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仙台高等裁判所 昭和61年(ラ)74号 決定 1986年12月05日

抗告人

渡辺廣行

相手方

柳沼正志

主文

原決定を取り消す。

相手方柳沼正志に対する売却はこれを許さない。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

抗告人の抗告理由一について

本件物件の登記簿謄本によると、本件物件はもと地番は(福島県)岩瀬郡鏡石町大字鏡田字蒲ノ沢二五九番一と、地目は畑と、地積は九八一m2と表示されていたが、昭和五二年四月一〇日地目を宅地と変更し(同年六月六日登記)、同五五年七月一七日国土調査による成果として地番が岩瀬郡鏡石町大字鏡田字蒲之沢町四一〇番に、かつ、地積は錯誤により一〇五六・六四m2と変更されたことが認められる。

現況調査報告書によれば本件物件(土地)は、ほぼ二と一の割合による東西に長い長方形であつて、その東南端近くの一部分には、地上物置(倉庫、未登記、軽量鉄骨造、亜鉛メッキ鋼板葺平家建、四〇・二五m2)が所在しその敷地約四〇・二五m2が(現況)宅地であつてその余の部分の土地は畑として耕作利用されている旨記載され、現地写真二枚が添付されていることが認められる。

又、評価人林誠の評価書によれば、前記現況調査報告書の記載のほか(但し宅地部分についてはこれを除く)右地上物置四〇・二五m2は、コンクリート基礎造りであつて、右物置にはひさし部分が二八・七五m2(一一・五〇×二・五〇)があり、右物置部分を含む本件物件(土地)の東南側一五八m2が宅地として、本件物件の西北側八九八・六四m2は畑として耕作利用されていること、本件物件(土地)の地域について、平坦な地勢で、僅かに農家住宅と一般住宅が散在する外は、大部分を田、畑等の農地で占められている旨が記載され、現場写真一枚が添付されていることが認められる。

右認定した事実によると、本件物件(土地)はもと畑であつたが昭和五二年に地目が宅地と変更されたところ、現在の時点の本件物件の利用状況について、宅地部分としての利用範囲に関し、現況調査報告書と評価書との間に相違があるけれども宅地部分として利用されているのは最大限本件物件の約七分の一のごく僅かな部分の一五八m2にすぎず、大部分の土地(約七分の六)は現実に農地として肥培管理されているというべきである。なお、前掲の各添付写真によれば、前記物置には藁などの農作物が積まれているほかトラクターなどの耕作機械が置かれていることが認められる。そして強制競売手続上では、前記のように農地部分と宅地部分とが区分される場合でしかもそれぞれが独自に利用価値が認められるようなときにはこの両者が各独立して分筆されることが望ましいとはいえても、現実には、本件物件(土地)は一筆の土地とされている以上本件物件(土地)が全体として農地法二条一項にいう農地といえるかどうかが判断されるべきことになる。

本件物件(土地)は、昭和五二年登記簿上地目が宅地と変更されたのであり、その変更に際しては、農業委員会の意見などを徴してその手続を進めたものであり(法務省民事局長通達昭和三八年六月一九日民事甲第一七四〇号、同四八年一二月二一日民三第九一九九号参照)、したがつて、このことは十分考慮されなければならないけれども、必ずしもこれを絶対視すべきではなく(法務省民事局長通達昭和五六年八月二八日民三第五四〇二号参照)、現在の時点ではその大部分が現実に農地として肥培管理されており、宅地に相当する部分も前記の利用状況からみれば、農業用の施設として利用されておりこれらを総合考察するときには本件物件(土地)は、全体として農地法二条一項にいう農地であると認めるのが相当であつて社会常識にも合致するといえよう。地目が宅地であり又は一部分が宅地として利用されているからといつて、本件物件(土地)全体の農地であることを否定することはできない。

ところで、農地については農地法上、その権利取得者の資格が制限され、強制競売上も、特別の手続きをとるべきことが予定されており(民執規三三条参照)宅地などの通常の不動産に対する強制競売手続と相違するものがあるところ、原審は、本件物件(土地)の地目が宅地であることを理由として、通常の不動産に対する強制競売手続を進めていることは、記録上明らかであつて、これは結局、民事執行法七一条七号にいう「その売却の手続に重大な誤りがある」ものに該当するのみならず同条二号に該当するおそれがあるから、本件売却許可決定は違法であり、この点をいうと解される論旨は、理由があるというべきである。

よつて、その余の点について判断を省略して、本件売却許可決定を取り消し、相手方柳沼正志に対する本件物件(土地)の売却はこれを許さないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官奈良次郎 裁判官伊藤豊治 裁判官石井彦壽)

抗告の趣旨

原決定を取消し、柳沼正志に対する売却を不許可とする裁判を求める。

抗告の理由

一 本件土地及び隣接地四一〇番二、四一〇番三は何十年来畑として耕作して参り、昭和四九年許可を得て本件土地の片隅に四九m2の納屋を建てたのです。小屋以外は畑地であります。

農業委員会に聞いたら、登記簿上の地目が農地以外でも現況が農地の場合は必ず農地法の許可を受けなければならないことになつており、許可なく譲渡転用した場合は農地法三条乃至五条の違反になるとの事であります。

二 新民事執行法は悪質な競売ブローカーの関与を排除する趣旨の立法が為されております(民執六五条、七一条四号)が、本件買受人は悪名高い金融業者であり不動産ブローカーで弱い者虐めをしている札付きの男であり、現に抗告人に七〇〇万円という多額の金を要求しているのであります。

何ら労せずして七〇〇万円という金を得ようとしているのです。

裁判所がこれを看過して許可決定したことは甚だ残念であります。

三 最低競売価額及び競落価額が八七六、〇〇〇円(一m2一、八六七円)でありますが、下記により極めて低価額であることが明らかであります。

(1) 最低競売価額及び競落価額 金八七六、〇〇〇円 一m2一、八六七円

(2) 鏡石町の固定資産税評価額 金五、二四〇、九三四円 一m2四、九五九円

(3) 税務署の相続税・贈与税の価額 金五、二四〇、九二四円の一・四倍 一m2六、九六八円

(4) 時価価額 一m2三〇、〇〇〇円

従つて原裁判所の最低競売価額の決定は著しく低額であり物件明細書の価額・現況について誤りがあるので訂正されるべきであると思います(民執七一条六号、七号)。

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