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名古屋地方裁判所 平成6年(わ)406号 判決 1994年6月29日

本店所在地

愛知県岡崎市明大寺町字衣下道三八番地一

株式会社

サンテック

(右代表者代表取締役 今井勇人)

本籍

横浜市中区山手町一〇九番地

住居

愛知県岡崎市戸崎町字藤狭八番地一〇 ユニオンハイツ戸崎八〇三号

会社役員

今井勇人

昭和二九年一〇月一四日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宇川春彦、被告人両名の弁護人坂口良行各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社サンテックを罰金一七〇〇万円に処する。

被告人今井勇人を懲役一年六月に処する。

被告人今井勇人に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社サンテック(以下「被告人会社」という。)は、愛知県岡崎市明大寺町字衣下道三八番地一に本店を置き、昭和六一年三月三日の設立時から平成二年二月ころまでは、自動車及び耕作機会部品製造工場のライン出張作業等を、その後は右業務に併せて関連会社の統括管理を業とする会社であり、被告人今井勇人(以下「被告人今井」という。)は、右設立時から平成元年三月二二日までの間、同三年三月一日から同年五月三一日までの間及び平成四年二月一日以降において、被告人会社の代表取締役として、また、平成元年三月二三日から同三年二月二八日までの間及び同年六月一日から平成四年一月三一日までの間において、同会社の実質的な経営者として、それぞれ被告人会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人今井は、被告人会社の右業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空経費を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和六三年三月一日から平成元年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が六九三二万八一〇三円であったにもかかわらず、同年五月一日、同市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三七五八万五〇五九円で、これに対する法人税額が一四八〇万二六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二八一四万六九〇〇円と右申告税額との差額一三三四万四三〇〇円を免れ、

第二  平成元年三月一日から同二年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億五一一九万一四六八円であったにもかかわらず、同年五月一日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六三四九万八六〇三円で、これに対する法人税額が二五六九万四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六二五二万一五〇〇円と右申告税額との差額三六八三万一一〇〇円を免れ、

第三  平成二年三月一日から同三年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が二億一七〇万七四二八円であったにもかかわらず、同年四月三〇日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一四〇四万四七三一円で、これに対する法人税額が四四五九万八七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七九六六万三九〇〇円と右申告税額との差額三五〇六万五二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

判示事実全部について

一  被告人会社代表者である被告人今井の当公判廷における供述

一  被告人今井の検察官に対する供述調書二通(乙1、2)

一  花井俊久(甲17)、水上博之(甲18)、及び岩本幸彦(甲19)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(売上高について、甲6)、査察官調査書(販売員給与等について、甲7)、査察官調査書(広告宣伝費について、甲8)、査察官調査書(独立営業所経費について、甲9)、査察官調査書(通信交通費について、甲10)、査察官調査書(租税公課等について、甲12)、査察官調査書(支払手数料について、甲13)、査察官調査書(受取利息割引料等について、甲14)、査察官調査書(雑収入について、甲15)及び査察官調査書(支払利息割引料等について、甲16)

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本五通(甲20ないし24)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書二通(甲1、3)及び査察官報告書二通(甲2、11)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲4)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(甲5)

(法令の適用)

被告人会社及び被告人今井の判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社については更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人今井については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、被告人今井については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人会社を罰金一七〇〇万円に、被告人今井を懲役一年六月に各処し、被告人今井に対し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

一  本件犯行に至る経緯、動機等

被告人会社は、人材を派遣して、自動車関係の工場内下請業を行っていたところ、公共職業安定所からの調査・指導を契機として、被告人今井は、新たに複数の関連会社を設立し、被告人会社の従来の事業をそれらの会社に移し、被告人会社自体は、これら関連会社を統括する業務を行うようになり、これら関連会社から徴収する管理手数料が主たる売上となった。

被告人今井は、被告人会社の経営者であるばかりか、右関連会社についても実質上統括していた。被告人今井は、被告人会社及び関連会社の事業拡大の資金を得るため、本件脱税の犯行に及んだ。

二  脱税手段等

本件脱税の主な手段は、主たる売上である関連会社からの管理手数料を除外することと、架空の経費を計上したことである。被告人今井は、被告人会社の裏口座として、多数の他人又は架空名義の銀行口座を開設し、関連会社からの管理手数料を、広告代理店や旅行代理店等に対する支払を装って、右銀行口座に入金させたり、被告人今井が現金で直接受け取ったりしていた。架空の経費を計上する方法としては、架空の販売員給与や広告宣伝費等を計上するほか、独立採算制の営業所の費用を支出し、同営業所から右金額を被告人会社の裏口座に入金させて返還させるなどしていた。

三  量刑上特に考慮した事情

1  ほ脱税額は三期で合計八五〇〇万円余にのぼり、少なくない額であり、ほ脱率は通算約五〇パーセントにのぼる。

2  被告人会社は、修正申告の上、本税の納付を完了したが、重加算税及び延滞税については、約三五〇〇万円が未納となっている。

3  脱税手段は、前記のとおり、多数の裏口座や架空の請求書等を用いるなどしており、巧妙である。

4  被告人会社の前科はなく、被告人今井には、昭和五〇年一一月に暴力行為等処罰に関する法律違反罪により懲役六月(執行猶予三年)に、同六二年一〇月に道路交通法違反罪(指定速度違反)により懲役六月(執行猶予二年)に処せられた前科があるが、いずれも執行猶予期間を経過している。

5  被告人今井は、業界団体の中部業請育成会の会長を辞任するなど、本件犯行について反省している。

(求刑・被告人会社に対し罰金二五〇〇万円、被告人今井に対し懲役一年六月)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 土屋哲夫)

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