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名古屋地方裁判所 昭和53年(行ウ)6号 判決 1986年2月28日

名古屋市南区観音町三丁目六三番地

原告

鬼頭信夫

名古屋市熱田区花表町地先

熱田税務署長

被告

中根好

右指定代理人

荻野志貴雄

遠藤孝仁

和田真

柴田良平

藤塚清治

主文

一、原告の請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告が原告に対し昭和五一年二月二〇日付でした原告の昭和四八年分所得税についての更正及び過少申告加算税の賦課決の各処分(但し、裁決によつて一部取消された後のもの)は、いずれもこれを取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、昭和四八年当時、肩書地において「共立歯科商会」の名称で歯科材料販売業を営んでいたものであるが、昭和四八年分(以下「本件係争年分」という。)の所得税について、総所得金額を金三九五万四一二五円、所得税額を金五三万二七〇〇円とする確定申告をしたところ、被告は昭和五一年二月二〇日付をもつて総所得金額を金一〇三三万八〇〇〇円、所得税額を金三〇七万二〇〇〇円、過少申告加算税額を金一二万六九〇〇円とする更正及び過少申告加算税の賦課決定の各処分(以下「本件各処分」という。)をした。

2  原告は、本件各処分に対し昭和五一年三月一三日被告に対して異議申立をしたが、被告は右異議申立を棄却し、次いで原告は昭和五一年七月九日国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、国税不服審判所長は昭和五三年一一月一六日付をもつて本件各処分のうち、総所得金額金七九三万五七〇一円、税得税額金一九五万六一〇〇円、過少申告加算税額金七万〇六〇〇円を超える部分を取消す旨の裁決をし、同裁決は昭和五三年一月二五日原告に通知された。

3  しかしながら、本件各処分(但し、裁決によつて一部取消された後のもの、以下同じ)は、原告の事業所得金額を過大に認定した違法なものであるから、その取消を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1.2の事実は認める。

2  同3は争う。

三  被告の主張

1  原告は、本件係争年当時、肩書地において「共立歯科商会」の名称で歯科材料販売業(以下「本件事業」という。)を営んでいた者である。

2  原告の本件係争年分の総所得金額は金一〇五四万二四〇八円である(なお、原告の本件係争年分の総所得金額は、本件事業に基づく事業所得の金額と同額である。)。

3  被告は、右金額を実額で算定することができなかつたので、以下に述べる方法によりこれを推計したが、右推計の必要性は次のとおりである。すなわち、

(一) 被告は、被告の係官を原告の所得税の調査のために、昭和五〇年七月下旬から同年九月頃までの間、前後五回にわたり原告方へ赴かせ実地調査を行わせた。そして、右実地調査の際、被告の係官は「原告の所得税については三年間調査がなされていないこと及び申告適否の確認である」と調査理由を開示したうえ、原告に対し、原告の申告に係る事業所得の金額の計算内容を明らかにするよう求め、帳簿資料の提示を求めたがこれを拒否され、右期間中電話等にても再三再四帳簿書類の提示を求めたが、原告は「帳簿書類は紛失焼却した」等と言つて本件各処分に至るまで帳簿書類を提示しなかつた。

(二) その後、原告は本件各処分に対する異議申立についての調査段階において、(ア)仕入別明細請求書、領収書、(イ)「金」入金伝票、(ウ)現金売入金伝票、(ハ)得意先売上明細書、(ニ)経費領収書、(ホ)期首、期末在庫表、(ヘ)仕入、雑収入一覧表、(ト)「金」月別表、現金売月別表、得意先名月別表、(チ)経費一覧表の各伝票書類(以下「本件各伝票書類(一)」という。)を異議審理庁に提出したが、右各伝票書類(一)は、

(1) 原告は、前記被告の調査時において「帳簿書類は紛失焼却した」と申述しており、それにもかかわらず、異議調査の際伝票書類が提示されることは不自然であること。

(2) 帳簿書類が過去の営業諸取引について証明力を持つものであるためには、すべての取引が関係書類に基づいて、整理された帳簿に継続的に秩序正しく記録されることが必要であるところ、原告は継続的に秩序正しく記録された帳簿書類を備えつけておらず、また、本件各伝票書類(一)のうち、前記(ホ)、(ヘ)、(ト)の各書類は、継続的に秩序正しく記録されたものでなく、一時期にまとめて記載された一覧表にしかすぎないこと。

(3) 請求書、領収書などの原始記録は、帳簿組織のように資料相互間の関連性が必ずしも明白とはいえず、また、紛失隠ぺいなどが容易であることから、正確な所得金額を計算するうえからは、その正当性が担保されず、信ぴよう性に欠けるものであつて、原始記録を編てつ保存しておいたとしても、現金出納帳等が備えつけてないかぎり、右原始記録の正当性は担保されないこと。

特に、原告は本件事業以外に株式売買をも行い、現金取引をひんぱんに行つているものであるが、このような場合本件事業による現金取引と株式売買による現金取引とを整然かつ明瞭に区分することによつて、本件事業の現金取引(売上、仕入、経費支出など)の正当性が担保されるものである。しかるに原告は現金出納帳すら備えつけていない。

(4) 本件各伝票書類(一)のうち、(イ)、(ウ)、(エ)の各書類には、連続した番号が付されておらず形式的に不備であること。

の各点において信ぴよう性に欠けるものであるから、本件各伝票書類(一)によつて、被告の事業所得金額を算定することはできない。

(三) 以上の状況では、原告の本件係争年分の事業所得金額を正確に把握することができないから、これを推計する必要がある。

(四) また、原告は本件訴訟において、(ア)「売上伝票」、(イ)「入金伝票」、(ウ)「帳簿」、(エ)「売上集金状況表」等の各伝票書類(以下「本件各伝票書類(二)」という。)を提出したが、右各伝票書類(二)も、前記本件各伝票書類(一)と同様の理由により信ぴよう性に欠けるものである。

更に、後記4(八)に記載の計算により明らかなとおり、原告の本件係争年分の仕入金額に期首、期末たな卸表の金額を加減算して得た本件係争年分の売上原価を構成する商品数量と売上伝票等によつて確認できた商品の売上数量との間には開差があるから(このことは、原告主張の仕入金額を前提としても同様である。)、原告の保存する帳簿書類等は実額計算に耐え得ないものである。

(五) 以下、原告提出の本件各伝票書類(一)、(二)が信ぴよう性に欠けるものであることを、具体的に詳論すると、

(1) 本件各伝票書類(一)、(二)には、次のとおりの矛盾が存する。すなわち、

(ア) 現金売上の際に作成される売上伝票(甲第四号証)が存在するのに、右売上計算の基礎となる入金伝票(甲第六号証の二)のないものがあること。

(イ) 売上代金の入金(現金)を日計表(甲第九号証)に計上しているにもかかわらず、入金伝票のないものがあること。

(ウ) 入金伝票(甲第五、六号証)が作成されているにもかかわらず、このことが日計表(甲第九号証)に計上されていないものがあること。

(エ) 経費伝票(甲第一〇号証)及び仕入支払分領収証(甲第一三号証)があるにもかかわらず、このことが日計表(甲第九号証)に計上されていないものがあること。

(2) 本件各伝票書類(一)、(二)中には、後日作成されたものが含まれている。すなわち、

(ア) 日計表は、日々の入金、出金状況を正確に記入することに意義があるところ、日計表(甲第九号証)中には、昭和四八年一二月一〇日の残高は、同年一二月一一日の期首残高に記入されなければならないのに、同年一二月六日の期首残高に記入されている部分が存する。このことからすれば、原告は、日々の取引事実に基づき当該日計表を作成せず、これを後日作成したものと考えざるを得ない。

(イ) 売上伝票(甲第三号証)中には、本件係争年の後である昭和五〇年六月の印刷にかかる用紙を使用したもの(甲第三号証の二五)が存する。

(3) 期首、期末たな卸表(甲第二号証の一、二)は、後期4(二)に記載のとおり、信ぴよう性がない。

(4) 被告は、名古屋国税局直税部長をして、愛知県警察本部犯罪科学研究所長に対し、原告提出の入金伝票(甲第五ないし六号証の二)のうち比較的筆圧痕の鮮明なもののみについて、これが判読方の鑑定を依頼した。その結果(乙第三五号証の二)を一覧性のものにしたのが、別紙一であるが、右鑑定結果からすれば、右入金伝票は、入金後作成されており、また、入金伝票用紙は原告の事業以外に使用されていないのであるから、原告が本件訴訟において証拠として提出した右入金伝票以外にも入金伝票が作成されたことは明らかである。

しかるに、筆圧痕のもととなる入金伝票は、原告提出の入金伝票の中に含まれていない。

更に、原告提出の入金伝票の中には筆圧痕がありながら、判読困難なために鑑定を依頼しなかつたものやボールペンによる場合でも弱い筆圧で記入されたもの、万年筆等で記入され筆圧痕の残らないものが相当数あることから、別紙一以外にも多数の入金伝票が作成されていることが推認される。

なお、被告は、右鑑定を依頼するに際し、原告の了解を求め、その承諾を得ている。

4  原告の本件係争年分の事業所得金額の算出方法は、次のとおりである。

(一) 収入金額 金一億一八四五万一九四二円

右金額は、本件係争年分における原告の売上原価の額(金九六八九万三六八九円)を売上原価率(八一・八〇パーセント)で除して算出したものである。

(二) 売上原価の額 金九六八九万三六八九円

原告の本件係争年分における仕入金額は、別紙二(仕入金額明細表)のとおり金九六八九万三六八九円である。そして、本件係争年の期首、期末のたな卸資産の価額を算定することができず、かつ、原告の本件係争年における事業規模に特段の変化がみられないから、期首、期末のたな卸資産の価額を同額とみなして、右仕入金額をもつて売上原価の額とみなすべきである。

なお、一般に原告のような歯科材料販売を業とする者の売上先である歯科医は、その歯科材料を消費する対象となる患者数に比例して右業者から歯科材料を購入するものであり、右患者数は社会の景況によつてさほど変動するものでなく、数年間においてほぼ一定数であろうと認められるところから、歯科医が右業者から歯科材料を購入する量もほぼ一定であると認められる。

そして、右業者は、過去の年分より特別に売上先である歯科医の件数を増やそうとする場合とか、在庫整理のために特別な販売をするとかの特段の事情のない限り、過去の経験で得た商品販売量を販売時機を損なわない程度に常時保有するよう仕入れを調整することによつて、事業資金の効率化をはかつているところである。

したがつて、右業者のたな卸高は、右に述べた特段の事情のない限り、期首、期末とも同額であると認めるのが経験則に合致するところである。

また、原告の本件係争年分における期首、期末たな卸高を正確に把握することが不可能な理由は、次のとおりである。すなわち、たな卸資産の価額を算定するには、各商品ごとに受払簿等継続した出納記録を作成する帳簿たな卸による方法と、「実地たな卸」という手続に従つて算定する方法とがある。

一般に、「実地たな卸」は、毎年一二月三一日現在において、店舗倉庫等に存在する総ての商品をその存在場所別に品名、品質毎に数量を把握し(品名数が多い場合には特に品名毎にたな卸原票を作成するのが通例である)、一定の評価方法(所得税法四七条、同法施行令九九条以下)により、把握したたな卸資産の種類ごとにこれを評価し、期末たな卸資産の価額を算定する手続きのことをいい、この手続きにより品名数量、単価金額を一覧性のものにしたものがたな卸表で、この金額を合計したものがたな卸資産の価額である。

売上原価算定の正確性は期首及び期末たな卸資産の価額の正確性により担保されるものであるから、たな卸表は実地たな卸の手続きが正確に行われた結果作成されたものでなければならない。

ところで、原告は本件訴訟において、期首、期末たな卸表を提出している(甲第二号証の一、二)が、右たな卸表(以下「本件たな卸表」ともいう。)の品名及び数量は、<1>たな卸資産の種類ごとに受払簿等継続した出納記録を作成していないこと、<2>原告から「実地たな卸」の手続が正確に行われたことを証するたな卸原票などの提示がないこと、<3>原処分の調査時において帳簿書類を紛失・焼却した旨述べているにもかかわらず本件たな卸表が突然提示されたことなどから、真実を表わしたものとはいえない。

また、右「数量」の信ぴよう性は、たな卸資産の種類ごとに売上・仕入の数量が把握されることによつて裏付けされるのであるが、既述のとおり原告が保存している請求書などの原始記録には信ぴよう性が欠けているので、右数量を確認することも不可能である。

更に、たな卸資産の価額は、その者がたな卸資産について選定した評価の方法により評価した金額によると規定されているところ(所得税法四七条、同法施行令九九条以下)、原告は評価の方法を選定していないので、右価額は所得税法四七条一項及び同法施行令一〇二条の規定により最終仕入原価法の方法により評価することとなる(この最終仕入原価法とは、期末たな卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年一二月三一日から最も近い日において取得したものの一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいうものである。

(所得税法施行令九九条一項一号ト)が、本件たな卸表は同一品名であるにもかかわらず単価が異なるものが存するから、最終仕入原価法により評価した金額でないことが明らかであり、また、右方法により評価した金額であるとする資料の提示もなされていない。

従つて、本件たな卸表は信ぴよう性に欠けるものであり、本件たな卸表から原告の本件係争年分における、期首、期末たな卸高を正確に把握することはできない。

(三) 売上原価率 八一・八〇パーセント

右売上原価率は、愛知県下の各税務署(豊橋及び新城税務署を除く)管内において、本件事業と同種の事業を営む青色申告の個人事業者で次に掲げる選定基準に該当する者(以下「同業者」という。)の課税事績を基礎に別紙三(売上原価及び一般経費率表)のとおり算定したものであり、これを本件係争年分における原告の売上原価率とみなしたものである。

<選定基準>

歯科材料販売業を営む個人事業者のうち昭和四八年分の所得税の確定申告について青色申告書を提出した者で、次の(1)及び(2)に該当するもの

(1) 昭和四八年中右の事業を継続して営んでいる者であること。

ただし、次の各号に該当する者は除く

ア 年の中途において開廃業、転業又は業態を変更した者

イ 小規模事業者で帳簿組織が簡易な記帳方法(現金主義)によつている者及び期間損益が明確にされていない者

ウ 更正又は決定処分が行われたもののうち、国税通則法の規定に基づく不服申立て期間及び出訴期間を経過していない者並びに不服申立て又は訴訟中の者

(2) 年間の売上原価の金額が四六〇〇万円以上一億四〇〇〇万円未満の者であること

(四) 一般経費率 四・七九パーセント

右一般経費率は右(三)の同業者を基に別紙三の一般経費率表のとおり算出したものであり、これを本件係争年分における原告の一般経費率とみなしたものである。

(五) 一般経費の額 金五六七万三八四八円

右金額は、本件係争年分における前記収入金額金一億一八四五万一九四二円に、前記一般経費率四・七九パーセントを乗じて算出したものである。

(六) 特別経費 金五三四万一九九七円

右金額は、(1)原告が本件係争年中にその雇用する従業員に支払つた給料賃金(金五二三万一一〇八円)、(2)事業資金借入金に対する本件係争年中の原告の支払利子(金四万一五五三円)、(3)原告が本件係争中事業に使用した建物の減価償却費(金四万二三三六円)、(4)原告が本件係争中事業のために賃借した車庫の賃料(金二万七〇〇〇円)の合計額である。

(七) 以上のところから、原告の本件係争年分における事業所得の金額を算出すると、別紙四のとおり金一〇五四万二四〇八円となる。

(八) なお、仮に、本件各伝票書類(一)、(二)が信ぴよう性を有するものとして、右各伝票書類から原告の本件係争年分の事業所得の金額を計算すると、本件各処分における金額を上廻るから、この一事をもつても、本件各処分が正当であることは明らかである。すなわち、

(1) 本件係争年分における仕入金額は金九六八九万三六八九円(右金額は、前記のとおり実額である。原告は右と異なる金額を主張するが、その差額は殆んどない。)を基礎とし、これに期首たな卸表(甲第二号証の一)、期末たな卸表(甲第二号証の二)の各金額を加減算し、原告の本件係争年分における売上原価を算出すると、別表1の差引売上原価金八七五四万二〇三六円となる。

(2) 右仕入金額を仕入伝票(甲第一二号証)、請求書(甲第一六号証)により歯科用「金」(以下「ゴールド」という。)、KIK、キヤストウエル及びその他の商品の五つに区分し、期首たな卸金額、期末たな卸金額についてもそれぞれ同様に区分したうえ各商品ごとの売上原価を算出すると、別表2の「差引原価<エ>」の金額となる。

なお、その他の商品の仕入金額は、仕入金額から、ゴールド、機械、KIK、キヤストウエルの各仕入金額を控除して算出した。

(3) 次に売上伝票等(甲第三号証、甲第四号証等)によつて個別に各商品別にそれぞれの売上原価に対応する売上金額を把握し、なお売上の確認できない商品については、売上の確認できた商品の平均売上単価、又は平均差益率によつて売上金額を推計し、各商品別の売上金額を算出すると、別表2の「売上又は収入金額<オ>」の額となる。これを各商品毎に説明すると、

まずゴールドの仕入数量は一五〇二枚(甲第一二号証の一六、一九及び三五、甲第一三号証、甲第一五号証)で期首在庫はなく期末在庫は四五枚(甲第二号証の二、七枚目に「三金G」二枚、「坂G」に四三枚」あるので、本件係争中に販売された数量は一四五七枚となる。

これに対して、ゴールドの売上数量は乙第二九号証で九九九枚(乙第二九号証に九九八枚とあるのは集計の誤りである)、甲第七号証で二八五枚、甲第四号証の一で五枚、甲第三号証の四九で二枚、甲第三号証の一八で二枚、合計一二九三枚が明らかであり、その売上金額五五一万九九五〇円が確認できるので右一四五七枚と一二九三枚との差一六四枚は売上先及び売上金額の確認ができない。

したがつて、当該部分については販売の確認できたものの平均売上単価四二六九円(五五一万九九五〇円÷一二九三枚)を適用して計算すると七〇万〇一一六円となり、結局、ゴールドの売上金額は右五五一万九九五〇円と七〇万〇一一六円の合計額六二二万〇〇六六円となる。次に、機械については、原価販売(島田商店、鳥居商店に対し、仕入金額と同額で販売しているもので、甲第三号証の二一、二二により把握されるもの。)と原価販売以外の分(一般販売分)とに分類したうえ、売上原価に対応する売上の確認を行つた(別紙五No.1~No.6)結果、(ア)原価販売分の売上金額は五一二万七二五〇円、(イ)原価販売以外の分(一般販売分)のうち、販売先の確認できるもの二一五八万四〇五〇円(別紙五No.1~No.3)となつたが、甲号証からでは、販売先つまり売上金額の確認できないものが仕入金額で二一二万八七〇〇円あり、この部分については売上の確認できたものにかかる原価率(売上金額に対する原価の割合)〇・八四五一で逆算推計すると売上金額は二五一万八八七三円となる。したがつて、機械の売上金額は右五一二万七二五〇円、二一五八万四〇五〇円及び二五一万八八七三円の合計二九二三万〇一七三円となる。次に、KIKの仕入数量は九八七枚でたな卸表には期首在庫、期末在庫ともにないから、当期中に販売されたものは九八七枚となるが、売上の確認できるものは、甲第六号証の二により六七一枚、金額は合計四五五万七六〇〇円であつて、右九八七枚と六七一枚の差三一六枚は販売金額が確認できない。

当該三一六枚については本件係争年中にKIKの仕入単価の変動があるが、当該三一六枚の仕入単価は、<1>五五〇〇円のもの(甲第一二号証の一五)五枚、<2>五九五〇円のもの(甲第一二号証の一五及び同号証の一八)三七枚、<3>六七五〇円のもの(甲第一六号証の三)二七四枚であり、<1>の仕入単価のものは六〇〇〇円、<2>の仕入単価のものは六六〇〇円、<3>の仕入単価のものは七六〇〇円で売上げられているから、それぞれ右の金額を数量に乗ずるとその売上金額は<1>が三万円(六〇〇〇円×五(枚))、<2>が二四万四二〇〇円(六六〇〇円×三七(枚))、<3>が二〇八万二四〇〇円(七六〇〇円×二七四(枚))となり、その合計金額は二三五万六六〇〇円となる。したがつて、KIKの売上金額は、右売上の確認できた分の金額四五五万七六〇〇円と推計により算出した金額二三五万六六〇〇円との合計六九一万四二〇〇円となる。次にキヤストウエルの仕入数量は二二〇個(甲第一二号証の三、同号証の六)であり、期首在庫の六個(甲第二号証の一、一枚目の上から二行目)、期末在庫の一〇個(甲第二号証の二、一枚目の上から二三行目)を加減算すると本件係争年中に販売された数量は二一六個となる。これに対してキヤストウエルの売上金額は甲第三号証の売上書によつて一七七個分一八九万〇六四〇円が確認できる(別紙六)から右二一六個と一七七個との差三九個は売上先及び売上金額の確認ができない。そして、当該三九個については販売の確認できたものの売上の平均単価一万〇六八一円(一八九万〇六四〇円÷一七七枚)を適用して売上金額を計算すると四一万六五五九円となる。したがつて、結局、キヤストウエルの売上金額は右一八九万〇六四〇円と四一万六五五九円との合計額二三〇万七一九九円となる。最後に、その他の商品であるが、その他の商品についても島田商店、鳥居商店に対する原価販売分(仕入金額と同額で販売しているもの)があるので、原価販売分と原価販売以外の分(一般販売分)に区分して右売上原価に対応する売上金額を求めると、<1>原価販売分の売上は、島田商店に対し五三〇万七七六〇円、鳥居商店に対し二二六万〇四九七円の合計七五六万八二五七円である(乙第三一号証の一(原告作成の四八年毎月売上高))が、このうちには、前記機械の原価販売分五一二万七二五〇円が含まれているので、この金額を控除すると、その他の商品の原価販売分の売上は二四四万一〇〇七円となる。<2>原価販売以外の分の売上は、原価販売以外の分の売上原価に次の根拠による本件係争年分の原価率〇・七九八六を適用して算出すると、原価販売以外の分の売上原価は、その他の商品の売上原価の金額四七六〇万八五一〇円から右<1>の売上原価二四四万一〇〇七円を控除した金額四五一六万七五〇三円であるから、これを右原価率で除すると売上金額五六六五万一六一九円が算出され、以上により、その他の商品の売上金額は、原価販売分二四四万一〇〇七円と原価販売以外の分(一般販売分)五六五五万八三五五円の合計五八九九万九三六二円となる。

売上原価率〇・七九六八は、次の根拠による。すなわち、(あ)たな卸表記載のたな卸商品のうち、その他の商品のたな卸計上額は三四九万三四七二円であるが、このうち、実際の売上高が売上書(甲第三、四号証)から抽出できたもの(但し、昭和四八年一月から三月までの三か月分)は、二七六万一九八一円でその差益金額は七一万一六〇〇円である。(い)次に例えばたな卸表には「セツト」で計上されているが、売上はバラで行われる等の理由でたな卸表記載の品目がそのまま売上書にはなかつたが、(あ)で同じ商品の売上実績が把握され、その差益率を適用して差益金額がほぼ的確に計算できるものがその他の商品のたな卸計上額のうち、四二万六一九四円あり、その差益金額は九万二六〇六円である。そして、(う)右(あ)及び(い)の金額を合計すると、その他の商品のたな卸計上額合計三四九万三四七二円のうち売上高が抽出又は把握できたものは三一八万八一七五円で全体の九一パーセント強に達し、これに対応する差益金額は、八〇万四二〇六円であり、したがつて、その売上金額は三九九万二三八一円(右三一八万八一七五円と八〇万四二〇六円の合計額)となる。(え)右(う)の売上高三九九万二三八一円をもつて差益金額八〇万四二〇六円を除すると差益率は〇・二〇一四となり、これを一より差引いた〇・七九八六が原価率である。

右の方法によつて算出された売上金額の総額は、別表1の「売上金額e」のとおり一億〇三六七万一〇〇〇円となり、その結果原告の事業所得金額は、k欄記載のとおり一〇九六万四五一二円となる。

5  右推計方法は、次のとおり合理性を有する。すなわち、

(一) 原告の事業所得の金額の算出の基礎となる収入金額については、前記のとおり原告提出の本件各伝票書類(一)、(二)によつてこれを算定することはできないのであり、他面、原告の取引はその取引先が多数に及んでいるのみならず、現金取引が主体であるので、本件各伝票書類(一)、(二)及び取引先を調査したところで真実の収入金額を把握することは到底不可能である。

(二) 他方、原告の仕入金額については、仕入取引先の数が比較的少ないこと、取引先の大部分が会社でありその記帳も正確であること等から被告の調査によつて仕入金額を実額で把握することが可能であつた。そして、一般に所得金額算定の基礎となる収入金額と必要経費との間には相関関係、対応性が存すると考えられるところ、原告のような歯科材料販売を業とする者にあつては、必要経費のうちでも売上原価は収入の発生原因たる販売に直接関連する主要な必要経費であつてその金額と収入金額との対応性は特に強いものといえるから、仕入金額を売上原価とみなし、推計計算の基礎とする方法は原告の所得金額を算出するに当たり、最もよく所得を反映しているものである。

(三) 右のとおり、原告の所得金額を算出するに当たり、売上原価の額を推計計算の基礎とする方法が合理的であるところ、売上原価率及び一般経費率について推計の基礎とした同業者の選定においても、前記選定基準において、原告の売上原価の額(九六八九万三六八九円)を基にし、そのほぼ〇・五倍の上下の範囲内にあることを要件とし、売上原価の額を基にしてその同規模性を求めているから、右同業者の選定は合理的である。

(四) 更に、推計が合理的であるためには、その推計に用いられた資料が正確であることを要することは勿論であるが、本件の同業者はいずれも所得税法一四三条による青色申告者であり、その申告が正確であることは法的に担保されているものであるから、本計推計に用いられた基礎資料は正確である。

6  以上のとおりであるから、原告の本件係争年分の総所得金額は金一〇五四万二四〇八円であり、本件各処分はこれを下廻る金額を前提とするものであるから、本件各処分は適法である。

四  被告の主張に対する原告の認否

1  被告の主張1は認める。

2  同2は争う。但し、原告の本件係争年分の総所得金額が本件事業に基づく事業所得の金額と同額であることは認める。

3  同3は争う。同3(一)の被告の係官による原告の所得税調査の経緯は後記五1(一)のとおりであり、原告の本件係争年分の所得を実額で算出し得ること、本件各伝票書類(一)、(二)が信ぴよう性を有するものであることは後記五(二)、(三)のとおりである。

4  同4のうち、(六)は認める。その余は争う。但し、同4(二)の仕入金額は、原告主張のそれと殆んど一致するから、敢えてこれを争うものではない。同(八)の計算が不当なことは後記五1(四)のとおりである。

5  同5は争う。被告の推計に合理性がないことは後記五2のとおりである。

6  同6は争う。

五  被告の主張に対する原告の反論

1  推計の必要性について

(一) 本件係争年分の原告の所得調査について被告の係官が原告とその内容に関し面接したのは一度だけであり、しかも短時間であつた。

原告は右面接以降に被告の係官と再度面接する機会が存すると思い、その機会ないしは被告からの連絡を待つていた。

しかるに被告はいきなり原告の取引先等に対する反面調査を開始して原告の所得金額を推計するに至つたのであり、しかも、右反面調査は、原告が被告の係官に対して調査理由の開示を求めたのに対して何らの回答もないまま開始されたものである(これは質問検査権の濫用である。)。従つて、被告が調査段階において原告の所得金額を実額で把握できなかつたことは、被告の責に帰すべきであり、右実額で把握し得なかつたことは推計を必要とする理由とはならない。

また、原告は、本件各処分に対する異議申立及び審査請求の段階で、左記伝票書類を被告及び国税不服審判所長に対し提出している。

(1) 仕入先別明細請求書、領収証

(2) 「金」入金伝票

(3) 現金売入金伝票

(4) 得意先売上明細書

(5) 経費領収書

(6) 期首、期末在庫表

(7) 仕入、雑収入一覧表

(8) 「金」月別表、現金売月別表、得意先名月別表

(9) 経費一覧表

(二) 原告の本件係争年分の事業所得は、次のとおり金三八五万八九七三円であり、右は原告の保存している帳簿書類から実額計算することが可能である(右計算の根拠である帳簿書類は本件訴訟においてすべて甲号証として提出済みであり、右甲号各証と原告主張額との対応関係は別表三のとおりである。なお、同別表中、((鳥居関係))とあるのは、原告が訴外鳥居に原価販売した部分である。また、同表中(1)売上金額の細内訳C現金については甲第四号証の一ないし八がすべてではない。売上金額自体は、甲第六号証の一、二によつて計算可能であるから、売上伝票の欠落は原告の事業所得の計算には関係がない。)から、本件において推計の必要は存しない。

(1) 収入金額 金一億〇〇八〇万八二三七円

(イ) 売上金額 金九七一〇万〇〇五四円

(ロ) 雑収入 金 三七〇万八一八三円

なお、売上金額の内訳は次のとおりである。

a 得意先別売上金額 金七八五七万二八七〇円

b 歯科用「金」売上金額 金五五二万四四五〇円

c 現金売上額 金一二六三万七二二四円

d 売上計上もれ 金三六万五五一〇円

(2) 売上原価 金八七七三万一九〇九円

なお、右売上原価は、次の仕入金額に期首たな卸金額を加算したものから、期末たな卸金額を差引いた額である。

a 仕入金額 金九七〇八万三五六二円

b たな卸金額

期首 金三四三万九八八四円

期末 金一二七九万一五三七円

(算式 仕入金額97,083,562円+期首たな卸金額3,439,884円-期末たな卸金額12,791,537円=売上原価87,731,909円)

(3) 一般経費 金三五一万〇〇二八円

右一般経費の内訳は、次のとおりである。

(イ) 公租公課 金二七万八九七〇円

(ロ) 荷造運賃 金三三〇〇円

(ハ) 水道光熱費 金四万二四九七円

(ニ) 旅費光熱費 金五四六〇円

(ホ) 通信費 金二一万一七三一円

(ヘ) 広告宣伝費 金一〇万七一〇〇円

(ト) 接待交際費 金一〇六万〇八八七円

(チ) 損害保険料 金一一万三六二八円

(リ) 修繕費 金二七万五一六〇円

(ヌ) 消耗品費 金八五万六六一九円

(ル) 福利厚生費 金一八万三八五〇円

(ヲ) 減価償却費(建物以外) 金二八万九五一二円

(ワ) 駐車代・車リース料 金六万九五六九円

(カ) 雑費 金一万一七四五円

(4) 特別経費 金五三四万一九九七円

(三) 本件各伝票書類(一)、(二)は、次のとおり信ぴよう性を有する。

(1) 日計表(甲第九号証)について

原告が、日計表を作成した意図は、経費に関しては伝票として残るものが多く集計し易いので、伝票として残り難いもの(現金支払経費、現金売上、その他の現金出納)の流動を漏れなくしようと試みたものである。加えて、帳簿不備の補完と他人の勧めにより記帳練習としての意味もあつた。そのため、本件係争年の昭和四八年四月九日以降の取引分についてのみしか記帳がされていないのである。従つて、日計表自身は不備不正確なものであり(例えば、不慣れなため、仕訳に窮した科目などは、その日のうちに解決がつかず、そのままになつてしまい、日計表に記入しないものも多くある。)、右日計表と他の伝票書類との間に矛盾が存するのはむしろ、当然であつて、原告も右日計表を実額計算の根拠としているものではないから、右日計表の不備及び他の伝票書類との矛盾は、他の伝票書類の信ぴよう性に影響を与えるものではない。

(2) 期首、期末たな卸表について

期首、期末たな卸表が信ぴよう性を有することは、後記2(一)に記載のとおりである。

(3) 入金伝票の筆圧痕について

被告主張の入金伝票の筆圧痕についての鑑定結果(乙第三五号証の二)は、その採証方法が不当であり、原告が右書証の証拠能力を争う。すなわち、被告はたまたま甲第五ないし第六号証の二の原本が手中に帰したことを奇貨として、その主張の鑑定を依頼したものであり、本来右の如き鑑定は裁判所による検証の方法によるべきものである。

また、右鑑定結果には、次の疑問がある。すなわち、<1>別紙一の順号8について、乙第三五号証の二は、科目欄の「柴」を強い筆圧痕、金額欄の「800」をやや弱い筆圧痕としているが、そうとすれば、右の「柴」と「800」とが同一枚数上からの筆圧痕文字とは言えないことは明らかである。<2>別紙一の順号28の「中本1900」は、日計表(甲第九号証)の昭和四八年七月二日分に記載されている中本四九〇〇に該当するものであり、これが「1900」と判読されていることは鑑定内容が不十分であることの証左である。<3>別紙一の順号18は、甲第六号証の二中の入金伝票(昭和四八年五月二日付のもの)の金額欄一行目の「160460」の下にあつたものであるが、これを一六〇〇〇と判読したことは鑑定結果の精度が必ずしも高くないことを示すものである。

更に、原告は、伝票をメモ代りに使用することもあり、或いは書き損じの場合や、顧客から後に伝票の氏名を書き直してくれるよう要求されたり等伝票の書き直しをする場合もあるのであるから、筆圧痕が残存しているからといつて、常にそれに相応する伝票が存在するものと断定できるものではない。

加えて、鑑定結果においては筆圧痕文字の筆跡が明らかにされておらず、入金伝票(甲第五ないし第六号証の二)の原本が熱田税務署、国税不服審判所、被告代理人の手中に長期間存したことを考えれば、右伝票に残る筆圧痕を右保管者が故意に作出することも不可能ではないし、右筆圧痕に対応する商品が裏付けされない限り、右鑑定結果は信用し得ない。

(四) 被告は、本件各伝票書類(一)、(二)から実額計算をしても本件処分における金額を上廻る旨主張するが、右計算はその前提を誤るものであるから、失当である。これを具体的に反論すると、

(1) ゴールドについて

被告はゴールドのうち一六四枚の売上が確認できない旨主張するが、右一六四枚は、原告が本件係争年中(三月末から四月)に行つた「謝恩セール」において売上げたものである。

右「謝恩セール」において、原告はゴールド五枚及びパラジウム一〇本を一セツト(セツト代金金一〇万四〇〇〇円)として合計三八セツトを売上げ、これを伝票処理上はゴールド単品として仕訳をしなかつたためにゴールドの売上枚数が不足しているのである。

右「謝恩セール」における売上げは、掛売分として一六五枚が得意先別売上金額に、現金分として二五枚が現金売上金額に計上され(セツト価額にて計上されている。)ている(なお、右「謝恩セール」における売上一九〇枚と右被告主張の売上が確認できない一六四枚との差の二六枚は仕入計上もれである。)。

(2) 機械について

まず、被告主張の一般販売分のうち販売先の確認できるもの(別紙五No.1~No.3)については、同別紙No.1の六月一三日仕入のエースコンプレツサーM10(仕入先三栄技研、仕入金額金一〇万八八〇〇円)は、藤塚昭に対して販売したものではなく、上様に対して金一五万円にて販売したものであり(甲第六号証の二)、同別紙No.2の五月二四日仕入のプラスチーフ(仕入先鈴木歯科器材(株)、仕入金額金四万円、但し、仕入日は真実は五月二八日である。)は、五月二六日に河村に金五万円にて販売したものであり(甲第三号証の八九)、また、被告が原価販売分として計上したもの(同表No.4)のほかに、次の原価販売分が存する。

<省略>

従つて、被告の計算は、その前提を欠くものである。

次に、同別紙No.6の機械のうち売上が確認できないものであると被告が主張するものは別表四のとおりその殆んどの売上が確認できるものであり、同表中売上げが確認できないものは、<1>原告が訴外鳥居商店に原価販売したもの(同表の順号3-甲第一七号証)、<2>機械に含まれず、かつ、商品別の受払いが不可能なもの(同表の順号24.26の一部、ラバーロイドエコノミーパツクとは印象材一二個入りの商品であり、セツトで仕入れ、販売に際してバラ売りにし或いはサービス商品として顧客に提供する消耗品である。)のみである。

なお、右表の順号6.7は、同各号に記載の商品を吉沢に売却し、吉沢から中古ユニツト二台及び電動椅子二台を買入れたのを相殺勘定としたものであり、右中古ユニツト二台及び電動椅子二台は右表順号20に記載のものである。

(3) KIKについて

被告は、KIKのうち三一六枚の売上げが確認できない旨主張するが、右三一六枚のうち二三〇枚を本件係争年の翌年に販売している(甲第一八号証の一、二)から、右二三〇枚は売上げが確認できないものに含まれない(なお、右二三〇枚は期末在庫表には計上もれとなつている。)。そして、残余のうち三三枚を原告は訴外鳥居商店に原価販売しており、他に一五枚の売上げの確認も可能であるから、被告の計算は失当である。

(4) キヤストウエルについて

被告はキヤストウエル三九個の売上げが確認できない旨主張するが、別表五のとおりうち二六個の売上げを確認することができるから、被告の計算は失当である。

(5) その他の商品について

被告は売上原価率を用いてその他の商品の売上金額を算出しているが、<1>在庫商品の中には年式が需要に合わない等の理由で売れ残つている商品、サービス商品として無償で提供する商品が含まれていること、<2>被告は、原告の売上書(甲第三、四号証)のうち三か月分を基礎として計算をなしているところ、右期間内に販売された商品は在庫商品全体からすると極く一部にしかすぎないこと、<3>右売上中には、在庫商品の販売のみならず、本件係争年中に仕入れた商品も含まれていること、<4>在庫商品の売上単価は期首におけるよりも期末における方が、どちらかといえば下降するのが商品販売の実態に即していること、<5>その他商品中には原価率の極端に高い商品(例えば、パラジウムの本件係争年における利益率は僅かに一・四三パーセントである。)、<6>原価率算出の根拠となつている売上高が抽出又は把握できたものとされる金額が全体の金額に対して極めて僅少であること、を考慮すれば被告主張の売上原価率の算定は不当であり、被告の計算は失当である。

2  推計の合理性について

(一) 被告は、仕入金額をそのまま売上原価の額として原告の収入金額を推計するが、売上原価の額は、期首たな卸高と当期純仕入高の合計額から期末たな卸高を控除して算出するのが会計上の原則であり、期首、期末のたな卸高に変化がないとみなすことは、在庫に関する商取引の実情を無視するも甚しいものであつて、商取引界にあつては、仕入れた商品が飛ぶように売れる年もあれば、多くを仕入れたに拘らず売れ行きがはかばかしくなく在庫を抱えて四苦八苦する年もあるのが常識である。そして、本件係争年は、いわゆるオイル・シヨツク前の低迷期であり、原告の事業は多額の在庫を抱えて極めて低調であつた。そのうえ、本件係争年における仕入れは年度末近くの仕入れが多かつたので在庫を多く抱えていたのであるから、仕入金額をそのまま売上原価の額とみなすことは不当であるというべきであつて、各年度における所得実態が浮動的である以上、ある特定の係争年分についてのみ在庫を斟酌しないことは、場合によつては二重課税の危険性さえ包蔵するのである。

従つて右を前提とした被告の推計方法は合理性がない。

また、本件たな卸表に信ぴよう性がない旨の被告の主張は何ら理由がない。

原告は毎年一二月三一日に商品のたな卸を実施しており(実地たな卸)、たな卸原票を作成せず直接たな卸表に記入する方法によついてるから、たな卸原票が存しないからといつて本件たな卸表の信ぴよう性を否定される筋合ではない。被告は、本件たな卸表中に同一商品について単価が異なることがあることを信ぴよう性に欠けることの根拠とするが、<1>たな卸の際に同一商品が一群となつており、それとは離れた箇所に極く少量置いてある場合、その単価を把握するについて、一群の商品とは異なつた価額をたな卸表に記入してしまうことは応々にして起こり得ることであること(このことは本件たな卸表中の単価の異なる四七品目の数量に徴すれば((いずれも多数の商品と、極く少量の商品とが異なつて記入されている。))明らかである)。<2>本件たな卸表中の単価が異なる商品について、その多数の商品について記入されている単価に統一してたな卸額を算出した場合、その最高額に統一してたな卸額を算定した場合のいずれの場合にあつても、本件たな卸表によるたな卸金額全体に比して、一パーセント未満の増加額にしかならないのであるから、右単価のバラツキは総体としてたな卸総額に殆んど影響がないこと。

以上の点からすれば、本件たな卸表は、客観的にもほぼ正確に行われたものというべきである。

なお、原告は本件係争年の前年及び翌年においても本件係争年と同様のたな卸方法によつて所得の計算を行つており、いずれも所轄税務署によつて認められているのであるから、仮に原告のたな卸評価方法が最終仕入法でないとしても、個別法(所得税法施行令九九条一項一号イ)によつたものとして暗黙裡に所轄税務署によつて認められたものというべきである。

(二) 被告は原告の売上原価率、一般経費率について、原告と同業の個人事業者を選定してこれを算定しているが、右の如き方法による推計が合理性を有するためには、右同業者の選択が合理的になされていることが不可欠の前提となるべきところ、被告主張の選定基準中、「年間売上原価の金額が金四六〇〇万円以上一億四〇〇〇万円未満であること」との基準は、奈辺に合理的根拠が存するのか不明であり、また、右の如き方法による推計は、更に選定された同業者について、所得に影響を及ぼす営業規模、営業内容、立地条件等の諸条件を原告のそれと比較して両者の類似性を明確にしたうえで、これを推計の基礎とすべきところ、被告の推計にはこれが明確性は些かも見受けられない。のみならず、被告が選定した同業者の氏名は、その提出にかかる書証によつては全く確知することができないのであつて、原告は右同業者の実在性、データの正確性及び原告との類似性の存在を確認することは不可能である。しかも、被告が選定した同業者の売上原価率及び一般経費率の各数値(別紙三売上原価率表、一般経費率表記載のもの)は少なからずバラツキがみられ、かかる数値を被告は単純平均して、推計を行つているのである。

以上の諸点からすれば、被告の推計方法には合理性がないものというべきである。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録調書、証人等目録調書に各記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因1.2の事実は当事者間に争いがない。

そこで。原告の本件係争年分における事業所得の金額について判断する。

二1  まず、被告は、原告の本件係争年分の事業所得の金額を推計により主張するのに対し、原告は右推計の必要性を争い、被告の税務調査が不充分であると主張するので、まず、本件各処分時における推計の必要性について検討するに、証人間瀬利則(第一回)、同竹内鉱司(第一回)の各証言、原告本人尋問の結果により成立を認め得る甲第二二号証及び同尋問の結果によれば、本件各処分をなすに先立ち、被告の部下職員が原告の本件係争年分の所得金額を調査する目的で、少なくとも二回原告方を訪れ、原告に対して本件係争年分の原告の帳簿書類の呈示を求めたこと、原告は右調査に対してこれに応じることなくその帳簿書類の呈示を求めたこと、原告は右調査に対してこれに応じることなくその帳簿書類の呈示をしなかつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実からすれば、原告は被告の税務調査に非協力的であつたというほかはないから、被告が原告の本件係争年分の所得金額を把握するについて推計をなす必要が存したことは十分これを肯定することができる。

原告は、被告の部下職員は前記調査につきその調査理由を開示しなかつた旨主張するが、証人間瀬利則の証言(第一回)によれば、被告の部下職員において右調査をなすに際して、原告について調査をなす理由は三年間調査をしていないこと及び申告適否の確認にある旨説明したことが認められる(右認定を左右するに足りる証拠はない。)ところ、右程度の調査理由の開示がなされた以上、原告の前記調査に対する非協力が何ら正当化されるものではないから、右原告主張は失当である。

2  次に、原告は、原告の本件係争年分の所得金額は、原告の保存している帳簿書類から実額計算が可能である旨主張するので、右点について検討する。

本件において提出されている本件係争年分における原告の帳簿書類は別表六の「帳簿書類」欄に記載のとおりであり、右各帳簿書類等がいかなる帳簿書類であるかに関する原告本人の供述の要旨は同表の「原告の説明」欄に記載のとおりであるところ、右各帳簿書類のほかは、原告の保存にかかる帳簿書類が存しないことは、弁論の全趣旨によりこれを認める。

3  ところで、帳簿書類が過去の営業諸取引について証明力をもつものであるためには、すべての取引が原始書類に基づいて整理された帳簿に継続的に秩序正しく記録される必要があることはいうまでもないところであり、また、帳簿書類作成の基礎となる売上伝票、入金伝票等の原始書類については、帳簿書類のように資料相互間の関連性は必ずしも明白ではないうえ、紛失隠ぺいが容易であるから、右の如き原始書類が編てつ保存されていることは、直ちに右原始書類に基づいてされる計算に信ぴよう性を与えるものでないことも勿論である。

そこで、右観点から、別表六記載の帳簿書類(同表番号6.7.8.12.14.16.19ないし22)をみるに、(ア)別表六番号7の売上集金状況表、同番号19ないし22の各一覧表は、いずれも昭和四八年一月から一二月について各月毎に一括した金額(売上集金状況、現金売上、雑収入、仕入れ等の各金額)を記載したものであり、右各一覧表と前記各原始書類との関係は必ずしも明らかでない(但し、同番号22の「四八年経費一覧表」は除く。)のみならず、右各一覧表が少なくとも各月単位以上の間隔をもつて一括して作成されたものであることはその記載自体から明らかであるから、右各一覧表をもつて、前記の整理された帳簿とみることはできない。(イ)同番号8の日計表が正確性を有しないものであることは、原告の自認するところである。(ウ)同番号12の帳簿は、原始書類から直接、一括して作成されたものであるから、これをもつて、前記の整理された帳簿とみることはできない。(エ)同番号6.14.16.の各帳簿はいずれも原告の従業員である鳥居が同人の計算により原告名義で行つた取引(鳥居分)にかかる仕入帳簿及び得意先別売上帳簿であることは原告の自認するところであり、右各帳簿が原告の仕入及び売上のすべてを記録しているものでない以上、これを前記の整理された帳簿とみることができないことは勿論である。

従つて、別表六の番号1(期首、期末たな卸表)及び10(経費台帳)から原告の本件係争年分における事業所得を実額で計算することができないことはもとよりであるから原告の保存する各帳簿書類から原告の本件係争年分における事業所得を実額で計算すること不可能というべきである。

また、右各原始書類(別表六番号2ないし5.9.11.13.15.17.18.)についてこれをみても、(一)売上伝票(別表六番号3)には欠落が存することは原告の自認するところであり、逆に右売上伝票が存在するのにもかかわらず入金伝票(同番号5)が存しないものがあることは弁論の全趣旨によりこれを認めることができ、(二)ゴールドの仕入れに伝票もれが存することは原告の自認するところであること、(三)原告自身の主張によつても前記各原始書類からでは、商品別或いは数量による受払いが可能であるにもかかわらず売上が確認できないもの-機械及びKIKのうち鳥居商店販売分及びキヤストウエルの一部-が存すること等の諸点に照らせば、右各原始書類は、原告が本件係争年度において行つたすべての取引につき作成された伝票類を細大漏らさず保存し、これを編てつしたものでないことは明白である。

4  そうすると、原告の本件係争年分の事業所得の金額を実額で計算することは現在においてもできないから、これを推計する必要が存するというべきである。

三1  そこで、以下被告の推計方法の合理性について検討する。

2  収入金額について

(一)  原告の本件係争年分の収入金額(売上金額)を実額によつて把握することができないことは前説示から明らかというべきところ、被告は、右収入金額を本件係争年分における原告の売上原価の額を売上原価率で除して算出している。

そこで、右売上原価の額についてまず検討するに、成立に争いのない乙第三号証ないし第二八号証及び弁論の全趣旨によれば、原告の本件係争年分における仕入金額(実額)は金九六八九万三六八九円であることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない(原告主張の仕入金額は右金額をやや超過するが、その根拠である原始書類に信ぴよう性がないことは前説示のとおりである。)。

そして、売上原価の額は、仕入金額に期首たな卸金額を加算した額から期末たな卸金額を差引いた額であるから、期首期末各たな卸金額について実額計算が可能か否かについてみるに、別表六番号1の期首期末各たな卸表には次のとおり信ぴよう性がない。

すなわち、原告本人は右各たな卸表は、実地たな卸の方法により原告とほか二、三名の従業員がたな卸を行つた結果を記載したものである旨供述するが、実地たな卸の際に在庫品の品名が多い場合(原告の在庫品の品名が多岐にわたることは右各たな卸表記載の品名が多岐にわたることから明らかである。)には、品名毎にたな卸原票の如き補助票を使用してその数量を把握するのが通例であると考えられる(右の如き方法によるのでなければ、同一品名毎に整然と在庫されているのでない限り、品名毎の数量の把握は困難である。)のに、右の如き補助票が作成、使用された形跡は全くなく(却つて、原告は直接右各たな卸表に数量を記入する方法によつた旨供述する。)、従つて、そもそも右各たな卸表に記載の品名毎の数量が正しく把握されたものであるかは疑問であるうえ、現に、右各たな卸表に記載の中には同一品名の商品が数箇所に記載されている例も存する(このことは当事者間に争いがない。)のであり、また、期末たな卸表(甲第二号証の二)中にゴールド二三〇枚が記載もれとなつていることは原告の自認するところである。そうしてみると、右各たな卸表に記載の数量に信ぴよう性があるとはいえない。一方、原告はたな卸商品の評価方法を選定していない(弁論の全趣旨によりこれを認める。)から、最終仕入原価法の方法によりこれを評価すべき(所得税法四七条一項、同法施行令一〇二条)ところ、右各たな卸表の記載中には、同一品名であるのにもかかわらず単価が異なるものが存する(このことは当事者間に争いがない。)のであるから、たな卸商品の価格についても信ぴよう性がないというべきである。原告は、この点について原告は個別法を採用しており、所轄税務署においてこのことは黙示的に承認済みである旨主張するが、右事実を認めるに足りる証拠は何ら存しないのみならず、帳簿たな卸の方法によつていればともかく、原告の供述する実地たな卸の方法でどのようにして個別法により商品を評価し得るか不可解というほかはなく、原告の右主張は失当である。更に、前説示の如く原告は入出庫に関する帳簿を備付けておらず、仕入帳簿、売上帳簿の如き帳簿も完備していないのであるから、右各たな卸表が正しく記載されているから確認は不可能であつて、以上のような事情からすれば右各たな卸表には信ぴよう性がないものというべきである。

そうすると、前記仕入金額に期首たな卸金額を加算した額から期末たな卸金額を差引いた額を実額により計算することは不可能であるというべきである。

ところで、一般に原告のような歯科材料販売を業とする者の売上先である歯科医は、その歯科材料を消費する患者数に比例して右業者から歯科材料を購入するものと考えられ、右患者数は、社会の景況による影響はさほどなく、数年間においてほぼ一定数であろうと考えられるから、歯科医が右業者から歯科材料を購入する量もほぼ一定であると考えられる、そして、右事情からして右業者は特段の事情のない限り過去の経験で得た商品販売量を販売時機を損なわない程度に常時保有するよう仕入れを調整することによつて事業資金の効率化をはかろうとすることが通常であると考えられる。

そうすると、原告のような歯科材料販売を業とする者のたな卸高(在庫高)は、特段の事情のない限り、期首、期末とも同額であるとみるべきである。

原告はこの点について本件係争年はオイル・シヨツク前の低迷期で業績が低調のうえ、本件係争年の場合は年度末近くの仕入れが多かつたため期末在庫が多かつた旨主張するが、本件において、オイル・シヨツク前の社会状況が原告の歯科材料販売業に何らかの影響を与えたものとみるべき証拠は何ら存しないし、本件係争年度における原告の仕入れ状況がその前年度と比較して特に年度末仕入れが多かつたか否かは、右前年度における仕入れ状況を判断すべき証拠の何ら存しない本件においては不明といわざるを得ないから、原告の主張は失当である。

なお、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は本件係争年中においてゴールド五枚及びパラジウム一〇本を一セツトとする謝恩セールを行つたことが認められるが、右謝恩セールの規模からして(原告の主張によれば合計三八セツトの売上げであるところ、右を前提としても、弁論の全趣旨によれば、右ゴールド及びパラジウムは本件係争年全体のゴールド及びパラジウムの売上げの一割前後であると認められる。)、右謝恩セールを行うために特別に本件係争年前に仕入れたものと認めることはできないから、右謝恩セールを行つたことは前記特段の事情に該当するものとは認め難い。

以上のとおりであるから、原告の売上原価の額は前記仕入金額と同額の金九六八九万三六八九円であると推認すべきである。

次に、売上原価率について検討するに、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証、第二号証の一ないし一七によれば、愛知県下の各税務署(名古屋中税務署ほか一六税務署)管内において本件事業と同種の事業を営む青色申告の個人事業者で被告の主張4(三)掲記の選定基準に該当する者(同業者)の昭和四八年分の課税事績は別紙三(売上原価及び一般経費率表)記載のとおりであること(但し、同表は、右乙第二号証の四、六、一二、一四、一六に記載の各納税者を売上金額の多い順序に表にしているものである。)右同業者の平均売上原価率は八一・八〇パーセントであることの各事実を認めることができるところ、右売上原価率を本件係争年分における原告の売上原価率として原告の売上(収入)金額を算定すると金一億一八四五万一九四二円となる。

(計算式 売上原価の額9689万3689÷売上原価率81.80≒1億1845万1942 但し1円未満切捨)

原告は右推計方法について、(ア)前記選択基準中の「年間売上原価の金額が金四六〇〇万円以上一億四〇〇〇万円未満であること」との基準が合理的根拠のないこと、(イ)選定された同業者について原告との類似性が明らかでないこと、(ウ)原告には被告主張の同業者の実在性、データの正確性及び原告との類似性の存在を確認できないことを理由として、右同業者率による推計には合理性がない旨主張する。

しかしながら、(ア)原告の売上原価の額は金九六八九万三六八九円であるところ、前記売上原価の額についての選定基準は、ほぼ原告の売上原価の額の上下それぞれ〇・五倍の範囲を上限及び下限としているのであつて、売上原価の額を基準として原告との同規模性を確保する点において右の選定基準が合理性を有することはいうまでもないことである。また、(イ)右のとおり選定された同業者は売上原価の額により原告の本件事業との同規模性がある程度担保されており、その他の営業上の諸条件は、原則として同業者の平均値(売上原価率)を算出する過程で捨象されるものと考えられるから、右諸条件が明らかでないことを理由として右同業者率による推計方法が合理性が存しないものとは解し難い。更に、(ウ)前記同業者がいずれも青色申告者であることは前記認定のとおりであるところ、青色申告者の申告の正確性は法的に担保されているから、右推計に用いられた基礎資料は正確性を有するというべきであり、その抽出過程に恣意性のないことは前掲乙第一号証、第二号証の一ないし一七によりこれを認めることができる。そして、被告はその守秘義務(所得税法二四三条、国家公務員法一〇〇条一、二項)により右同業者の住所、氏名等を明らかにし得ないのであるから、被告が右同業者の住所、氏名等を明らかにしないからといつて、直ちに、右同業者についての資料を右推計の基礎資料として用いることに合理性がないとはいえない(右同業者の住所、氏名等が明らかでないとしても、原告において推計の合理性を争う方途が閉ざされるものでないことは明らかである。)。

従つて、原告の主張はいずれも失当であり、前記推計方法は合理性を有するから原告の本件係争年分の売上(収入)金額は金一億一八四五万一九四二円と推計するべきである。

3  経費について

(一)  一般経費

前記別紙三(売上原価及び一般経費率表)から、前記同業者の一般経費率の平均は四・七九パーセントであることが認められるところ、これを原告の本件係争年分の一般経費率として推計を行うことに合理性が存することは、前説示と同様であるから、右一般経費率により原告の本件係争年分の一般経費の額を計算すると、金五六七万三八四八円となる。

(計算式 収入金額1億1845万1942×0.0479≒567万3848 1円未満切捨)

なお、原告は一般経費について実額主張をしているが、右主張にかかる実額(金三五一万〇〇二八円)は、右推計金額を下廻るから、右実額が原告の保存にかかる帳簿書類等から算定し得るか否かを判断するまでもなく、右原告に有利な推計による一般経費の額を基礎として原告の本件係争年分の所得金額を算出すべきである。

(二)  特別経費

本件係争年分の特別経費が金五三四万一九九七円であることは、当事者間に争いがない。

四  以上のところからすれば、原告の本件係争年分の本件事業に関する所得金額を算出する上で被告の主張する推計方法は合理性があるというべきであり、これによれば原告の本件係争年分の事業所得の金額が金一〇五四万二四〇八円となることは計数上明らかである。

そして、原告の本件係争年分の総所得金額が本件事業に基づく事業所得の金額と同額であることは当事者間に争いがない。従つて、原告の本件係争年分の総所得金額は金一〇五四万二四〇八円というべきところ、本件更正処分は、右金額を下廻るものであり、原告の所得を過大に認定した違法はなく、適法なものというべきである。したがつて、また、本件各賦課決定も適法である。

五  以上のとおりであるから、原告の請求は理由がなく失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤義則 裁判官 高標利文 裁判官 綿引穣)

別紙一 筆圧痕に対応する入金伝票が提出されていないものの一覧表

<省略>

<省略>

<省略>

(注)1 金額の「×」印は判読不能なものである。

2(一) 順号4の入金伝票には、他に「加納、高騰」「一七、二三〇、一二六、三六〇」の筆圧痕が認められるが、これに対応するものとして甲六号証の一(昭和四八年二月二七日付入金伝票)が提出されている。

(二) 順号38の入金伝票には、「島田商店、三一、六八〇」の筆圧痕が認められるが、これに対応するものとして甲六号証の一(昭和四八年九月六日付入金伝票)が提示されている。

別紙二 仕入金額明細表

<省略>

別紙三 売上原価及び一般経費率表

<省略>

別紙四 事業所得金額計算表

<省略>

別紙五 No.1. 機械のうち受払い可能分

<省略>

No.2. 機械のうち受払可能分

<省略>

No.3 機械のうち受払可能分

<省略>

No.4 機械のうち原価販売分

<省略>

No.5 機械のうち期末在庫に計上されているもの

<省略>

No.6 機械のうち売上の確認できないもの

<省略>

別紙六

<省略>

別表1

事業所得金額計算表

<省略>

別表2

商品別の売上原価、売上及び差益金額

<省略>

別表三

<省略>

事業所得金額3,858,793円=(1)-{(2)+(3)+(4)}

別表四

<省略>

別表五

キヤストウエル26個の売上確認

<省略>

別表六

<省略>

<省略>

(注) 番号19ないし22の帳簿については、細字書込み部分を除く

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