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千葉家庭裁判所 昭和57年(少)3860号 決定 1982年11月26日

少年 T・N(昭三八・八・四生)

主文

少年を特別少年院に送致する。

押収してあるシンナー約二〇cc(オロナミンCドリンク瓶入り一本、昭和五七年押第四九七号の一)及び同シンナー約一〇cc(透明ビニール袋入り一個、同号の二)を没取する。

理由

(犯罪事実)

少年は、

第一(1) 昭和五七年一〇月一一日午前一時ころ、千葉県市原市○○海岸××番地所在株式会社○○整備工場内に駐車中のトラック(○○××○××)のガソリンタンクから同社取締役A管理のガソリン六〇リットル(時価一万二〇〇円相当)を

(2) 同年一〇月一二日午後七時三〇分ころ、同市○○海岸××番地○興産株式会社事務所五階独身寮B方居宅において、同人所有のラーメン等食料品六点(時価約二六〇円相当)を

(3) 前同日午後八時ころ、同市○○海岸××番地○○工事株式会社千葉事業所前路上において、同社所有の普通貨物自動車一台(時価約一〇万円相当)を

窃取した

第二同年一〇月一三日午前八時ころ、同市○○××番地先において、興奮・幻覚又は麻酔の作用を有する劇物で政令で定められたトルエンを吸入し、かつ同トルエンを含有する無色透明の液体約三〇cc(昭和五七年押第四九七号の一及び二)を所持したものである。

(法令の適用)

上記犯罪事実のうち、第一の(1)ないし(3)の各所為につきいずれも刑法二三五条

第二の所為につき毒物及び劇物取締法二三条の三、同法三条の三

(処遇の理由)

一  少年は、窃盗等保護事件につき昭和五五年四月九日に中等少年院送致となり、昭和五六年一月一六日に茨城農芸学院を仮退院したところ、同仮退院後間もなく自動車窃盗及びシンナー所持を犯し、同年三月一三日に保護観察の決定を受けたものであるが、更に同年四月二九日にシンナー吸入のうえ路上強盗を犯し、同事件については少年の希望もあつて検察官送致となり、九ヶ月余の勾留期間を経たのち翌昭和五七年三月四日に千葉地方裁判所において懲役三年、執行猶予四年併わせて保護観察に付する旨の判決があつた。少年は同判決後しばらくの間は溶接工として比較的真面目に稼働していたが、同年九月上旬ころ、無免許であるにもかかわらず普通乗用自動車を購入して乗り回すうちに怠職気味となつて、結局同年一〇月初旬ころに退職してしまい、その直後から急速に生活が崩れ、本件犯行に至つたものであり、その犯行態様はシンナー吸入及び窃盗で従来同様のパターンである。

二  少年は、極めて持続力が乏しく、小さなきつかけから急速に生活全体が崩れることが多く、従来何度も同じ失敗を重ねながら、一向にそれが改善されなかつたものである。そして一旦崩れ出すと保護者の力では少年の指導は困難である。また、少年の母は、筋萎縮症という難病を患い、その看病のため、少年の家族は精神的にも経済的にも多くの苦労を抱えている状況であり、少年にも一層の自覚が望まれるところである。

三  以上の次第であるから、この際、少年を特別少年院に送致することが相当である。

なお、本件は刑法二五条の二第一項による保護観察中の犯行であるから、少年については前記判決で受けた執行猶予の裁量取消(同法二六条の二第二号)が問題となるところであるが、これについては本件決定による少年院での教育効果を見定めたうえで検討することが望ましいと思料するので、その旨保護観察所等関係機関に勧告する。

よつて、少年院送致につき少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条四項を、没取につき少年法二四条の二第一項一号を適用して主文のとおり決定し、少年審判規則三八条二項を適用して関係機関に上記のとおり勧告する。

(裁判官 宮本由美子)

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