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千葉地方裁判所 昭和40年(行ウ)3号 判決 1968年9月10日

原告 鵜之沢昭 外二名

被告 千葉県市町村公平委員会

主文

被告が原告らの申立てにかかる不利益処分審査請求事件につき、昭和四〇年四月一〇日付をもつてなした右申立てを棄却するとの裁決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の求める裁判

(原告ら)

主文と同旨の判決。

(被告)

原告らの請求をいずれも棄却する、訴訟費用は原告らの負担とする、との判決。

第二、原告らの主張

(請求の原因)

一、原告らは、いずれも千葉県八日市場市事務吏員で、原告鵜之沢は保健課国保税係長、同間宮は市民課拠出年金係長、同菱木は市民課国民年金係員として勤務し、また、同市職員で組織する八日市場市職員組合の、それぞれ執行委員長、副執行委員長、書記長の地位にあつたものであるが、昭和三八年三月二二日八日市場市長からいずれも懲戒免職処分を受けた。そこで、原告らは地方公務員法第四九条の二の規定に基づき、同年三月二六日被告に対し右処分につき審査請求の申立てをなしたところ、被告は昭和四〇年四月一〇日付をもつて、原告らの右請求を棄却する旨の裁決をなした。

二、しかしながら、被告の右裁決には次のような瑕疵があるので、右裁決は違法で取り消すべきものである。すなわち、

1、処分者本人である八日市場市長太田福次郎に対する原告ら側の反対尋問を行わせることなく、審理を終結した。

処分者である八日市場市長太田福次郎の供述が処分の当否を審査するうえに最も重要なものであることは明らかなところである。したがつて、原告ら側としては同人に対する処分者側の主尋問が終了したところで反対尋問をなすつもりでいたところ、被告は原告ら側の反対尋問権をその行使の意思を無視して、処分者側の主尋問が終了した段階で審理を終結し、裁決をなすに至つた。よつて、裁決は右の点だけでも違法である。

もつとも、原告ら側は太田に対してその以前において尋問をしているが、これは原告ら側の申請により、原告らに対する処分日時の点だけに限定して尋問したものであり、前記処分者側のなした主尋問は処分事由に関するものであるから、右原告ら側の尋問と前記反対尋問権の無視とは全く関係のないところである。

2、被告委員会は、処分者本人の取調べをなしたほか(これも前記のように原告ら側の反対尋問を経ていないものである。)二、三の書証を取り調べただけで、原告ら側申請の多数の証人調べをなすことなく本件裁決をなしているが、それだけでは本件処分の当否を判断することはできず、審理不尽の違法がある。

原告ら三名に対する本件処分は、地方公務員法第三七条一項に違反するとの理由であるが、もともと同法条の適用については、最高裁判所昭和四一年一〇月二六日判決において指摘されているように、公務員労働者も原則的には労働基本権が保障されるべく、その制限は必要やむを得ない場合最少限度でなければならず、規律違反に対する制裁も限度を超えないよう慎重な配慮が必要である。特に、本件処分が免職処分という最も苛酷な不利益処分であることから、なおさらその当否についての審理は十二分に慎重でなければならないはずである。さらに、公平委員会としては、その制度上、処分者の行なつた懲戒処分を審査し、処分が違法ではないとしても妥当を欠くと判断した場合には、当該処分を修正する権限をも与えられているのである。したがつて、被告委員会としては、本件処分を受けるに至つた原告ら三名の行為の動機、背景、その行為の具体的内容、それによつて生じた実害の有無等諸般の事情につき、十分な審理を尽さなければ本件の当否を判断し得ないものである。しかるに、被告委員会は、これらの点についての審理を尽すことなく本件裁決をなしたものであつて、審理不尽の違法がある。

3、被告委員会は、その不利益処分に関する審査に関する規則第九条五項に定める最終陳述権を原告ら側に行使させることなく、また、原告ら側に証拠提出の機会を与えることなく、本件裁決をなしたものであつて、右は同規則第九条五項に違反する違法なものである。

被告委員会の定める不利益処分に関する審査に関す規則第九条五項には、口頭審理を終了するに先き立ち、当事者に最終陳述ならびに必要な証拠を提出する機会を与えなければならない旨規定されている。しかるに、被告委員会は、かかる機関を原告ら側に全く与えることなく本件裁決をなした違法がある。

三、本件裁決には以上のような違法があるので、その取消しを求める。

(被告の主張に対する認否と反論)

一、被告主張の被告委員会の本件審理の経過に関する冒頭部分の事実は認めるが、原告ら側としては、さらに、その主張をより詳細に準備書面によつて主張する予定であり、若干の書証と証人四二名および原告ら本人三名の各取調べを申請する準備をすでに完了していたものである。

二、同第一回期日に関する事実は認めるが、そのほかにも、本件処分が行われた当時被告委員会が不存在であり、審理が直ちに開催されなかつたことの不当性およびかかる救済機関の存在しない状態のもとでの本件処分が違法であるとの原告ら側の主張がなされた。

三、同第二回期日に関する事実は認める。

四、同第三回期日に関する事実は認めるが、同期日には、右のほか本件審理における当事者の主張立証責任の問題も議論された。

五、同第四回期日に関する事実は認める。

六、同第五回期日に関する事実は、その審理開始時刻の点を除いて認める。その審理開始時刻は午後二時であつた。

七、同第六回期日に関する事実中、(1)の事実については、被告委員会委員長が釈明事項は全部終つたか、と尋ねたとの点を除きその余は認める。被告委員会委員長は釈明要求事項の前段部分は全部終つたかと尋ねたのであつた。同(2)、(3)記載の事実は否認する。同期日の審理は、処分者の行なつた不当な昇給停止と本件審査請求事件関係者に対し追加懲戒処分をほのめかしている事実が本件審理の公正を阻害するとの原告ら側の主張をめぐつて大部分の時間が費されたものであつた。なお、原告ら側が被告委員会の明確な態度表明がないかぎり審理は進められないと述べたことはない。

八、同七回期日に関する事実は認めるが、なお、被告委員会は若干の関連問題についての審理を続行することを原告ら側に許容した。

九、同第八回期日に関する事実は認めるが、なお、被告委員会委員長の審理指揮に従い、原告らは側は処分者側に対し処分事由についての釈明要求を若干行なつた。

一〇、同第九回期日に関する事実は認めるが、原告ら側の行なつた処分事由についての釈明要求は(3)記載の点だけではなく、その他の諸点にもおよんでいる。

一一、同第一〇回期日に関する事実は認める。

一二、同第一一回期日に関する事実中、(1)ないし(3)記載の事実は認めるが、同期日における原告ら側からの証拠申出は、本件審査請求事件において極めて重要な事項である本件処分の日時如何の問題に限定したものであつた。

一三、同第一二回期日に関する事実は認める。なお、原告ら側の処分者本人に対する尋問が長時間にわたり同期日に終了しなかつたのは、処分者本人が前後矛盾した供述をしたり、いつたん行なつた供述を取り消したりした結果でもあつた。

一四、同第一三回期日に関する事実は認める。なお、審査請求取下げの点については被告もこれを否定した。

一五、同第一四回期日に関する事実は認めるが、(2)記載の事実は、被告委員会委員長が原告ら側に対し尋問に入るよう再三にわたり促したというにすぎないものである。

一六、同第一五回期日に関する事実は認めるが、(4)記載の事実は処分日時の点についての処分者本人に対する主尋問は終つたとの趣旨である。

一七、同第一六回期日に関する事実は認めるが、(2)記載の被告委員会委員長の発言の後、原告ら側代理人は反対尋問をする意思を全く持つていないわけではない旨述べており、また、(11)記載の八日市場市内での開催要望の根拠は従来の要望理由に附加して述べたものである。

一八、同第一七回期日に関する事実中、同期日の審理開始前に原告ら側代理人ら約二〇名が被告委員会委員長室で被告委員会委員と面会したこと、その際の原告ら側の要望およびこれに対する被告の回答が被告主張のとおりであつたこと、原告ら側が審理会場に入らかなつたことは認めるが、原告ら側代理人らが強引に被告委員会委員長室に入つたとの点は否認する。同期日に証人三名が呼び出されていたこと、被告委員会委員長の右証人らに対する事情説明および同証人中の一名の発言の点は不知。なお、原告らは、同期日の二、三日前から被告委員会委員長らとの面会を、その事務局を通じて申し入れ、同期日の午前中にもその申入れをしたが、暫時待つようにとのことであつたので待機していたところ、同期日の午後二時すぎ頃了承を得て面会したものであつて、決して強引に被告委員会委員長室に入つたものではない。また、原告ら側代理人が原告ら側申請の証人に対し、証人として同期日に出頭させないようにするとの脅迫的言辞を述べたようなことは全くない。さらに、原告ら側が同期日に審理会場に入らなかつたのは、八日市場市内での審理開催問題や処分者本人に対する反対尋問の問題についての被告の見解を再度明確にしてもらうため、文書による回答を求めるとともに、同日の審理の延期を要望して待機しているうちに、午後五時を過ぎてしまい、被告からの連絡もなく、原告ら側では右期日が実際に開かれたかどうか判らないままに同期日が終つてしまつたからであつた。

一九、被告主張の二の事実中、被告委員会が慎重かつ誠に忍耐強く本件審査請求の審理をしたこと、原告らが本件の核心に触れない関連事項の要望をしたこと、原告らが証人尋問等さらには審理を放棄したこと、かかる権利行使の機会を被告委員会が原告らに与えたことはいずれも否認するが、その余の事実は認める。

被告は、原告ら側が太田に対する反対尋問権を放棄し、さらには審理拒否、妨害におよんだ結果、審理を終結したものである旨主張するが、かかる主張は原告ら側の発言の言葉尻りをとらえてのものであつて、原告ら側の真意を理解しなかつたことによるものである。原告らは被処分者であつて被告に対してその救済を求めている者である。かかる立場にある原告らが処分者本人に対する処分事由についての反対尋問権を放棄し、被告の審理を拒否しさらには妨害することはあり得ないし、現実にかかることをなしていない。原告ら側が被告委員会の委員長の勧告に従わずして処分者本人に対する反対尋問をしなかつたのは、次のような理由によるものであり、被告はこのことを十分に承知していたものである。

原告らはいずれも八日市場市の職員であつたところ、前記のような処分を受けたものであるから、かかる処分の救済手続である被告の審理は八日市場市において開催すべきものである。ところで、地方公務員法第七条三項により本来各市町村がそれぞれ公平委員会を設置することが要求されているが、同条四条により各市町村が共同して設置することが許されているところから、被告は八日市場市等の各市町村等で共同設置されているものである。しかしながら、公平委員会は地方公務員に対する争議権剥奪の代償機関であると称される面を持ち、市町村において極めて重要な行政機関である。かかる公平委員会が有効にその機能を発揮するために必要な、各市町村の行財政の実態や職員の勤務実態についての充分な掌握ということは、公平委員会が各市町村に設置されていてはじめて可能となるのである。したがつて、法律の規定如何にかかわらず、本来八日市場市においても公平委員会を設置すべきものである。

公平委員会の不利益処分の審査手続は、準司法的手続といわれ、司法審査手続に類似した面をもつてはいるが、これは適正かつ公正な人事行政を担保するためのものであり、その実質は司法審査される前に行政機関内部において再度処分の当否を反省検討する機会を与えるための行政手続であり、あくまで行政機関内部の問題であつて訴願手続的なものである。したがつて、本件審査手続も八日市場市行政機関内部の問題である。

被告の千葉県市町村公平委員会共同設置規約においてもその審理を千葉市で行うことを予定していない。同規約第三条には被告の事務所を千葉市内に置く旨規定されてはいるが、これはあくまでも事務所を便宜上千葉市に置くことを定めたにとどまり、審理を同市において行うことを定めたものではない。むしろ、同規約の趣意とするところは、地方公務員法の精神からいつても、特定の事務に要する経費を当該市町村に負担させることにしている(同規約第八条)ことに徴しても、その審査手続は事件発生の各市町村において行うことを予定しているものということができる。

以上の理論的根拠からして本件審理は八日市場市において行うべきであるということができるが、さらに以下に述べるような実際的理由からも本件審理を同市において行うべきであるということができる。

千葉市における審理では、原告らの八日市場市職員組合関係の代理人が代理人として充分な活動をすることができず、公正な審理が不可能である。なんとなれば、処分者である八日市場市長は、原告ら側が再三に亘つて右代理人らが本件審理に出頭する場合職務免除あるいは特別休暇扱いとするよう要望したにもかかわらずこれに応じなかつた。その結果、右代理人らは本件審理あるいはその打ち合わせのため年次有給休暇をとることを余儀なくされたが、右休暇にも限度があり、毎回継続して審理やその打ち合わせに参加することが実際上不可能であつた。このことは、一般事件と異なり労働組合活動に関連して生じた本件のように右代理人らの活動に多くを期待せざるを得ない事案においては致命的なことである。ことに審理が本件審査の中心である処分者本人の尋問という重要な段階になつている時点においてはなおさらのことといえる。現に処分者本人である八日市場市長に対する尋問中、原告ら側代理人の弁護士の尋問に対しては同人は虚偽の供述をなし、右代理人が事案の真相を知らないがためさらに同人を追及することができなかつたところ、八日市場市職員組合関係者の原告ら側代理人がその点について尋問したため、同人は真相を供述せざるを得なかつたこともあるのである。

被告は、原告ら側のかかる立場に応じ本件審理期日を土曜日の午後に指定したというが、八日市場市と千葉市との間の距離、事前、事後の準備等を考えると、決して原告ら側の前記立場を救済するに足るものではない。

本件処分の真相は、審理を八日市場市において行うことにより明らかとなり、このことは同市民の多くが要望しているところである。本件審理を八日市場市において行う場合には、事件関係者や事件に関心を持つている市民の傍聴が容易になるが、千葉市においてこれが行われる場合にはこのような傍聴は経済的負担その他諸種の事情から極めて制限されることになる。このことは、証人が審理において虚偽の証言をなし、真実を証言しない原因ともなるのである。かかる事情にある場合、市民の強い要望を無視することはできず、八日市場市において審理を行うべきである。

反面本件審理を八日市場市において行うにつきなんらの障害はないのである。現に被告委員会委員長も将来の時点において審理を八日市場市において行うことを考慮する旨言明していたのである。

原告ら側は、以上の理論的、実際的理由から本件審理開始の当初から審理を八日市場市において行うよう被告に要請したのであるが、原告ら側が繰り返し強く右要請をなしたのは、被告にある程度右要請を容れようとの意向が看取され、また被告委員会の委員の中には原告ら側の右要請に賛成する者がいるかのごとく仄聞したこともあるからである。かかる事情の下において原告ら側がさらに審理の八日市場市開催を強く要請することにより、本件審理において最も重要な処分者本人の処分事由に関する反対尋問を八日市場市において行うことができるものと考え、本件審理の第一六回期日においてその旨強く要請したにすぎないのである。しかるに被告は原告ら側の右期日における発言の言葉尻りをとらえ、その真意を理解しようとせず、原告ら側が反対尋問権を放棄し、審理を拒否あるいは妨害したとして審理を終結したものである。

二〇、被告主張の三の点は争う。本件においては、原告らが地方公務員法第三七条一項違反の行為を行なつたと認定した被告委員会の裁決の違法性が問題とされているのであるから、被告の主張は失当である。なお、同法条違反の行為者が公平委員会に不利益処分審査請求をした場合であつても、公平委員会としては審査を行い、不当な処分であることが判明すれば、これを取り消し、または修正すべきであつて、右法条違反ということを理由に審査を打ち切るべきものではない。

第三、被告の主張

(請求の原因に対する答弁)

一、請求原因一の事実は認める。

二、同二の事実中、原告らが処分者本人である八日市場市長に対して反対尋問をしていないこと、原告ら申請の証人尋問を行なつていないこと、本件審理においては処分者本人の尋問のほか、処分者側提出の書証(乙第一ないし第一二号証)の取調べをなしたにすぎないこと、被告委員会の不利益処分に関する審査に関する規則第九条五項に原告ら主張のような規定があり、原告らが最終陳述、必要な証拠の提出をしなかつたことは認めるが、その他の点は否認する。

(被告の主張)

一、被告委員会のなした公開口頭審理の経過は以下に述べるとおりであるが、その審理は、いずれも原告ら三名の申立てを併合してなし、場所は、千葉市市場町所在の千葉県自治会館六階会議室であり、代理人は、原告ら側は弁護士八名、その他四三名、処分者側は弁護士二名、その他一名をそれぞれ選任し、提出書面としては、多数の上申書のほか、処分者側は答弁書と準備書面二通、原告ら側は請求書と準備書面一通およびその補足書一通を各提出し、書証として、処分者側が乙第一ないし第一二号証を提出し、証人等として、原告ら側は処分者本人と証人一三名、処分者側は処分者本人と証人八名をそれぞれ申請していたものである。そこで、審理の経過を詳細にみると以下のとおりである。

第一回期日(昭和三八年六月二四日午前一〇時三五分から午後一二時五〇分まで)

(1)、被告委員会委員長から、原告らに対し不服事由の明確化を、処分者(八日市場市長)に対し処分事由の明確化を、それぞれ求めた。これに対し、

(2)、処分者側は、処分事由は処分通知書記載のとおりであると述べた。

(3)、原告ら側は、不服事由は口頭で述べると主張し、その前提として、

処分者本人の出席を要求し、

処分者を弁護士が代理することができるかどうか地方自治法上疑義があると述べ、

原告らを処分して後、処分者側が原告らの職員組合に弾圧を加える等の不当労働行為をしているので、被告委員会においてこれを止めさせるよう措置して欲しい旨要望し、

八日市場市職員のうち、処分者側の代理人あるいは傍聞人として被告委員会の審理に出席する者については出張として取り扱い、原告らの代理人となつて出席する者については休暇扱いとする同市の不公平な取扱いをなくすよう被告委員会の措置を求め、

被告委員会の審理を八日市場市において開催するよう要求した。これに対し、

被告委員会委員長は、

(4)、処分者の出席については、その必要があれば出席させるが、現在のところその必要がないと述べ、

弁護士が処分者の代理人となることは差支えないとの結論を出し、

不当労働行為の点については、被告委員会の審理に関係があれば考慮すると述べ、

さきの釈明事項については書面で釈明して欲しいと要望した。

第二回期日(昭和三八年七月一三日午後二時一五分から午後四時一二分まで)

(1)、原告ら側は、処分者の代理人たる弁護士の資格についての疑義、審理会場を八日市場市に変更して欲しい、処分者側が親和会(第二組合)を作つたり、原告側組合員に対し賃金カツトや昇給停止をしたりして不当労働行為をしているので、これを止めさせて欲しい、原告側の代理人あるいは傍聴人として審理に出席する八日市場市職員については、これを休暇扱いとせず、職務専念義務免除の扱いにして欲しいと述べた。

(2)、処分者側は、原告ら側の代理人あるいは傍聴人につき、職務専念免除の扱いはできないと述べた。

(3)、被告委員会委員長は、処分者側代理人(弁護士)の資格について、鈴木、増岡両弁護士が八日市場市嘱託に任命されたので、地方自治法第一五三条関係の疑義は解決された、審理会場変更問題は、現在のところ八日市場市で開催する考えはない、処分者本人の出席の点は、必要により被告委員会が喚問する、職員組合に対する弾圧等の不当労働行為は、それが事実とすれば好ましくないので、必要によつて審理と併行して調査のうえ配慮する、原告ら側代理人(八日市場市職員)についての休暇措置についても、一応考慮しつつ審理を進める、と述べた。これに対し、

(4)、原告ら側は、審査請求の事由として、処分者の処分通知書に書かれている内容の事実はない、さらに、事実審理に入る前提として、職員組合に対する不当な弾圧を排除して欲しい、そのために、処分者本人の喚問を要求し、この前提条件を保障してくれないかぎり、公平な審理を期待できないから、事実審理に入れないと述べた。

第三回期日(昭和三八年八月一四日午後一時四六分から午後三時三七分まで)

(1)、被告委員会委員長は、同委員会の結論として、処分者本人の出席勧告の件は、現段階では不必要と考えると述べ、審理に入つた。これに対し、

(2)、原告ら側は、処分者側で処分の正当性について主張、立証する責任があると述べ、事実審理の前提事項として、

処分者本人の出席、職員組合に対する弾圧、不当介入の排除、原告らの代理人となつた八日市場職員の出席につき、不公平な扱いをしないよう保障すること等を要求した。

(3)、処分者側は、職員組合弾圧行為が事実なら別途に措置要求等をなすべきであると述べた。

(4)、被告委員長は、前提事項の論議打切りを求め、審理の進行を求めた。

(5)、原告ら側は、さらに八日市場市職員である代理人の出席保障、処分者本人の出席、弁護士が処分者の代理人になることについての疑義を述べたうえ、原告らに対する本件免職処分の日付を問うた。これに対し、

処分者側は、原告らに対する処分の年月日は、昭和三八年三月二二日であると述べた。

第四回期日(昭和三八年八月三一日午前一〇時二四分から午後一二時一〇分まで)

(1)、原告ら側から被告委員会委員長に対し、左記事項につき回答を求めた。

八日市場市職員で原告らの代理人になつている者の出席保障(出勤扱いとするが、最低限として職務免除扱いとするか、さらに有給休暇をとつた場合に期末勤勉手当を差し引くようなことをしないか)

処分者側の不当労働行為についての調査結果

処分者の代理人である弁護士を八日市場市の嘱託に任命した条例は無効ではないか

原告らに対する処分事由についての釈明問題

処分者本人の喚問問題

(2)、これに対し、被告委員会委員長は、次のように回答した。

調査の結果、八日市場市職員たる代理人につき不当な差別扱いはないと考えるが、なお検討する。

不当労働行為については、公平な審理を妨げるおそれのある事実は発見されなかつたが、処分者側も誤解を生ずるようなことは避けるよう希望する。

弁護士である処分者の代理人の資格については、条例が無効であるとの事実はないと思う。

処分事由の釈明問題については、被告委員会としては、処分者側に処分事由の主張、立証を、原告ら側に不服事由の主張、立証をそれぞれしてもらうという取扱いで審理を進めたい

処分者本人の喚問は現在のところその必要を認めない。

(3)、その後も原告ら側から代理人の出席保障、不当労働行為の排除について発言があつたが、被告委員会委員長はこれを打ち切り、処分事由について原告ら側の釈明を促した。これに対し、

(4)、原告ら側は、処分事由のうち、主として「請求人等が共謀して」の「共謀」なる語につき、それが具体的には何を指すのか、と質問し、この事実問題の応答に第四回期日の約半分の時間が費された。

第五回期日(昭和三八年九月二五日午後一時三〇分から午後五時まで)

(1)、原告ら側は、再び主張、立証責任の問題、処分者本人の出席、喚問、八日市場市職員たる代理人の出席保障(特に有給休暇をとつたことにより期末勤勉手当を差し引かぬこと)につき発言した。

(2)、被告委員会委員長は、勤勉手当問題については、別に措置要求の申立てをしてはどうか、と述べて審理の進行を促した。これに対し、

(3)、原告ら側は、処分者側の答弁書中、左の点につき釈明を求めた。

原告ら側職員組合を「未登録団体」と書いてあるが、これも処分事由か。

原告らが争議を「共謀した」とあるが、それは具体的に何を指すか。

「休暇斗争」とは、どういう斗争を指すのか、またそれに参加した人は誰か。

「業務の正常な運営を阻害し」とあるが、これは具体的に阻害されたということか、または抽象的なことか。

以上のように、第五回期日においては、実質的な釈明、応答が行なわれた。

第六回期日(昭和三八年一〇月二六日午後一時四二分から午後四時二八分まで)

(1)、被告委員会委員長は、処分者側に対し、

期末勤勉手当の支給につき適当と思われない処置をしているようであるが、今後は有給休暇の行使、不行使を年末勤勉手当の算定資料にしないよう要望し、

次いで、本案審理に入りたいと述べて、原告ら側に釈明事項が全部終了したかどうかについて尋ねた。これに対し、

(2)、原告ら側は、関連事項として、

不当な昇給停止、八日市場市職員たる代理人の出席につき職務免除扱いにすること、右事項を解決するために処分者本人が出席することを要求し、

これらの事項は公平な審理を確保するために必要なことだから、被告委員会がこれにつき明確な態度をとつてくれないかぎり、本案審理は進められない、と述べた。

(3)、処分者側は、原告ら側主張の右関連事項は、審理と直接関係がないとして審理の進行を求め、原告ら側と応酬した。

第七回期日(昭和三八年一一月三〇日午後一時二五分から午後四時五分まで)

(1)、被告委員会委員長は、委員会の調査結果として、昇給停止問題につき、一部の課では始末書を書けば昇給停止をしないでやる、ということがあつたようだが、市長(処分者)の考えとして全体的にやつたことではないようだ、しかし、処分者側としては、職員組合側を刺戟するようなことはくれぐれも注意してもらいたいと述べた。

(2)、原告ら側は、なお、休暇斗争に参加した者が昇給停止で圧迫されている、これにつき職員組合よりなした措置要求はどうなつたか、組合員に対する追加処分をしないか、八日市場市職員たる代理人の出席保障、処分者本人の喚問について発言し、これらの事項につき、被告委員会の明確な態度を要求した。

(3)、処分者側は、右原告ら側主張事項は審理に無関係であると主張した。

被告委員会委員長は、原告ら側に対し釈明事項の有無を尋ね、さらに審理の進行方法として、次回は釈明に充て、一月には証拠決定をすることにしてはどうかと述べた。

第八回期日(昭和三八年一二月二三日午後一時三〇分から午後四時一〇分まで)

(1)、被告委員会委員長は、今回で釈明問題を全部終了させる予定であると述べた。

(2)、被告ら側は、前提事項として、左の事項につき、被告委員会としての強い態度をとるよう求めた。

八日市場市職員たる代理人の出席につき、職務免除扱いとすること、勤勉手当の計算方法、昇給停止問題、処分者本人の喚問、処分者側の職員組合ボイコツト。これに対し、

(3)、被告委員会委員長は、「何回も繰り返しているように、余り刺戟になることは止めてくれと処分者側に要望するにつきる」と述べた。

(4)、処分者側は、職員組合を下当に圧迫している事実はないと答えた。

(5)、被告委員会委員長は、原告ら側の発言を打ち切つて、再三処分者側の答弁書に対する原告ら側の釈明を促した。

第九回期日(昭和三九年二月七日午前一〇時一五分から午後三時一五分まで)

(1)、原告ら側は、職員組合から出した措置要求(原告ら以外の八日市場市職員で昇給停止の処分を受けた者に関する)の件につき、早急に結論を出すよう求めた。

(2)、被告委員会委員長は、右措置要求、審査と関係があるようだから審査と一括して結論を出すことになろうと答えた。

(3)、次いで、処分者側提出の準備書面に対する実質的釈明に入り、特に処分者側答弁書に、処分事由として「計画を立案し、実行を共謀し、職員に働きかけ、業務を阻害し、争議行為をし」とあるが、これは一つの処分事由か、それともそれぞれ独立した処分事由かにつき長時間に亘り質義応答が行なわれた。

原告ら側は、釈明が終了した旨述べた。

第一〇回期日(昭和三九年三月六日午後一時三五分から午後四時三〇分まで)

(1)、原告ら側から、措置要求はどうなつたかとの発言があつた。これに対し、

被告委員会委員長は、審査請求の判定と同時に行なうと答えた。

(2)、原告ら側から、原告ら側提出の準備書面について説明するとの申立てがあり、第一〇回期日の全部をその説明に費した。

(3)、最後に、被告委員会委員長は、次回から立証に入るので、次回に双方証拠の申立てをするようにと述べた。

第一一回期日(昭和三九年四月七日午後一時四〇分から午後三時四五分まで)

(1)、双方から次のように証拠の申出がなされた。

原告ら側は、処分者本人(他の証人一三名については、申請書だけ提出。)。

処分者側は、処分者本人と証人八名。

尋問予定時間として、

(2)、原告ら側は、処分者本人につき約三時間、処分者側は、本人と山崎証人につき各一時間、他の証人は一人につき各二〇分ないし三〇分と述べた。

(3)、処分者側は、乙号証を提出。

(4)、被告委員会委員長は、次回に処分者本人太田福次郎および証人山崎一郎の尋問をなす旨述べ、尋問の順序は、原告ら側からまずなすように指示した。

第一二回期日(昭和三九年五月一六日午後一時から午後六時一五分まで)

(1)、原告ら側が処分者本人に対する尋問をなし、第一二回期日の全時間をこれに費した。

(2)、次回に処分者本人に対する尋問が続行された。

第一三回期日(昭和三九年六月二七日午後一時三〇分から午後四時五〇分まで)

(1)、処分者側から、原告らが審査請求を取り下げたとの話があるが、真実であるかどうかとの質問があり、

原告ら側はこれを否定した。

(2)、前回に続き処分者本人に対する原告ら側からの尋問が続行され、第一三回期日はその全時間をこれに費した。

(3)、被告委員会委員長は、処分者本人に対する尋問を次回に続行する旨告げた。

第一四回期日(昭和三九年七月二五日午後二時五分から午後五時九分まで)

(1)、原告ら側から左のごとき発言がなされた。

弁護士で処分者側代理人になつている者の資格についての疑義。

弁護士が権力者側代理人になることは、弁護士法第一条第一項に違反して無効であること。

処分者たる市長は、現在も職員組合側の職員を差別待遇しているが、この場ではつきり弁明すること。差別をしないという保障がなければ、審理は続けられない。

(2)、被告委員会委員長は、原告ら側の右発言を打ち切り、尋問を続行するよう六回に亘つて促した。

(3)、これに対し、原告ら側は、なお発見し、公平な審理を保障するために処分者が差別待遇を止めるよう被告委員会としてなんらかの保障をしてくれないならば、本日の審理を放棄する旨言明。

(4)、被告委員会委員長は、原告ら側が予定の尋問を続行せず、これを放棄するならば本日は閉会しましようと述べる。

(5)、原告ら側と処分者側との間で、差別待遇(主として勤務評定の基準)についての応答がなされ、結局審理期日外において両者でその点を話し合うことに決まる。

(6)、最後に原告ら側から本件公開口頭審理を八日市場市に移すようにとの要望あり。

第一五回期日(昭和三九年八月二九日午後一時四四分から午後五時二分まで)

(1)、被告委員会委員長は、処分者本人の尋問を続行すると述べる。

(2)、原告ら側は、その前提事項として、

市職員たる代理人の出席保障問題

審理会場を八日市場市に移すか、または夜間実施すること昇給停止の問題等につき、

長時間に亘り発言する。

(3)、休憩後被告委員会委員長は、審理の続行を促す。

(4)、原告ら側は、処分者本人に対する尋問はもう何もない旨答える。

(5)、被告委員会委員長は処分者本人に対する処分者側の尋問を促す。原告ら側からの「反対尋問は」との間いに対し、それを許可する旨答える。

(6)、そこで、処分者側が処分者本人に対する尋問を行う。

(7)、被告委員会委員長は、処分者側の右尋問の終了後、原告ら側に対し反対尋問をなすよう促すも、原告ら側がこれに相当時間がかかるとのことであつたため、次回に原告ら側の反対尋問をなす旨告知する。

(8)、次いで、原告ら側は再び審理を八日市場市で開催するよう要求し、そのために期日がさきになつてもやむを得ない旨申し出る。

(9)、被告委員会委員長は、次回期日を変更し、被告委員会で協議のうえあらためて期日を通知する旨告知した。

第一六回期日(昭和三九年一一月二八日午後二時四四分から午後四時二一分まで)

(1)、被告委員会委員長は、原告ら側に対し処分者本人に対する尋問をなすよう促す。

(2)、原告ら側は、その前提問題として、本件につき太田八日市場市長が県に調停を依頼した事実について質問する。

(3)、被告委員会委員長は、さらに原告ら側に対して反対尋問をなすよう促す。

(4)、原告ら側のある代理人から、原告ら側の反対尋問の予定であつたが、右八日市場市長が調停を依頼した件につき、これを明確にして後尋問したい、旨の発言あり。

(5)、被告委員会委員長は、原告ら側に反対尋問を促す。

(6)、原告ら側のある代理人は「今日我々はあくまでも審理を現地で開催することを主張せんがために出頭してきたのであつて、太田市長に対する反対尋問を予定してきたものではない。したがいまして、我々は本日太田市長の尋問に入る意思は全くない。」との発言をなす。

(7)、被告委員会委員長は、そうであれば被告委員会としても考慮しなければならない旨述べる。

(8)、原告ら側はなお処分者本人が県に依頼した調停の件と、八日市場市開催の件とが解決されなければ、審理進行に応じられないと主張する。

(9)、処分者側から八日市場市長が、調停を依頼したが、結果は不調であり、現在は調停の意思がない旨答える。

(10)、被告委員会委員長は、調停問題の発言を打ち切る。

(11)、原告ら側は、なおも八日市場市開催につき訴える。その主張の根拠は、交通費等の節約と本件解雇問題についての八日市場市民の偏見を除くためであるというにある。そして最後に「現地八日市場市に開催できないという主張を公平委員会がおとりになるならば、私は今後この八日市場市の開催希望をめぐつて、要請をめぐつて何日でも何か月でも現地で開催できるその日まで私たちはこの公平委員会を頓座してもらいたい、中止してもらいたい」と発言する。

これに対し、被告委員会委員長から、それが原告ら側全体の意見であるかどうかを確認したところ、右発言者は「そうです」と答えた。

第一七回期日(昭和四〇年二月一三日)

同期日は原告ら側申請の証人二名、処分者側申請証人一名を呼び出していた。

審理開始直前の午後二時二〇分頃、原告ら側代理人等約二四名が被告委員会委員長室に強引に入り込み、被告委員会委員に面会を申し込む。

原告ら側は、審理を八日市場市で開催すること、処分者本人に対する尋問をなすべきことを要求し、押し問答の末午後四時四〇分に至る。

被告委員会としては、現在八日市場市開催の必要を認めない、処分者本人の尋問をどうするかの決定を留保する旨答える。

原告ら側は、右被告委員会の態度を不満として、全員退去し、審理会場にも入らなかつた。

被告委員会委員長は、出頭した証人三名に事情を説明し、本日は尋問をしない旨告げる。

その際、原告ら側申請証人の一名は被告委員会に対し「過日原告ら側の人がきて、証人として出頭するつもりか、もし出頭しようとするなら出頭できないようにするとの脅迫的なことを言われた」と事情を訴えた。

二、以上のように、被告委員会は、本件審査請求事件について、約一年八か月の長きにわたり、前後一七回の公開口頭審理を行い、この間慎重かつ誠に忍耐強く原告らの請求を審理したものであるが、原告らは本件の核心に触れる事項ではなく、いわゆる関連事項に関する発言を盛んに行い、被告委員会委員長の再三にわたる要望を容れることなく、審理の大部分の時間をそれに費してしまつた。特に、原告らは本件審理を八日市場市において開催するよう強く要求して、その要求が容れられない限り「審理に応じない」と明言し、第一六回期日に至るや、被告委員会委員長が再三にわたり尋問を促したにもかかわらず、当該期日に予定されていた処分者本人に対する原告ら側からの反対尋問を行わず、さらに第一七回期日に至つては、原告ら側申請の証人二名が呼出しに応じて出頭しているにもかかわらず、またも八日市場市開催を要求して、それが容れられないとみるや、審理会場に入ることなく全員が退去してしまつたものである。このように審査請求者がみずから申請した証人に対する尋問を放棄し、そのうえ審理に出頭しない以上、被告委員会としては手の施しようもなく、やむを得ず被告委員会の不利益処分に関する審査に関する規則一一条に基づいて審理を打切り、その時点までに形成されていた心証に基づき、昭和四〇年四月一〇日本件裁決をなしたものである。なるほど、原告ら主張のように、原告らの最終陳述は行われていないが、これは被告委員会においてその機関を与えなかつたものではなく、原告らがこの権利を放棄し、最終陳述も、必要な証拠の提出も、さらには処分者本人に対する反対尋問もしなかつたものである。被告委員会としては、原告らがかかる権利を行使する機会を十分に与えていたものである。前記規則第八条四項には、当事者は、審査が終了するまでは、何時でも公平委員会に対し、証拠の申出をすることができる、但し公平委員会が必要がないと認めるときは、これを調べないことができる、と同規則第九条四項は、公平委員会は、口頭審理の秩序維持のため必要があると認めるときは、傍聴者を退席させ、又は当日の口頭審理を打切ることができる、と、同規則第一一条は、公平委員会は、請求者の死亡所在不明等により審査を継続する必要がなくなつたと認める場合においては、審査を打切り審査の請求を棄却することができる、とそれぞれ規定しているのであつて、被告委員会は右の各規定に則り本件裁決をなしたものであつてなんら違法な点はない。

三、さらに、被告委員会としては、原告らが争議行為をみずから実行し、かつ他にも働らきかけたことを認めているものであるから、かかる事実の存在を承認する限り、すでに十分な心証を得たものである。すなわち、地方公務員法第三七条によれば、争議行為を行なつた職員は、地方公共団体に対し法令に基づいて保有する任命または雇用上の権利をもつて対抗できないものとされているのであるから、その当然の帰結として、地方公務員法に基づく公平審理を受ける権利を失うこととなり、したがつて、審査を中途で打切り、以後の証拠調べや最終陳述の機会を与えることなく裁決をしたとしても、審理手続上なんら違法とはならないものである。

第四、証拠関係<省略>

理由

一、請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

二、そこで、被告委員会の本件裁決につき、違法な点があつたかどうかについて検討する(なお当然のことながら右にいう違法とは、原処分の違法以外の裁決の手続等裁決固有の違法を指すものである。)。

1、本件裁決に至つた被告委員会の審理手続等が第五回期日の審理開始時刻の点、第六回期日における被告委員会委員長が原告ら側に対し釈明事項は全部終つたか、と尋ねたとの点および(2)、(3)記載の事実、第一四回期日において被告委員会委員長が原告ら側に対し尋問に入るよう六回促したとの点、第一七回期日において原告ら側代理人らが強引に被告委員会委員長室に入つたこと、同期日に証人三名が呼び出されていたこと、被告委員会委員長の同証人らに対する事情説明、同証人中の一名の発言の点を除き、その余は被告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、第一一回期日において、被告委員会委員長が、次回は処分者本人および証人山崎一郎に対する尋問をなす旨決定し、尋問の順序は原告ら側からする旨告知したことは原告らの明らかに争わないところであり、いずれもその成立に争いのない乙第二号証の一、三、五ないし九、一一、一二、一四、一五、一七、同第五号証の一〇、傍線の部分および四枚目表上段記載の「八日市場市民三万四千」、四枚目裏上段記載の「三、一四常任委員会」との記載部分を除きその余の部分の成立につき争いのない乙第五号証の七、証人鈴木貞男の証言によりその成立を是認することのできる甲第一号証、証人鈴木貞男の証言(ただし、後記の信用しない部分を除く。)、被告代表者中村作次郎の尋問の結果によれば、原告ら側は、本件処分日時問題が解決して後に申請する予定で、昭和三九年四月七日付の証拠申出書をその頃作成し、それによると、原告ら側は被告委員会に対し、なお証人四三名のほか原告ら三名の尋問を申し出る予定でいたこと、第一回期日において、原告ら側がさらに、本件処分の行われた当時、被告委員会が不存在であり、審理が直ちに開催されなかつたことの不当性およびかかる救済機関不存在の状態でなされた本件処処が違法であるとの発言をなしたこと、第三回期日において、なお主張、立証責任の問題につき議論されたこと、第五回期日の審理開始時刻が午後二時であつたこと、第六回期日において、被告委員会委員長が原告ら側に発問したのは、釈明要求事項の前段部分は全部終つたかとの趣旨であること、同期日の審理は、処分者の行なつた昇給停止と本件審査請求事件の関係者に対し追加懲戒処分を処分者がほのめかしていることが審理の公正を害するとの原告ら側の主張をめぐつて大部分の時間が費されたこと、同期日において原告ら側が被告委員会の明確な態度表明がないかぎり審理を進行することはできない、との趣旨の発言をしたこと、第七回期日において、なお被告委員会は若干の関連問題についての審理を続行することを原告ら側に許容したこと、第八回期日において、原告ら側が処分者側に対し処分事由についての釈明要求を若干行なつたこと、第九回期日において、原告ら側の行なつた釈明要求は、さらに他の点についてもなされたこと、第一一回期日において、原告ら側のなした証拠申出は、本件処分日時の問題に限定したものであつたこと、第一二回期日における処分者本人に対する尋問が長時間にわたり同期日に終了しなかつたのは、処分者本人の供述が前後矛盾し、あるいは供述後に供述を取り消したりしたこともあつてのことであること、第一四回期日において、被告委員会委員長が原告ら側に対し、再三にわたつて尋問に入るように促したこと、第一五回期日において、原告ら側が処分者本人に対する主尋問が終つたと述べたのは、本件処分の日時に関するものであつたこと、第一七回期日の開始前、原告ら側代理人ら二十数名が被告委員会委員長室に押しかけ、被告委員会委員に面会を申し込み、審理を八日市場市で開催し、処分者本人に対する尋問をなすべきこと、および同日の証人尋問を延期すること等を要求し、双方押し問答の結果午後四時四〇分頃に至り、原告ら側は、被告委員会の態度を不満として審理会場に入ることなく退去したため、被告委員会委員長は出頭した証人三名に対してかかる事情により同期日において尋問することができない旨告げたところ、右証人のうち一名から、原告ら側の者から同期日に出頭してはいけない旨の脅迫的なことを言われた旨知らされたことをそれぞれ認めることができ、右認定に反する証人鈴木貞男、同宇津木正憲、原告鵜之沢昭の各供述部分は、前示各証拠との対照上たやすく信用することができず、他に右認定を左右するに足りる適当な証拠がない。

2、右1掲記の事実(争いのない事実を含む)といずれも成立に争いのない甲第三、四号証、乙第二号証の一ないし一七、乙第四号証、同第五号証の一三、一四、一六、一八、一九、二一ないし二六、証人宇津木正憲の証言によりその成立を是認することのできる甲第二号証、証人宇津木正憲、同小金森実、同山崎芳松、同鈴木貞男の各証言、原告鵜之沢昭本人、被告代表者中村作次郎の各尋問の結果によれば、一七回にわたる審理期日のうち、第一〇回までは本件処分の日時および処分事由、原告ら側の不服事由、答弁書、準備書面等双方提出の書面についての質疑応答、釈明等直接事件に関する事項の弁論が若干なされたが、大部分は原告ら側より提起した処分者側代理人の資格についての疑義、処分者側の原告ら側職員組合および組合員に対する差別待遇の排除、八日市場市の職員である原告ら側代理人が審理期日に出頭する場合の職務免除等の便宜供与、八日市場市における公開口頭審理(以下現地審理という)要求など、これに対する処分者側の反論、被告委員会委員長の応答、ならびに右三者の意見開陳に費やされ、第一一回期日にはじめて証拠調の申請がなされ、第一二、第一三、第一五回期日に処分者本人の尋問が行われたが、第一四回期日では原告側が処分者側代理人の資格についての疑義、職員組合員に対する処分者側の差別待遇の撤回等について交々発言し被告委員会委員長の数次にわたる処分者本人尋問の要請に応せず、右尋問に入ることなく期日を終了した。そして、第一二、第一三回期日における処分者本人に対する尋問は、処分の日時に関する事項についてなされたのであり、第一五回期日の尋問は処分者側代理人によつてなされ、処分者が給与条例案を八日市場市議会に提出した経緯、それに対する職員組合の態度、動向、原告らを懲戒処分に付した経過等について尋問が行われたが、尋問の前後において、原告ら側から再び前記各問題、就中現地審理の要求が強硬になされ、それに相当の時間が費やされた。すなわち、同期日は午後一時四四分開かれ、午後五時二分閉会となつたのであるが、尋問に入る前約一時間三〇分にわたり(約二〇分間の休憩時間を除く)論議が交され、処分者代理人の尋問終了後、原告ら側から、次回期日(九月二六日)を現地で開会しないのなら、延期されたいと申出で、被告委員会は九月二六日の次回期日の指定を取り消し、閉会した。かくて同年一一月二八日午後二時四四分第一六回期日が開かれたが、原告ら側は冒頭処分者が前回の期日後千葉県知事に対し本件処分問題について調停を依頼したことについて処分者に釈明を求め、処分者側は、「調停により和解が成立したのならば格別、調停は不調に終つたのであるから、調停依頼の理由やその経過などを究明することは、本日の処分者に対する尋問とはなんら関係がない。すみやかに処分者本人の反対尋問に入り、その問題はその後で討議された」。と反対し、原告ら側は、「処分者が真に和解の意思があつて調停の依頼をしたのならば、公平委員会の審査をわずらわさずに話合いで解決する途が開かれる。しかし、処分者はみずから依頼した調停を断つている。したがつて、不純な意図のもとに調停依頼をしたのではないかとの疑が濃厚であるので、この点につき処分者の真意を確かめる必要があり、処分者の釈明がない限り、反対尋問をすることはできない。」と主張し、それに関連して、「本日は処分者の反対尋問に入ることを予定して出頭したわけではない。あくまでも現地開催を求めるために出頭したのである。」と被告委員会に対し現地審理を要求し、論議の重点がこの問題に移行し、原告ら側は、被告委員会委員長の、処分者に対する尋問をなすべき旨の指揮に従わず、勢いの赴くところ、小金森代理人よりの「いつの日か八日市場で開かれる日まで審理に応じない覚悟である。」旨の発言みるに至り、一旦休憩の後、宇津木代理人が原告ら側を代表して「市町村職員の利益擁護を考えていただければ、公平委員会の性格からいつて八日市場市において公開審理を開けない理由は薄弱である。また、委員長は、この期日だけは既定どおり行い、その後のことは検討することにしたいと言われるのであるが、それから判断しても現地で開くことにそれ程の困難性は見受けられない。したがつて、いまのところ現地審理に反対であるという公平委員会の態度こそ問題であつて、現地で開催できないといわれるのならば、この要請をめぐつて何日でも何か月でもそれが実現できるその日まで公平委員会を頓挫してもらいたい。中止してもらいたい。こういうことを強く要求する。」旨を述べ、被告委員会委員長は、右が原告ら側全体の意見であることを確かめ、あと、いかに審理するか検討して明らかにする旨を告げ、次回期日を定めず、午後四時二一分閉会した。被告委員会は原告ら側が右の如く処分者に対する尋問をしない態度を明らかにしたので、その尋問を取りやめ、次回には原告ら側申請の証人二名、処分者申請の証人一名の尋問をすることにし、その期日を昭和四〇年二月一三日と指定したが、右期日は前記のように経過し、実質上の審理に入らず終了した。そして、被告委員会の委員は本件処理につき合議したが、原告ら側の右のような態度から、原告ら側は被告委員会の審理を拒否し、妨害するものであり、これ以上審理を進める理由も必要もないと判断し、この段階において審理を打ち切り、裁決するのが相当であるとの結論に達し、本件の如く、請求者が積極的に審理を拒否した場合は不利益処分に関する審査に関する規則第一一条の「請求者の死亡所在不明等」の場合以上に審理打切りの対象となり、同規則第九条五項所定の当事者に対する最終陳述および証拠提出の機会を与えることを要しないとの判断のもとに、当事者に対し審理を終結して、裁決する旨を告知することなく、本件裁決をした。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

しかしながら、右掲記の各証拠によれば、被告委員会は、原告ら側の現地審理の要求を全面的に不可としたのではなく、必要があると認められたときには、現地において審理をすることを考えるが、現段階においてはその必要がないとして被告委員会の事務所所在地である千葉市において審理を進める方針をとつていたものであること、そのため原告ら側は、さらに強硬に現地開催を要求すれば、その実現が可能であると考え、前記の如く、執拗に現地審理を主張し、要求が容れられない限り、審理には応じないとの態度をとつたのであるが、それは要求貫徹を急ぐ余りの発言であつて、現地審理が実現しない以上、絶対に審理には応じないという意思を有したものではなく、したがつて、本件裁決がなされたことは原告ら側の全く予期しないところであつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そもそも、公平委員会は、地方公共団体の専門的な人事行政機関として、本来専門的技術的な人事行政の円滑な運営、とくに職員の利益の保護をはかり、かつ人事の公正を期するため、任命権者の人事権の行使に基準をあたえるとともに、任命権者から独立して、人事行政を総合的に運営する目的のもとに、中央における人事院と同じ構想で、地方公務員法に基づいて設置されているものであるが、その権限は準司法的権限である公平事務すなわち、職員の勤務条件に関する措置の要求および職員に対する不利益処分を審査し、これについて必要な措置を講ずることにあり、その目的を達するため法令または当該団体の条例規則に違反しない限度において規則を制定することが認められている。ところで、公平委員会の準司法的権限のうち、勤務条件に関する行政措置をなす権限は、公務員がその地位の特性からみずからの団体協約締結権あるいは争議権により勤務条件の向上確保等をはかる権利をあたえられていないため、それに代つて、職員に勤務条件に関する行政措置の請求権があたえられたことに対応するものであるが、他の権限すなわち職員の意に反する不利益処分の審査は、必ずしも右の職員に団体協約締結権あるいは争議権があたえられていないことに代るものではない。そうではあつても、職員の意に反する不利益処分がなされた場合、一般の企業におけるそれのようにその処分の撤回を要求して争議権を行使し、みずからの手でその救済をはかることが法律上許されていないことを十分に考慮し、公平委員会の前記目的に副うべく運営されなければならないものである。この公平委員会の責務は、現行法上その意に反する不利益処分を受けた職員がその違法を主張して裁判所に出訴することが認められ、さらに公平委員会の裁決の違法を主張して裁判所に出訴することをも認められていることによりいささかも軽減されるものではない。

かかる前提のもとに本件審理と裁決をみると、原告らあるいはその代理人らにおいて必ずしも本件審査に関係のない、あるいは被告委員会の権限に属しない事項を問題として提起し、その解決を迫り、あるいは被告委員会に対しその義務に属しない現地八日市場市における審理を強く要求し、殊に現地審理についてはそれが容れられない以上審理に応じない態度をとつたのであつて、そのかぎりにおいては、原告らあるいはその代理人らには責めらるべき点が多々あつたことは否めない。しかしながら、被告委員会は第一六回期日において当事者双方に対し、爾後いかに審理するか検討して明らかにする旨を告げて閉会し、第一七回期日は審理会場外の被告委員会委員長室における論争に終始して事実上流会となつたのであるが、その際被告委員会委員長は処分者本人の尋問をどうするかの決定を留保すると答え、審理打切りの姿勢を示さず、その後において審理打切りを決意したものであること、および被告委員会のそれまでの態度から審理を継続するものと信じていた原告らにとつて本件裁決は全く予期しないものであつたことに照せば、原告らに責むべき言動があつたとはいえ、被告委員会設置の趣旨、目的にかんがみ、被告委員会としては、前記規則第九条五項(ちなみに人事院規則一三―一に殆んど同一規定がある。)に従い、当事者に対し最終陳述および証拠提出の機会をあたえるべきであり、少くとも被告委員会としては、審理を打切り裁決をなすことに決定するに際してはその旨を告げて原告ら側の意向を確かめそれでもなお原告ら側が審理に応じない態度をとつたときにはじめて審理を打ち切り裁決すべきものと解すべきである。したがつて、かかる措置を講ずることなくなされた本件裁決は違法のものといわざるをえない。

被告は、原告らは地方公務員法第三七条一項の規定に違反する行為をしたものであるから、同法条二項の適用を受け、公平委員会の審理を受ける権利を失うので、その審理を中途で打切られてもなんら違法ではない、と主張するが、被告委員会の審理は原告らの行為が同法条に違反しているかどうかを審査するためのものであるから、原告らがすでに同法条に違反しているとする右主張は失当であり採用し難い。

三、以上の次第で、本件裁決は違法であるからこれを取り消すべく、原告らの本訴請求は理由があるので正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中隆 渡辺昭 片岡安夫)

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