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名古屋高等裁判所 昭和55年(ラ)235号 決定 1980年11月20日

抗告人

尾本達彦

右代理人

梅田林平

外一名

相手方

呉虎善

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件即時抗告の趣旨及び理由は別紙抗告状記載のとおりである。

よつて案ずるに、一件記録によると、相手方は、抗告人と相手方間の大垣簡易裁判所昭和四五年(ハ)第六三号請求異議事件の仮執行宣言付判決に対し控訴するとともに、岐阜地方裁判所において、昭和四九年九月一七日、右判決の強制執行を停止する旨の決定をえて、その担保として金一〇〇万円を供託した(以下本件担保という)こと、その後右事件は控訴、上告を経て昭和五四年一月三一日相手方の敗訴が確定したので、相手方の代理人弁護士大矢和徳は昭和五四年八月二九日、抗告人に対し、担保権行使の催告と右行使のない場合の本件担保取消並びに供託書還付を求める申立を原裁判所になし、同裁判所が同月三一日権利行使期間を一四日と定めて抗告人にその旨の催告を発したところ、抗告代理人弁護士梅田林平から、右権利行使期間を同年一二月末日迄延長を求める旨の申請がなされたが、その理由とするところは、相手方が同年四月死亡したためその承継人の存否、住所等につき調査中であるというものであつたこと、しかして、同年一二月末日を経過するも抗告人の担保権の行使がなされないまま時日を徒過し、昭和五五年九月一七日に至つて原裁判所係書記官から前記梅田弁護士に対し、電話照会がなされたところ、同弁護士は右の権利行使の予定もたつていないので、本件担保取消決定をしたうえ相手方に供託書を還付してもらつてよい旨回答したことが認められ、一方相手方は大垣市長に対する照会回答により昭和五四年四月一二日既に死亡していることが判明しているが、同人の生前前記強制執行停止決定申立事件につき、昭和四九年八月二六日付で前記大矢弁護士に対し、担保保証の供託、同取消決定の申立、同取消決定に対する抗告権拠棄を含む諸権限を授与する旨の委任状を交付していることが認められる。

右事実によると、抗告人が民訴法一一五条三項の催告に拘らず所定期間内に担保権を行使しなかつたことは明らかであり、相手方の死亡によつては前記委任による相手方代理人弁護士大矢和徳の代理権限は消滅しない(民訴法八五条)から、原裁判所がその申立により前記のとおり本件担保取消決定をしたことに何ら違法のかどはなく、抗告人の主張は失当として採用しがたい。

よつて原決定は相当であり、本件抗告は理由がないから棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして主文のとおり決定する。

(柏木賢吉 加藤義則 上本公康)

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