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名古屋地方裁判所 昭和30年(行モ)2号 決定 1955年4月26日

申立人 愛知いすゞ自動車株式会社

被申立人 中村社会保険出張所長

主文

被申立人が昭和三十年三月二十八日中保第二〇九号をもつて差押えた別紙目録記載の自動車に対する公売処分の執行はこれを停止する。

理由

申立人の本件申立の理由は次のとおりである。すなわち被申立人は別紙目録記載の自動車に対し、その登録名義が申立外吉鉄運輸株式会社になつているところから、同申立外会社に対する健康保険並びに厚生年金保険の保険料及び延滞金の滞納処分として昭和三十年二月二十八日差押処分をなした。然しながら右自動車はいずれも申立人が右訴外会社に対し所有権を留保して月賦販売をなしたのであるが、右訴外会社が月賦金をその支払日たる昭和三十年二月二十八日支払わなかつたため、約旨により同日の経過とともに右契約は当然解除になり、申立人は右自動車の返還をうけて現にこれを占有している。従つて右自動車は申立人の所有に属し前記滞納処分は第三者の所有物件に対する違法な処分として取消さるべきであるが、右差押に基く公売処分の期日は近日に迫り、その執行あるときは償うことのできない損害を生ずるので、名古屋地方裁判所に右差押処分取消の訴を提起するとともに右公売処分の執行停止を求めるために本申立に及んだ次第である。

よつて審査するに、申立人提出の疏明資料によれば、申立人が申立外吉鉄運輸株式会社に対しその主張の如き月賦販売契約をなしたこと及び昭和三十年二月二十八日支払期日の月賦金の支払がないことを理由として同年三月十八日右訴外会社に到達した書留内容証明郵便をもつて右契約を解除したことが認められ、これによれば別紙目録記載の自動車は申立人の所有に属するものと一応考えられる。しかして本件公売処分が同年四月二十七日に迫つていることは被申立人の申述によつても明らかであるから、申立人の主張を理由ありと認め右公売処分の執行を一時停止しおくことゝし、行政事件訴訟特例法第十条により主文のとおり決定する。

(裁判官 山口正夫)

(目録省略)

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