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名古屋高等裁判所 平成7年(行コ)31号 判決 1997年3月27日

名古屋市東区徳川一丁目八番四一号

控訴人

近藤實

右訴訟代理人弁護士

太田耕治

名古屋市東区主税町三丁目一八番地

被告訴人

名古屋東税務署長 大西国夫

右指定代理人

中山孝雄

桜木修

木村晃英

小林健治

寺田弘明

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が平成三年七月九日付けで控訴人の昭和六三年二月三日相続開始に係る相続税についてした更正のうち課税価格五四四九万六〇〇〇円、相続税額五七七万六九〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定(いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。

三  被控訴人が平成三年七月九日付けで亡近藤すヾの昭和六三年二月三日相続開始に係る相続税についてした更正のうち課税価格五七一三万七〇〇〇円、相続税額〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。

第二事案の概要

一  本件事案の概要は、次に付加訂正のうえ、原判決の「第二 事案の概要」に摘示されたところを引用する他、二の当審における双方の主張のとおりである。

1  原判決四頁一二行目の「近藤(」の次に「旧商号株式会社近藤紙器工業所、」を加え、同五頁六行目の「<3>、<4>の」を削る。

2  同七頁四行目の「昭和元年ころ個人で事業を開始し」を「戦前から紙箱やダボールの製造に従事していたが」と改め、同九頁二行目の「基準日」の次に「(昭和六二年一一月)」を加える。

二  当審における双方の主張

1  控訴人

仮に、亡秀夫名義の株式が亡秀夫の遺産であり、また、控訴人名義でもないものも亡秀夫の遺産であったとしても、少なくともそれ以外の株式は控訴人の所有である。

すなわち、本件株式の取得の経緯、株式発行時の価格(購入価格)は原判決別紙有価証券等の明細表に記載のとおりであるが、本件株式取得時期前後における亡秀夫及び控訴人の年収は後藤泰子公認会計士作成にかかる別紙報酬表(甲八、九)のとおりである。したがって、別紙年度別購入資金表に記載のとおり控訴人がこれらの株式を自己資金で購入することが可能である。具体的には次のとおりである。

(1) 控訴人は、昭和三四年に訴外会社が発足して以来その取締役であり、同三七年の年収は同四〇年二月期の年収一〇八万円より若干下回る額の八〇万円位と推定される。控訴人は、昭和三八年に帝人及びアイカ工業の株式を一二〇万円で取得したが、これは控訴人の年収の一年半分で取得が可能な額である。特に同三八年以前は株式の購入がないことから、それまで数年間の蓄積があり、かつ、家計は亡秀夫の責任でなされるのが自然であるから、控訴人の年収をもってこれらの株式を取得するのは十分可能であった。

(2) 控訴人は、昭和三九年に石川島播磨の株式を二七万円で、三人の子供の名義で同株式を八二万円でそれぞれ取得しているが、この年の年収は一〇八万円と考えられるからこれらの株式の取得は可能であった。

(3) 控訴人は、昭和四〇年に東レの株式を二一万円で、近藤精一、近藤光司、近藤義一の名義で同株式を六五万円で取得しているが、その前年の年収からするとこれらの株式を取得することは可能であった。

(4) 控訴人は、昭和四一年に大倉商事の株式を二〇万円で取得しているが、自らの年収でこれを取得できることは明らかである。

(5) 控訴人は、昭和四五年にトーエーネックの株式を六二万円で取得しているが、これが控訴人の収入の範囲内であることは明らかである。

(6) 控訴人は、昭和四九年に野村証券の株式を七六七万円で取得し、更に二人の子の名義で日立の株式を一五四万円で取得している。これらは、控訴人の単年度の収入では取得不可能であるが、前四か年の収入を合計すればこれらの株式を取得することは可能であった。

2  被控訴人

控訴人の右主張は争う。控訴人の右主張は、そもそも本件株式の実際の取得年月日が明らかでないうえ、税金、社会保険料、生活費、教育費を無視してすべての収入を直ちに可処分所得として計算するなど実情から乖離したものである。のみならず、控訴人の主張に沿って、本件株式のうち控訴人名義のものが控訴人の意思で控訴人の資金により購入され、真に控訴人に帰属するものであるならば、何故に被控訴人が主張している諸事実(原判決第二の二の1(二)に摘示のとおり)が生じたのか説明できないところである。要するに、本件においては、控訴人が仮定の原資負担能力を論じても何の意味もないところである。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は当審における新たな証拠調べの結果を斟酌しても失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加訂正し、二項の判断を付加する他、原判決の「第四 当裁判所の判断」の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一三頁九行目の「伊佐間豊、」の次に「原審並びに当審における」を、同行の「認められる」の次に「(右本人尋問の結果中、後記認定に反する部分を措信しない。)」をそれぞれ加える。

2  同二六頁四行目の「あるところ、」の次に「国税通則法六五条一項、二項に基づく」を加える。

二  控訴人の当審における主張に対する判断

控訴人主張の本件株式の取得価格は一応信頼するとしても、控訴人と亡秀夫の年度別収入を記載した別紙報酬表(甲八、九)はその根拠資料が明確でないし、これらの収入の大半を株式購入資金に充てるというのも通常は考えられないところである。まして乙三六によれば、控訴人は亡秀夫から独立して生計をたてていたというのであるから尚更である。また、控訴人がその本人尋問において購入原資に関して供述するところは、当審と原審でやや趣を異にしており、しかも、当審における供述も必ずしも明確なものではないが、当審での新たな主張も踏まえて解すれば、少なくとも脱税目的で会社資金から株式投資に回した分と、自らの収入で取得した控訴人名義の株式は控訴人の所有であるというもののようである。もっとも、その脱税分と控訴人固有の資金との割合については主張の上では明確にされてはいないが、その点はともかく、会社の金を抜いたのが自らの利益のために自ら行ったというのであれば、より具体的にこの間の経緯、なかんづく資金の動き、経理操作の実情、亡秀夫の関与の程度などの説明があってしかるべきであるのに、右供述及びその他の証拠関係に照らしてもそのあたりは全く不分明である。また、控訴人は、当審において、訴外会社の金を抜いて株式を購入したのでこれを隠すため税務署員に自分が株式を所有していない旨説明したと供述するが、原審ではこの点につきもっぱら税務署員の対応が不適切であって感情的なしこりから虚偽の説明をしたなどいう合点のいかない説明に終始している。これらの点からして、購入原資に関する控訴人の供述は信用性に乏しいといわざるを得ず、加えて、すでに認定のとおり(原判決引用)、控訴人名義の株式にしぼって考えても、これらが控訴人所有の株式であって亡秀夫の遺産に含まれないとすれば、これに符合しないいくつかの事実があるが、当審における証拠調べの結果でもこれらの矛盾点が解明されていない。結局、控訴人にも、本件株式の一部についてはこれを購入するだけの資金的余裕があったことは否定できないが、これまでに認定の諸事実を総合すれば、亡秀夫名義以外の株式、あるいは控訴人名義の株式についても控訴人が自らの資金で購入したとは認めがたく、これらは亡秀夫の遺産と認められるところである。

三  よって、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮本増 裁判官 小松峻 裁判官 立石健三)

(別紙)報酬表

<省略>

(別紙)報酬表

<省略>

(別紙)

年度別購入資金表

<省略>

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