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名古屋高等裁判所 昭和43年(ネ)350号 判決 1968年9月26日

三重県多気郡明和町大字大淀乙七三七番地

控訴人

合資会社 明造商店

右代表者代表社員

橋爪真次

被控訴人

右代表者法務大臣

赤間文三

右指定代理人

川本権祐

飯田光正

中野長夫

高田和

植田栄一

右当事者間の昭和四三年(ネ)第三五〇号損害賠償請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴会社代表者は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金一、七二五万〇三二二円及びこれに対する昭和三九年六月五日より右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人らは主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、書証の認否は左記に付加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴会社代表者の陳述)

本件調査に当つた松阪税務署員藤具貞、名古屋国税局係官真弓金二郎において調査義務に違反しているから指揮監督に当つた松阪税務署長及び名古屋国税局長ひいては被控訴人がその責を負うべきである。すなわち

1 松阪税務署の藤具係官はただ一回の現場調査をしたのみで金銭出納簿に不審を感じても記帳者に説明を求めず、仕込物容器である木桶の中味すなわち仕込中のもろみを一見だにしなかつた。

2 名古屋国税局協議団津支部の協議結果の報告をうけながら名古屋国税局の真弓係官は格別の調査を全く行わず、控訴会社より行政訴訟を提起するに及んで始めて調査したにすぎない。

理由

当裁判所の判断によるも、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと考える。その理由は左記に付加するほか原判決理由説示のとおりであるから、右理由記載を引用する。

一、控訴人の当審における前記藤具、真弓両係官の職務上の義務違背の主張については、同係官らの調査にたとえ所論のように不十分な点があつたとしても、それはむしろ主として原認定のように藤具係官の実地調査の際、控訴会社の立会人から腐敗モロミが現存することの指示説明もなかつたことや、ことにモロミの腐敗があれば当然なさるべき協同組合に対する控訴会社からの報告もなされていなかつたことなどによるものと認められ同係官らに所論のような職務上の義務違背があつたとはなしがたい。

二、控訴人より提起した行政訴訟事件の判決において訴訟費用を名古屋国税局長に負担せしめていることは甲第二四号証により明らかであるけれども、右訴訟費用額は右事件の訴訟費用額確定決定によつて執行さるべきであつて、不法応訴を理由とする本訴においての請求は失当である。

以上の次第ゆえ、右と結論を同じくする原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 成田薫 裁判官 布谷憲治 裁判官 黒木美朝)

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