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名古屋高等裁判所 昭和49年(ネ)241号 判決 1975年2月28日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら訴訟代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人宮川松枝に対し、原判決添付目録記載の土地につき所有権移転登記手続をせよ。被控訴人は、控訴人宮川松枝に対し、右土地を明渡せ。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は、主文第一項同旨並に「控訴費用は、控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人宮川松枝の本訴請求は失当として棄却を免れないと考える。その理由は、次のとおり補足するほか原判決の理由に説示するところと同じであるから、これを引用する。

債務名義に対し請求異議の訴あるいは執行法上認められた異議、抗告等の方法が行使されず、行使されてもこれが容れられないまま該債務名義に基いて強制競売手続がすすめられ、競落許可決定が確定し、代金の支払もなされ、強制競売手続がすべて完結した場合は、競落人はその後債務名義の内容をなす実体上の請求権の不存在が判明しても競落物件の所有権を適法かつ有効に取得しうること、右の理は債務名義一般について妥当するところであり、債務名義の種類によつてこれを異別に解するのは正当でないこと、以上は原審が原判決理由中に説示するところであり、当裁判所も、これを正当として是認しうるものと考える。

もつとも、実体的正義という観点から債務名義を無効となさざるをえず、あたかも債務名義の存在しないまま強制競売がなされたと同様に考えうる場合においては、強制競売手続の完結にもかかわらず競落人が競落物件の所有権を取得しない場合(かかる場合の生ずる可能性は債務名義のうちでも確定判決について皆無に近く、公正証書において比較的高いことはいうまでもあるまい。)が存しうるとなす見解がある。

しかしながら、成立に争いない乙第七号証によれば、名古屋高等裁判所は、同庁昭和四五年(ネ)第三五四号金銭消費貸借契約無効確認請求控訴事件の判決において本件公正証書に表示された控訴人ら主張の金銭消費貸借契約について、これが独占禁止法一九条に違反することを認めつつも、なお私法上無効と解すべきではなく、また、民法九〇条により無効であるとも断じがたいと判断していることが認められる。

してみれば、前記のごとき見解を採るにせよ、控訴審裁判所において有効であるとの法的評価を受けたほどの金銭消費貸借契約を表示した本件公正証書(債務名義)に基づく本件強制競売を目して実体的正義に合致せず、債務名義の存在せざるままなされたと同様の強制競売であるということは到底許されないものといわなければならない。

よつて、本件強制競売手続による競落は有効であり、控訴人らの主張は採用することができない。

以上説示のとおりであるから原判決は相当で本件控訴は理由がない。よつて、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担について、同法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

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