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前橋地方裁判所 平成4年(わ)47号 判決 1992年5月19日

本店所在地

群馬県太田市大字内ケ島一四三〇番地の四

協和パーツ株式会社

(右代表者代表取締役 白濱菊男)

本籍及び住居

群馬県太田市木舞木町六二六番地の二

会社役員

白濱菊男

昭和一一年一二月一二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官信田昌男出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人協和パーツ株式会社を罰金四、〇〇〇万円に、被告人白濱菊男を懲役一年六月に処する。

被告人白濱菊男に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人協和パーツ株式会社(平成元年四月二〇日以前の商号は協和企業株式会社)は、群馬県太田市大字内ケ島一四三〇番地の四(平成二年四月一六日以前は同市飯田町七〇八番地の一)に本店を置き、自動車用部品の製造および販売等(本件当時は労働者派遣業を主たる営業内容としていた)を目的とする資本金一、四〇〇万円の株式会社であり、被告人白濱菊男は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、従業員の賃金の水増しをし、売上の繰延べをするなどして簿外預金を蓄積するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六二年五月一日から昭和六三年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五、六六三万六、七〇六円であったのにかかわらず、昭和六三年六月三〇日、同県館林市仲町一一番地一二号所在の所轄館林税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、六九一万五、三八三円でこれに対する法人税額が五九八万八、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二、二六七万一、二〇〇円と右申告税額との差額一、六六八万二、八〇〇円を免れ、

第二  昭和六三年五月一日から平成元年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億三、七五七万三、五四四円であったのにかかわらず、平成元年六月三〇日、右館林税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、三三八万九、五五三円でこれに対する法人税額が一、七一九万六、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額五、六七五万三、六〇〇円と右申告税額との差額三、九五五万七、三〇〇円を免れ、

第三  平成元年五月一日から平成二年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二億三、四四四万七、二八一円であったのにかかわらず、平成二年七月二日、右館林税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六、〇〇八万六、一九三円でこれに対する法人税額が二、二九四万四、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額九、二六八万九、〇〇〇円と右申告税額との差額六、九七四万四、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  井田武夫及び中島清の検察官に対する各供述調書

一  井田武夫(六通)、中島清(一〇通)、能瀬薫(二通)、能瀬照夫、中田眞弓、竹辺英二良、深田幸雄、平石強、中村隆、湯澤照行、栁澤収、矢野知顕、黒田長久、池上藤則、岩橋恒夫、前澤慶之、後藤元堯、杉山義明、山崎史朗、角尾彰美、中野四郎、北野雄樹、猪原昭三、吉村末広の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、賃金調査書、福利厚生費調査書、水道光熱費調査書、退職金調査書、旅費交通費調査書、保険料調査書、募集費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、事業税認定損調査書、現金及び預金調査書、代表者勘定調査書

一  登記官作成の商業登記簿謄本

判示第一事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六二年五月一日、至同六三年四月三〇日のもの)

判示第二事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六三年五月一日、至平成元年四月三〇日のもの)

判示第三事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自平成元年五月一日、至平成二年四月三〇日のもの)

(法令の適用)

判示各行為は、法人税法一五九条一項(被告人会社については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状に鑑み同法一五九条二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金四、〇〇〇万円に、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月にそれぞれ処し、被告人に対し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

本件は、被告人会社の所得を過少申告することによって法人税を免れたという事案であるが、被告人は、部下に指示して賃金の水増し計上、売上げの繰延べないし除外及び従業員の福利厚生費などの経費の水増し計上をさせるなど多岐にわたる手段を用い、二重帳簿を作成するなどして計画的に所得を秘匿し、ほ脱所得は合計三億八二六万六、四〇二円、ほ脱税額は合計一億二、五九八万四、五〇〇円といずれも高額であり、そのほ脱所得率・ほ脱税率とも約七〇パーセントと高率であり、加えて、かかる脱税事犯は国民に税負担の不公平感を醸成させ納税意欲を喪失させるものであるから一般予防的見地をも考慮すると、被告人及び被告人会社の刑責は決して軽いものではない。

しかしながら、被告人は本件犯行の非を深く反省している旨供述し、本件犯行後はその業務内容を改め、被告人会社の経理体制も強化され第三者の日常的な監督も期待できることから、再犯のおそれは少ないこと、被告人には罰金前科一犯と労働基準法違反等による懲役四月・二年間執行猶予付の判決を受けた(いずれも昭和四〇年代のもの)ほかは前科がないことなど、被告人及び被告人会社に有利に斟酌すべき事情も存するので、主文のとおり量刑し、被告人につきその刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 沼里豊滋)

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