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名古屋地方裁判所 平成8年(ヨ)1090号 決定 1997年7月30日

債権者

松原信広

債権者

渡辺康人

債権者

真野雅樹

右三名代理人弁護士

福永滋

森田辰彦

債務者

株式会社重光

右代表者代表取締役

山田重光

右代理人弁護士

浅井岩根

滝澤昌雄

主文

一  本件申立てをいずれも却下する。

二  申立費用は債権者らの負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  債権者らが債務者に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、債権者松原信広に対し、金三七万六二二三円及び平成八年一一月から本案判決確定に至るまで、毎月五日限り金六五万七四二三円を仮に支払え。

三  債務者は、債権者渡辺康人に対し、金三一万四六八九円及び平成八年一一月から本案判決確定に至るまで、毎月五日限り金四八万二九八六円を仮に支払え。

四  債務者は、債権者真野雅樹に対し、金二三万七二七六円及び平成八年一一月から本案判決確定に至るまで、毎月五日限り金五六万七八七六円を仮に支払え。

第二事案の概要

一  当事者間に争いのない事実

1  債務者は、昭和五四年に設立された喫茶店の経営、洋菓子の製造、販売を主な業務とする株式会社であったが、昭和五七年には子会社である株式会社ハーブスグローイング(以下「ハーブス社」という。)が設立され、債務者の洋菓子製造部門はハーブス社に委ねられることになり、現在では名古屋市内を中心に一一店舗を持ち、従業員数は正社員約六〇名、パート社員約一〇〇名という規模になっている。

2(1)  債権者松原信広(以下「債権者松原」という。)は、債務者の代表取締役である山田重光とは高校時代からの友人であり、昭和五八年に同人からの誘いを受けて債務者に就職し、管理部長、製造部長などを歴任し、平成八年五月当時は総務部長の職にあった。

(2)  債権者渡辺康人(以下「債権者渡辺」という。)は、昭和五五年に山田重光の誘いを受けてメルローズ栄店の店長として債務者に就職し、昭和六三年以降は本社事務所勤務となり事務の統括的な仕事を任されていた。

(3)  債権者真野雅樹(以下「債権者真野」という。)は、昭和五六年に債務者に就職し、チーフ、店長を歴任し、平成八年五月当時は製造部長の職にあった。

3(1)  債務者は、平成八年九月一二日、債権者松原に対し、解雇の意思表示を行った。

(2)  債務者は、平成八年九月一一日、債権者渡辺に対し、解雇の意思表示を行った。

(3)  債務者は、平成八年九月一七日、債権者真野に対し、解雇の意思表示を行った。

二  争点

1  本件の主な争点は、債権者三名に対する解雇(以下「本件解雇」という。)に解雇事由が存在するか否か、解雇事由に該当する事実が存在するとして本件解雇が解雇権の濫用で無効であるといえるか否かである。

2  主な争点についての当事者の主張

(1) 債務者の主張

債権者三名は、会社の経営権、人事権に関して従業員として度を過ぎた不当な介入行為を繰り返したり、あるいは規律に違反して債務者の業務を妨害する行為を行ったために、債務者は、債務者の就業規則一〇条一項四号「その他これに似た理由のあったとき」に該当するものとして、債権者三名を普通解雇したものである。

(2) 債権者三名の主張

債務者が債権者三名について主張する具体的事実はいずれも解雇を正当化するような非違行為とはいえず、債権者三名には解雇事由が存在せず、仮に解雇事由に該当する事実が存在するとしても解雇権の濫用であって無効である。

第三判断

一  疎明資料、審尋の全趣旨によれば、次の事実が疎明される(当事者間に争いのない事実も含む。)。

1  山田重光と山田幸枝は、昭和五一年五月二四日に婚姻した夫婦であり、昭和五四年の債務者設立にあたっては山田重光が代表取締役に、山田幸枝が取締役に就任し、昭和五七年のハーブス社設立にあたっては山田幸枝が代表取締役に、山田重光が取締役に就任し、共同で両社の経営にあたっていたが、山田重光が山田幸枝に別居を提案するようになった平成六年八月ころからは次第に両名が共同で両社の経営にあたることは困難な状況になったために、山田重光は、山田幸枝及び債務者の幹部職員であった債権者松原、西岡玲、富田仁と相談のうえで、債務者への出社を一時控え、その間の債務者の経営を山田幸枝に任せてみることとし、平成七年一一月一日以降は代表取締役の地位にとどまったままで債務者に出社しないようになったが、山田重光と山田幸枝との間の話し合いでは、山田幸枝を補佐する者としては西岡玲が適任であるとの点で一致したので、平成七年一二月に西岡玲は債務者の取締役に就任し、また、同月に山田幸枝は債務者の代表取締役に就任した(<証拠略>)。

なお、債権者らは、山田重光が平成七年一一月一日以降債務者に出社しなくなったことについて、山田重光は会社経営に自信を失い職場放棄をしたものであると主張するが、山田重光が平成七年一一月一日以降債務者に出社しなくなったのが、山田幸枝と相談の上であることは、山田幸枝作成の陳述書(<証拠略>)に、「夫と相談のうえ、父山田敦美氏のかわりに従業員西岡玲を取締役に就任させ、同時に私も代表者に就任しました。」との記載があることからも明らかであり、職場放棄と評価されるような行為であるとはいえない。

2  山田重光は、平成八年五月ころ、西岡玲から債務者の状況について報告を受けたことを契機として債務者に復帰することを考え、西岡玲と債務者に復帰することについて相談をしたうえ、平成八年五月三一日から債務者に出社するようになった(<証拠略>)。

3  山田重光は、平成八年六月中ころ、山田幸枝を債務者の経営から排除することを決意し、そのころ、債権者松原に対し、山田幸枝が解任された後の債務者の取締役に就任してもらいたいこと、山田幸枝が行っていた経理業務を引き継いで行ってもらいたいことなどを要請したが、債権者松原は、これを拒否した(<証拠略>)。

4(1)  平成八年六月二四日に山田幸枝を債務者の代表取締役から解任するための取締役会が開かれることになったが、山田幸枝は、債権者三名、営業副本部長の富田仁、工場長の塩満慶蔵の五名に取締役会への出席を要請し、同日開かれた取締役会に取締役三名以外に右の五名が同席したところ、山田重光は右の五名に退席を求めたが、山田幸枝が退席しなくてもよいと発言したために、右の五名はそのまま同席することになり、取締役会の議事の中で、山田幸枝が「債務者にとって私は必要ですね。」と発言したことに対して、債権者三名は「必要です。」と答えた(<証拠略>)。

(2)  右の取締役会においては山田重光と西岡玲の賛成により、山田幸枝は代表取締役を解任されるとともに、山田幸枝の取締役解任等を議題とする臨時株主総会を平成八年七月一〇日に招集することが決議された(<証拠略>)。

5  債権者三名は、山田幸枝の取締役解任に反対して、債務者の従業員らに対し、「同取締役が解任されるようなことになれば、業務の円滑な遂行は不能となって現場において混乱が生じることはもちろん、当社の対外的信用も大きく失墜することになります。よって私共は同取締役の解任に反対するものです。」などの内容が記載された申入書(以下「本件申入書」という。)に署名するように求め、五七名から署名を集めたが、その中には次の(1)、(2)のとおり、明らかに債務者の就業時間中に署名集めが行われた例があり、また本件申入書は山田重光には提出されなかった(<証拠略>)。

(1) 債権者松原と債権者真野は、平成八年六月二九日午後四時ころ、債務者のハーブス大名古屋ビル店店長の下部正人に対し、本件申入書に署名するように求めたが、同人はこれに応じなかった。

(2) 債権者松原は、山田幸枝とともに、平成八年七月一日午前一〇時三〇分ころ、下部正人と債務者のハーブス名駅店店長の中村宏一に対し、「山田重光社長が設立したアポロへの資金流出を防がねばならない。」などと話したうえで、本件申入書へ署名するように求めたが、両名はこれに応じなった。

6  債権者渡辺は、平成八年六月二六日、下部正人に対し、「現場を一本化したいので、山田重光社長がいなかったときと同じように、現場の話はすべて山田幸枝会長と債権者三名を通してほしい。山田幸枝会長と山田重光社長の二本建てでは現場が混乱するので是非そのようにしてほしい。」という内容の要請を行った(<証拠略>)。

7(1)  山田幸枝の取締役解任等を議題とする臨時株主総会が平成八年七月一〇日に開催されることになったが、開催当日、債権者松原は、債務者の店長ら七、八名の主だった従業員に対して「店を早く閉めてもいいから、株主総会に出席するように。」との要請を行い、これを受けて四人の従業員が株主総会が行われる本社事務所の会議室周辺に集合した(<証拠略>)。

(2)  債権者三名は、臨時株主総会が開かれる本社事務所の会議室のドアをあらかじめはずし、株主総会での発言が外に聞こえるような状態にした(当事者間に争いがない)。

(3)  その上で、債権者三名は、臨時株主総会に出席しようとしたが、山田重光が株主以外の者の傍聴に反対したために、株主である山田高資からの委任状を持っていた(ただし、山田高資は未成年者であったにもかかわらず、その委任状は親権者名義ではなく、本人名義となっている(<証拠略>)のであるから、その委任状は有効なものとはいえない。)債権者真野は臨時株主総会に出席したが、債権者松原と債権者渡辺はドアが外されている会議室の外で臨時株主総会の推移を見守った(<証拠略>)。

(4)  平成八年七月一〇日当時の債務者の株主の株式保有割合は、山田重光の実父である山田敦美が四三パーセント、山田重光が二八パーセント、山田幸枝が二七パーセント、その他の株主が二パーセントであり、臨時株主総会では山田敦美、山田重光などの賛成により山田幸枝の取締役の解任が決議された(<証拠略>)。

8  債権者三名は、平成七年七月下旬ころ、山田幸枝が申し立てた名古屋地方裁判所平成八年ヨ第七一五号仮処分申請事件において、山田幸枝の側に立って陳述書を提出したが、その陳述書には次の(1)ないし(3)の内容が記載されていた(<証拠略>)。

(1) 債権者松原が提出した陳述書には、「社長の復帰後の行動を見ても、社員、銀行、業者への不信感、不安感を与えるような本来経営者の取るべき姿勢とは見えない行動を法的に問題がないとはいえ行ってしまう。これでは会社を『やる気が出て来たからみんな俺についてこい』式の会社経営を言い反対意見の者はついてこなくていいというワンマン経営の方向性を打ち出し、和が大切だ、おもしろおかしいオープンな会社にしてゆきたいと言われても予盾を感じざるをえない。」などという内容が記載されていた。

(2) 債権者渡辺が提出した陳述書には、「この会社は社長のものではありません。従業員みんなのものです。みんな毎日、本当に少しずつ積み重ねてきた努力を何と思っているのですか。今回あなたがした事は、それを全部こわすためとしか思えません。社長あなたはあなたの夢が、みんなの夢をこわしているのがわかりませんか。あなたの夢はあなた自身で独力でかなえて下さい。我々みんなの会社を利用しないで下さい。」という内容が記載されていた。

(3) 債権者真野が提出した陳述書には、「社員は社長を支持するものは一人もおらず、今後(会社)店を運営していくのにあたっては、絶対に会長がいなくてはならない。会社、社員のことを心より深く考え、思いやりがある人は会長なんだ!一年間も遊んでばかりしていて、仕事をしていない人、今の会社の実情も知らない人がどうして会社、社員の今後を考えれるのかわからない。今現状でも、いなくてもよい人がどうして会社をぐちゃぐちゃにするのか、誰も頼んでないのになぜ突然に戻ってきたのかまだ理解できない。」などという内容が記載されていた。

9  債権者松原は、平成八年八月ころ、山田重光と債務者の経営等について長時間話し合ったが、その話し合いの終わりのころに「あなたの考えにはついていけない。」と発言した(<証拠略>)。

10(1)  平成八年九月一〇日、債務者の本社事務所の営業室において、取締役三名、社会保険労務士、弁護士が出席して今後の債務者の会社運営についての会議が行われることになったが、債権者渡辺は隣室の倉庫に録音機を置き、ドアのルーバー部分から音をひろって盗聴しようとした(<証拠略>)。

なお、債務者は、盗聴は債権者三名が事前に相談のうえ、債権者渡辺が実行したものであると主張するが、これを疎明するに足りる疎明資料は存在しない。

(2)  山田重光は、債権者渡辺が録音機を設置したのではないかということに気づき、しばらく時間をかけて探したところ、録音機を発見したので、特に実害は発生しなかった(<証拠略>)。

11  平成八年九月一一日までに山田幸枝は債務者とハーブス社の取締役の地位を解任されており、債務者の本社事務室に入室する権限はなく、本社事務所が入居しているビルの管理人室でも山田幸枝の入室を拒否されたにもかかわらず、債権者松原と債権者真野は、同日午後七時四〇分ころから午後八時ころまでの間、山田幸枝とともに債務者の本社事務室に入室した(<証拠略>)。

12  債務者の就業規則には、次のとおり規定されている(<証拠略>)。

第一〇条 従業員が、次のうちどれか一つにあてはまるときは、三〇日前に予告するか、三〇日分の平均賃金を支給して解雇します。

1 身体の障害により、業務に堪えられなくなったとき

2 勤務成績が不良で、満足な勤務をする見込みがないとき

3 会社の仕事の都合で、人員をけずらなければならないことになったとき

4 その他これに似た理由のあったとき

二  前項の予告日数は平均賃金を支払った日数だけ短縮します。

二1(1) 債権者三名の前記一5に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

労働者は自己の労働条件を守るため、あるいは社会的公正の見地から、経営者の経営意欲、経営能力、経営方針に信頼をおけないときには、これらについて批判し、その改善を求め、あるいは経営担当者には誰がふさわしいかなどの点について意見を表明することも許されると解するのが相当であるが、その批判や意見表明は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であってはならないことはもちろんである。

債権者三名の前記一5に認定の行為は、同(1)、(2)に認定のとおり就業時間中に行われた例もあるものであって、その態様において社会的相当性を欠くものである。また、本件申入書は山田重光には提出されていないのであるから、署名を集めた目的が、山田重光に山田幸枝の取締役解任について再考を促すものであったとは考えにくく、他の目的で行われたのではないかという疑念を払拭できず、その目的においても社会的相当性を欠くものではないかとの疑問が残るものである。

したがって、債権者三名の前記一5に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当するというべきである。

(2) 債権者渡辺の前記一6に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

この点について、債権者渡辺は、山田重光は債務者に復帰後毎日事務所に出勤するわけでもなく、およそ責任をもって真面目に経営にあたっているという状態ではなかったために、事務所が把握しているべき事項について山田重光限りとなってしまい、事務所に伝わらないおそれがあったので、山田重光にではなく事務所に直接伝えるようにとお願いしなければならなかったのであると主張する。しかし、仮に債権者渡辺が主張するような事実があったとしても、山田重光だけにではなく、事務所の方にも伝えるようにと指示すれば十分であり、山田重光には伝えないようにと指示する必要はないのであるから、この点についての債権者渡辺の主張は理由がない。

(3) 債権者松原の前記一7(1)に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

この点について、債権者松原は、店長クラスの従業員と債権者松原とは対等の従業員仲間という関係であり、債権者松原の言葉などは現実的な影響力を持たないのであってささいな言葉にすぎないと主張する。しかし、債権者松原は債務者の総務部長の職にあったのであるから、その言動が従業員に対し事実上の影響力を持つのは明らかであり、その債権者松原が、「店を早く閉めてもいいから、株主総会に出席するように。」との要請を行うことは、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であるというべきであり、この点についての債権者松原の主張は理由がない。

(4) 債権者三名の前記一7(2)に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

この点について、債権者三名は、店長クラスの従業員にも声をかけたので、多ければ二〇名もの人員が集合することになり、会場内に入り切らず隣室で傍聴せざるを得ないことになるので、声が聞きとれるようにドアをはずしておいたのであり、議事の進行を妨害しようとの意図はなく、実際議事の進行の妨げにはならず、ドアも元通りに復元したから会社は損害を受けておらず、職場秩序も乱れていないのであるから、ささいな行為であると主張する。しかし、株主総会の会場のドアをはずすということは、それ自体で企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であることは明らかであり、この点についての債権者三名の主張は理由がない。

(5) 債権者渡辺の前記一10(1)に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

この点について、債権者渡辺は、盗聴を思いたったのは自らの処遇について議題になると心配したからであり、誠にやむを得ない行為であり、盗聴は未遂に終わったのであるから、債務者の企業秩序を乱すほどの行為ではないと主張する。しかし、盗聴を行うという行為は、それが未遂に終わったとしても企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であることは明らかであり、また、自己に不利益な話し合いが行われるおそれがあるとしても、盗聴を行うことが許されるはずはなく、行為の動機に特に酌むべきものがあるとはいえない。

(6) 債権者松原と債権者真野の前記一11に認定の行為は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する。

平成八年九月一一日までに山田幸枝は債務者とハーブス社の取締役の地位を解任されており、債務者の本社事務室に入室する権限はないのであるから、仮に債権者松原と債権者真野が管理人室で偶然に山田幸枝と出会ったものであったとしても、山田幸枝とともに債務者の本社事務室に入室するのは、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であるといわざるを得ない。

2 前記二1(1)ないし(6)に認定のとおり、債権者三名は平成八年六月から同年九月までの間に、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であり、就業規則一〇条一項四号に該当する行為を繰り返し行っていること、債権者三名はいずれも債務者の幹部職員であったこと、債権者三名が右のような行為を行ったのは山田重光の経営意欲、経営能力、経営方針に対する不信感に基づくものであったこと(この点は前記一8に認定した債権者三名の陳述書の記載内容から明らかである。)からすれば、本件解雇が解雇権の濫用であって無効であるとはいえず、本件解雇は有効である。

三  以上によれば、本件申立ては被保全権利の疎明がなく失当であるから、主文のとおり決定する。

(裁判官 山本剛史)

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