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名古屋高等裁判所 昭和45年(ラ)149号 決定 1970年12月24日

抗告人 北村友江(仮名) 外一四名

主文

抗告人北村利助、同北村君子、同北村信造の本件抗告はいずれもこれを却下する。

右三名を除いたその余の抗告人らの本件抗告はいずれもこれを棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

抗告人らの本件抗告の趣旨並びに理由は別紙記載のとおりである。

よつて按ずるに、保佐人を解任する審判に対し即時抗告をすることができる者は、保佐人又は準禁治産者の親族に限ることは家事審判規則第九三条により準用される同親則第八七条第一項の規定により明らかであるところ、抗告人ら提出の各戸籍騰本の記載によれば抗告人北村利助同北村君子同北村信造はいずれも保佐人北村友江(準禁治産者沢本一郎の姉)の夫芳夫の兄弟又は妹であることが認められ、準禁治産者沢本一郎の親族には当らないから、右抗告人三各の本件抗告はいずれも抗告権者でない者の抗告たるに帰し不適法として却下を免れない。

次に原審判挙示の各資料に徴すれば、保佐人北村友江は昭和四二年一一月一四日準禁治産者沢本一郎(以下事件本人という)の保佐人に就任した当初は、事件本人の借財の事後処理のため同人からその印章や預金通帳等を預り後見人同様の財産管理をしてきたのであるが、右借財の件が処理された後も友江の後見人的な考え方は変わらず、これがため昭和四三年九月頃から事件本人所有の土地の活用に関し右友江と事件本人間に意見の対立をみるようになり、その上事件本人が自己の生活の困窮化もあつて右友江に対し繰返し印章の引渡しや預金通帳等の返還を求めても頑強にこれを拒否するなどのことがあつて、益々右両者の意思の疎通を欠くに至り現在に及んでいる等原審判認定のような実情にあることが認められ、右事実からすれば、右友江の所為は保佐人としての任務の範囲を逸脱しており、保佐の任務に適しない事由があるものと認めるのが相当である。抗告人らは保佐人の同意なき準禁治産者の行為につき保佐人には取消権が与えられていないので、保佐人としては準禁治産者が不利な財産取引をしないよう未然に防止するより外に方法がない旨主張するが、準禁治産者の保護機関たる保佐人の任務(民法第一二条列挙の行為に対する同意のみであつて、代理権も財産管理権も有しない)からすれば、未然防止のためといつても右の任務の範囲を超えた権限の行使を許容すべき理由とはならないから、抗告人らの右主張は未だ以て前示認定を動かす資料とはなし難い。

してみると、準禁治産者一郎の保佐人友江を解任した原審判は相当であつて、前記抗告人三名を除いたその余の抗告人らの本件抗告はいずれも理由がないからこれを棄却すべきものとする。

よつて、抗告費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条に従い主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 奥村義雄 裁判官 広瀬友信 大和勇美)

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