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函館家庭裁判所 昭和54年(少)0440号 決定 1979年6月29日

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

1  公安委員会の運転免許を受けないで昭和五四年四月二七日午後九時三〇分ころ、函館市○○町××番××号付近道路において普通乗用車(登録番号 ○××て××××)を運転し

2  同日午後九時三〇分ころ同所付近道路において、信号機の表示する止まれ(赤色の燈火)の信号に従わないで上記自動車を運転通行した

ものである。

(法令の適用)

一の事実につき道路交通法六四条、一一八条一項一号

二の事実につき同法七条、四条一項、一一九条一項一号の二、同法施行令二条一項

(処遇の理由)

1  少年は、昭和五一年六月三〇日窃盗、無免許運転、シンナー等吸入の各非行により保護観察に付されたが、その後も窃盗、シンナー吸入、無免許運転等の各非行を繰り返し、同五二年四月少年鑑別所に収容された後同年五月一一日在宅試験観察に付され、試験観察期間中は前記のような非行は発覚せず同五三年四月一八日不処分とされた。その後同年六月二輪免許を取得し、自動二輪車に興味を持つて種々の問題を起こし(同年一〇月一二日速度違反(二七キロ)により不処分)、更に普通乗用自動車に興味を示すようになり、免許取得前から自動車の購入を計画する等し、普通免許取得のため自動車教習所に通所中本件非行を犯し、その際パトカーに追跡されて駐車中の車両に衝突して物損事故を起こしている。

少年は、昭和五一年一一月高等学校退学後各種の職業に就いたが、いずれも持続せず短期間でやめ、両親及び担当保護司の指導監督に従わず、かえつて両親に反抗して暴力をふるう等し、日常生活においても夜遊び、外泊を繰り返し、更にシンナー吸入を再発する等して無為徒食の生活を続けて現在に至つている。

2  少年は、年齢に比較してかなり幼稚で自己中心的な行動傾向が顕著であり、社会性が未熟である。そして、無気力、無目標で勤労意欲がなく、怠惰性を強め、遊び中心の意識の下で日常生活を送り、現在では自動車運転に対して異常なまでの執着心を示している。

3  少年の家庭は、父母と兄の四人家族であり、父は、少年の施設収容に反対しているが、家庭における統制力が弱く、少年の処遇についての解決策は持ち合わせておらず、監護能力に欠けている。また、母及び兄は、少年を更生させるために施設収容を希望している。

4  前記のような少年の問題点及び家庭の統制力の弱さ等が原因となつて、本件非行及び少年の日常生活の乱れが生じているものと認められる。

本件非行は自動車の運転に係る非行ではあるが、前記のような保護観察後本件非行に至る経過、少年の問題点、家庭の監護能力等に鑑みれば、少年の問題点を矯正し、もつて少年の再非行を防止するためには、厳正な教育環境の確保と相当長期間の教育訓練が見込まれる(少年の持つ問題性は、早期改善の可能性は小さく、短期間の継続的、集中的な指導、訓練による矯正を期待することはできない。)。

5  よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項を適用して、主文のとおり決定する。

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