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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)176号 判決 1949年6月30日

被告人

太田信義

主文

本件控訴を棄却する。

理由

控訴趣意第一点について

原判決は、被告人に対する收賄罪の事実を認定するに当り、被告人の職務関係として「被告人は名古屋刑務所戒護課勤務の看守として在職中」と記載したのみで、看守として担当する職務の内容を具体的に説明していないことは所論の通りであるが、名古屋刑務署戒護課勤務の看守と云えば、一般には既決囚人を戒護する職務即ち上官の指揮を受けて監獄の警戒、在監者の戒護その他在監者の日常の行動を看視監督する等の職務を担当するものであることは、当然推測せられるところで、これはあたかも司法巡査と云えば直にその職務として犯罪の搜査、犯人の逮捕、身柄の送致等の権限を有することを推測するが如きもので、その職務の内容を、具体的に説明するまでもなく、当然に推知し得るところである、もつとも、判決においては、職務内容権限等を具体的に説明すること要し、これが正当であることは勿論であつて、原判決は、この点において、措辞妥当を欠き、不用意であつたことは免れないが、被告人が戒護課の看守として、前記の職務に從事中囚人に接し、その請託を受けて家庭連絡を爲し、その報酬として金銭の供與を受けた收賄事実については前記の通りその職務の内容が一般に推知し得るところであるから、戒護課勤務の看守と記載しただけでも、その犯罪の構成要件たる事実摘示にいたものであると解することはできない。從つてその職務関係の説明がないから原判決は理由不備か又は理由を附さない違法があると主張する控訴趣意は理由がない。

以下省略

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