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名古屋高等裁判所 昭和50年(ネ)189号 判決 1977年6月30日

控訴人

横地一夫

右訴訟代理人

加藤洪太郎

被控訴人

清水正雄

外一名

右両名訴訟代理人

山口源一

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

本件土地の賃貸借契約と合意された賃料額及び右賃料額に基づく延滞賃料額についての当裁判所の判断は、左のとおり付加訂正するほか、原判決理由説示一、及び二、1に掲記のとおりであるから、これを引用する。

原判決付加訂正<省略>

そこで、本件土地の賃貸借契約につき地代家賃統制令の適用ありとする控訴人の主張につき検討するに、本件全証拠によるもこれを裏付けるに足る事実を認めることはできない。即ち、<証拠>は右主張にそうものであるが、右はいずれも具体的裏付けに乏しいものであるのに加え、<証拠>によれば、本件家屋は昭和二六年一〇月頃建築されたものとみる余地もあり(そうするとその規模形式に徴し、昭和二五年七月一一日以後に建築に着手したとみるのが自然である。)、これらの証拠を彼此勘案すると、前記<証拠>をもつて直ちに右主張を裏付けるに足りるものとはなし難い。なお<証拠>によれば、本件土地は控訴人先代横地金松が被控訴人ら先代清水益太郎から昭和二四年初め頃これを借用したものと認めうるが、他方前掲<証拠>によれば、右金松が本件土地上に本件家庭を建築しようと企図したのは、従前同居していた控訴人の兄横地雅夫が昭和二四年一〇月三〇日死亡し、その後その家族との折り合いが悪くなり別居せざるをえなくなつた以後のことであると認められるから、これらの事実から直ちに本件家屋の建築が昭和二五年七月一一日以前に着手されたものと推断することも困難であるといわねばならない。したがつて右主張は採用の限りでない。

ところで、被控訴人らが、(原判決事実摘示)請求原因3記載のとおり昭和四七年一月一四日到達の書面をもつて延滞賃料金六三万一、五九八円の支払催告をなし、更に同月二九日到達の書面をもつて、右延滞賃料不払いを理由として本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがない、しかるところ、右催告をなした時点での控訴人の延滞賃料額は前認定のとおり金三六万八、一一四円であるから、右催告は過大催告となるが、債務の同一性が認められることはもとより、請求額全額の提供がなければこれを絶対に受領しないといつた特段の事情があるとも認められないから、催告額が過大であることの故をもつて、右催告が無効であるとすることはできない。

また、『前記<証拠>からすれば、本件賃料債務は取立債務であると認められるところ、これを被控訴人ら方へ持参又は送金して支払うよう催告している点は、<証拠>によれば、被控訴人ら方差配平野藤吉において、再々取立に赴いたにもかかわらず、控訴人が昭和四三年一一月三日内金一万円を支払つてから以降全く賃料支払いに応じなかつたため、やむなく前記催告に及んだものと認められるから、持参又は送金払いを求めていても、そのために債務の同一性を害するものでないことは勿論、被控訴人らにおいて、催告期間内に控訴人から提供があつても、これを取立に赴く意思が全くないものと解されるような事情の認められない以上、これをもつて無効な催告ということはできない。のみならず右のような催告を受けた控訴人としては、本件賃貸借契約の経過からしても信義則上弁済のため自らなしうる措置として、少なくとも催告期間内に従前から自認して支払つている月額金五、三五七円の賃料額に基づき延滞賃料額を計算準備したうえ、被控訴人らにその旨通知して取立を促すなどの措置をとるべきが当然であり、本件の場合控訴人においてかかる措置に出た事実がない以上、被控訴人らが催告期間内に取立に赴かなくても、控訴人は遅滞の責を免れず、被控訴人らの解除権は発生すると解するのが相当である。なお叙上認定にかかる賃料延滞の態様からすれば、これが賃貸借当事者間の信頼関係を破壊するに足るものであることは多言を要しない。したがつて本件賃貸借契約は昭和四七年一月二九日解除されたものといわねばならない。』

しかして、被控訴人らが先代清水益太郎の死亡に伴い、本件土地を共同相続、(相続分各二分の一)したことについては、控訴人において明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。

そうすると、控訴人は被控訴人らに対し、本件建物を収去して本件土地を明渡すべき義務を負うのみならず、前記認定の延滞賃料及びこれに対する昭和四七年一月二二日(履行催告期限の翌日)から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに昭和四七年一月二九日までの月額金五、三五七円の割合による約定賃料及び同月三〇日から明渡しずみまで右約定賃料相当の使用損害金の各二分の一宛を各被控訴人に対し支払うべき義務があることとなる。

しかるところ、原判決は被控訴人らの本訴請求中、建物収去土地明渡の部分を認容したほか、金員支払いを求める部分については前記認定の範囲内においてこれを認容していることが明らかであるから、控訴人の本件控訴は結局理由なきに帰し、棄却を免れない。

よつて、民訴法三八四条、九五条、八九条に則り、主文のとおり判決する。

(村上悦雄 上野精 春日民雄)

統制額算定式<省略>

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