大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 昭和56年(わ)169号 判決 1981年5月18日

本籍

東京都豊島区長崎四丁目一八番地一

住居

千葉県浦安市猫實四六一番地の一

歯科医師

井上雅義

昭和二年一〇月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官桐生哲雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金三、六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、千葉県東葛飾郡浦安町猫實四六一番地の一外二か所において井上歯科医院を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、自由診療収入の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一、昭和五二年分の実際総所得金額が八四、二三三、八七六円あったのにもかかわらず、昭和五三年三月一五日、千葉県市川市北方一丁目一一番地一〇号所在の市川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二二、二八一、九六五円でこれに対する所得税額が六、〇八九、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四六、五九二、六〇〇円と右申告税額との差額四〇、五〇三、一〇〇円を免れ

第二、昭和五三年分の実際総所得金額が九六、八六二、五九九円あったのにもかかわらず、昭和五四年三月一五日、前記市川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三二、二二二、三九六円でこれに対する所得税額が一〇、三六四、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五四、六九八、六〇〇円と右申告税額との差額四四、三三四、二〇〇円を免れ

第三、昭和五四年分の実際総所得金額が一〇二、五〇七、五九三円あったのにもかかわらず、昭和五五年三月一五日、前記市川税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三六、二五二、九七九円でこれに対する所得税額が一二、九四八、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五九、二〇七、四〇〇円と右申告税額との差額四六、二五九、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、宮川秀子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通及び検察官に対する供述調書

一、井上智代の大蔵事務官に対する質問てん末書三通及び検察官に対する供述調書

一、中村重治の大蔵事務官に対する質問てん末書三通

一、押収してある月別入金明細等一袋(昭和五六年押第一〇二号の五)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通及び検察官に対する供述調書

一、被告人作成の昭和五五年一二月四日付答申書二通

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(検察官請求証拠等関係カード(甲)番号2)及び所得税額計算書(同カード(甲)番号5)

一、押収してある補綴ノート一冊(同押号の四の一)及び五二年分所得税確定申告書等一袋(同押号の六)

一、被告人作成の答申書(昭和五二年分本院補綴料収入)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(同カード(甲)番号8)及び所得税額計算書(同カード(甲)番号6)

一、押収してある補綴ノート一冊(同押号の四の二)及び五三年分所得税確定申告書等一袋(同押号の七)

一、被告人作成の答申書(昭和五三年分本院補綴料収入)

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(同カード甲番号4)及び所得税額計算書(同カ来ド(甲)番号7)

一、押収してある補綴ノート一冊(同押号の四の三)及び五四年分所得税確定申告書等一袋(同押号の八)

一、被告人作成の答申書(昭和五四年分本院補綴料収入)

(法令の適用)

一、罰条 判示第一ないし第三の各所為 所得税法二三八条一項、二項(懲役刑と罰金刑を併科)

二、併合罪処理 刑法四五条前段

懲役刑につき 同法四七条本文、一〇条により判示第二の罪の刑に加重

罰金刑につき 同法四八条二項により合算

三、労役場留置 同法一八条

四、執行猶予 懲役刑につき 同法二五条一項

五、訴訟費用の負担

刑訴法一八一条一項本文

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 福嶋登)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例