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名古屋地方裁判所 昭和47年(わ)397号 判決 1973年6月18日

本籍

名古屋市昭和区長戸町五丁目五二番地の二

住居

同市中区栄四丁目五番一一号

会社員

和田一郎

明治三三年八月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官水野基出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月および罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき実事)

被告人は、愛知県の発注する土木工事の入札に関して、事前に業者が名古屋市東区所在の財団法人建設会館などに集つて談合するに際し、その取りまとめ役として入札順位を決めるなどの調整を行ない、落札した業者から謝礼金名下に落礼金額の一定割合の報酬を得ていたものであるが、この収入に対する所得税を免れようと企て、右報酬の隠ぺいをはかつて東海銀行滝子支店に架空名義で預金し、架空名義の印章を用いて富士銀行名古屋支店に無記名で定期預金をし、或いは架空名義で貸金庫を借りたうえ現金を右金庫に保管する等の不正な手段を講じて

第一、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和四三年度)における総所得金額は四、一六五万三、八七八円であつたにもかかわらず、これを秘匿して、所轄中税務署に対し、所得税法所定の申告期限である昭和四四年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する得税金二、二九一万六、二〇〇円を不正にほ脱し、

第二、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの間(昭和四四年度)における総所得金額は五、〇六三万五、三八四円であつたにもかかわらず、これを秘匿して、所轄中税務署に対し、所得税法所定の申告期限である昭和四五年三月一五日までに所定の申告をなさず、よつて右所得に対する所得税金二、八八八万六、三〇〇円を不正にほ脱し

たものである。(右各所得額の算出内訳は別表のとおり)

(証拠の標目)

判示事実全体につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四五年一〇月一四日付、昭和四六年七月一六日付、同月二〇日付各質問てん末書

一、第六回公判調書中の証人喜多川善一、同吉田正の各供述部分

一、第七回公判調書中の証人秋山癸亥、同川口高次の各供述部分

一、第八回公判調書中の証人加藤佼一の供述部分

一、第九回公判調書中の証人岩田彰の供述部分

一、第一〇回公判調書中の証人榊原正芳、同後藤孝次の各供述部分

一、第一一回公判調書中の証人後藤孝次、同大森聖志の各供述部分

一、第一二回公判調書中の証人伊藤也、同久田信次郎の各供述部分

一、第一三回公判調書中の証人久田信次郎の供述部分

一、第一四回公判調書中の証人山下卓志の供述部分

一、第一五回公判調書中の証人山口春子の供述部分および同人の当公判廷における供述

一、秋山癸、加藤佼一、岩田彰、榊原正芳、後藤孝次、大森聖志、久田信次郎の検察官に対する各供述調書

一、山口春子の検察官に対する各供述調書および大蔵事務官に対する昭和四五年一〇月二三日付質問てん末書

一、検察官作成の報告書

一、押収してある貸金庫副鍵一個(昭和四七年押第四七四号の10)、貸金庫借用申込書一枚(同号の39)、貸金庫取引印鑑同元帳一綴(同号の40)、代理人届貸金庫追加借用証一綴(同号の41)

(各年度所得額認定関係につき)

一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四五年一〇月一五日付、同月一六日付および同年一一月一九日付各質問てん末書

一、被告人作成の各上申書

一、山口春子の大蔵事務官に対する昭和四五年一〇月一五日付、同月一六日付、同年一一月一一日付および昭和四六年五月二一日付各質問てん末書

一、大江昭子、久田信次郎、勝野千代吉の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官山下卓志作成の各確認書、各調査程告書および脱税額計算書

一、大蔵事務官吉田一美、同石川茂雄、同野田文三作成の各確認書

一、松村義忠、渡部源太郎、高原健、田中克司、日野良春、高橋禮司作成の各証明書

一、坂野博子、渡辺頼明、岩田太郎、林丈夫、江口三男および名古屋東新郵便局長作成の各回答書

一、高原健、伊藤弥吉、岡本憲安、久田信次郎作成の各上申書

一、押収してある手帳三冊(昭和四七年押第四七四号の1、2および38)、空封筒五綴(同号の3ないし7)空封筒メモ一綴(同号の8)、ミリオン積立預金通帳八冊(同号の9)、期日帳一綴(同号の11)、取引先原簿一枚(同号の12)、営業日誌四冊(同号の13ないし16)、元帳四冊(同号の1718および4243)、決算メモ綴一袋(同号の19)、金銭借用証書および借用証各一綴(同号の2021)、念書一綴(同号の22)、売上請求台帳一綴(同号の23)、源泉徴収表二綴(同号の24および32)、領収書綴六綴(同号の2529303334および37)、保険料領収書綴および保険料証明書綴各一綴(同号の2627)、固定資産税領収書綴一綴(同号の28)、立替金関係請求書領収書一綴(同号の31)、名刺入メモおよびノートブツク各一綴(同号の3536)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法第一二〇条第一項第三号に違反し、同法第二三八条第一項、第二項に該当するので所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、懲役刑につき同法第四七条本文、第一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑につき、同法第四八条第二項により各罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役八ヶ月および罰金一、五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村本晃 裁判官 柿沼久 裁判官 前坂光雄)

別表一の(1)

修正貸借対照表

無申告脱税犯

昭和43年12月31日現在

<省略>

別表一の(2)

<省略>

別表二の(1)

修正貸借対照表

無申告脱税犯

昭和44年12月31日現在

<省略>

別表二の(2)

<省略>

ほ脱所得の内容

自 43.1.1

至 43.12.31 △印は減

<省略>

ほ脱所得の内容

<省略>

ほ脱所得の内容

<省略>

ほ脱所得の内容

自 44.1.1

至 44.12.31 △印は減

<省略>

ほ脱所得の内容

<省略>

ほ脱所得の内容

<省略>

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