大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和60年(行ウ)18号 判決 1990年5月18日

主文

一  本件訴えのうち、被告が原告の昭和五五年六月一日から同五六年五月三一日までの事業年度分の法人税について同五八年七月二一日付でした更正に関し、主位的に右更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分の取消しを求め、予備的に右更正の取消しを求める部分をいずれも却下する。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対してした次の各処分をいずれも取り消す。

(一) 昭和五八年七月二一日付でした同五四年六月一日から同五五年五月三一日までの事業年度(以下「第八期」という。)分の法人税の更正のうち税額金一一九万七二〇〇円を超える部分及び同更正に伴う過少申告加算税賦課決定

(二) 昭和五五年六月一日から同五六年五月三一日までの事業年度(以下「第九期」という。)分の法人税につき、

(1) (主位的請求)

昭和五八年七月二一日付でした更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分

(2) (予備的請求)

昭和五八年七月二一日付でした更正及び同年一二月一九日付でした同更正に対する異議申立却下決定

(三) 昭和五六年六月一日から同五七年五月三一日までの事業年度(以下「第一〇期」という。)分の法人税につき、

(1) (主位的請求)

昭和五八年七月二一日付でした更正のうち税額金六〇万二四〇〇円を超える部分

(2) (予備的請求)

昭和五八年七月二一日付でした更正(同更正によってなされたものとみなされる更正をすべき理由がない旨の通知を含む。)

(四) 昭和五七年六月一日から同五八年五月三一日までの事業年度(以下「第一一期」という。)分の法人税の更正の請求に対して同五九年九月一四日付でした更正をすべき理由がない旨の通知

(五) 第一一期分の法人税につき、昭和六一年六月二〇日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

1 主文第一項と同旨

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(本案の答弁)

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和四七年六月一六日に設立され、不動産の売買及び斡旋、アパートの経営並びにこれらに付帯する一切の事業を行うことを目的とする法人であり、被告により青色申告の承認を受けている。

2  原告は、原告の第八期ないし第一一期分の法人税について、別紙1ないし4の各該当欄記載のとおり、確定申告、修正申告及び更正の請求をした。

3  これに対して、被告は、別紙1ないし4の各該当欄記載のとおり、更正、過少申告加算税の賦課決定及び通知処分(以下「本件各処分」という。)をした。

4  原告は、本件各処分に対して、別紙1ないし4の各該当欄記載のとおり、異議申立て及び審査請求をしたところ、同各該当欄記載のとおり、いずれも棄却又は却下された。

5  本件各処分は、次のとおり、違法である。

(一) 第八期分に係る更正(以下「第八期分更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「第八期分決定」という。)について

(1) 譲渡所得の帰属主体を誤った違法

原告と冨田一子、冨田治朗、冨田真、冨田善美、大橋秀孝、大橋勘一及び大橋きぬ(以下「第八期分出資者」という。)は昭和五二年一〇月八日ころ、各自が応分に出資して別紙5の不動産番号11の土地(以下「第八期分土地」という。)を共同購入し、これを使用、収益及び処分するという共同事業を営む民法上の組合契約を締結し、右契約に基づき、同年一一月一四日、右組合が第八期分土地を購入したものである。したがって、第八期分土地は組合員である原告及び第八期分出資者の共有に属するものであったのであるから、その譲渡利益は出資割合に応じて各組合員に帰属するものであるが、第八期分更正及び第八期分決定は、これを誤って原告に譲渡利益のすべてが帰属するとしたものである。

(2) 理由附記不備の違法

原告は、青色申告法人であるので、原告の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準を更正する場合には、法人税法一三〇条二項により、更正通知書に更正の理由を附記しなければならないものであるにもかかわらず、以下に述べるように、第八期分更正の更正通知書には右理由の附記が十分ではなく、不備であるので、第八期分更正は違法である。

第八期分更正の更正通知書に記載された更正の理由は、「本件土地は昭和五五年二月一二日に貴社から株式会社マツヤデンキヘ六三、〇四九、〇〇〇円で譲渡することを内容とする契約が締結されているので、その譲渡価額を基礎として同項に規定する課税土地譲渡利益金額を計算しますと別表のとおり、二九、〇〇一、二六〇円となります。」というものであり、右別表には、その計算根拠が記載されている(なお、右理由中の「本件土地」とは、「第八期分土地」のことである。)が、これは、判断の結論が記載されているだけで、判断過程とその理由の記載がない。すなわち、原告が第八期分出資者の代理人として契約を締結し、第八期分土地を代金三四〇四万七九九八円で売却した旨の原告の帳簿及び書類の記載を否認するものであるにもかかわらず、その理由及びこれを裏付ける具体的資料の摘示をしていないし、更正の理由として株式会社マツヤデンキ(以下「マツヤデンキ」という。)への譲渡契約の存在を指摘しただけでは、何故限時更改契約による原告から出資者への譲渡契約の存在を否定したのかの理由を明らかにしていないものであるから、理由附記には不備がある。

(3) 信義則違反

第八期分更正は、被告の部下職員による税務指導の内容を覆したものであり、著しく信義に反し違法である。

すなわち、原告は、第八期分より前の三事業年度の原告の短期土地譲渡所得等について被告との間で争いがあり、被告の部下である長江統括国税調査官から、「将来譲渡する不動産については抗争を予防するために事前に上申書を提出して、税務当局の意見を聴いた上で対処されたい。」と要望されたことから、昭和五五年三月七日、被告に上申書(<証拠>)を提出し、第八期分土地の譲渡について、原告からマツヤデンキにそのまま譲渡するという案(重課譲渡所得税がかかるので、原告としては避けたい案)による代わりに、まず、原告と第八期分出資者との間で第八期分土地の売買契約を締結(限時更改契約をもって従前の出資契約を更改し、原告が第八期分出資者に金三四〇四万七九九九円で売却)した上、原告が第八期分出資者の代理人として第八期分土地をマツヤデンキに金六〇〇〇万円以上で譲渡するという案によれば重課譲渡所得税を免れるか否かを尋ねたところ、同月二四日又はその二、三日前ころ、右統括国税調査官の部下である渡辺国税調査官から、電話により、後者の案によれば前者の案を採ったのと同じ課税がされることはない旨の回答を得た。そこで、原告は、後者の案によって第八期分土地を譲渡したのであるが、被告は、右回答を覆して、前者の案によったのと同じ課税をしたものである。

(二) 第九期分に係る更正(以下「第九期分更正」という。)及びこれに対する異議申立ての却下決定について

(1) 第九期分更正は、固定資産である別紙5記載の土地(以下「本件土地」という。)を誤って棚卸資産と認定してしたものであり、違法である。

(2) 理由附記不備の違法

第九期分更正は、「清算金についての特別控除不当」として金五万五一一八円を加算するものであるが、その理由は本件土地が棚卸資産であるというにとどまり、帳簿上固定資産と記載されている本件土地を棚卸資産と認定した理由及びそれを裏付ける具体的資料を明らかにしていないものであるから、理由附記には不備がある。

また、第九期分更正の更正通知書には、更正の理由として「未納事業税認容額」を金九万〇二六〇円として減算したことが記載されているが、正しくは金九万〇七五〇円であるから、第九期分更正の理由には明白な誤記がある。

(3) 第九期分更正に対する異議申立ては、法人税法八二条二号による更正の請求の要件を満たしているので更正の請求として扱うべきものであり、これを却下したのは違法である。

(三) 第一〇期分に係る更正(以下「第一〇期分更正」という。)について

(1) 経費算定の違法

第一〇期分更正は、負債利子について実額配賦法を採るべきであったのに概算法を採ったこと並びに販売費及び一般管理費について持分額によって実額配賦すべきであったのにこれをしなかったことにおいて、違法である。

(2) 理由附記不備の違法

第一〇期分更正の更正通知書に記載された理由は、「貴社の実額法による負債利子の額の計算においては、名古屋市千種区今池四丁目四〇九所在の土地二二六・五五平方メートルを譲渡した利益の分配と認められる一一、一九八、七九一円を支払利息として配賦計算の基礎に含めていますが、利益の分配額は租税特別措置法第六三条第二項に規定する土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費には該当しませんので、これに基づく金額は同項に規定する譲渡利益金額の計算上収益の額から控除することはできません。」というものである(なお、右理由中の土地(別紙5の不動産番号16の土地)を以下「第一〇期分土地」という。)が、原告の帳簿書類上支払利息として計上されているものを利益の分配と認定した理由及びそれを裏付ける具体的資料を明らかにしていないものであるから、理由附記には不備がある。

(四) 第一一期分に係る更正をすべきでない旨の通知(以下「第一一期分通知」という。)、更正(以下「第一一期分更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「第一一期分決定」という。)について

(1) 原告主張の第九期分の繰越欠損金額は正当であり、更正の請求が理由あるにもかかわらず、更正をすべき理由がないとした第一一期分通知は、違法である。

(2) 譲渡所得の帰属主体を誤った違法

別紙5の不動産番号10及び13の不動産(以下合わせて「第一一期分土地」という。)は、原告及び大橋勘一ほかの出資者(以下「第一一期分出資者」という。)が組合員である民法上の組合が取得し、組合員たる原告及び第一一期分出資者の共有に属するものであったのであるから、その譲渡利益は出資割合に応じて各組合員に帰属するものであるが、第一一期分更正は、これを誤って原告に譲渡利益のすべてが帰属するとしたものであり、違法である。

(3) 理由附記不備の違法

原告の帳簿書類には、原告が代理人として株式会社石田(以下「石田」という。)に第一一期分土地を売却したこと、したがって、原告自身には売却代金が帰属していないことの明らかな記載があるが、被告は、第一一期分更正において右記載を否認したにもかかわらず、更正通知書にその理由を記載していないものであるから、理由附記には不備がある。

(4) 信義則違反

第一一期分更正は、第八期分更正と同じく、被告の部下職員による税務指導の内容、すなわち、第一一期分土地の譲渡について譲渡利益をすべて原告に帰属するものとして課税することはないという内容を覆したものであり、著しく信義則に反し違法である。

(5) 国税不服審判所長の書類閲覧拒否

原告は、国税通則法九六条二項の規定に基づき、被告から提出された書類その他の物件を具体的に指定してその閲覧請求をしたが、国税不服審判所長は、同年三月二日付で右請求書類のうち法人税決議書以外の書類の閲覧を拒否したものであり、この結果、原告は審査請求の理由のうち前記(4)記載の事実の立証に著しい支障を来たし、適正な審査請求手続により第一一期分更正を取り消す可能性が失われたものであり、ひいては第一一期分更正は違法ということになる。

6  よって、第八期分更正のうち税額金一一九万七二〇〇円を超える部分及び右更正に伴う第八期分決定、第九期分更正のうち清算金についての特別控除額金額五万五一一八円を不当とした部分(右のような更正の一部の取消しが許されない場合には、予備的に、右更正及びこれに対する異議申立ての却下決定)、第一〇期分更正のうち税額金六〇万二四〇〇円を超える部分(右のような更正の一部の取消しが許されない場合には、予備的に、右更正(同更正によってなされたものとみなされる更正をすべき理由がない旨の通知を含む。))並びに第一一期分通知、第一一期分更正及び第一一期分決定の各取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

1  原告は、第九期分更正のうち清算金について特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分の取消しを求めているが、欠損金額を構成する勘定科目は税法上の課税標準ではないし、第九期分更正は加算及び減算を経た結果に基づく不可分な一個の処分であり、加算部分は右処分の理由の一部にすぎないのであるから、その取消しを求めることはできない。

2  原告は、昭和五六年七月三〇日付で、第九期分の法人税について、欠損金額を金五八二万四二八四円として確定申告をした(<証拠>)が、これに対して、被告は、同五八年七月二一日付で、右欠損金額のうち名古屋市都市計画事業復興土地区画整理に伴う清算金五万五一一八円を租税特別措置法(以下「措置法」という。)六五条の二の規定によって特別控除することは不当であるとしてこれを否認した上、新たに、第八期に係る未納事業税金九万〇七五〇円を欠損金額として認め、その結果、欠損金額を金五八五万九九一六円とする第九期分更正を行ったものである。すなわち、第九期分更正は、欠損金額を申告額よりも金三万五六三二円増加させる納税者に有利なもの(減額更正)であるから、原告には、この取消しを求める法律上の利益がない。

三  被告の本案前の主張に対する原告の反論

1  確かに、勘定科目それ自体は、課税標準を構成する一要素であり、かつ、税務訴訟において攻撃防御方法として機能するものであるから、勘定科目のみを争ってその取消しを求めることは不適法であるが、原告は、第九期分更正のうち加算部分全部の取消しを求めているのであって、本来の意味での勘定科目の取消しを求めているものではない。

2  第九期分更正は、清算金についての特別控除金額五万五一一八円は不当であるとする一方、他の損金(未納事業税額金九万〇二六〇円)を新たに認定して、差引すると所得金額を減少させているが、このような場合には、本来独立して行われるべき増額更正と減額更正がたまたま同時にされたものにすぎないと解することができ、また、両者は可分であるから、税額を増加させる不利益変更の部分のみについて取消しを求めていることができるというべきである。

また、右取消しが認められれば、欠損金額が特別控除の金額五万五一一八円だけ増えて金五九一万五〇三四円となり、第一〇期以降との関係で繰越欠損金額が増えるのであるから、原告には、右取消しを求める法律上の利益が存する。

3  第八期分の更正と同時に第九期分の欠損金額を増額する第九期分更正がされているが、このような場合、法人税法八二条により更正の請求をするのは手続の無駄であり不合理であるし、第九期分更正のうち税額を増加させる部分は前年度につき更正がされたこととは無関係に加算されたのであるから、同条の更正の請求の対象となるものではなく、独立に異議申立ての対象になるものと解すべきである。

4  未納事業税額は、第九期分の法人税の申告時(昭和五六年七月三〇日)には発生しておらず、同五八年七月二一日付でされた第八期分更正によって初めて発生したものであるところ、確定申告に対する更正が納税者にとって利益か不利益かは、申告時を基準として、確定していた事実及び確定し得べき事実についての課税標準又は課税額の増加によって判断すべきものであるから、第九期分更正は、原告に不利益な処分である。

四  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4の事実は認める。

5  同5について

(一) (一)について、(1)は争う。(2)のうち、第八期分更正の更正通知書に記載された更正の理由の内容は認め、その余は争う。(3)のうち、原告が昭和五五年三月七日に被告に対して概ね原告主張のような内容の記載されている上申書(<証拠>)を提出したことは認め、その余は争う。

(二) (二)について、(1)は争う。(2)のうち、本件土地が原告の帳簿等に固定資産として記載されていることは認め、その余は争う。(3)は争う。

(三) (三)について、(1)は争う。(2)のうち、第一〇期分更正の更正通知書に記載された更正の理由の内容は認め、その余は争う。

(四) (四)は争う。

五  被告の主張

1  本件処分の根拠

(一) 第八期分更正及び第八期分決定、第一〇期分更正並びに第一一期分更正及び第一一期分決定は、いずれも、措置法六三条(土地の譲渡等がある場合の特別税率)の規定の適用に関するものである。右規定は、法人が昭和四四年一月一日以降に他の者から取得した土地の譲渡等をした場合に、当該譲渡等をした事業年度につき、通常の法人税の計算とは全く別個に土地譲渡利益金額を算出して、これに対して特別の課税を行うものである。右土地譲渡利益金額とは、土地の譲渡等による収益の額からその収益に係る原価の額及び土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額を控除した金額をいい、その計算の詳細は政令で定められている(措置法六三条二項、同法施行令三八条の四第四項ないし第八項)。

(1) 第八期分更正及び第八期分決定の適法性

イ 原告は、昭和五五年三月二六日、第八期分土地(原告が、昭和五二年一一月一四日に他の者から取得した土地であり、措置法六三条の適用対象となるものである。)を代金六三〇四万九〇〇〇円で譲渡した。右代金額が、第八期分土地の譲渡による収益の額である。

ロ 右収益に係る原価の額は、譲渡に係る土地の譲渡直前の帳簿価額であり、原告が被告に提出した確定申告書(<証拠>)によれば、第八期分土地の譲渡直前の帳簿価額は金二七四二万一〇〇〇円であった。

ハ 原告は、土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額として、負債の利子の額並びに販売費及び一般管理費の額を、措置法施行令三八条の四第六項所定の概算法により確定申告をしており、右確定申告書によれば、第八期分土地に係る当該金額は、次のaとbの合計額金六六二万六七四二円である。

a 負債の利子の額 金三九七万六〇四五円

b 販売費及び一般管理費の額 金二六五万〇六九七円

ニ したがって、第八期分土地に係る譲渡利益金額は、前記イの譲渡による収益の金額から前記ロの原価の額及び前記ハの直接又は間接に要した経費の額を控除した金額である金二九〇〇万一二五八円であり、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた(国税通則法一一八条一項)課税土地譲渡利益金額は、金二九〇〇万一〇〇〇円となり、これに特別税率二〇パーセントを乗じて算出した金額五八〇万〇二〇〇円がこれに係る税額となる。

以上の計算を一覧表にすると、別紙6-1の第八期欄記載のとおりである。

ホ 他方、原告の第八期分の通常の所得金額は金四三九万七六二二円であり、これに対する法人税額は金一二三万一一六〇円である。したがって、右金額に前記ニの税額を合計した金七〇三万一三六〇円から控除税額金三万三八八六円を控除した金額である金六九九万七四〇〇円が原告の第八期分の法人税額となる。

ヘ 昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法六五条二項の規定により、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除した同条一項の規定する納付すべき税額(一〇〇〇円未満の端数切捨て)は、金五八〇万円であり、これに同項所定の百分の五の割合を乗じて計算した過少申告加算税額(一〇〇円未満切捨て)は、金二九万円である。

以上の計算を一覧表にすると、別紙1の更正及び賦課決定欄記載のとおりである。

ト したがって、右計算に基づいてされた第八期分更正及び第八期分決定は、適法である。

(2) 第一〇期分更正の適法性

イ 原告は、昭和五七年四月二日、第一〇期分土地(原告が、昭和五四年四月二一日に他の者から取得した土地であり、措置法六三条の適用対象となるものである。)を代金八二二三万六〇〇〇円で他に譲渡した。右代金額が、第一〇期分土地の譲渡による収益の額である。

ロ 右収益に係る原価の額は、譲渡に係る土地の譲渡直前の帳簿価額であるところ、原告が被告に提出した確定申告書(<証拠>)によれば、第一〇期分土地の譲渡直前の帳簿価額は金五四四四万九二七五円であった。

ハ 土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額は、次のaとbの合計金一八二一万一一七七円である。

a 負債の利子の額 金一〇〇四万五八六六円

原告は、負債の利子の額を実額配賦法(措置法施行令三八条の四第八項)により計算し、その額を金一三八五万六六六一円であるとして確定申告している。しかしながら、出資者に支払った利益分配金は措置法六三条二項に規定する土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費には該当せず、これは同項に規定する譲渡利益金額の計算上収益の額から控除することができないにもかかわらず、原告は、第一〇期分土地を譲渡した利益の分配と認められる金一一一九万八七九一円を支払利息として配賦計算の基礎に含めるなどしているため、否認すべき金額が多額であって実額配賦法の計算全体に著しく影響を与えると認められ、合理的に計算して申告しているものとはいえないのであるから、概算法(措置法施行令三八条の四第六項)により計算すべきものである。右算出過程は別紙7のとおりであり、その結果得られる金額は、金一〇〇四万五八六六円である。

b 販売費及び一般管理費の額 金八一六万五三一一円

原告は、販売費及び一般管理費を実額配賦法により計算し、その額を金一〇六七万九七一〇円(個別費金六五〇万〇六三〇円。共通費金四一七万九〇八〇円)として確定申告をしているが、その計算過程には次の誤りがある。

まず、右個別費には、第一〇期分土地に直接要したと認められない固定資産税額金一八万〇一四〇円が含まれており、また、直接要したと認められる第一〇期分土地の契約書印紙代金六万二〇〇〇円が漏れており、これらを修正すると、個別費は、第一〇期分更正に係る更正通知書(<証拠>)記載のとおり金六三八万二四九〇円となる。

次に、右共通費については、原告は原告出資額の持分割合で配分計算しているので、これを是正し正当に計算すると、共通費は、右更正通知書記載のとおり、金一七八万二八二一円となる。

したがって、販売費及び一般管理費の額は、右個別費と共通費の合計額金八一六万五三一一円となる。

ニ したがって、第一〇期分土地に係る譲渡利益金額は、前記イの譲渡による収益の金額から前記ロの原価の額及び前記ハの直接又は間接に要した経費の額を控除した金額である金九五七万五五四八円であり、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた(国税通則法一一八条一項)課税土地譲渡利益金額は、金九五七万五〇〇〇円となり、これに特別税率二〇パーセントを乗じて算出した金額一九一万五〇〇〇円がこれに係る税額となる。

以上の計算を一覧表にすると、別紙6-1の第一〇期欄記載のとおりである。

ホ 他方、原告の第一〇期分の通常の所得金額及びこれに対する法人税額は零円である。したがって、前記ニの税額金一九一万五〇〇〇円から控除税額金五万三三六三円を控除した金額である金一八六万一六〇〇円が原告の第一〇期分の法人税額となる。以上の計算を一覧表にすると、別紙3の更正欄記載のとおりである。

したがって、右計算に基づいてされた第一〇期分更正は、適法である。

(3) 第一一期分更正及び第一一期分決定の適法性

イ 原告は、昭和五七年六月二日、第一一期分土地(原告が、昭和五二年に他の者から取得した土地であり、措置法六三条の適用対象となるものである。)を代金合計金二億二九六四万二二七〇円で他に譲渡した。右代金額が、第一一期分土地の譲渡による収益の額である。

ロ 右収益に係る原価の額は、譲渡に係る土地の譲渡直前の帳簿価額であり、原告が被告に提出した確定申告書によれば、第一一期分土地の譲渡直前の帳簿価額は金八〇八五万三三〇〇円であった。

ハ 原告は、土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額について、負債の利子の額並びに販売費及び一般管理費の額を措置法施行令三八条の四第六項所定の概算法により確定申告をしており、右確定申告書によれば、第八期分土地に係る当該金額は、次のaとbの合計額金三八〇五万六四〇〇円である。

a 負債の利子の額 金二二八三万三八四〇円

b 販売費及び一般管理費の額 金一五二二万二五六〇円

ニ したがって、第一一期分土地に係る譲渡利益金額は、前記イの譲渡による収益の金額から前記ロの原価の額及び前記ハの直接又は間接に要した経費を控除した金額である金一億一〇七三万二五七〇円であり、課税土地譲渡利益金額は、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた(国税通則法一一八条一項)金一億一〇七三万二〇〇〇円となり、これに特別税率二〇パーセントを乗じて算出した金額二二一四万六四〇〇円がこれに係る税額となる。

以上の計算を一覧表にすると、別紙6-2記載のとおりである。

ホ 他方、原告の第一一期分の通常の所得金額は原告が確定申告書及び修正申告書に記載した金三〇三九万九一二三円であり、これに対する法人税額は金一一四四万九六六〇円である。したがって、右税額に前記ニの税額を合計した金三三五九万六〇六〇円から控除税額金六万一八一五円を控除した金額である金三三五三万四二〇〇円が原告の第一一期分の法人税額となる。

ヘ 昭和五九年改正前の国税通則法六五条二項の規定により、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除した同条一項に規定する納付すべき税額(一〇〇〇円未満の端数切捨て)は、金二二一四万円であり、これに同項所定の百分の五の割合を乗じて計算した過少申告加算税額(一〇〇円未満切捨て)は、金一一〇万七〇〇〇円である。

以上の計算を一覧表にすると、別紙4の更正及び賦課決定欄記載のとおりである。

したがって、右計算に基づいてされた第一一期分更正及び第一一期分決定は、適法である。

(二) 第九期分更正及びこれに対する異議申立てを却下した決定の適法性

第九期分更正の内容及びこれが取消しを求めることができない利益処分であることは前記二の2のとおりであり、これに対する異議申立てをすることも許されないものであるから、第九期分更正に対する異議申立てを却下した決定は適法である。

なお、原告は、原告が被告に提出した異議申立書(<証拠>)は法人税法八二条の更正の請求の要件を満たしているので、更正の請求として取り扱うべきであり、これを却下したのは違法である旨主張する。しかし、右異議申立ては所定の異議申立書用紙を用いて作成されており、異議申立ての趣旨は加算部分の取消しを求めるものであり、また、原告は、異議申立てに関する教示がなく右申立てが許されないことを知りながら、あえて、減額更正でも加算部分の取消しができる旨の見解に立って右異議申立てをしたものであることは明らかであるし、異議申立てと更正の請求はその性質を全く異にする手続であるから、右異議申立てをもって更正の請求とみることはできない。

(三) 第一一期分通知の適法性

(1) 原告が第一一期分の法人税について行った更正の請求の理由は、第九期分の繰越欠損金額金五八五万九九一六円から第一〇期に金四九八万九一〇一円控除した残額金八七万〇八一五円を第一一期の控除分として申告したが、第九期分の繰越欠損金額は金五九一万五〇三四円であるので、第一一期の控除額は金九二万五九三三円であるというものであった。

(2) しかし、第九期分の繰越欠損金額金五八五万九九一六円(第九期分更正後の金額であり、申告額は金五八二万四二八四円であった。)については、国税通則法所定の更正の請求はされておらず、右金額は既に確定しているのであるから、これを覆すことはできず、第一一期分の法人税について原告が行った更正の請求は失当であり、第一一期分通知は適法である。

2  第八期に関する原告の主張に対する反論

(一) 譲渡利益の帰属主体を誤った旨の主張について

(1) 原告は、原告と第八期分出資者との間の契約(以下「第八期分契約」という。)は民法上の組合契約である旨主張しているが、第八期分契約は、以下に述べるとおり、金銭消費貸借契約である。

イ 第八期分契約を証する書面(<証拠>)は、表題が「金銭消費貸借契約書」とされており、その冒頭に「甲(貸主、貸借額一覧表のとおり)は、乙(借主、南山興産有限会社)に対し下記の約定にて金銭を貸与し、乙はこれを借用する。」と定められている。

ロ 民法上の組合契約は、各当事者が出資をなして共同事業を営むことを各組合員相互間において約することによって成立する(同法六六七条)ところ、右契約書によれば、不動産を購入し、同不動産を貸店舗又は駐車場として利用する事業を営むのは原告であるとされ、具体的な土地利用方法の選択や売却をするか否かについては原告の判断に委ねられ、第八期分出資者は何ら第八期分土地の購入、利用、譲渡に関与しないものであって、共同事業の約定がない上、実際にも、第八期分土地の購入、管理及び売却のすべてが原告名義でされ、当該契約に係る代金の授受及び所有権の移転の登記もすべて原告の名義でされている。

ハ 民法上の組合契約であれば、団体の組織、運営に関する規約(同法六七〇条)、組合員の資格、加入、脱退、除名(同法六七八条ないし六八一条)などの規約が存在するはずであるが、これらの定めがない。

ニ 第八期分土地の売買に関し、原告の備付帳簿には専ら原告の売買として記載されており、原告の決算書類上もその取得価額が貸借対照表資産の部の不動産勘定に記載され、その譲渡価額は損益計算書収入の部に、取得価額は支出の部にそれぞれ記載されている。また、原告は、第八期分土地の取得及び譲渡に際し、仲介手数料、登記手数料その他諸経費を支払っており、右土地の利用及び譲渡に係る利益の一部を原告において留保し、残余を第八期分出資者に分配しているのであって、法的にも経済的にも専ら原告の営業であると認められる。

したがって、第八期分土地は原告の単独所有に属し、その譲渡はあくまでも原告自身による譲渡である。

(2) 仮に、第八期分契約が金銭消費貸借ではないとしても、以下に述べるとおり、それは民法上の組合契約ではなく、商法上の匿名組合契約である。

すなわち、民法上の組合と商法上の匿名組合との差異は、まず、民法上の組合が組合員の共同事業であるのに対し、商法上の匿名組合は対外的には営業者の単独の事業であり、匿名組合員にはせいぜい営業監視権(同法一五三条)に類する権能が認められるにすぎないこと、次に、民法上の組合の場合には、各組合員が対外的に第三者に対して権利義務を有するのに対し、商法上の匿名組合の場合には、営業者の行為につき第三者に対して権利義務を有しないこと、更に、民法上の組合契約は組合員相互の契約であるのに対し、匿名組合契約は、営業者と出資者の契約であり、出資者相互間に法律関係を生じないことである。

しかるに、第八期分契約においては、まず、第八期分土地の購入、利用、譲渡などはすべて原告名義で行われていて原告と各出資者間の共同事業と認めることはできず、原告の単独の営業というべきである。次に、第八期分出資者は、出資額に応じた利益の分配に与るだけで何ら第八期分土地の購入、利用、譲渡等に関与せず、対外的に第三者に対して権利義務を有していない。更に、第八期分出資者相互間に法律関係が生じたことを窺わせるものがない。

したがって、営業者である原告の営業活動によって営業者が取得した財産は営業者に帰属し、匿名組合員である第八期分出資者は何らの権利義務も有しないのであるから、第八期分土地は原告の単独所有に属し、その譲渡利益も専ら原告に帰属する。

(二) 理由附記の不備の主張について

(1) 第八期分更正の更正通知書に記載された更正の理由からは、その認定の具体的資料が原告とマツヤデンキとの間で作成された不動産売買契約書(<証拠>)であることが窺われるし、限時更改契約書(<証拠>)が右不動産売買契約書と矛盾するために否認されたことも自明であり、更に更正の理由本文及び別表には、措置法六三条一項所定の土地譲渡利益金額及び税額の計算根拠が明確に示されているのであるから、右更正通知書には確定申告における譲渡内容の否認理由及びその認定の具体的資料が示されているというべきである。

(2) そもそも、第八期分更正は原告の帳簿記載を否認して更正したものではなく、帳簿記載はそのまま認めた上で、その事実に対する法的評価につき原告と見解を異にして更正したものであるから、その法的評価ないし判断の結論のみを示せば足り、その根拠や具体的資料の摘示は必要でない。

すなわち、原告が第八期分土地を第八期分出資者に対して合計金三四〇四万七九九八円で売却したとして確定申告をしたのに対し、被告は、第八期分土地は代金六三〇四万九〇〇〇円で原告からマツヤデンキに譲渡されたという事実を認定し、これを前提にして第八期分更正をしているものであるが、原告の総勘定元帳(<証拠>)には、第八期分土地について、昭和五五年二月一二日付をもって「売買手付金」として金七〇〇万円と記載されており、更に同年三月二六日付で「残代金」として金五六〇四万九〇〇〇円と記載されている(これを合計すると、金六三〇四万九〇〇〇円となる。)。右記載が原告からマツヤデンキへの売買を記載したものであることは明らかであり、被告は、右原告の帳簿の記載を否認しているわけではない。被告は、原告が本件土地が原告及び第八期分出資者を組合員とする民法上の組合の所有に係るものであり、その譲渡利益は各組合員の出資持分に応じて各組合員に帰属する旨主張しているのに対し、当該法律関係を民法上の組合とは評価せず、第八期分土地の共有関係を否定し、マツヤデンキへの第八期分土地の譲渡主体及びその利益の帰属主体を原告であると判断したものであるが、右法的判断の内容は、更正通知書に明確に示されている。したがって、右更正通知書の記載は、課税庁の恣意的判断の抑制及び当事者の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に更正の根拠を具体的に記載したものであるというべきであり、法人税法の要求する更正理由の附記として欠けるところはない。

(3) 仮に、第八期分更正が法的評価による更正に当たらないとしても、それは、帳簿書類の記載自体を否認して更正するものではなく、帳簿書類相互間に齟齬ないし矛盾がある場合により信ぴょう力のある記載によって更正したものであるから、帳簿書類の記載以上に信ぴょう力のある資料の摘示は必要なく、更正の理由の記載は課税庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足するものであれば足りるところ、第八期分更正の更正通知書に記載した更正の理由は、更正の根拠を具体的に示しており、課税庁の判断の慎重性及び合理性を確保するという点で欠けるところはなく、不服申立ての便宜の面からも必要な材料を提供するものということができる。なお、相容れない帳簿書類記載の一方に信ぴょう性を認め、他方を否定した理由について記載はされていないが、そのような課税庁の総合判断である心証形成過程の内容を具体的に明示することまでは必要でない。

(三) 信義則違反の主張について

渡辺国税調査官が原告主張のような回答をした事実はないが、仮に、そのような事実があったとしても、以下に述べるとおり、信義則違反で第八期分更正が違法になることはない。

すなわち、そもそも、私法の分野において発達した信義則を公法上の租税法律関係に適用することには疑問があるし、仮に、適用の余地があるとしても、租税法律主義や租税の公平負担の原則に照らすと、信義則の適用が認められるためには、課税庁が納税者に対し、信頼の対象となる公的見解を表示したこと、納税者がその表示を信頼したことに責められるべき事由がないこと、納税者が当該課税処分により救済に値する経済的不利益を被ったことなどの各要件を満たすことが必要である。しかるに、渡辺国税調査官は、当該部門につき代表権限がなく、また、回答も口頭のものであるから、課税庁の公的見解が表示されたとはいえない。また、原告が渡辺国税調査官から回答を得たと主張する原告案は租税回避行為であり、その不合理性は原告自身十分認識していたものであるから、原告の信頼には原告の責めに帰すべき事由がある。更に、原告は、右回答を信じた結果、本来負担すべき税金を負担することになっただけであり、格別不当な不利益を被ったものではない。

3  第一〇期に関する原告の主張に対する反論

(一) 経費算定の違法の主張

前記1の(一)の(2)のハのとおりである。

(二) 理由附記不備の主張について

原告の総勘定元帳(<証拠>)の未払金の項に第一〇期分土地の売却利益について各出資者への分配金が記載されているが、帳簿上支払利息の項は別に設けられており、右分配金は支払利息として記載されているものではない。したがって、第一〇期分更正は、帳簿の記載を否認するものではなく、当該記載を前提にした法的評価による更正であるから、課税庁の法的評価ないし法的判断が記載されていれば足り、それ以上に当該法的評価の根拠ないし資料まで示す必要はないと解されるところ、第一〇期分更正の更正通知書には、課税庁の法的評価ないし法的判断が明確に示されている。

4  第一一期に関する原告の主張に対する反論

(一) 第九期分の繰越欠損金額について

前記二の2のとおり、第九期分の繰越欠損金額は金五八五万九九一六円である。

(二) 譲渡所得の帰属主体を誤った旨の主張について

第一一期分土地に関する原告と第一一期分出資者との間の昭和五二年九月五日付及び同年一二月二二日付の契約(以下合わせて「第一一期分契約」という。)は、前記2の(一)で述べた第八期分契約と同様に、民法上の組合契約ではなく、金銭消費貸借契約ないし商法上の匿名組合契約であるから、原告の主張は失当である。

(三) 理由附記不備の主張について

(1) 第一一期分更正の更正通知書に記載された理由は、「貴社が本件土地Aおよび本件土地Bを……株式会社石田に譲渡した価額は、1昭和五七年四月一一日付の土地売買契約書によれば、貴社と株式会社石田は、……実測面積によって売買代金を算出する旨の契約を締結していること2この契約に基づき株式会社石田は、貴社に本件土地A及びBの代金として……計二二九、六四二、二七〇円を支払い、貴社は、株式会社石田にその金額と同額の領収証を発行していることから二二九、六四二、二七〇円と認められます。」というものであり、右記載からは、認定の具体的資料が原告と石田との間の昭和五七年四月一一日付土地売買契約書(<証拠>)及び原告が石田に対して発行した額面二億二九六四万二二七〇円の領収証(<証拠>)であることが窺われ、原告の帳簿書類が右譲渡契約書などと矛盾するために否認されたことが明らかである。

(2) そもそも、原告の総勘定元帳には第一一期分土地について、昭和五七年四月一二日付をもって「売買手付金」として金二五〇〇万円が、また、同年六月二日付で「残代金」として金二億〇四六四万二二七〇円がそれぞれ計上されており、右各金額合計二億二九六四万二二七○円が原告から石田への第一一期分土地の売買代金を指していることは明らかであり、右記載は原告が第一一期分土地売却の利益帰属主体であるとする趣旨に解されるのであるから、第一一期分更正は原告の帳簿書類を否認するものではなく、まさに帳簿記載どおりに昭和五七年六月二日に第一一期分土地が原告から石田へ売却された旨認定しているものということができる。そうすると、第一一期分更正は、原告と第一一期分出資者との間の契約が民法上の組合契約ではなく金銭消費貸借契約ないし匿名組合契約である旨の法的評価による更正であるから、その法的評価ないし判断の結論を示せば足り、その根拠や具体的資料の摘示は必要でないところ、第一一期分更正の更正通知書には、措置法六三条一項所定の土地譲渡利益金額及び税額の計算根拠が明確に示され、被告の判断過程が如実に示されている。

(四) 信義則違反の主張について

前記2の(三)と同旨である。

(五) 国税不服審判所長の書類閲覧拒否の主張について

国税不服審判所の担当審判官は、予め日時及び場所を指定した上で原処分庁から取り寄せた書類を原告代表者の閲覧に供しており、その措置には何ら違法な点はない。

また、仮に、右担当審判官の措置が不当であるとしても、それによって第一一期分更正が違法になるものではない。

六  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1(本件各処分の根拠)について

(一) (一)について

冒頭部分は認める。(1)について、イは否認する。ロは認める。ハは認める。ニは否認する。ホのうち、原告の第八期の通常の所得金額が金四三九万七六二二円であり、これに対する法人税額は金一二三万一一六〇円であること及び控除税額が金三万三八八六円であることは明らかに争わず、その余は争う。ヘは争う。トは争う。(2)について、イは認める。ロは認める。ハのうち、仮に概算法によった場合の負債の利子の額及びその算出過程が別紙7のとおりであることは明らかに争わず、その余は否認する。ニは否認する。ホのうち、原告の第一〇期分の通常の所得金額及び税額が零円であること及び控除税額が金五万三三六三円であることは明らかに争わず、その余は争う。(3)について、イは認める。ただし、譲渡代金額は否認する。第一一期分土地の譲渡代金額は、別紙5の不動産番号10の土地が金五九〇〇〇万円であり、同13の土地が金五九〇〇万円である。ロは認める。ハは認める。ニは否認する。ホのうち、原告の第一一期分の通常の所得金額は原告が確定申告書及び修正申告書に記載した金三〇三九万九一二三円であり、これに対する法人税額は金一一四四万九六六〇円であること及び控除税額が金六万一八一五円であることは明らかに争わず、その余は争う。ヘは争う。

(二) (二)は争う。

(三) (三)について、(1)は認め、(2)は争う。

2  同2 (第八期に関する主張)について

(一) 譲渡所得の帰属主体を誤った違法について

民法上の組合契約の成立を証する契約書の表題を金銭消費貸借契約書としたのは、組合契約中の肝心な部分であり出資者が最も心配する出資部分につき、金銭の授受を明確にするためのものにすぎず、字義どおりの金銭消費貸借契約を締結する意思ではなかった。また、右契約書に「民法上の組合契約」、「共同事業」及び「共有」という用語を使用すると、原告設立以前から断続的に不動産売買を行ってきた原告以外の出資者が宅地建物取引業法違反の罪に問われる懸念があったので、そのような用語を使用することを控えたものである。また、被告主張の冒頭部分の文言は右表題に引きずられたものにすぎない。仮に、被告主張のように商法上の匿名組合契約の締結を意図したのであれば、前記懸念等はないのであるから、契約書に明白にその旨を表示したはずであり、その表示がないのは、匿名組合契約ではないからである。

そもそも契約の種類を判別するには契約当事者の意思を探求すべきであるところ、右契約書には共同出資、共同事業及び利益分配の約定が記載されており、当事者の意思としては民法上の組合契約しかあり得なかったのであるから、表題等にかかわらず、民法上の組合契約と解すべきである。

また、第八期分契約においては、第八期分土地の利用又は売却によって生ずる利益から「直接の必要経費」を差し引いた残額の七五パーセントを第八期分出資者に支払い、残りは原告に留保することとされているが、これは、原告が民法上の組合の組合員として労務出資をしていることに対する利益の分配であることが明らかである。このような労務出資は商法上の匿名組合においては認められないものであり、第八期分契約は、民法上の組合契約と解すべきである。

更に、右契約は、出資総額が約定されていること、全出資者が一通の契約書で契約していること等から、合同行為たる民法上の組合契約であって、商法上の匿名組合契約ではないというべきである。また、特定の不動産を対象とし、事業の内容を限定していること、事業者である原告自身も出資する約定となっていること、出資者は資金不足の際に行われる協議を通じて事業経営に参加できること等からも、商法上の匿名組合契約とみることはできない。

(二) 理由附記不備について

第八期分の法人税については、原告が第八期分出資者と共有の土地を第八期分出資者に売却したことによる譲渡所得を申告したのに対し、被告は原告が原告単独所有の土地をマツヤデンキに売ったと認定して更正したものであり、前提事実に相違があるのであるから、事実認定の問題であって、法的評価の問題ではないし、被告は、限時更改契約書(<証拠>)及びそれに基づく帳簿(<証拠>)の記載を否認しているのであるから、「法的評価による更正」であるので理由附記は不要である旨の主張は失当である。

また、仮に、法的評価による更正であっても、更正の根拠や具体的資料の摘示は不要であるということはできない。

更に本件に係る帳簿書類は組織的かつ合理的に記載されているものであって、被告のした「帳簿書類相互間に齟齬、矛盾がある」及び「相容れない帳簿書類記載」である旨の判断は恣意的なものである。

(三) 信義則違反について

原告は、土地をいったん第八期分出資者に売却する方法を採った場合でも、当該土地を原告がそのまま他に売却するのと同じ課税がされるというのであれば、当該土地を売却せず、土地譲渡益重課がされないよう一〇年を超えて当該土地を保有したはずである。したがって、原告は、被告の公的見解を信じたために、土地譲渡益重課を受けるという救済に値する経済的不利益を被ったものである。また、右結果発生については、被告にのみ責任があって原告の責めに帰すべき事情はない。

3  同4(第一一期に関する主張)について

(一) 譲渡所得の帰属主体を誤った違法について

第一一期分土地に関する原告と第一一期分出資者との間の契約書(<証拠>)によると、当該土地に関する全損益が全出資者に割合的かつ自動的に帰属することが当該契約書の各条項によって明らかであるから、当該土地の管理及び処分は原告の「自己の計算」でされたものではなく、第一一期分契約は匿名組合契約ではなく民法上の契約である。

(二) 理由附記不備について

被告が原告の帳簿書類と対比する譲渡契約書等も帳簿書類に含まれるものであり、他の帳簿書類に優越するものではないので、譲渡契約書等と矛盾するものは否認するというのであれば、その理由を記載すべきである。

第三  証拠<省略>

理由

第一  本案前の主張について

一  原告は、第九期分の法人税に関し、主位的に第九期分更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分の取消しを求めているが、右部分は、被告が第九期分更正を行うに至った理由の一部にすぎず、それ自体が公定力をもって税額を確定する行政処分ではないのであるから、取消訴訟の対象になり得ないものである。このことは、第九期分更正が清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当であるとするとともに、新たに未納事業税額金九万〇二六〇円を損金と認定してされたものであっても、何ら変わりはなく、右のような場合には、不利益変更部分のみについて独立して取消しを求めることができる旨の原告の主張は採用することができない。

二  次に、原告は、第九期分の法人税に関し、予備的に、第九期分更正の取消しを求めているが、原告が別紙2の確定申告欄記載のとおり確定申告をし、被告が同更正欄記載のとおり第九期分更正をしたことは当事者間に争いがなく、これによれば、原告が欠損金額を金五八二万四二八四円であると申告したのに対し、第九期分更正は、欠損金額は右申告額より多い金五八五万九九一六円であるとしたもので、原告に何ら不利益を課するものではないのであるから、原告にはその取消しを求める法律上の利益がないというべきであり、これに反する原告の主張は独自の見解であって採用することができない。

三  したがって、本件訴えのうち、第九期分の法人税に関し、主位的に第九期分更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分の取消しを求め、予備的に第九期分更正の取消しを求める部分は、いずれも不適法な訴えとして却下を免れないものである。

第二  本案の主張について

一  請求原因1の事実(原告の設立、目的等)及び同2ないし4の各事実(本件各処分の経緯)は、当事者間に争いがない。

そこで、以下、本件各処分(第九期分更正を除く。)の適法性について、順次判断する。

二  第八期分更正及び第八期分決定について

1  譲渡所得の帰属主体について

(一) 第八期分更正が措置法六三条(土地の譲渡等がある場合の特別税率)の規定の適用に関するものであることは当事者間に争いがないところ、<証拠>によれば、昭和五二年一一月一四日に原告を契約当事者(買主)として第八期分土地の取得が行われ、原告に対して所有権移転登記がされたこと、同五五年二月一二日に原告を契約当事者(売主)として第八期分土地が代金六三〇四万九〇〇〇円でマツヤデンキに譲渡され、同年五月二〇日原告からマツヤデンキに所有権移転登記がされていることを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

右各事実によれば、原告は、措置法六三条の規定の適用対象となる第八期分土地の取得及び譲渡を行ったものと推認されるというべきところ、原告は、原告が第八期分土地の取得及び譲渡を行ったのは、民法上の組合契約である第八期分契約に基づき、原告及び第八期分出資者を組合員とする民法上の組合の業務執行としてしたものであるから、マツヤデンキへの第八期分土地の譲渡による収益は出資割合に応じて各組合員に帰属するものであり、措置法六三条の譲渡所得金額は右譲渡による収益のうち組合員の一人である原告の持分に応じた部分に限られる旨主張する。

そこで、まず、この点について判断する。

(二) <証拠>によれば、昭和五二年一一月一四日、原告と第八期分出資者の間で、第八期分土地の取得、利用、譲渡等に関し、次のような内容の第八期分契約が締結され、原告の第八期分土地の取得、譲渡等はこれに基づいてされたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(1) 第八期分出資者がそれぞれ一定金額を出捐(契約書上は「貸与」とされている。)し、右出捐金額に原告が若干の不足金額を加えて第八期分土地を購入する。

(2) 原告は、右購入に係る第八期分土地を貸店舗若しくは駐車場として利用し、又は売却する。

(3) 原告は、原告が第八期分土地の右利用又は売却によって得た収益から「直接の必要経費」を差し引いた残額の七五パーセントを、第八期分土地への総投下資本に対する出捐額の割合に応じて第八期分出資者に按分して支払う。

しかしながら、右契約内容から直ちに第八期分契約が民法上の組合契約であるということはできない。すなわち、第八期分契約の内容を更に子細に検討してみると、第八期分土地の購入、利用及び譲渡はすべて原告名義で行われるものであり、第八期分土地を貸店舗若しくは駐車場として利用するか又は売却をするかについても、利用する時期の目途について定めがあるほかは原告の判断により行われることとされているのに対し、第八期分出資者は金員を出捐してそれに応じた利益金の分配を受けること、すなわち、原告による購入不動産の運用又は処分から生ずる不確定の利益の分配を受けることのほかは、何ら第八期分土地の購入、利用及び譲渡に関与しないのであって、わずかに資金不足が生じた際に協議して原告を援助する旨の条項が設けられているにすぎない。また、右にみた第八期分契約の内容及び右契約書(<証拠>)の表題には「金銭消費貸借契約書」との記載があり、かつ、右契約書の冒頭に「甲(貸主、貸借額一覧表のとおり)は乙(借主、南山興産有限会社)に対して下記の約定にて金銭を貸与し、乙はこれを借用する。」との記載があること(ただし、原告が、第八期分出資者に対し、確定した利息の支払を約するのではなく、原告の行う第八期分不動産の利用、譲渡等の営業から生ずる不確定な利益を分配することを約している点からして、第八期分契約が単なる金銭消費貸借であるとはいい難い。)からしても、第八期分契約をもって、民法上の組合契約であると認めることはできないというべきである。

他方、<証拠>によれば、原告設立前には、同証人ら大橋家の者等が数人共同して出捐して不動産投資を行い、購入した不動産については、出捐額に応じた持分で共有になるものとし、その旨の登記を経ていたが、これでは不動産の取得、管理、売却等の際、手続が煩雑であること、固定資産税等の処理も面倒であること、個人で不動産の売買を繰り返して行うと宅地建物取引業法に抵触するおそれがあると懸念されたことなどから、右のような問題を解消するために、昭和四七年に原告を設立し、購入不動産を原告の単独所有として売買をすべて原告自身の営業活動として行うこととする一方、出資者はそれから生じる利益の分配にのみ与ることとしたことを認めることができる。

(三) これに対し、原告は、資金不足が生じた場合に別途協議する旨の条項の存在は第八期分契約が民法上の組合契約であることの表れである旨主張するが、仮に、第八期分契約が民法上の組合契約であるとすれば、資金不足が生じたときに別途協議して対応すべきことは特段の契約条項を設けるまでもなく当然のことであり、第八期分契約が民法上の組合ではないからこそわざわざ右のような条項が設けられたと解することもできるところであるし、そのほか、第八期分契約には、第八期分出資者が原告の営業の具体的方法について協議する権限はもとより報告を求める権限すら認めることをうかがわせるような定めもないのであるから、右条項の存在のみによって直ちに第八期分契約が民法上の組合契約であるということはできない。

また、<証拠>には、第八期分出資者全員が共同して事業を行うという認識があり、実際に、全員が事業に参加していた旨の供述があり、同証人が第八期分土地の売却等に関与した事実が認められるけれども、同証言及び弁論の全趣旨によれば、同証人は第八期分不動産の売却の立会人である大橋商事株式会社の代表者であること、同証人は第八期分土地以外に原告が購入売却した土地についても関与しているが、その中には同証人が出捐していない土地も含まれていたこと、第八期分出資者の中には第八期分契約締結当時中学生又は高校生であった冨田真及び冨田善美が含まれていたことをそれぞれ認めることができ、これらの事実及び前記認定の第八期分契約の契約書の体裁、文言、内容等に照らすと、同証人の第八期分土地の取引への関与は仲介業者である大橋商事株式会社の代表者としてしたものにすぎないというべきであり、右供述は信用することができない。

以上認定の各事実を総合すれば、第八期分契約は、契約当事者たる原告及び第八期分出資者の共同事業性を定め、これに基づいて購入された第八期分土地を原告及び第八期分出資者の共有とする趣旨のものではなく、第八期分出資者が原告の営業のために出資をなし、当該出資額に応じて原告の営業から生じる利益の分配を受けることを定めたものであるから、それは、民法上の組合契約ではなく、むしろ商法上の匿名組合契約(同法五三五条)に該当するものというべきである。

これに対し、原告は、原告は第八期分契約において労務出資をしていたものであり、そのことは利益分配の際に利益の二五パーセントを原告に留保する旨の定めからも明らかであるから第八期分契約は商法上の匿名組合契約とみることはできない旨主張するが、原告も一企業体である以上、利益の一定割合を留保し、その中から原告自身の諸経費を支出するとともに、残余を預金その他の資産として社内留保し、その経済的基盤の強化を図ることは当然のことであり、しかも、現金を出資した者に対する分配金は出資割合に応じて厳格に計算されているのに、原告の労務それ自体に対しては割合ないし金額が明示されていないことを考慮すれば、前記利益の一部留保をもって、原告の労務出資が前提となっていたと結論することはできず、原告の右主張は採用することができない。

そのほか、出資総額が約定されていること、特定の不動産を対象として事業の内容が限定されていること等は、第八期分契約を商法上の匿名組合契約であると認めることの妨げとなるものではないので、この点に関する原告の主張も採用することができない。

(四) したがって、第八期分契約に基づいて行われた第八期分土地の譲渡は原告自身の土地譲渡であるということができ、措置法六三条の適用上は、第八期分土地の譲渡利益金額はあげて原告に帰属するものというべきである。

2  所得金額の認定について

前記1の認定判断の結果を踏まえて、以下、第八期分更正及び第八期分決定に原告の所得を過大に認定した違法がなかったか否かについて検討する。

(一) 第八期分更正及び第八期分決定がいずれも措置法六三条の規定の適用に関するものであることは当事者間に争いがないが、右規定は、法人が昭和四四年一月一日以後に他の者から取得した土地の譲渡等をした場合には、当該譲渡等をした事業年度の所得に対する法人税の額は、通常の法人税額に、当該土地の譲渡等に係る土地譲渡利益金額の合計額に一〇〇分の二〇の割合を乗じて算出した金額を加算した金額とする旨のいわゆる土地譲渡益重課を定めたものであり、右土地譲渡利益金額とは、土地の譲渡等による収益の額からその収益に係る原価の額及び土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額を控除した金額をいい、その計算の詳細は、政令(措置法施行令三八条の四第四項ないし第八項)で定められている。

そこで、まず、土地の譲渡等による収益の額についてみるに、右収益の額は、土地の譲渡の場合にあっては、当該土地の譲渡の対価の額である(措置法施行令三八条の四第四項)ところ、これを第八期分土地の譲渡についてみると、前記1において認定したとおり、原告は、昭和五二年一一月一四日に取得した原告の単独所有に属する第八期分土地を、同五五年三月二六日に代金六三〇四万九〇〇〇円でマツヤデンキに譲渡したものであるから、右代金額が第八期分土地の譲渡による収益の額である。

次に、右収益に係る原価の額が金二七四二万一〇〇〇円であること及び第八期分土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額が合計金六六二万六七四二円であることは、当事者間に争いがない。

したがって、第八期分土地に係る譲渡利益金額は、右収益金六三〇四万九〇〇〇円から右原価金二七四二万一〇〇〇円及び右経費金六六二万六七四二円を控除した残額金二九〇〇万一二五八円であり、金一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた課税土地譲渡利益金額は金二九〇〇万一〇〇〇円となり、これに特別税率一〇〇分の二〇を乗じて算出した税額は、金五八〇万〇二〇〇円である(以上の計算過程は、別紙6-1の第八期欄記載のとおりである。)。

(二) 原告は原告の第八期の通常の所得金額が金四三九万七六二二円であること、これに対する法人税額が金一二三万一一六〇円であること及び控除税額が金三万三八八六円であることを明らかに争わないので、これらを自白したものとみなすところ、右法人税額金一二三万一一六〇円に前記(一)の税額金五八〇万〇二〇〇円を合計した金七〇三万一三六〇円から右控除税額金三万三八八六円を控除した金額である金六九九万七四〇〇円(金一〇〇円未満の端数切捨て)が原告の第八期分の法人税額となる(以上の計算過程は、別紙1の更正及び賦課決定欄記載のとおりである。)。

(三) したがって、原告の第八期分の所得及びこれに係る税額について、右と同じ認定をした第八期分更正及び第八期分決定には、原告の所得を過大に認定した違法はない。

3  理由附記について

(一) <証拠>を総合すると、次の各事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 原告は、昭和五五年二月一二日、第八期分土地を代金六三〇四万九〇〇〇円でマツヤデンキに売り渡す旨の売買契約を締結した。

(2) しかし、その後、右のように原告所有土地を売却して獲得した代金の一部を第八期分契約に基づいて第八期分出資者に分配することとした場合には、税金を含めて多額の金員が社外に流出することとなると考えられたことから、そのような事態を防止するために、原告は第八期分出資者との間で同年三月二四日に第八期分契約に関し限時更改契約(その主な内容は、原告は第八期分出資者に第八期分土地を代金三四〇四万七九九八円で売却すること、第八期分出資者は、原告に対し、第八期分土地を金六〇〇〇万円以上で原告の名において第三者に売却することを一任すること等であった。)を締結したことにより第八期分出資者に第八期分土地を代金三四〇四万七九九八円で売却したとして、確定申告を行った(具体的には、土地譲渡利益金額は、右代金額金三四〇四万七九九八円から原価たる金二七四二万一〇〇〇円及び直接又は間接に要した経費の額たる金六六二万六七四二円を差し引いた残額金二五六円であり、税額は零円であるとして申告をした。)。

(3) 前項の申告に対して、被告が行った第八期分更正は、第八期分土地の譲渡による原告の収益の額を第八期分出資者への売却代金額ではなく、マツヤデンキへの売却代金額である金六三〇四万九〇〇〇円であるとした(その結果、課税譲渡利益金額は、右代金額金六三〇四万九〇〇〇円から申告に係るのと同額の原価及び直接又は間接に要した経費の額を差し引いた残額金二九〇〇万一二五八円であり、税額は五八〇万〇二〇〇円であるとした。)ものである。

(4) 原告の総勘定元帳(<証拠>)の不動産の項には、第八期分土地について、昭和五五年二月一二日に「売買手付金」金七〇〇万円、また、同年三月二六日に「残代金」金五六〇四万九〇〇〇円(合計すると、マツヤデンキへの売却額と同額の金六三〇四万九〇〇〇円)が、それぞれ借方欄に記載されている。また、第八期分土地に係る不動産売買契約書(<証拠>)には、売主欄に原告が記載され、本文中にも、同年二月一二日原告がマツヤデンキに対し第八期分土地を代金六三〇四万九〇〇〇円で売り渡した旨の記載がある。更に、確定申告書に添付された原告の損益計算書(<証拠>)の収入の部には、第八期分土地の譲渡価額である金六三〇四万九〇〇〇円が記載されている。

他方、昭和五五年三月二四日付の限時更改契約書(<証拠>)には、同日、原告が第八期分出資者に対し第八期分土地を代金三四〇四万七九九八円で売却する旨の記載があり、また、総勘定元帳(<証拠>)には、第八期分土地について、昭和五五年三月二八日に「仲介手数料」金三九〇万二九四〇円及び同日に第八期分出資者への「分配金」合計金二五〇七万八〇六一円の記載がある。

(5) 原告は青色申告の承認を受けた法人であり、第八期分更正の更正通知書(<証拠>)には、土地譲渡利益金額に関する加算について、更正の理由として次のとおり記載されている。

「課税土地譲渡利益金額過少 二九、〇〇一、〇〇四円

課税土地譲渡利益金額に対する税額過少 五、八〇〇、二〇〇円

貴社は、法人税確定申告書において課税土地譲渡利益金額二五六円課税土地譲渡利益金額に対する税額零円として確定申告されていますが、調査の結果、下記理由により課税土地譲渡利益金額は二九、〇〇一、二六〇円となり、課税土地譲渡利益金額に対する税額は、当該利益金額に二〇パーセントを乗じた五、八〇〇、二〇〇円となります。

貴社は、名古屋市千種区<住所略>所在の土地二九九・七七平方メートル(以下「本件土地」という。)を冨田一子、冨田治朗、冨田真、大橋秀孝、大橋勘一及び大橋きぬに対して合計三四、〇四七、九九八円で売却したものとして租税等特別措置法第六三条第一項に規定する土地の譲渡等に係る譲渡利益金額及び税額を計算し申告しています。

しかしながら、本件土地は、昭和五三年二月一二日に貴社から株式会社マツヤデンキへ六三、〇四九、〇〇〇円で譲渡することを内容とする契約が締結されているので、その譲渡価額を基礎として同項に規定する課税土地譲渡利益金額を計算しますと別表のとおり、二九、〇〇一、二六〇円となります。」

なお、右更正の理由中の「別表」は別紙8のとおりである。

以上認定した事実によれば、原告が、昭和五五年二月一二日マツヤデンキに第八期分土地を売却した後に、第八期分土地が原告単独の所有に属すると認定されて譲渡収益全部について土地譲渡税重課がされるのを回避するために、第八期分契約が民法上の組合契約で第八期分土地がもともと原告及び第八期分出資者の共有に属するものであったことを前提として、それに合わせるために、同年三月二四日限時更改契約を締結し、原告は第八期分土地を第八期分出資者に売却した上で第八期分出資者の代理人として第八期分土地をマツヤデンキに売却したものであったとして、右の第八期分出資者への譲渡に係る所得を確定申告したのに対し、第八期分更正は、第八期分土地はもともと原告の単独所有に係るものであり、そのマツヤデンキへの売却は原告自身が当事者として行ったもので、これによる譲渡利益はすべて原告に帰属すると判断して、マツヤデンキへの譲渡価額を基礎として課税することとしたものということができる。

(二) ところで、法人税法一三〇条二項が青色申告に係る法人税について更正する場合には更正通知書に更正の理由を附記すべきものとしているのは、同法が、青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものというべきであり、したがって、帳簿書類の記載自体を否認して更正をする場合において、更正通知書に附記すべき理由としては、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料によって具体的に明示することを要する(最高裁昭和三六年(オ)第八四号同三八年五月三一日第二小法廷判決・民集一七巻四号六一七頁、同昭和五〇年(行ツ)第八四号同五四年四月一九日第一小法廷判決・民集三三巻三号三七九頁等)が、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては、右の更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから、更正通知書の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信ぴょう力のある資料を摘示するものではないとしても、更正の根拠を前記の更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法人税法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解するのが相当である(最高裁昭和五六年(行ツ)第三六号同六〇年四月二三日第三小法廷判決・民集三九巻三号八五〇頁)。

(三) これを本件についてみるに、第八期分更正の更正通知書記載の更正の理由には第八期分更正をした根拠についての資料の摘示がないことは否定できないところであるけれども、第八期分更正は前記のような内容のものであって、帳簿書類の記載を無視して他の資料によったり、帳簿書類の記載のない事項を認定したりしてされたものではなく、かえって、原告が契約当事者(売主)となってマツヤデンキに第八期分土地を売却した事実、その時期及び譲渡価額についての帳簿書類の記載をそのまま肯定した上で、右売却に係る譲渡利益全体が原告に帰属するのか否かという点に関する原告の法的評価ないし判断を修正するものであるから、帳簿書類の記載自体を否認するものではないというべきであり、したがって、第八期分更正の更正通知書記載の更正の理由が右のような更正をした根拠についての資料を摘示するものでないとしても、前記の理由附記制度の趣旨目的を充足するものである限り、法人税法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないというべきである。

この点に関し、原告は、第八期分更正は限時更改契約書(<証拠>)及びそれに基づく帳簿(<証拠>)の記載を否認するものであるから、その根拠についての資料の摘示が必要である旨主張するが、第八期分更正は、原告がした第八期分土地のマツヤデンキへの売却に関し、右の帳簿書類の記載の存在にもかかわらず、原告の帳簿書類全体を見て、その記載内容を総合して評価すると、右売却は原告がその単独所有に属する第八期分土地を自ら当事者としてマツヤデンキに譲渡したものであり、その譲渡利益は原告に帰属するというべきであると判断してされたものであるから、全体としてみると原告の帳簿書類の記載自体を否認しているものではなく、その記載を前提として第八期分土地譲渡に関する法律関係及び譲渡利益の帰属に関し、原告とは異なる法的評価ないし判断をしたものであるにすぎない。

そこで、次に、第八期分更正の更正通知書記載の更正の理由が理由附記制度の趣旨目的を充足するものであるといえるか否かについて検討するに、右更正の理由の記載は、措置法六三条一項所定の譲渡利益金額及び税額は原告から第八期分出資者への譲渡価額ではなく、原告からマツヤデンキへの譲渡価額を基礎として算定されるべきであるとする趣旨を記載したものということができ、これは、被告が何故課税土地譲渡利益金額及びこれに対する税額が過少であると判断したかについて、その法律上及び事実上の根拠を具体的に示しているものということができる。更に、右更正理由の記載は、右判断の基礎となった具体的事実関係を明示してはいないが、第八期分土地については、原告を契約当事者と明示して原告からマツヤデンキへの譲渡契約が締結されているのであるから、特段の例外的事情のない限り、右譲渡契約に定められた譲渡価額が措置法六三条一項所定の譲渡利益金額及び税額算定の基礎となるというべきであり、右の理由の記載もこのことを前提とした上で、限時更改契約の存在は、右特段の例外的事情に当たらないと認めた趣旨を記載したものと解することができる。そうであるとすれば、右更正理由の記載は、第八期分更正における被告の判断過程を省略することなしに記載したものということができ、処分庁の恣意抑制という理由附記制度の趣旨目的を損なうことはないというべきであり、かつ、上掲理由附記制度のもう一つの目的である不服申立ての便宜という面からの要請に対しても、必要な材料を提供するものということができる。

したがって、第八期分更正理由の記載は法人税法一三〇条二項の要求する更正理由の附記として欠けるところはないものというべきである。

4  信義則違反の主張について

次に、原告は、第八期分更正は、被告の部下職員による税務指導の内容を覆したもので著しく信義に反し違法である旨主張するので、この点について判断する。

(一) 信義則の法理は法の一般原理であるが、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情の存在が認められるためには、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したこと、納税者がその表示を信頼して行動したところ、後に右表示に反する課税処分により経済的不利益を受けたこと並びに右信頼及びこれに基づく行動につき納税者の責めに帰すべき事由がないことが必要であると解するのが相当である(最高裁昭和六〇年(行ツ)第一二五号同六二年一〇月三〇日第三小法廷判決・判例時報一二六二号九一頁)。

(二) これを本件についてみるに、原告が昭和五五年三月七日に被告に対して上申書(<証拠>)を提出したことは当事者間に争いがないが、原告主張の事実、すなわち、被告の部下である渡辺国税調査官が、右上申書につき、原告と第八期分出資者との間で限時更改契約に基づき第八期分土地を金三四〇四万七九九八円で売買した上で、原告が第八期分出資者の代理人として第八期分土地をマツヤデンキに金六〇〇〇万円以上で譲渡する場合には、原告がマツヤデンキに第八期分土地をそのまま譲渡する場合のように重課譲渡所得税の課税がされることはない旨の回答を電話でしたことを認めるに足りる証拠はなく、また、仮に、右主張の事実が認められたとしても、これによって税務官庁が信頼の対象となる公的見解を表示したものということはできない。すなわち、前記のように信義則の適用につき慎重であるべき租税法律関係の特質を考慮すれば、様々な状況下で行われる税務職員の見解の表示のすべてが信頼の対象となる公的見解の表示となるものでないことはいうまでもなく、納税者はもともと自己の責任と判断の下に行動すべきものであることからすれば、信頼の対象となる公的見解の表示であるというためには、少なくとも、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であることが必要であるというべきであるから、原告主張の回答は、その回答者、回答の方法及び内容等に照らし、信頼の対象となるべき公的見解の表示であると認めることは到底できないものである。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、第八期分更正について信義則の法理の適用の是非を考える余地はないものといわなければならない。

5  第八期分更正及び第八期分決定の適法性

以上のとおりであるから、第八期分更正は適法な処分であるというべきであり、また、前記認定の原告の第八期の所得金額に伴って定まる納付すべき税額及び過少申告加算税額は、被告の主張1の(一)の(1)のへのとおり金五八〇万円及び金二九万円となるのであるから、第八期分決定も適法な処分であるというべきである。

三  第九期分更正の異議申立却下決定について

前記第一の二のとおり、第九期分更正は原告に利益な処分であり、これに対する異議申立ては認められないところであり、また、第九期分更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当であるとした部分のみを取り出して異議申立てをすることは許されないのであるから、原告が第九期分更正に対してした異議申立てを却下した決定は適法であるということができる。

なお、原告は、右異議申立ては法人税法八二条二号による更正の請求として取り扱うべきものであり、これを却下したのは違法である旨主張するが、<証拠>によれば、原告は「法人税の異議申立書」と題する異議申立書用紙を使って異議申立てを行っていること、異議申立ての趣旨として記載されている内容は第九期分更正のうち加算部分の取消しを求めるというものであったこと及び異議申立ての理由として記載されている内容は第九期分更正が原告保有地を棚卸資産と認定したことが不当であると主張するものであったことをそれぞれ認めることができ、これらの事実に照らすと、右申立てをもって法人税法八二条二号による更正の請求と解することは到底できないというべきである。

四  第一〇期分更正について

1  経費算定の方法について

(一) 第一〇期分更正が措置法六三条の規定の適用に関するものであることは当事者間に争いがないが、原告は、第一〇期分更正が負債利子について実額配賦法でなく概算法を採ったこと並びに販売費及び一般管理費について持分額によって実額配賦すべきであるのにこれをしなかったことがそれぞれ違法である旨主張するので、以下、この点について順次判断する。

(二) 負債の利子の額並びに販売費及び一般管理費の額の計算については、原則としていわゆる概算法によるべきである(措置法施行令三八条の四第六項)が、法人が、これらの経費の額を合理的に計算して法人税申告書にこれによる旨を記載して申告した場合には、概算法によらないで、当該計算した金額を当該土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額とすることができる(同令同条第八項。いわゆる実額配賦法)ものとされている。

これを第一〇期の法人税についてみると、<証拠>によれば、原告は、右法人税の確定申告に当たり、負債の利子の額並びに販売費及び一般管理費の額を実額配賦法により計算してこれらを確定申告書に記載して申告していることが認められるけれども、<証拠>によれば、原告は第一〇期分の負債の利子の額を金一三八五万六六六一円と算定して確定申告していること及びこのうち金一一一九万八七九一円は、第一〇期分土地の譲渡による利益を出資者に分配したものであることを認めることができる。しかし、右のような利益分配金は負債の利子に含めることができないものであるから、これを否認すべきものであるが、そうすると、否認金額が多額に上り、原告の行った実額配賦法の計算全体に大きな影響を与えることは明らかである。したがって、原告は合理的に計算して申告しているものということはできず、被告が、負債の利子の額について、原則に戻って概算法により計算したことは適法であるというべきである。

(三) <証拠>によれば、原告は、第一〇期分の法人税の確定申告において、販売費及び一般管理費の額を実額配賦法により計算するに当たり、同期の「全土地の期首帳簿価額及び期末帳簿価額の合計額のうち原告の持分額」に占める「第一〇期分土地の期首帳簿価額及び期末帳簿価額の合計額」の割合で共通費の額を算出したものであること、これに対し、被告は、同期の「全土地の期首帳簿価額及び期末帳簿価額の合計額のうち原告の持分額」ではなく「全土地の期首帳簿価額及び期末帳簿価額の合計額」に占める「第一〇期分土地の期首帳簿価額及び期末帳簿価額の合計額」の割合で共通費の額を算出すべきものとして、第一〇期分更正を行ったことを認めることができる。

ところで、<証拠>によれば、右の「全土地」のうち原告が原告の単独所有であるとして申告した第一〇期分土地以外の土地(<証拠>)は、第八期分契約と実質的に同様の性質の契約に基づいて原告が購入した土地であることが認められるのであるから、これらの土地は、第八期分土地と同様に、原告の単独所有に属するものというべきである。

したがって、これらの土地が民法上の組合契約に基づいて購入したもので原告及び出資者の共有に属するものであることを前提とする原告の主張は失当であり、被告が第一〇期分更正において採用した販売費及び管理費の計算方法に違法な点はない。

2  所得金額の認定について

前記1の認定判断の結果を踏まえて、第一〇期分更正に原告の所得を過大に認定した違法がないか否かについて検討する。

(一) 第一〇期分更正が措置法六三条の規定の適用に関するものであることは当事者間に争いがなく、右規定の趣旨内容は前記二の2で述べたとおりであるところ、まず、第一〇期分土地の譲渡による収益の額が金八二二三万六〇〇〇円であること及び右収益に係る原価の額が金五四四四万九二七五円であることは、いずれも当事者間に争いがない。

次に、第一〇期分土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費のうち、負債の利子の額は、前記1のとおり措置法施行令三八条の四第六項所定の概算法によって算定すべきものであるところ、概算法による算出過程が別紙7の第一〇期欄記載のとおりであり、負債の利子の額が金一〇〇四万五八六六円となることについて、原告は明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。また、販売費及び一般管理費については、<証拠>によれば、原告はこれらを実額配賦法により計算し、合計金一〇六七万九七一〇円(個別費金六五〇万〇六三〇円、共通費金四一七万九〇八〇円)として確定申告していること、しかし、右のうち、個別費については、第一〇期分土地の譲渡等に直接又は間接に要したものとは認められない固定資産税額金一八万〇一四〇円が計上されていること、逆に、第一〇期分土地の譲渡に直接要したものと認められる契約書印紙代金六万二〇〇〇円が計上されていないことをそれぞれ認めることができ、これらを是正して計算すると、個別費の額は金六三八万二四九〇円となる。また、共通費については、前記1の(三)のとおり、原告出資額の持分按分で配分計算されているのを是正して計算すると、金一七八万二八二一円となることが認められる。したがって、販売費及び一般管理費の額は合計金八一六万五三一一円であることが認められ、第一〇期分土地の譲渡等に直接又は間接に要した経費の額は金一八二一万一一七七円である。

以上のとおりであるから、第一〇期分土地に係る譲渡利益金額は、右の譲渡による収益の額金八二二三万六〇〇〇円から右の原価の額金五四四四万九二七五円及び右の経費の額金一八二一万一一七七円を控除した残額金九五七万五五四八円であり、金一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた課税土地譲渡利益金額は金九五七万五〇〇〇円となり、これに特別税率一〇〇分の二〇を乗じて算出した金一九一万五〇〇〇円がこれに係る税額である(以上の計算過程は、別紙6-1の第一〇期欄記載のとおりである。)。

(二) 原告は原告の第一〇期分の通常の所得金額及び税額が零円であること及び控除税額が金五万三三六三円であることは明らかに争わないので、これらを自白したものとみなすと、前記(一)の税額金一九一万五〇〇〇円から右控除税額金五万三三六三円を控除した金額である金一八六万一六〇〇円が原告の第一〇期分の法人税額である(以上の計算過程は、別紙3の更正欄記載のとおりである。)。

(三) したがって、原告の第一〇期分の所得及びこれに係る税額について、右と同じ認定をした第一〇期分更正には、原告の所得を過大に認定した違法はない。

3  理由附記について

(一) 前記一の争いのない事実と<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

(1) 原告は、昭和五四年四月二一日、冨田治朗、冨田一子、冨田真及び冨田善美(以下「第一○期分出資者」という。)との間で第一〇期分契約を締結したが、右契約は、第八期分契約と比べると、当事者、出捐額、対象不動産及びその利用方法並びに利益分配の方法の定めが異なるが、実質的に同様の性質の契約であった。第一一期分契約においては、利益分配の方法については、利息として借用期間に応じ元本の年一割二分(単利)を支払うか、又は第一〇期分土地の利用又は売却によって生じた収入から直接の必要経費を差し引いた残額の七五パーセントを按分して支払う旨定められていた。

(2) 原告は、昭和五七年四月二日、第一〇期分土地を代金八二二三万六〇〇〇円で他に譲渡したが、右譲渡に係る所得の申告をする際、第一〇期分契約に基づく利益の分配として第一〇期分出資者に支払った金一一一九万八七九一円を支払利息に当たるとして、負債の利子の額の配賦計算の基礎に含めて申告した。

(3) 前項の申告に対し、被告が行った第一〇期分更正は、右金一一一九万六〇〇〇円は土地譲渡利益金額から控除することのできないものであるとして、負債の利子の額から右金員を除いた。

(4) 原告の総勘定元帳の未払金の欄(<証拠>)には、前記(2)の金一一一九万八七九一円の第一〇期分出資者への支払の内容が記載されている。なお、右総勘定元帳には、別に、支払利息の欄(<証拠>)がある。

(5) 第一〇期分更正の更正通知書には、前記(3)の点に関する更正の理由として、請求原因5の(三)の(2)のとおりの内容が記載されていた。

(二) 以上認定の事実によれば、第一〇期分更正の更正通知書記載の更正の理由には第一〇期分更正をした根拠についての資料の摘示がないことは否定できないところであるけれども、第一〇期分更正は前記のような内容のものであって、帳簿書類の記載を無視して他の資料によったり、帳簿書類の記載のない事項を認定したりしてされたものではなく、かえって、右金員が第一〇期分出資者に支払われるべき金員であることについての帳簿書類の記載をそのまま肯定した上で、右金員が負債の利子の額に含まれるものか否かという点に関する原告の法的評価ないし判断を修正するものであるから、第一〇期分更正をもって帳簿書類の記載自体を否認するものではないというべきであり、したがって、第一〇期分更正の更正通知書記載の更正の理由が右のような更正をした根拠についての資料を摘示するものでないとしても、前記二の3の(二)記載の理由附記制度の趣旨目的を充足するものである限り、法人税法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないというべきである。

この点に関し、原告は、右金員は原告の総勘定元帳(<証拠>)に支払利息として記載されているものであり、その記載を否認して利益の分配であるとするものであるから、その根拠についての資料の摘示が必要である旨主張するが、前記認定のとおり、右金員は総勘定元帳の支払利息の欄(<証拠>)ではなく未払金の欄に記載されているものであるし、被告は、右記載をそのまま認めた上で、その性質につき、右金員が第一〇期分契約に基づいて第一〇期分出資者に支払われていること及び第一〇期分契約が商法上の匿名組合契約と解されるべきのものであることから、利益分配金であると評価したものであるので、原告の右主張を採用することはできない。

そこで、次に、第一〇期分更正の更正通知書記載の更正の理由が理由附記制度の趣旨目的を充足するものであるといえるか否かについて検討するに、第一〇期分更正の理由の記載は、原告が支払利息として負債利子の額の配賦計算の基礎に含めている金員が利益の分配と認められること、利益の分配額は措置法六三条二項所定の土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費に該当しないこと、したがって、右金員は、譲渡利益の計算上収益の額から控除できないことを明示しているのであるから、これは、被告の行った第一〇期分更正の法律上及び事実上の根拠を具体的に示しているものということができる。確かに、右更正理由の記載は、何故に右金員を支払利息ではなく利益の分配と認めたのかという具体的事実関係を明示してはいないが、右金員が第一〇期分契約に基づいて第一〇期分出資者に支払われているものであることは明らかであるので、総勘定元帳及び第一〇期分契約の契約書の各記載を総合評価して利益の分配と解することが最も合理的であると判断したものであることは明らかであり、右の理由の記載もこのことを前提としたものであると解することができる。したがって、右更正理由の記載は、第一〇期分更正における被告の判断過程を省略することなしに記載したものということができ、処分庁の恣意抑制という理由附記制度の趣旨目的を損なうことはないというべきであり、かつ、理由附記制度のもう一つの目的である不服申立ての便宜という面からの要請に対しても、必要な材料を提供するものということができる。

したがって、第一〇期分更正理由の記載は法人税法一三〇条二項の要求する更正理由の附記として欠けるところはないものというべきである。

4  第一〇期分更正の適法性

以上のとおりであるから、第一○期分更正は適法な処分であるというべきである。

五  第一一期分通知、第一一期分更正及び第一一期分決定について

1  第一一期分通知

被告の主張1の(三)の(1)の事実(更正の請求の理由)は当事者間に争いがない。

右更正の請求の理由は、要するに、第九期分の繰越欠損金額が過少であって誤りであったというものであるが、<証拠>によれば、右欠損金額については、原告が昭和五六年七月三〇日にした確定申告に対し、同五八年七月二一日に第九期分更正がされたが、国税通則法及び法人税法所定の更正の請求はされず、右金額は既に確定しているものであることが認められるのであるから、これを覆すことはできず第一一期分の法人税について原告がした更正の請求は失当であり、右更正の請求に対してその更正をすべき理由がないとした第一一期分通知は適法であるというべきである。

2  譲渡利益の帰属主体

<証拠>によると、第一一期分契約は、第八期分契約と比べ、当事者、出捐額、対象不動産及びその利用方法、利益分配の方法等の定めが異なるものの、実質的に同様の性質を有する契約であると認めることができる。

そうであるとすれば、第一一期分契約についても第八期分契約について前記二の1でした認定判断がそのまま妥当するものであり、第一一期分契約が民法上の組合契約であることを前提とする原告の主張は失当であり、第一一期分土地は原告の単独の所有に属するものであるから、第一一期分更正及び第一一期分決定が第一一期分土地の譲渡による収益がすべて原告に帰属する旨認定したことは適法というべきである。

3  所得金額の認定について

以上の認定判断の結果を踏まえて、第一一期分更正及び第一一期分決定に原告の所得を過大に認定した違法がないか否かについて検討する。

(一) 第一一期分更正が措置法六三条の規定の適用に関するものであることは当事者間に争いがなく、右規定の趣旨内容は前記二の2で述べたとおりであるところ、まず、原告が昭和五七年六月二日に第一一期分土地を他に譲渡したこと、第一一期分土地が原告が昭和五二年に他の者から取得した土地で、措置法六三条の適用対象となる土地であり、その譲渡代金額が譲渡による収益の額であることはいずれも当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、第一一期分土地の譲渡代金額は合計金二億二九六四万二二七〇円であることを認めることができる。

次に、右譲渡による収益に係る原価の額が金八〇八五万三三〇〇円であること並びに第一一期分土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額が合計金三八〇五万六四〇〇円であることは、いずれも当事者間に争いがない。

したがって、第一一期分土地に係る譲渡利益金額は、右の譲渡による収益の額金二億二九六四万二二七〇円から右の原価の額金八〇八五万三三〇〇円及び右の経費の額金三八〇五万六四〇〇円を控除した残額金一億一〇七三万二五七〇円であり、金一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた課税土地譲渡利益金額は金一億一〇七三万二〇〇〇円となり、これに特別税率一〇〇分の二〇を乗じて算出した金二二一四万六四〇〇円がこれに係る税額である(以上の計算過程は、別紙6-2記載のとおりである。)。

(二) 原告は原告の第一一期分の通常の所得金額が三〇三九万九一二三円であり、これに対する法人税額が金一一四四万九六六〇円であること及び控除税額が金六万一八一五円であることを明らかに争わないので、これらを自白したものとみなすと、右税額金一一四四万九六六〇円に前記(一)の税額金二二一四万六四〇〇円を合計した金三三五九万六〇六〇円から右控除税額金六万一八一五円を控除した金額である金三三五三万四二〇〇円が原告の第一一期分の法人税額である(以上の計算過程は、別紙4の更正及び賦課決定欄記載のとおりである。)。

(三) したがって、原告の第一一期分の所得及びこれに係る税額について、右と同じ認定をした第一一期分更正及び第一一期分決定には、原告の所得を過大に認定した違法はない。

4  理由附記について

(一) 前記一の成立に争いのない事実と<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 原告は、石田に対し、昭和五七年四月一一日、第一一期分土地を売却し、その際、代金は不動産登記の表示面積を前提に一応合計金二億二八七一万四二〇〇円と定めたが、引渡し及び移転登記の日である同年六月二日までに面積を実測して、一平方メートル当たり金三九万三二五〇円で計算して確定することとした。原告は、石田から、同年四月一一日手付金として金二五〇〇万円の、また、同年六月二日に右測量の結果に沿って残金二億〇四六四万二二七〇円(代金合計金二億二九六四万二二七〇円)の各支払を受けた。なお、第一一期分土地は、原告が昭和五二年七月三〇日及び同年一一月三〇日にそれぞれ他から購入したもので、措置法六三条の適用対象となる土地であった。

(2) 原告は、昭和五七年五月二三日、第一一期分出資者との間で、それぞれ同五二年九月五日及び同年一二月二二日に締結した第一一期分契約に関し限時更改契約を締結し、これに基づき、第一一期分土地を一筆当たり金五九〇〇万円合計一億一八〇〇万円で第一一期分出資者に売却し、かつ、第一一期分出資者の代理人として石田に売却したものであるとして、昭和五八年七月三〇日に第一一期分の法人税の確定申告をした際、第一一期分土地の譲渡による収益の額は合計金一億一八〇〇万円であると申告した。なお、第一一期分契約書(<証拠>)及びこれに係る限時更改契約書(<証拠>)の内容は、前記認定の第八期分契約書(<証拠>)及びこれに係る限時更改契約書(<証拠>)と実質的に同様のものであった。

(3) 右申告に対し、被告は、原告が受けた第一一期分土地の譲渡による収益の額は合計金二億〇四六四万二二七〇円であるとして、第一一期分更正を行った。

(4) 原告の総勘定元帳(<証拠>)には、昭和五七年六月二日に第一一期分土地の残代金二億〇四六四万二二七〇円の支払を受け、そのうち原告が受ける代金は金五九〇〇万円及び金五九〇〇万円であり、仲介手数料は金六八七万二三四八円及び金七〇二万六一八七円である旨の記載があり、また、昭和五二年五月二三日付の限時更改契約書(<証拠>)には、原告は第一一期分出資者に対し第一一期分土地を一筆当たり金五九〇〇万円(二筆合計で一億一八〇〇万円)で売却する旨の記載がある。

他方、前記(1)の原告から石田への第一一期分土地の売買及び代金決済の事実を記載する書類として、昭和五七年四月一一日付土地売買契約証書(<証拠>)、同日付及び同年六月二日付領収証(<証拠>)がある。

(5) 第一一期分更正理由通知書(<証拠>)には、土地譲渡代金の計上漏れ金一億一一六四万二二七〇円に関する加算について、更正の理由として次のとおり記載されている。

「貴社は、確定申告書に添付した勘定科目内訳書において昭和五七年六月二日に名古屋市千種区四谷通二丁目九番の山林(登記簿上宅地)二八七・六平方メートル(以下「本件土地A」という。)を五九、〇〇〇、〇〇〇円で、また、名古屋市千種区四谷通二丁目一〇番の山林(登記簿上雑種地)二九四平方メートル(以下「本件土地B」という。)を五九、〇〇〇、〇〇〇円で株式会社石田にそれぞれ売却したとして申告しています。

しかしながら、貴社が本件土地A及び本件土地B(合計実測面積五八三・九六平方メートル)を株式会社石田に譲渡した価額は、<1>昭和五七年四月一一日付の土地売買契約書によれば、貴社と株式会社石田は、本件土地A及び本件土地Bの一平方メートル当たりの売買価額を三九、二五〇円とし、実測面積によって売買代金を算出する旨の契約を締結していること、<2>この契約に基づき株式会社石田は、貴社に本件土地A及び本件土地Bの代金として、昭和五七年四月一一日に二五、〇〇〇、〇〇〇円、同年六月二日に二〇四、六四二、二七〇円の計二二九、六四二、二七〇円を支払い、貴社は、株式会社石田にその金額と同額の領収書を発行していることから二二九、六四二、二七〇円と認められます。

従って、上記譲渡価額二二九、六四二、二七〇円から貴社が申告書に記載した金額五九、〇〇〇、〇〇〇円と五九、〇〇〇、〇〇〇円の計一一八、〇〇〇、〇〇〇円を控除した一一一、六四二、二七〇円を土地譲渡代金の計上もれとして当期利益に加算します。」

(二) 以上認定の事実によれば、第一一期分更正の更正通知書記載の更正の理由は、第一一期分更正をした根拠について、原告と石田との間の土地売買契約証書(<証拠>)及び原告が石田に対して発行した金額合計金二億二九六四万二二七〇円の領収証(<証拠>)を具体的資料として摘示しており、右更正理由においては、右摘示に係る書類並びにそれと矛盾する内容の記載がある総勘定元帳(<証拠>)及び限時更改契約書(<証拠>)を総合して評価・判断した結果、右摘示に係る書類の記載を採用したものであることが明確に記載されている。右のような更正理由の記載は、被告の行った第一一期分更正の法律上及び事実上の根拠を具体的に示しているものであり、第一一期分更正における被告の判断過程を省略することなしに記載したものということができ、処分庁の恣意抑制という理由附記制度の趣旨目的を損なうことはないというべきであり、かつ、理由附記制度のもう一つの目的である不服申立ての便宜という面からの要請に対しても、必要な材料を提供するものであるということができる。

原告は、被告が相互に矛盾する帳簿書類のうち一部分が他の部分に優越すると判断した理由を記載すべきである旨主張するが、右のような心証形成過程の内容を具体的に明示することまで法が要求しているものとは解せられず、右主張を採用することはできない。

したがって、第一〇期分更正の更正通知書における更正理由の記載は法人税法一三〇条二項の要求する更正理由の附記として欠けるところはないものというべきである。

5  信義則違反について

原告は、第一一期分更正についても、第八期分更正と同様に、原告が被告に対し昭和五五年三月七日に提出した上申書(<証拠>)につき、同月渡辺国税調査官がした回答に従ったところ、被告は第一一期分更正においてその内容を覆したものであり、著しく信義に反し違法である旨主張するが、この点についての判断は、前記二の4において第八期分更正についてした判断と実質的に同一であるので、これをここに援用する。

したがって、第一一期分更正について信義則の法理の適用の是非を考える余地はないものであり、原告の主張は失当である。

6  国税不服審判所長の書類閲覧拒否について

原告の主張に係る国税不服審判所長の書類閲覧拒否は、仮に、そのような事実の存在が認められたとしても、裁決固有の違法事由となる可能性があることは格別、原処分たる第一一期分更正を違法たらしめるものではないのであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告のこの点に関する主張は理由がない。

7  第一一期分通知、第一一期分更正及び第一一期分決定の適法性

以上のとおりであるから、第一一期分通知及び第一一期更正は適法な処分であるというべきであり、また、前記認定の原告の第一一期の所得金額に伴って定まる納付すべき税額及び過少申告加算税額は、被告の主張1の(一)の(3)のヘのとおり金二二一四万円及び金一一〇万七〇〇〇円となるのであるから、第一一期分決定も適法な処分であるというべきである。

第三  結論

以上の次第であって、本件訴えのうち、主位的に第九期分更正のうち清算金についての特別控除金額五万五一一八円を不当とした部分の取消しを求め、予備的に右更正の取消しを求める部分は、いずれも不適法であるから、これらを却下することとし、原告のその余の本訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用については行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浦野雄幸 裁判官 杉原則彦 裁判官 岩倉広修)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例