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前橋地方裁判所太田支部 昭和49年(ワ)42号 判決 1977年2月28日

原告 国

訴訟代理人 山口智啓 坂田栄 石坂次男 ほか二名

被告 坂上安弘 ほか三名

主文

被告らは原告に対し、各自金六三三、九九〇円および金一、一九四、七四九円に対する昭和四六年一二月四日から同四七年五月一二日まで、金七八一、七八八円に対する昭和四七年五月一三日から同年六月七日まで金三六八、八二七円に対する昭和四七年六月八日から、金五、六二五円に対する昭和四六年一二月二九日から、金一八〇、八九〇円に対する昭和四七年六月二五日から、金七八、六四八円に対する同年六月二七日から各支払ずみまでそれぞれ年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文第一、二項同趣旨の判決

2  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告野村年男(以下被告年男という)は、被告棟沼一男(以下被告一男という)所有の貨物自動車(群四ふ一七六〇号以下加害車甲という)を運転し、昭和四六年二月一五目午後〇時三〇分ころ、県道館林江口線を館林市方面から群馬県邑楽郡明和村大字江口方面へ向つて直進し、同県同郡同村大字南大島六〇五番地先路上にさしかかつたのであるが、同所において折から進路前方左側路地から同県道に進入した被告坂上安弘(以下被告安弘という)の運転する被告坂上新一(以下被告新一という)所有の貨物自動車(群四ふ四七〇四号以下加害車乙という)と衝突し、このはずみで加害車甲が一道路側端を自転車で進行中の訴外片岡寛一(以下被害者という)に追突し、同人を道路脇の用水堀に自転車もろとも転落させその結果被害者に右下腿骨開放骨折、右腸骨部挫傷の傷害を与えた。

2  前記衝突事故は、車両が幅員の狭い道路から幅員が明らかに広い道路に右折する場合、広い道路を通行する車両等の進行を妨害してはならない注意義務があつたにもかかわらずこれを怠つた被告安弘の過失と、進路前方を注視し交差点の状況に応じできる限り安全な速度と方法で車両を進行させなければならない注意義務を怠つた被告年男の過失とに因るものであるから、右被告両名はそれぞれ民法第七〇九条第七一九条による責任があり、被告新一は加害車乙を、被告一男は加害車甲をそれぞれ保有し、自己のため運行の用に供していたものであるからそれぞれ自賠法第三条に基づく運行供用者責任がある。よつて被告ら四名は、各自被害者の受けた損害を賠償する義務を負うものである。

三  ところで、被害者は群馬県川俣郵便局に勤務し、貯金保険集金業務の職務遂行中事故に遭遇したものであるところから被害者の右傷害は国家公務員災害補償法による公務災害と認定された。

よつて原告は被害者の負担するに至つた医療費につき同法第一〇条に基づき被害者に対し昭和四六年一二月三日金一、一九四、七四九円、同年一二月二八日金五、六二五円、昭和四七年六月二四日金一八〇、八九〇円、同年六月二六日金七八、六四八円合計金一、四五九、九一二円を療養補償として給付したので同法第六条の規定によりその給付額を限度として被害者が被告らに対して有する損害賠償請求権を取得した。

4 一方原告は、加害車甲加入の自賠責保険から治療費として昭和四七年五月一二日金四一二、九六一円ならびに加害車乙加入の自賠責保険から同じく治療費として同年六月七日金四一二、九六一円計金八二五、九二二円の填補を受けた。

5 よつて原告は、被告らに対し前記療養補償給付額金一、四五九、九一二円から前記治療費として填補を受けた金八二五、九二二円を差引いた残額金六三三、九九〇円および各療養補償給付をした翌日からそれぞれ別紙記載のとおりの民法所定の法定利息年五分の割合による遅延損害金(内訳は別紙記載のとおり)の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告安弘、同新一ら)

1  請求原因第1項について

同項のうち「被告安弘運転の加害車甲が同所において折から進路前方左側路地から同県道に進入した」との事実は否認しその余は認める。

2  同第2項について

同項のうち被告安弘に「車両が幅員の狭い道路から幅員が明らかに広い道路に右折する場合、広い道路を通行する車両等の進行を妨害してはならない注意義務があつたにもかかわらずこれを怠つた過失がある」との点は否認する。本件事故は被告年男の一方的過失によるもので、被告安弘との共同不法行為によるものであるとの点は争う。

被告新一が加害車乙を保有している点は認める。

3  同第3項について

不知である。

4  同第4項について

認める。

5  同第5項について

争う。

(被告年男同一男ら)

1  同第1項について

被告年男が被告一男所有の加害車両を運転した事実のみ認めその余は争う。

2  同第2項について

被告年男に業務上の過失ありとの点は否認し、その余は争う。

3  同第3項について

不知である。

4  同第4項について

認める。

5  同第5項について

争う。

三  被告らの主張

1  (被告安弘同新一の主張)

原告の有する損害賠償請求権は、被害者の有する損害賠償請求権が同一性をもつて移転したものであるから、時効の起算点は被害者が損害および加害者を知つた時である。

従つて原告の有する損害賠償請求権はすでに時効により消滅している。

2  (被告新一の主張)

被告安弘は自動車の運行に関し注意義務を怠つたことはなく、本件事故は、運転者以外の第三者被告年男の過失によるものである。

四  被告らの主張に対する認否

被告らは、原告の被告らに対する本件損害賠償請求権はすでに時効により消滅している旨を主張するが、原告は被告安弘および同年男に対して昭和四九年二月一二日付同月一四日到達した書留内容証明郵便をもつて本件損害賠償債務の履行を催告し、その後同年八月七日本訴を提起しているから、右被告らに対しては消滅時効は中断されている。

また、被告新一および同一男については、同人らはいずれも右被告安弘および同年男らと連帯債務者の関係にあるから右消滅時効中断の効果がおよび、よつて同人らと同様消滅時効は中断されている。

第三証拠<省略>

理由

一(1)  原告と被告安弘、同新一との間において請求原因第1項中「被告安弘運転の加害車甲が同所において折柄進路前方左側道路から同県道に進入した」との事実を除きその余の事実および同第2項中被告新一が加害車乙を保有している事実ならびに同第4項の事実。

(2)  原告と被告年男同一男らとの間において同第1項中被告年男が被告一男所有の加害車甲を運転した事実および請求原因第4項の事実。

についてはいずれも争いはない。

二  前記一の各事実と<証拠省略>によると請求原因第1項および同第2項中本件事故が被告安弘の過失と被告年男との過失により惹起されたものであることが認められる。

被告安弘同年男の各供述中右認定にていしよくする部分は前掲挙示の証拠に照らし措信し難いし、右認定を覆すに足りる証拠はない。

従つて右被告両名は民法第七〇九条第七一九条により責任があり被告新一は加害車乙を同一男は加害車甲をそれぞれ保有し自己のため運行の用に供していたものであるから自賠法第三条により運行供用者の責任がある。

よつて被告ら四名は各自被害者の受けた後記損害につき賠償すべき義務がある。

三  損害 一、四五九、九一二円

(1)  治療費等 一、二八三、五四二円

<証拠省略>によると治療費、初診料、血液輸送代、器具代等の合計が右金額となることが認められ右請求は相当である。

(2)  文書料 四、五〇〇円

<証拠省略>によると前記金額が認められる。

(3)  付添看護料等 一七一、八七〇円

<証拠省略>によると付添看護料、付添看護人寝具代合計が右金額となることが認められる。

四  <証拠省略>によると被害者である片岡寛一は群馬県川俣郵便局に勤務し、貯金、保険集金業務の職務遂行中事故に遭遇したものであるところから被害者の本件傷害は、国家公務員災害補償法による公務災害と認定され請求原因第4項に掲記年月日に前記治療費等、文書料、付添看護料等合計金一、四五九、九一二円につき療養補償として給付されたことが認められる。

よつて、原告は、国家公務員災害補償法第六条の規定により、同給付額を限度として被害者が被告らに対して有する損害賠償請求権を取得した。

五  実質損害額

一方原告は加害車甲加入の自賠責保険から金四一二、九六一円ならびに加害車乙加入の自賠責保険から金四一二、九六一円、計八二五、九二二円の填補を受けているから前記療養補償給付額金一、四五九、九一二円から前記填補分を控除すると実質損害金額は前記のとおりとなる。

六  抗弁について

<証拠省略>によると原告は被告安弘、同年男に対し昭和四九年二月一二日付同月一四日到達した書留内容証明郵便をもつて本件損害賠償債務の履行を催告し、その後昭和四九年八月七日本訴を提起していることが認められるから右被告らに対しては消滅時効は中断されている。 また、被告新一および同一男については同人らはいずれも右被告安弘および同年男らと連帯債務者の関係にあるから右消滅時効中断の効果がおよびよつて同人らと同様消滅時効は中断されている。

七  結語

以上の事実によると原告の被告らに対する本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を、それぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 多賀谷雄一)

別紙<省略>

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