末尾までの部分を「旋回開始点は異なるし、同一の機会に編隊を組む複数の航空機が離着陸する場合には、飛行中各航空機間で一定の間隔を生ずることが想定される。これら種々の事情を勘案すると、右中島方式による経路というものが、一審原告らの主張するような一定の線ではなく、一審被告指摘のように、ある程度の幅を持ったものとして把握されるべきものであるとしても、実際に各航空機が離着陸する経路には、中島方式による経路を基準にしても、なお相当の幅が存することを否定できない。」と改め、同三〇四頁初行から同二行目にかけて及び同三行目から同四行目にかけて各「甲E第二〇〇号証」とある次にいずれも「、第二一一号証」を各付加し、同三行目「証人」とあるのを「原審・当審証人」と改め、同三〇五頁四行目「また、」とある次に「右飛行の原因が」を付加する。

5  原判決三〇七頁初行及び同三〇八頁一〇行目に各「第三」とあるのをいずれも「第四」と各改める。

第七  違法性

一  総論

小松飛行場周辺において発生する自衛隊機等の航空機騒音及びこれに伴う振動が違法であるかどうかの違法性の判断に当たって考慮すべき事項は、次に付加訂正するほかは、原判決三〇九頁七行目冒頭以下同三一三頁初行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三〇九頁七行目冒頭以下同三一一頁四行目「解すべきである。」までの部分を次のとおり改める。「一審被告による小松飛行場の使用及び供用が第三者に対する関係において、違法な権利侵害ないし法益侵害となるかどうかについては、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察して判断すべきものである(最高裁昭和五六年一二月一六日大法廷判決・民集三五巻一〇号一三六九頁参照)。そして、右検討の結果、本件航空機騒音及びこれに伴う騒音が、一般社会生活上受忍するのが相当と認められる限度を超えるに至ったものと判断される場合には、これが違法と断じられるべきである。」

2  原判決三一一頁五行目「非難するようである」とあるのを「とること自体を非難する」と、同六行目「損害賠償や当該侵害行為の差止め」とあるのを「損害賠償」と各改める。

3  原判決三一一頁一〇行目「侵害行為の態様」以下同三一二頁四行目「右諸事情については、」までの部分を「客観的な数値の如き明確な基準の存在が望ましいけれども、これに類するものとして、行政上の指針である昭和四八年環境基準及び一審被告と小松飛行場周辺市町村との間に締結された一〇・四協定が重要な資料となるものと解される。そうして前記諸事情については、」と、同五行目「第三ないし第五」とあるのを「第四ないし第六」と各改める。

二  公共性

小松飛行場を離着陸する自衛隊機及び米軍機の諸活動の公共性に対する当裁判所の判断は、次に付加訂正するほかは、原判決三一三頁五行目から同六行目にかけて「安保条約」とある部分以下同三一九頁二行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三一三頁七行目「かかる」、同九行目から同一〇行目にかけて「そして、」以下同三一四頁五行目末尾までの部分を各削除する。

2  原判決三一四頁末行「証人」以下同三一五頁初行「各証言」までの部分を「第三七八号証、原審証人重松惠三、同松本克彦、同村田博生、同佐藤壽一及び当審証人渋谷正勝の各証言」と改め、同二行目「小松飛行場の」以下同五行目「によれば、」までの部分を削除する。

3  原判決三一六頁五行目冒頭以下同三一九頁二行目末尾までの部分を次のとおり改める。

「一審被告は、小松飛行場が領空侵犯や外部からの侵略から我が国を防衛するについて果たす役割は、きわめて高度なもので、その公共性ないし公益性は、我が国の存立に関わるものとして、国や地方公共団体の行う他の行政作用のそれとは全くその性質を異にするものであり、かかる高度の公共性ないしは公益性は、受忍限度の判断をする場合にも、特に考慮されなければならないところ、本件については、一審原告らの被侵害利益は、日常生活上の不利益に過ぎないのであるから、受忍限度内のものであると主張する。

しかしながら、国の防衛を国の行う他の公共的諸活動、たとえば、上下水道や幹線道路の設置運営等と比較しても、これら公共性ないし公益性の間に彼我の差が明確にあるとは認められないから、国防の公共性をもって、とりたてて優位にあると判断するのは相当ではない。よって、右国防の有する公共性のみから受忍義務を認め、従って、自衛隊機等の運航は違法性を阻却するとの一審被告の主張は採用できない。

一方一審原告らは、ソビエトの崩壊によって冷戦時代が終焉した現在、我が国に対する不正な武力攻撃の危険性はなくなったから、仮に右自衛隊の存在及び活動について従来公共性を認める余地があったとしても、現時点では消滅又は減少していると主張する。そして、近年自衛隊機による対領空侵犯措置回数が減少していることは、前判示のとおりである。しかしながら、国際情勢の変動が激しく、近い将来においても、国際情勢全般を的確に予想することが困難であるという現状を前提とする以上、右冷戦の終焉及び右対領空侵犯措置回数の減少という事実を斟酌しても、右自衛隊の公共性が消滅或いは減少したとは即断できない。一審原告らの右主張は採用できない。」

三  昭和四八年環境基準及び一〇・四協定

1  甲A第二ないし第四号証、第八ないし第一八号証、甲D第一号証、甲H第六ないし第九号証、第一三、第一四号証、第一八号証、乙第一五号証、第一七、第一八号証、第一九号証の一、二、第二〇号証、第一一七号証、第一二二ないし第一二六号証、第一三五、第一三六号証、第一三九号証、第一四〇号証の一ないし三、第一四八号証、第一五七ないし一五九号証、第一六〇号証の一ないし三、第二三六号証、第三〇六号証並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 昭和四八年環境基準制定に至る経緯は、原判決三二〇頁一〇行目及び同末行に各「騒音に関する環境基準」とあるのをいずれも「騒音に係る環境基準について」と、同末行「静謐」とあるのを「静穏」と、同三二一頁初行、同三行目及び同五行目に各「以下であり、」とあるのをいずれも「以下とし、」と各改めるほかは、原判決三一九頁末行冒頭以下同三二四頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

(二) こうして告示された昭和四八年環境基準の要旨は、次のとおりである。

(1) 環境基準

地域の類型 基準値(単位 WECPNL)

Ⅰ 七〇以下

Ⅱ 七五以下

(注)Ⅰを当てはめる地域は、専ら住居の用に供される地域とし、Ⅱを当てはめる地域は、Ⅰ以外の地域であって、通常の生活を保全する必要がある地域とする。

(2) 達成期間

環境基準は、新設飛行場及び第三種空港等を除く公共用飛行場等の周辺地域においては、飛行場の区分ごとに次の達成期間内に達成され、又は維持されるものとする。

① 第二種空港B(福岡空港を除く)及び新東京国際空港

達成期間 一〇年以内

改善目標 五年以内に、WECPNL八五未満とすること又はWECPNL八五以上の地域において屋内でWECPNL六五以下とすること

② 第一種空港(新東京国際空港を除く)及び福岡空港

達成期間 一〇年を超える期間内に可及的速やかに

改善目標 ア 五年以内に、WECPNL八五未満とすること又はWECPNL八五以上の地域において屋内でWECPNL六五以下とすること

イ 一〇年以内に、WECPNL七五未満とすること又はWECPNL七五以上の地域において屋内でWECPNL六〇以下とすること

(3) 自衛隊等が使用する飛行場の周辺地域においては、平均的な離着陸回数及び機種並びに人家の密集度を勘案し、当該飛行場と類似の条件にある前記飛行場の区分に準じて環境基準が達成され、又は維持されるように努めるものとする。

(三) 先に認定した生活環境整備法、同施行令、同施行規則による防衛施設庁長官が指定する防音工事の助成、移転の補償等及び緑地帯の整備のための指定区域については、住宅防音のための第一種区域としてWECPNL七五、その内障害が特に著しいと認められて移転措置を講ずる第二種区域としてWECPNL九〇、右第二種区域の内、障害が新たに発生することを防止し、合わせてその周辺における生活環境の改善に資する必要があるとされる第三種区域としてWECPNL九五の各数値がそれぞれ規定されているが、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律、同施行令、同施行規則にも概ね同じく右七五、九〇、九五を基準として、同旨の規定がなされている。

(四) 昭和四八年環境基準は、自衛隊等が使用する飛行場については、右(二)(3)のとおり努力目標としての性格を強く有しており、かつ、具体的な達成期間等が曖昧であった。そこで、小松飛行場においては、一〇・四協定によって、右環境基準記載の公共飛行場の区分第二種Bに準じて、昭和五八年一二月二六日までに、同環境基準の達成を期する旨の合意が成立した。

2  そこで、昭和四八年環境基準及び一〇・四協定の法的性質について検討する。

一審原告らは、一〇・四協定は、一審被告が屋内、屋外の区別を問わず、昭和五八年一二月二六日までに、小松飛行場周辺地域においてWECPNL七〇ないし七五という、昭和四八年環境基準所定の基準の達成を約したものであるから、法的拘束力があると主張し、原審証人藤田栄進及び同竹内伊知の供述中には右に沿う部分がある。しかしながら、前述した昭和四八年環境基準制定の経緯やその文言内容に照らせば、一〇・四協定がその前提とする右環境基準は、政府が公害防止行政を推進していくうえで、達成されることが望ましいとされる政策上の達成目標ないし指針に過ぎず、それ自体では、国民に対して具体的な法的効果を及ぼすものではないから、法的拘束力を有するものとは認められない。

又、一〇・四協定の内容は前述のとおりであるところ、さらに甲H第六号証、乙一五七ないし第一五九号証、第一六〇号証の一ないし三並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実、即ち、(一)一〇・四協定の文言は、総じて一般的、抽象的であり、昭和四八年環境基準所定の基準達成に関する部分についても、「速やかに達成を期する」という表現が用いられているに止まっていること、(二)右環境基準では、前記のとおり達成期間が五年を超える地域については、中間改善目標として五年以内にWECPNLを八五未満とし、同八五以上となる地域においては屋内で同六五以下とする等、防音工事等によって屋内でのWECPNLを六〇ないし六五とすることをあげているところ、一〇・四協定ではこうした次善の策については全く規定していないこと、(三)前記周辺対策の実績に照らしても、右環境基準を達成するためには、周辺対策等に膨大な予算を必要とすることが容易に想定されるが、同措置についての財政上の裏付け等については、一審被告が「具体的条件の回答でなすものとする」とされているだけで、それ以上に具体的な定めがないこと、(四)一〇・四協定の相手方当事者の一つである小松市長(締結時の市長竹内も含む)や石川県知事もその後一〇・四協定に関しては、行政上の指針であると理解しているとの議会答弁をしていること等が認められる。

これらを勘案すれば、一〇・四協定は、小松飛行場について昭和四八年環境基準の適用が曖昧であったのを正し、公共用飛行場の区分第二種Bに準じて、同環境基準告示後一〇年内に基準値を達成することを行政上の指針とすることを明確にし、もって、一審被告の小松飛行場周辺の航空機騒音防止に関する総合的施策の実施等の環境行政運営に当たっての努力義務、責務の要点を文書によって明確化したものに過ぎないから、これに法的拘束力を認めることはできず、従って、これによって周辺市町村や周辺住民に具体的な法律効果を生じさせるものではない。

一審原告らは、周辺住民の多くの反対にもかかわらず、右協定の成立によって小松飛行場へのF四EJの配備が実現するに至ったことからも、一審被告は右期間までに昭和四八年環境基準を達成すべき法的義務があると主張する。しかしながら、右配備について周辺住民からの反対があり、特に小松市では、一〇・四協定締結と関連させて右配備問題が広く討議されたことは前述のとおりであるけれども、前述のように、一〇・四協定締結の主な意義は、一審被告が今後とも種々の周辺対策を講ずることを小松飛行場周辺自治体との間で文書化したことにあるから、F四EJが配備されたからといって、右文書の内容が法的義務を有するに至るものではない。一審原告らの主張は採用できない。

他方一審被告は、昭和四八年環境基準は、達成されることが望ましい値を示すもの、即ち単なる政府の公害対策上の指針ないしは努力目標に過ぎず、これを受忍限度値ないしは受忍限度判断の基準要素とすることはできないと主張する。しかしながら、前記のとおり、受忍限度の判断に際して考慮すべき事項は多岐にわたるところ、前述した公害対策基本法をもとにして、昭和四八年環境基準制定に至った経緯(原判示)に照らせば、国が公害防止に関する施策を講じるに当たり、人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準として、少なくとも自らに対する行政上の目標、指針として設定、告示した昭和四八年環境基準が、航空機騒音に対する受忍限度を判断するに当たって基準要素とされたり、或いは受忍限度値を構成することは、同基準の趣旨と何ら矛盾するものではない。一審被告の右主張は採用できない。

四  損害賠償請求の当否

1  当裁判所も、一審原告らの被害の程度は、生活環境整備法に基づき同原告らの居住地に対して区域指定されたWECPNLの値によるのが相当であると判断するものであるが、その理由は、原判決三四四頁四行目「右」を削除し、同三四五頁三行目「環境基準」とあるのを「昭和四八年環境基準」と改め、同三四六頁末行「後記のとおり、」以下同三四七頁初行「いえないものの、」までの部分を削除するほかは、原判決三四四頁四行目冒頭以下同三四七頁三行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

2 そこで、本件侵害行為が受忍限度を超えているか否かを検討する。

(一)  右三でみたとおり、公害対策基本法九条の「人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準」を受けて定められた昭和四八年環境基準が規定したWECPNL七〇ないし七五という環境基準は、国が航空機騒音に関する総合的な施策を定めるうえで、達成目標ないし指針とした数値であるから、これをもって直ちに違法性を判断する決め手とすることはできないけれども、右九条の趣旨からすれば、本件損害賠償請求の当否を判断するに当たり、重要な基準とされなければならない。

一方、昭和四八年環境基準で中間的な改善目標とされたのが、第一種空港でも、又、第二種空港Bでも、WECPNL八五であること、一〇・四協定でも、右環境基準における第二種空港Bに準じた基準を達成する合意がなされたこと並びに実際の被害をみると、先に認定した(原判示)ように、内外の他の空港にける調査ないしは小松市の騒音影響調査によっても、WECPNL(NNI五五)を超えると、生活における不満が急増するとの結果が得られていることを総合すると、同値に至れば、違法性が明白になるものと認められる。

又、昭和五〇年に結ばれた一〇・四協定は、生活環境整備法に定める住宅防音工事、移転措置は昭和五三年度を完了予定とする旨定められ、右は第一種区域がWECPNL八五から順次八〇、さらに七五に拡大されるに従って、完了予定期限が昭和五八年一二月二六日まで繰り下げられ、この間一審被告においても、先に認定したように、昭和五〇年度からの一七年間に約四三二億九四三二万円もの補助金を投入した結果、WECPNL七五以上同八〇未満の地域の防音工事中、新規工事分がようやく完成したことは、前記環境基準の達成の困難さを示すとともに、回避可能性の面からの違法性の判断要素とされなければならない。

以上の認定に、前述した公共性を踏まえたうえ、第四ないし第六で検討した諸事情、即ち、本件において一審被告による侵害行為として認められるものは、小松飛行場を離着陸する自衛隊機及び米軍機の発する騒音と振動とであるが、その中心である通常訓練における自衛隊のジェット戦闘機の発する騒音については、離着陸する滑走路の方向ごとに(北東側が若干多い)、一日平均の管制回数六〇ないし七〇回(平日の平均では約一〇〇回)の約半分の回数で発生し、これらの中には屋外で九〇ないし一〇〇デシベル(A)に達するものもあること、そして、その音は人に不快感をもたらす、特有の耳障りな金属音を有するものであり、こうした航空機騒音は、特にWECPNL八五以上の地域においては深刻であること、他方、このような航空機騒音は、間欠的であるうえ、ピークレベルの持続時間が比較的短く、しかも平日の昼間及び夕方等の一定の時間帯に集中していて、通常の訓練は週二回の夜間訓練を除けば午後五時に終わり、又、一審被告の運航対策によって、土・日曜日、休日、平日の早朝(午前七時以前)、夜間(午後八時〔夏期でも遅くとも午後九時〕以降)、昼間の一定時間帯(午後零時から同一時)では、年間一二日程度の演習等を除き、比較的静穏な状態が確保されていること、右航空機騒音等による一審原告らの被害は、前述のとおり、生活妨害、情緒的被害という生活上の不利益に止まっており、難聴等の身体的被害の発生を認めることはできないことを総合勘案すれば、本件航空機騒音(これに伴う振動も含む)によって一審原告ら小松飛行場周辺住民が受ける被害は、WECPNL八〇以上の地域においては、社会生活上受忍しなければならないような軽度のものではないと認めるのが相当である。

(二)  一審原告らは、WECPNL七五以上同八〇未満の地域でも、その騒音は、同八〇以上の地域のそれに匹敵し、しかも同七五以上同八〇未満の地域に居住する住民につき、現実に身体的被害が生じていることに照らせば、受忍限度を超えていると主張し、甲E第二一二、第二一三号証及び当審における一審原告ら本人の供述中には右主張に沿う部分がある。そして、WECPNL七五以上同八〇未満の地域についても生活環境整備法所定の第一種区域の指定がなされ、住宅防音工事が実施されていることは前述のとおりであるうえ、平成五年七月二七日にWECPNL七五以上同八〇未満の地域に該当する安宅海浜公園(小松市安宅町所在)で実施された当審検証の結果によれば、最大で九〇ホンの騒音が測定されたこと(なお、同所での騒音測定結果の詳細は、本判決別冊「一審原告ら最終準備書面」二一二ないし二一三参照。)が認められる。

しかしながら、同地域はもとより、WECPNL八〇以上の地域においてすら、一審原告らの主張する身体的被害の存在が認められないことは前記のとおりであるうえ、一審原告ら騒音調査報告によっても、WECPNL七五以上同八〇未満の地域は、同八〇以上の地域と比較すれば、七〇ホン以上の騒音の発生回数はさほど違わないものの、最大騒音値、中央値については値が相当下回っていると認められること、一審被告による第一種区域指定の経緯及びWECPNL八〇以上同八五未満の地域について受忍限度を超えるとした判断並びに昭和四八年環境基準における地域区分に照らせば、WECPNL七五以上同八〇未満の地域は、同八〇以上の地域と比較すれば、騒音被害の程度においても、相当下回っていることを否定できない。

なお一審原告らは、道路騒音等についての騒音基準と比較しても、WECPNL七五に相当する騒音レベルは、受忍限度を超えるものであると主張するが、道路騒音と航空機騒音とでは、騒音の性質、騒音の評価方法及びこれに対する公害防止対策を異にするから、これらを捨象して騒音レベルのみを単純に比較することは当を得ない。一審原告らの右主張は採用できない。

そうすると、WECPNL七五以上同八〇未満の地域住民の右被害は、軽微なものとは決していえないばかりでなく、前記小松市安宅町等一定の地域では、中島方式を取ることによって自衛隊機が真上を飛行するために、かえって騒音が大きくなる場合があるという事情等も存在するけれども、一審被告が既になした防音工事等の周辺対策等の効果を参酌考量すれば、いまだ受忍限度内にあるというべきである。従って、右地域に居住する一審原告らについても受忍限度を超えた被害が生じているとする一審原告らの主張は採用できない。

(三) 一審被告は、現実に航空機が発生させる騒音の状況は、必ずしも区域指定におけるコンター図どおりではないから、一審原告らが毎日現実にコンターに表示されたWECPNL値の騒音に暴露されているわけではないうえ、主に自衛隊機の離着陸からなる小松飛行場の航空機騒音のWECPNL値の計算方法の特殊性からいっても、コンター図は各地点の騒音の実情を示すに適したものではないから、WECPNL値を受忍限度の判断基準とすることはできないと主張する。なるほど、前述した自衛隊機の運航の特殊性に照らせば、小松飛行場周辺の航空機騒音は、日によって大きく異なり、年平均値よりはるかに少ない日が少なからずあることは、容易に想定できるところである。

しかしながら、他方において年平均値よりも大きな航空機騒音が発生する日も相当あると考えられること、こうした日における現実の騒音のWECPNL値が、コンター図に示された区域ごとのそれを下回るとの一審被告の反証も提出されていないことを勘案すれば、一審被告の主張は採用できない。又、小松飛行場における航空機騒音のWECPNL値の計算方法についても、そのような計算方法が、民間機と比較して特殊な離着陸状況をとる自衛隊機の使用する飛行場の「うるささ」を表すのに、より適切であるとの考慮からなされたものであることに照らせば、一審被告の右主張は採用できない。

又一審被告は、右騒音のWECPNL値は屋外における数値であるところ、一審原告らは通常は屋内で生活しているから、家屋の遮音性や防音工事の効果からみても、住宅防音工事の完了した室内では、航空機騒音は右値よりも相当軽減されるはずであると主張する。しかしながら、昭和四八年環境基準が目標とする騒音の数値は、第一次的には戸外を想定しており、屋内における同数値は、あくまでも中間的な改善目標に過ぎないこと、たとえ防音工事が完成した時点においても、人が屋内のみで生活することは考えられないことをも勘案すると、右主張は採用の限りではない。

3  一審原告幸塚廣之助(番号四七)の請求が認容できない理由は、原判決三五三頁七行目「及び」の前に「、原審にける同一審原告本人尋問の結果」を付加し、同八行目から同九行目にかけて「勤務先である」とあるのを「勤務先であった」と、同三五四頁二行目「第四」とあるのを「第五」と、同六行目から同七行目にかけて「本件証拠上、」とあるのを「乙第三九九号証の五、原審・当審における小松高校における検証の結果により認められる同高校の所在、騒音発生状況、同高校に対する防音工事の実施状況及び同工事の結果に照らせば」と各改めるほかは、原判決三五三頁五行目「原告ら」以下同三五四頁八行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

五  損害賠償における周辺対策の評価

当裁判所も、一審被告により騒音対策のうち、音源対策については、既に受忍限度を判断する経過の中で評価済みと判断するものであり、その余の周辺対策は、一審原告らの受けた損害を軽減すべき事情として考慮できるに止まり、航空機騒音の違法性を阻却するものまでにはなり得ないと判断するところ、その理由は、原判決三五七頁六行目「第一〇」とあるのを「第一一」と改め、同三五八頁九行目「関しては、」とある次に「この中でも特に民生安定施設の防音工事については、一審被告が主張するように、これらが図書館、公民館等の、いわば地域に密着した公共施設に対して防音効果をもたらすものであって、住宅防音工事を補完する目的を有し、かつそれがある程度効果をあげていることを肯認できるにしても、」を付加するほかは、原判決三五五頁六行目冒頭から同三五八頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

六  地域性、先(後)住性及び危険への接近

1  地域性、先(後)住性

当裁判所も、一審被告の地域性、先(後)住性の主張は採用できないと判断するところ、その理由は、原判決三六〇頁七行目「国民一般に」以下同八行目「いうべきであるが、」までの部分を「右周辺住民を含めて国民一般に浸透し、これが定着したことをもって、一審原告らの承認として違法性阻却事由になるならともかく、そうでない限り違法性阻却事由とは認められないし、」と改めるほかは、原判決三五九頁三行目冒頭以下同三六〇頁末行末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

2  危険への接近

当裁判所も、危険への接近の法理の適用については、次に付加訂正するほかは、原判決三六一頁二行目冒頭以下同三六五頁一〇行目末尾までの記載と同一と考えるから、これを引用する。

(一) 原判決三六一頁七行目冒頭以下同三六二頁七行目末尾までの部分を次のとおり改める。

「しかしながら、こうした危険への接近の法理を適用するためには、まずもって、当該住民が侵害行為の存在についての認識を有しながら、それによる被害を容認して飛行場周辺地域への居住を開始したことが要件として必要であるところ、一審原告らは、小松飛行場周辺に居住することによって得られる何らかの利益を期待し、これを代償として、小松飛行場周辺地域に転入したわけではなく(一審原告らがこのような意図から同地域に転入したとの点は、右法理の適用を主張する一審被告の側で個別具体的に主張、立証をする必要があると判断するところ、本件においてそのような主張、立証はない。)、それぞれが有する個別の生活利益に基づいて転入したものとうかがわれる。そうすると、一審被告の主張する右事情だけからは、直ちに小松飛行場周辺に転入した一審原告らにつき、右被害の容認があったと認定することはできないし、又、本件全証拠によっても、右被害の容認を推認させるような特段の事情を認めることはできない。従って、一審被告の右主張は採用できない。」

(二) 原判決三六二頁八行目「しかし、」とあるのを「もっとも、」と改め、同三六三頁初行「事情のない限り、」とある次に「あえて騒音地域に転入することによって、その主観的認識はともかくとして、客観的には損害の発生に寄与したとみることができるから、」を付加する。

(三) 原判決三六三頁五行目及び同三六四頁初行に各「第三」とあるのをいずれも「第四」と、同初行「F一六J」とあるのを「F一五J」と、同四行目「小松市小松飛行場対策協議会」とあるのを「小松飛行場対策協議会」と、同八行目「鶴ヶ島町」とあるのを「小松市鶴ヶ島町」と、同三六五頁二行目「浜佐美、浮柳等」とあるのを「小松市浜佐美、浮柳等の各町」と各改める。

第八  将来の損害賠償請求に係る訴え

当裁判所も、一審原告らの損害賠償請求(当審における新請求を含む)のうち、当審の口頭弁論終結の日の翌日である平成六年三月二四日以降に生ずる損害(この損害賠償請求に関する弁護士費用を含む)の支払いを求める部分は、将来の給付の訴えとして、権利保護の利益を欠き、不適法であると判断するものであって、その理由は、次に付加訂正するほかは、原判決三六六頁初行冒頭以下同三六八頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

一  原判決三六八頁初行「損害賠償請求」とある次に「(当審における新請求を含む)」を付加し、同二行目「平成二年三月一七日」とあるのを「平成六年三月二四日」と改める。

二  一審原告らは、本件において一審原告らの受けている被害は自衛隊等のジェット戦闘機等の航空機騒音であって、これが今後とも継続することは確実であること、将来被害が発生するつど一審原告らが損害賠償請求を提訴することは、実際問題として不可能であること等の本件訴訟の特殊性を勘案すれば、平成六年三月二四日以降生ずべき損害は明確であるから、将来の損害賠償請求も認容されるべきである旨主張する。

しかしながら、一審原告らの主張するように、小松飛行場周辺において前記認定の侵害行為と同様の行為が将来も継続されることが予想される場合であっても、損害賠償請求権の成否及びその額を予め一義的に明確に認定できないことは、前述(原判示)したとおりであり、又、将来において再提訴が困難であるという事情も事実上の不利益に止まっており、将来に生じる可能性のある給付請求権のうち、あくまでも例外的に認められる、将来の給付の訴えによる請求を本件において許容すべき理由とはなり得ない。従って、一審原告らの右主張は採用できない。

第九  消滅時効

当裁判所も、別紙当事者目録(一)から(三)まで記載の一審原告らについては、訴訟提起の日であることが記録上明らかな昭和五〇年九月一六日から、その余の一審原告らについては、右同様の日である昭和五八年三月四日から、各三年前の日より前に発生した被害についての損害賠償請求権は、民法七二四条所定の三年の期間の経過により時効消滅したものと判断するところ、その理由は、原判決三六九頁末行「第七『地域性、先(後)住性及び危険への接近』の二」とあるのを「第七『違法性』の六『地域性、先(後)住性及び危険への接近』の2」と、同三七四頁七行目「年々実施されている」とあるのを「既に新規工事は完成し、現在全室防音工事達成に向けて年々実施されている」と各改めるほかは、原判決三六八頁六行目冒頭以下同三七五頁八行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

第一〇  一審被告の責任

当裁判所も、一審被告は、国家賠償法二条一項及び民事特別法二条に基づき、自衛隊機及び米軍機の発する騒音によってWECPNL八〇以上の地域に居住し、又は以前居住していた一審原告らが被った損害を賠償すべき義務があると判断するところ、その理由は、次に付加訂正するほかは、原判決三七五頁一〇行目冒頭以下同三七九頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

一  原判決三七六頁初行「原告ら」の次に「即ち一審原告らⅠ」を、同二行目「原告ら」とある次に「右」を各付加し、同末行「第三」とあるのを「第四」と、同三七七頁一〇行目「原告ら」とあるのを「右一審原告らⅠ」と各改める。

二  原判決三七八頁八行目「小松飛行場」とある前に「周辺対策の実施される周辺自治体の人口をも勘案すれば、」を付加する。

三  原判決三七九頁四行目末尾に次のとおり付加する。

「又一審被告は、小松飛行場周辺の騒音発生状況は、我が国の飛行場の平均的・一般的な騒音の水準を超えるものでなく、原判決のように解すると、WECPNL八〇以上の居住区域を擁する全国ほとんどの飛行場は、直ちに空港の設置管理に瑕疵があることになって、不当であると主張する。しかしながら、前記認定(原判示)のように、原判決は、違法性判断に当たり、小松飛行場の位置、騒音発生状況、一審原告らの居住状況及び被害、周辺環境、自衛隊の公共性並びに一審被告による周辺対策その他諸般の事情を総合考慮したうえで、公の営造物である小松飛行場につき、設置管理の瑕疵を肯定したもので、単に一審原告らの中にWECPNL八〇以上の地域に居住し、又は居住した者が存することのみを理由に、右瑕疵があると即断したものでないから、大阪空港最高裁判決の趣旨に何ら反するものでなく、一審被告の主張は、この点において既に失当である。そして、本件においては、小松飛行場周辺の航空機騒音は、WECPNL八〇以上の地域において明らかに受忍限度を超えるとの結論に達したのであるから、他の我が国の空港周辺における平均的、一般的な騒音発生状況がどのようなものであるか(もっとも、一審被告の主張する右平均的、一般的な騒音の水準がどの程度のものであるのかを認めるに足る証拠はない。)にかかわらず、本件において一審被告に損害賠償責任を認めるべきことは明らかである。一審被告の主張は採用できない。

このほか一審被告は、一審原告らが主張するような生活妨害や精神的情緒的被害は、個々人の主観的事情によって、その程度が左右されるという漠然とした性質、内容を持つものであって、その発生を一審被告において予見することは不可能であり、しかも小松飛行場において、自衛隊機を配備した飛行場としての正常な機能を維持しつつ、受忍限度を超える被害を解消するに足りる騒音対策を実施することは、一審被告にとってもはや不可能といわなければならないから、一審被告において被害の予見可能性及び回避可能性は存在しないと主張する。しかしながら、前述のとおり、一審被告が小松飛行場周辺においてこれまで実施してきた周辺対策(原判示)は、その性格が損失補償的な行政上の措置であるとしても、とりもなおさず、一審被告による自衛隊機等の運航に伴う騒音等によって、小松飛行場周辺に居住する住民につき、少なくとも会話、電話、テレビ等の聴取に対する各妨害等、種々の被害が現実に発生していることを前提とし、これら各被害を類型的にとらえ、これらに対応する対策として策定されたものであり、そのことは、防衛施設庁職員として、小松飛行場周辺の周辺対策を担当していた原審証人片淵康夫及び当審証人篠塚徹の各証言によっても明らかである。そして、本件において、一定の範囲の一審原告らについてその存在を肯定した被害は、先に認定したとおり、会話・電話・テレビ等の聴取や学習、読書等の日常生活に対する被害を中心とするものであって、これらが漠然としたものであるとか、一審被告において同被害の発生を予見することが不可能である等とは到底いえない。のみならず、前述したように(原判示)、一審被告がこれまでに周辺対策として実施してきた各種措置は、一定の範囲で効果をあげ、それなりに評価できるものであり、このことに、同措置のこれまでの実施状況、経過を合わせ考えれば、一審被告が小松基地に配備する自衛隊機には、現代の航空作戦を遂行するに足る一定水準の性能が付与されるべきであり、エンジン自体を低騒音化することが期待できないからといって、右被害を回避すべき回避可能性が存在しないとはいえない。一審被告の右主張は、採用できない。」

第一一  損害賠償額の算定

一審原告らの慰謝料相当額及び弁護士費用については、次に付加訂正するほかは、原判決三七九頁六行目冒頭以下同三九四頁四行目末尾までの記載と同一であるから、これを引用する。

一  右部分中、「別紙第一損害賠償額一覧表記載要領」とあるのをいずれも「本判決別紙第一損害賠償額一覧表記載要領」と、「別紙第二損害賠償額一覧表」とあるのをいずれも「本判決別紙第二損害賠償額一覧表」と各読み替える。

二  原判決三八一頁六行目「二」の次に「右のとおり、一審被告は、小松飛行場周辺のWECPNL八〇以上の地域に居住し、又は居住していた一審原告らに対し、損害賠償義務を負うべきところ、一審原告らは自己の住所であると主張する場所に居住し、又は居住していた事実並びに同居住地がWECPNL八〇以上の地域に属することを主張・立証しなければならない。」を付加する。

三  原判決三八一頁九行目「二三〇、」とある次に「二五五、」と付加し、同一〇行目「原告ら各本人尋問の結果」とあるのを「原審・当審における一審原告ら各本人尋問の結果」と改め、同三八三頁五行目「別紙第四」とある前に「原判決」を、同九行目「記載した。」とある次に「但し、原審口頭弁論終結後に区域外に転出したと認められる一審原告らについては後述する。)」を、同一〇行目「別紙第三」とある前に「原判決」を各付加し、同三八四頁六行目「(番号162)」以下同七行目「同」まで、同七行目「第三五九号証の四九」以下同八行目「高野関係)、」まで、同八行目「(原告喜多関係)」を各削除し、同九行目「いずれも同原告ら」とあるのを「同一審原告」と改め、同一〇行目「いずれも」を削除し、同三八五頁初行「ものであり」とある次に「(甲K第一八号証の記載も右結論を左右しない)」を付加する。

四  原判決三八五頁六行目末尾の次に行を改め、次のとおり付加する。

「本判決別紙第一一記載の一審原告らは、控訴状の記載(一審原告谷口堯男を除く一審原告ら)又は当審における本人尋問における供述(一審原告谷口堯男)において、同別紙「新住所」欄記載のとおり、原判決添付当事者目録記載の住所(本判決別紙第一一「旧住所」欄に記載)とは異なる場所を住所としており、他に右住所が現住所であることを覆すに足る証拠もない以上、同住所へ転居したものと認めるべきであるが、右転居の年月日を明らかにする証拠はないから、一審原告谷口を除く一審原告らは、遅くとも同一審原告らが本件控訴控起をした月である平成三年三月末日には、右新住所に転居したものとみるほかない(一審原告谷口については、平成五年一〇月二七日時点で右新住所を住所として供述しているから、右は該当しない。)。

しかしながら、一審原告谷口を含め、右一審原告らの各新住所については、いずれもそれがWECPNL八〇以上の地域に属することを認めるに足る証拠はない。従って、旧住所が同地域に属していた一審原告川島一良(番号二四六)及び同吉中伸一(番号三〇六)については、平成三年三月末日をもって区域外に転出したものと扱うこととする。

なお、一審原告埴田弘(番号九九)については、弁論の全趣旨により控訴状記載の小松市育成町己一三番地三は、原判決において住所と認定された小松市向野地方己一三番地三と同一の場所であると認める。又、一審原告田中外喜雄(番号九三)については、昭和六三年二月以降小松市安宅町リ四五番地三〇一(原判決の表示同町リ四五―三〇一)に居住していることが原審において争いのない事実であったところ、控訴状では、原判決添付別紙第二記載の旧住所である小松市安宅町甲一〇番地が住所として記載されているけれども、右原審における経緯、甲K第一八号証、乙第三九九号証の一及び原審における同一審原告本人尋問の結果に照らせば、右控訴状の記載にもかかわらず、同一審原告は、引き続き小松市安宅町リ四五番地三〇一に居住しているものと認めるべきである。」

五  原判決三八六頁四行目全部を「2 前示の騒音の性質、騒音被害の程度、侵害行為の公共性、一審被告による騒音対策及びその実施状況、一審原告らが本件で請求しているのは、一審原告らが個々に受ける被害のうち、各自が共通して被っており、又、そのようなものとして想定できる、いわば最小限度のものであり、そのような被害の限度において、当裁判所は被害の存在を認定したものであること、その他、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、」と、同三八七頁三行目「第三」とあるのを「第四」と各改める。

六  原判決三八八頁七行目冒頭以下同三八九頁初行「適用すべきではない。」までの部分を「これに対し、新居住地のWECPNL値が旧居住地のWECPNL値と同等又はより低い場合には、被害を容認して新居住地に転入したとは認められないから、かかる法理を適用する余地がない。一審被告は、このような場合に同法理の適用が除外される余地があるとしても、それは、右転入について他に選択の余地がなかったとき等特段の事情があるときに限られるべきであり、こうした特段の事情の存在については、同法理の適用の排除を求める一審原告らが主張・立証責任を負うべきである旨主張する。しかしながら、一審被告が、一審原告らに対し、自衛隊機等の運航に伴う航空機騒音による被害の容認を期待する合理的理由が存しないことに照らせば、そのような解釈は採用の限りではない。又一審被告は、危険への接近の法理は、前住所等がWECPNL値のより大きな地域であるかどうかが不明な一審原告ら(本判決別紙第二損害賠償額一覧表の「備考」欄にBないしFを記載した一審原告ら)についても適用されるべきであると主張する。しかしながら、前述のとおり危険への接近の法理の適用において、被害の容認があったことを立証すべきであるのは一審被告の側であるから、右の各事項についても一審被告が立証責任を負うべきであると考えるところ、本件全証拠によっても右事実を認めることはできない。従って、一審被告の右主張は採用できない。」と改める。

七  原判決三九〇頁一〇行目「これによって」以下同末行「なること」までの部分を「右助成によって設置された空調設備の電気料金等の維持費が、前述のとおり、原則として個人負担とされていること」と、同三九二頁四行目「弁護士費用」以下同六行目「勘案すると」までの部分を「弁護士費用については、一審原告らが本件訴訟を提起するに際して、一人四〇万円宛弁護士費用を支払う旨の契約をしたことが、弁論の全趣旨によって認められるところ、これに本件訴訟の難易度、認容額及び本来弁護士報酬請求権は損害賠償請求権とともに発生して、遅滞に陥るものであるが、先に認定した本件の月ごとの慰謝料額とこれを基準にして定められる弁護士費用額を考慮すると、その割合を調整することによって、弁護士費用額については、月ごとの遅延損害金が発生しない方法をとることも、必ずしも不合理とはいえないこと等諸般の事情を総合勘案すると」と各改める。

八  原判決三九二頁八行目末尾の次に行を改め、「五 本判決別紙第四承継関係一覧表記載の各承継人は、同表記載の各被承継人の死亡に伴い、同人の請求権をそれぞれ同表記載の各相続分(弁論の全趣旨によって認める)に従って承継した。」を付加する。

九  原判決三九二頁九行目「五」とあるのを「六」と、同三九三頁七行目及び同八行目に各「平成二年三月一六日」とあるのをいずれも「平成六年三月二四日」と各改め、同三九四頁二行目「昭和五九年二月七日から、」とある次に「同表B期間については、各月について、同表「慰謝料月額」欄記載の各金額に対する翌月一日以降各支払済みまで(当審における新請求)」を付加する。

第一二  結論

一  以上の次第であるから、平成三年(ネ)第五九号事件についての当裁判所の結論は、以下のとおりである。

1  一審原告らの本件自衛隊機の差止請求は、民事上の請求としては、不適法であるから、これを棄却した原判決主文第三項の同部分は相当でないので、同部分は取消を免れず、これを却下する。

又、一審原告らの本件米軍機の差止請求は、一審被告が支配できない第三者の行為の差止めを求めているものであるから、爾余の点の判断をするまでもなく、失当として棄却を免れないものである。よって、これを却下した原判決主文第一項の同部分は、前同様に相当でない。しかしながら、右却下部分を取り消して右請求を棄却することは、不利益変更禁止の原則に触れることになるので、同部分についての一審原告らの本件控訴は棄却すべきである。

2  一審原告らの一審被告に対する損害賠償請求は、当審口頭弁論終結の日の翌日である平成六年三月二四日以降の損害金及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める部分(当審における新請求を含む)につき、いずれも権利保護の利益がないので不適法として却下を免れない。又、一審原告らⅠの右弁論終結の日である同月二三日までの過去の損害金及びこれに対する遅延損害金の請求については、本判決別紙第二「損害賠償額(合計)」欄記載の損害金及びこれに対する遅延損害金については、前記B期間がなく、従って、同期間における損害金のない一審原告亡森久子承継人森惣太郎及び同久保奈保子並びに一審原告前田澄代、同越田荘司及び同竹下正人の五名を除く一審原告らⅠと右除外された五名とに区分し、主文第一項4、5の限度で理由があるから、これを認容し、その余を棄却する。

3  一審原告らⅡの一審被告に対するその余の請求のうち、平成六年三月二三日以前の損害金の支払いを求める部分は、当審における新請求も含めて理由がないので棄却する。

4  仮執行宣言については、本判決別紙第二損害賠償額一覧表「損害賠償額(合計)」欄記載の損害金の支払いを命ずる部分に限って相当と認め、これを付し、一審被告の仮執行免脱宣言の申立ては相当ではないからこれを付さないこととし、一審被告の民事訴訟法一九八条二項の申立ては、本案判決のうち、一審被告に対して金員の支払いを命じた部分が変更されないことを解除条件とするものというべきであるから、これについては判断を示さない。

二  よって、平成三年(ネ)第五九号事件につき、右のとおり原判決を変更し、同年(ネ)第六三号事件につき一審被告の本件控訴は理由がないので、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官笹本淳子 裁判官田中敦 裁判官横田勝年は、転補のため署名押印できない。裁判長裁判官笹本淳子)

別紙当事者目録

【略称】

一審原告らに付された番号は、原判決添付当事者目録記載の番号である。なお一審原告ら中「(一)」、「(二)」等で表示される者は、金沢地方裁判所昭和五〇年(ワ)第二八八号事件(第一次訴訟)原告、「一」、「二」等で表示される者は、同昭和五八年(ワ)第八〇号(第二次訴訟)原告である。

平成三年(ネ)第五九号控訴人・同年(ネ)第六三号被控訴人(一審原告らⅠ・Ⅱ) 福田俊保

外二六八名

右一審原告ら及び同承継人訴訟代理人弁護士 手取屋三千夫

同 田中清一

同 北尾強也

同 市川昭八郎

同 野村侃靱

同 菅野昭夫

同 長谷川絋之

同 高沢邦俊

同 堀口康純

同 加藤喜一

同 水谷章

同 岩淵正明

同 今井覚

同 畠山美智子

同 奥村回

同 飯森和彦

同 川本藏石

同 橋本明夫

同 押野毅

同 池宮城紀夫

同 島袋勝也

同 鈴木宣幸

同 照屋寛徳

同 永吉盛元

同 藤原周

同 藤原充子

同 諌山博

同 井出豊継

同 内田省司

同 椛島敏雄

同 小泉幸雄

同 小島肇

同 田中久敏

同 田中利美

同 辻本章

同 津田聡夫

同 林健一郎

同 林田賢一

同 前田豊

同 奥津亘

同 石橋一晃

同 木村保男

同 久保井一匡

同 須田政勝

同 滝井繁男

同 小野誠之

同 折田泰宏

同 古家野泰也

同 崎間昌一郎

同 宇野峰雪

同 小池貞夫

同 中野新

同 池田真規

同 榎本信行

同 島林樹

同 高橋修

同 成瀬聡

同 新井章

同 内田剛弘

同 大森典子

同 森川金寿

同 岩崎修

川本藏石訴訟復代理人弁護士 三野研太郎

田中清一訴訟復代理人弁護士 関島保雄

橋本明夫訴訟復代理人弁護士 宮西香

野村侃靱訴訟復代理人弁護士 佐藤和利

平成三年(ネ)第五九号被控訴人・同年(ネ)第六三号控訴人(一審被告)   国

右代表者法務大臣 前田勲男

右訴訟代理人弁護士 榎本恭博

右指定代理人 野本昌城

外三二名

別紙第一損害賠償額一覧表記載要領

一 一審原告らに付した番号は、原判決記載の番号である。

二 居住地として表示された住所は、いずれも石川県内である。丸で囲んだ数字を付されている者は、死亡した一審原告らの承継人である。

三 「賠償期間」について

1 昭和年間については年号を省略した。平成年間についても計算の便宜上、昭和の年号を継続させて表示した(平成二年は昭和六五年)。

2 賠償期間は、(1)から(12)の一審原告らについては昭和四七年九月一六日から平成六年三月二三日まで(昭和五〇年一〇月七日までがA期間、同月八日以降がB期間)、その余の一審原告らについては昭和五五年三月四日から平成六年三月二三日まで(昭和五九年二月六日までがA期間、同月八日以降がB期間)である。

3 賠償期間は、右A期間、B期間を分け(「期間種別」欄に表示)、更に当該期間の慰謝料月額が同一になるように期間を区分した。

4 当該始期又は終期は、年月のみを示すこととし、日についての記載は省略した。

四 各金額の単位は円である。

五 「慰謝料月額」は、減額事由を考慮した金額である。

記載例

8.000×(1−20/100)×(1−10/100)=5,760≒5,800(円) 〔W値〕

〔危険への接近〕〔防音工事一室〕

〔百円未満四捨五入〕〔慰謝料月額〕

六 「危険への接近による減額%」欄に20とあるのは、昭和四一年一月一日以降に転入したため、危険への接近の法理を適用して、慰謝料基準額から二〇パーセントを減額すべきことを意味する。右同日以降に、旧居住地のWECPNL値(W値)よりも高い居住地とW値の地域に転入した一審原告らについても同様。

七 「防音工事」欄中「室数」は、居住地において住宅防音工事を受けた室の数を累計で表示し、その左に記載されている賠償期間と対応しており、当該賠償期間中、当該一審原告らが、その室数に対応した防音効果を享受していたことを示す。防音工事を受けた年月日及び室数等の詳細は、別冊「一審被告最終準備書面引用図表」第1表記載のとおりである。

八 「慰謝料額(小計)」は、当該賠償期間中の慰謝料額を示す(慰謝料月額に期間月数を乗じて算出する。)。

九 「損害賠償額(小計)」は、当該賠償期間中の弁護士費用相当損害金を慰謝料額に加算した全体の損害賠償額を示す(右「慰謝料額(小計)」の額に1.15を乗じて算出する。)。

一〇 「A期間慰謝料額」は、A期間中に生じた慰謝料額の合計を示す。

一一 「損害賠償額(合計)」は、当該一審原告らに係る賠償期間中の損害賠償額の総合計を示す。

一二 「備考」欄に記号中AないしFは、一審原告らの主張上昭和四一年一月一日以降の転入となっていても、本件証拠上、より低いWECPNL値の地域からの転入とは認められないため、危険への接近の法理を適用すべきではないと考えられる等、特に同法理を適用しない事情を説明するほうが適切と思われる事例において、その事情を次の区分に従い、注記したものである。

記号 記号の意味

A 一時的に当該住居地を離れていたが、危険への接近の法理を適用すべきでないと判断するもの。記号の後の括弧内には、当該転出期間を略記した。

B 前居住地が当該居住地と同等又はより高いWECPNL値の地域に存する可能性があり、かつ前居住地への転入が昭和四一年一月一日以降であると認めるに足る証拠がないと判断するもの。

C 前居住地及び前々居住地が共に当該居住地と同等又はより高いWECPNL値の地域に存する可能性があり、かつ、前居住地への転入が昭和四一年一月一日以降であるとしても、前々居住地への転入が右同日以降であると認めるに足る証拠がないと判断するもの。

D 前居住地が明らかでないと判断するもの。

E 前居住地が当該居住地と同等又はより高いWECPNL値の地域に存する可能性があり、かつ前々居住地が明らかでないと判断するもの。

F 前居住地及び前々居住地が共に当該居住地と同等又はより高いWECPNL値の地域に存する可能性があり、かつ、前々々居住地が明らかでないと判断するもの。

別紙第二

損害賠償額一覧表

一審原告氏名

居住地

賠償期間

A

or

B

W値

慰謝料

月額

防音工事

慰謝料額

(小計)

損害賠償額

(小計)

A期間

慰謝料額

損害賠償額

(合計)

備考

始期

終期

(1)

福田俊保

小松市安宅新町イ138

47

9

50

10

A

37

90

12,000

0

0

0

444,000

510,600

444,000

3,153,300

50

10

55

10

B

60

90

12,000

0

0

0

720,000

828,000

55

10

63

8

B

94

90

10,800

0

1

10

1,015,200

1,167,480

63

8

69

3

B

67

90

8,400

0

5

30

562,800

647,220

(2)

湯淺治男

小松市大川町2-72

47

9

50

10

A

37

85

8,000

0

0

0

296,000

340,400

296,000

2,182,240

50

10

51

11

B

13

85

8,000

0

0

0

104,000

119,600

51

11

69

3

B

208

85

7,200

0

1

10

1,497,600

1,722,240

(3)

翫正敏

小松市上牧町ニ19

47

9

50

10

A

37

85

8,000

0

0

0

296,000

340,400

296,000

2,161,080

A

(昭41~昭47)

50

10

60

12

B

122

85

8,000

0

0

0

976,000

1,122,400

60

12

63

9

B

33

85

7,200

0

1

10

237,600

273,240

63

9

69

3

B

66

85

5,600

0

5

30

369,600

425,040

(4)

廣瀬光夫

小松市大川町2-35

47

9

50

10

A

37

80

5,000

0

0

0

185,000

212,750

185,000

1,346,650

50

10

55

10

B

60

80

5,000

0

0

0

300,000

345,000

55

10

64

8

B

106

80

4,500

0

1

10

477,000

548,550

64

8

69

3

B

55

80

3,800

0

4

25

209,000

240,350

(5)

長井榮子

小松市浜田町ホ107

47

9

50

10

A

37

80

4,000

20

0

0

148,000

170,200

148,000

1,057,310

50

10

55

12

B

62

80

4,000

20

0

0

248,000

285,200

55

12

65

8

B

116

80

3,400

20

2

15

394,000

453,560

65

8

69

3

B

43

80

3,000

20

4

25

129,000

148,350

(6)

中林弘明

小松市佐美町甲92

47

9

50

10

A

37

85

8,000

0

0

0

296,000

340,400

296,000

997,280

50

10

51

10

B

12

85

8,000

0

0

0

96,000

110,400

(区域外へ転出)

51

10

57

4

B

66

85

7,200

0

1

10

475,200

546,480

(7)

森惣太郎

小松市佐美町甲16

47

9

50

9

A

36

90

12,000

0

0

0

432,000

496,800

440,000

2,539,200

B

小松市佐美町戌248-2

50

9

50

10

A

1

85

8,000

0

0

0

8,000

9,200

50

10

69

3

B

221

85

8,000

0

0

0

1,768,000

2,033,200

(8)

笹井外吉

小松市丸内町大手30

47

9

50

10

A

37

85

8,000

0

0

0

296,000

340,400

296,000

2,061,720

50

10

53

8

B

34

85

8,000

0

0

0

272,000

312,800

53

8

62

11

B

111

85

7,200

0

1

10

799,200

919,080

62

11

69

3

B

76

85

5,600

0

5

30

425,600

489,440

(9)

澤田榮太郎

小松市丸の内町2-170

47

9

50

10

A

37

85

8,000

0

0

0

296,000

340,400

296,000

1,956,840

B

50

10

52

2

B

16

85

8,000

0

0

0

128,000

147,200

52

2

58

11

B

81

85

7,200

0

1

10

583,200

670,680

58

11

69

3

B

124

85

5,600

0

5

30

694,400

798,560

(10)

久保田照久

加賀市塩浜町と10

47

9

50

10

A

37

80

5,000

0

0

0

185,000

212,750

185,000

1,361,945

50

10

56

8

B

70

80

5,000

0

0

0

350,000

402,500

56

8

69

3

B

151

80

4,300

0

2

15

649,300

746,695

(11)

立花重人

加賀市塩浜町り85

47

9

50

10

A

37

80

5,000

0

0

0

185,000

212,750

185,000

1,316,635

50

10

56

10

B

72

80

5,000

0

0

0

360,000

414,000

56

10

64

12

B

98

80

4,300

0

2

15

421,400

484,610

64

12

69

3

B

51

80

3,500

0

5

30

178,500

205,275

(12)

川口憲正

加賀市塩浜町と85

47

9

50

10

A

37

80

5,000

0

0

0

185,000

212,750

185,000

1,314,450

50

10

57

9

B

83

80

5,000

0

0

0

415,000

477,250

57

9

63

12

B

75

80

4,300

0

2

15

322,500

370,875

63

12

69

3

B

63

80

3,500

0

5

30

220,500

253,575

<以下略>

別紙目録

本判決に添付する別紙は、当事者目録のほか、次のとおりである。

第一 損害賠償額一覧表記載要領

第二 損害賠償額一覧表

第三 仮執行金額一覧表<略>

第四 継承関係一覧表<略>

第五 常時測定点における一日当たりの修正機数の年平均値<略>

第六 小松基地における自衛隊機の管制航空交通量集計<略>

第七の1 常時測定点における騒音持続時間(小松市小島町)<略>

第七の2 常時測定点における騒音持続時間(加賀市伊切町)<略>

第八 常時測定点における騒音レベルの年平均値(パワー平均)<略>

第九 常時測定点における日WECPNLのパワー平均値<略>

第一〇 常時測定点における日WECPNL八〇パーセントレンジの上端値<略>

第一一 住所変更一審原告ら一覧表<略>

別冊

一審原告ら最終準備書面<略>

一審被告最終準備書面<略>

一審被告最終準備書面引用図表<略>

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