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名古屋地方裁判所 昭和42年(ワ)3209号 判決 1970年2月25日

原告

愛知陸運株式会社

被告

中原多満雄

ほか一名

主文

一、原告に対し被告らはそれぞれ二九万円とこれに対する昭和四二年一一月一九日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の、その余を被告らの各負担とする。

四、この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一、求める裁判

一、原告

「原告に対し被告らはそれぞれ四五万円とこれに対する昭和四二年一一月一九日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決と仮執行の宣言。

二、被告ら

「原告の請求を棄却する。」との判決

第二、原告の請求原因

一、事故の発生

(一)  日時 昭和四二年二月一日午前四時三〇分頃

(二)  場所 豊川市御油町炮六土一丁目一一番地先国道一号線路上

(三)  加害車 訴外亡中原尚仁(以下尚仁という。)運転の大型貨物自動車(名一に第二六一三号)

(四)  態様 尚仁は本件道路を豊橋方面に向つて東進中、センターラインを約一メートル越えたため、折から反対方向より進行中の原告所有の訴外池辺勝徳(以下池辺という。)運転の大型貨物自動車(名う二第二〇五八号―以下被害車という。)の右後輪附近に激突せしめよつて両車輛は転覆大破した。

二、尚仁の過失

本件事故は尚仁が制限速度二〇キロメートルも超過した七〇キロメートルの高速で暴走し、且つ前方注視を怠つた重大な過失により進路前方に停車していた車輛の発見が遅くれ、更にこれとの衝突を避けようとしてセンターラインを一メートルも越えて対向車の進路に突然進入したことによるもので、全く尚仁の一方的過失によつて惹起された事故である。

三、損害

(1)  車輛破損による修理費 五六万七、七二一円

(2)  休車による損害金(二〇日分) 二〇万六、六六二円

(3)  破損車輛運搬費 三万二、〇〇〇円

(4)  諸雑費(事故処理のため現場に赴いた職員及び人夫の旅費日当、倉敷へ交渉のため数回往復した職員の旅費日当等) 約一〇万円

以上のうち本訴においては(1)ないし(3)の金額と(4)のうち九万三、六一七円の合計九〇万円を請求する。

四、尚仁は原告に対し右損害を賠償すべき義務あるところ、尚仁は本件事故の直後に死亡し、その両親である被告らが右義務を共同相続し、被告らは損害金九〇万円の各二分の一の四五万円宛の支払義務を承継した。

五、よつて、本訴に及ぶ。

第三、被告らの請求原因に対する答弁および主張

一、第一項中、(一)ないし(三)は認める、(四)のうち加害車と原告所有の被害車とが衝突したことは認めるが、その余は不知。

二、第二項は否認する。

本件事故の発生については被害車の運転者である池辺にも過失がある。即ち本件の事故場所より約五〇メートル名古屋よりの左側に豊運輸株式会社(以下豊運輸という。)の車庫があり、丁度入庫しようとしていた右会社のトラツクが突然停止したためか或いは後退したため、これを避けるため尚仁がセンターラインを越えたもので、対向車たる池辺も右入庫しようとした右会社の車輛を十分認めることが出来た筈であり、かかる場合右車のかげから人車が出てくることは予想されるところであるから厳重に前方を注視し減速して事故を避ける義務があるのにこれを怠り、漫然進行したため加害車と衝突したものである。そこで本件事故の第一原因は前記豊運輸株式会社の車輛の運転者の急停車又は後退に基づくものであるが、仮に尚仁に過失があつたとしても池辺にも過失があつたのであるから過失相殺を主張する。

三、第三項は不知。

休車補償につき本訴提起前の原告の被告らに宛てた請求書には一〇万六、六六二円とあるのに本訴において一〇万円を付加して請求しているのは納得できない。又諸雑費のうち交渉のため出張した職員の旅費、日当の如きは法律上損害賠償として認められないものであるし、事故処理のため現場に出張した職員等の旅費、日当も人員金額等を明確にせずして請求はできない。

四、第四項中、尚仁が死亡したこと、被告らが尚仁の両親であることは認めるが、その余は否認する。

第四、証拠〔略〕

理由

第一、本件事故の発生

原告主張の日時、場所において尚仁運転の加害車と原告所有にかかる池辺運転の被害車とが衝突したことは当事者間に争いがない。

第二、本件事故発生の状況

〔証拠略〕を綜合すると、尚仁は本件道路(幅員一一・八メートルで中央にセンターラインがあり、直線で見通しは良い。)を豊橋方面に向つて東進中、進路左側豊運輸の東側入口附近に大型貨物自動車が車輛後部を進路に約三メートルはみ出している状況にあるのをその直近に接近して初めて発見し、急ぎ右車輛を避けようとしてハンドルを右に切つたため、センターラインを一メートル越すところとなり、折から反対方向より西進中(進路のほぼ中央を進行)の被害車の右後輪附近に衝突し本件事故に至つたことが認められる。すると尚仁の前方不注意という過失は免れえないものといわざるをえない。

一方対向車である池辺は、前掲証拠によると本件道路進行方向右側にあたる豊運輸の出入口附近に前記大型貨物自動車の車体後部が前記の如く約三メートルはみ出ていて、そのため進路をセンターライン寄りに進行して行つた加害車の先行車輛を現認していることが認められるところ、当時夜明けとはいえ国道一号線でもあるので交通量も多い所であるから、後続車輛も進路をセンターライン寄りに変えて来るかも知れないことは十分予測しえたものというべく、そして池辺は現に後続の加害車を一〇〇メートル前方(前記豊運輸の車の位置より四六メートル西の地点)に発見しているのであるから、直ちに進路(センターライン左側は通行の障害となる物はなかつた。)を左側に変えると共に徐行し事故の発生を未然に防止すべき義務あるものというべきところ、池辺は漫然時速五〇キロメートルで従前の位置で進行したため、前記の如くセンターラインを一メートル越えた加害車と衝突し大事に至つたことが認められ、本件事故発生につき尚仁の前記過失が大きな基因となつていること前認定のとおりであるが、池辺の過失も又認められるところといわざるをえない。

第三、尚仁の責任

前記認定事実によると尚仁は不法行為者として民法七〇九条により原告の後記損害を賠償する義務がある。

第四、そこで本件事故による原告の損害について検討する。

一、被害車の修理費 五六万七、七二一円

〔証拠略〕により認められる。

二、休車による損害金 一〇万六、六六二円

〔証拠略〕とそれに弁論の全趣旨によると被害車の二〇日分の休車による損害として一〇万六、六六二円あつたことが認められるところ、右金員を越えるその余の請求部分についてはこれを認めるに足る証拠はない(事故による値下り分とみても具体的な主張がなく、又右証言だけではこれを認めえない。)ので頭書の金員の限度で認める。

三、被害車の運搬費 三万二、〇〇〇円

〔証拠略〕により認める。

四、諸雑費

原告主張のうち、事故処理のため現場に出張した職員の旅費等については具体的に明確な主張がなく、又示談交渉のため職員の出張旅費等については本件事故と相当因果の関係がないので原告の請求はいずれも認めえない。

以上一ないし三の合計 七〇万六、三八三円

五、過失相殺

本件事故の発生については池辺にも過失あること前認定のとおりであるからこれを斟酌すると原告の前記損害金のうち尚仁の負担すべき額は五八万円と認めるのが相当である。

第五、尚仁の死亡と被告らの相続

以上によると尚仁は原告に対し五八万円の損害金を賠償すべき義務があるところ、尚仁は本件事故により死亡したこと、被告らが尚仁の父母であることは当事者間に争いがないので、被告らは各二分の一の二九万円宛の賠償義務を相続した。

第六、結論

よつて、主文第一項の限度で原告の請求を認容し、その余は理由がないから棄却し、民訴法八九条、九二条、九三条、一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋一之)

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