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名古屋高等裁判所 平成6年(ラ)25号 決定 1996年9月27日

三重県三重郡<以下省略>

抗告人

松岡興産株式会社

右代表者代表取締役

右代理人弁護士

野島達雄

中村弘

山本秀師

伊神喜弘

名古屋市<以下省略>

相手方

名古屋生コンクリート協同組合

右代表者理事

三重県四日市市<以下省略>

相手方

北勢生コンクリート協同組合

右代表者理事

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

第一本件抗告の趣旨及び理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状に記載のとおりである。

第二本件の事案の概要等

本件の事案の概要、紛争に至る経緯等及び当事者の主張は、次のとおり訂正するほか、原決定第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

一 原決定3枚目裏の1行目「セメント」を「セメント、骨材、混和剤等」、同5行目「用意」を「容易」とそれぞれ改める。

二 同4枚目表の2及び3行目を削除し、同4行目文頭に「4」を挿入する。

三 同5枚目裏の1及び2行目「債務者北勢協組が、昭和56年から57年までの間、調査会社をして債権者の生コン出荷量を調査させたこと、及び」を削除する。

四 原決定第二の全体を通じ、「セメント製造販売業者」を「セメント製造業者及び同販売業者」と改める。

第三当裁判所の判断

一 抗告人は、営業権に基づく妨害行為の差止め請求権が被保全権利であるとし、相手方らに対しそれを有する旨主張するところ、当裁判所も、相手方名古屋生コンクリート協同組合の関係では、右差止め請求権が認められると仮定しても、本件仮処分申請が仮の地位を定める仮処分申請であることに鑑み、右申請につき保全の必要があるとまでは認められず、また、相手方北勢生コンクリート協同組合の関係では、右差止め請求権の成立を認めることはできないと判断するものであって、その理由は、次のとおり付加するほか、原決定第三の一1、2、二1、2、6及び三記載のとおりであるから、これを引用する。

「抗告人は、セメント製造業者及び同販売業者が仮に独自の判断で抗告人との取引を拒絶した場合であっても、右の拒絶が相手方らの行為(抗告人と取引をしないように働き掛けた行為等)に起因したと認められるときは、相手方らの右行為は不公正な取引方法として、差止めの対象とすべきである旨主張する。しかしながら、一般に、事業者は、取引先となるべき者との当面の取引量、その他の付随的条件などの短期的要素、並びに取引の継続性と取引量に関する今後の見通し、取引先となるべき者の信用・資力・購入能力、当該取引が長期的にみて当該事業者にとって有利かなどの長期的要素を総合的に検討し、合理的判断の下に取引先を選別するものであるから(なお、右選別の結果としての取引拒絶は、競争政策上価値中立的であるから、それだけでは、独禁法上の禁止行為となるものではない)、本件において、仮に、相手方らが抗告人と取引をしないように働き掛けたことが1つの契機となって、セメント製造業者及び同販売業者が抗告人との取引を拒絶した経緯があったとしても、右取引拒絶がセメント製造業者及び同販売業者自身の利害を合理的に考慮した結果としての、独自の判断に基づくものであるときは、その判断形成の過程に右のような経緯があるとの一事だけでは、相手方らと右セメント製造業者及び同販売業者が共同して抗告人の市場参入をボイコットしているとか、共同して不公正な取引方法を採っているとすることはできない。また、それだけでは、セメント製造業者及び同販売業者の右取引拒絶が、相手方らによる出荷割当数量削減、共同不買等の圧力の結果であると推認することもできない。」

二 結論

よって、抗告人の本件仮処分申立てを却下した原処分決定は相当であって、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渡辺剛男 裁判官 菅英昇 裁判官 矢澤敬幸)

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