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仙台高等裁判所 昭和61年(ラ)17号 決定 1986年8月27日

抗告人

吉田弘志

代理人弁護士

市井茂

市井勝昭

今野忠博

主文

原決定を取消す。

本件売却を許可しない。

理由

本件抗告の趣旨は、主文同旨の決定を求めるものであり、その理由は、「本件競売手続において、評価人は、本件不動産が市街化調整区域内に所在するものであるのに、市街化区域内に所在するものとしてその評価額を算出した。したがつて、右評価額に基づいてされた本件競売手続は違法である。」というものである。

よつて、判断するに、記録によれば、次の事実が認められる。

本件競売不動産は、いわき市明治団地八三番二三〇宅地二二四・七〇平方メートルであるが、評価人藁谷守は、右土地が市街化区域、第一種住居専用地域であるとして、その価額を三二五万八〇〇〇円(一平方メートルあたり一万四五〇〇円)と評価する旨の評価書を提出した。原裁判所は、これに基づき、三二六万円をもつて最低売却価額と定めて、本件不動産を競売(期間入札)に付した。抗告人は、昭和六一年二月一二日付の入札書をもつて四四二万五〇〇〇円の額で買受ける旨の申出をした。そこで、原裁判所は、抗告人が最高価買受けの申出をしたとして、本件売却許可決定をしたことが認められる。

しかし、抗告人が提出したいわき市長作成の証明書によれば、本件不動産は都市計画法にいわゆる市街化調整区域内に存在するものであることが明らかであり、当裁判所の債権者福島県信用保証協会に対する照会の結果によれば、市街化区域と市街化調整区域とでは価額に差がある(前者は後者の二倍ないし三倍)ことが認められる。

ところで、執行裁判所が不動産の競売において最低売却価額を定めることとしている趣旨は、不動産の適正妥当な価額での売却を保障することにあるものである。したがつて、最低売却価額が不当に低廉である場合と同様に、不当に高額の最低売却価額が決定、公告された場合も、適正妥当な価額での売却をしたものとはいえないから、適法な最低売却価額の決定、公告がなかつたものとして、民事執行法七一条六号、七号に違反するものといわなければならない。

これを本件についてみるに、評価人の、本件不動産が市街化調整区域内に存在することを看過し、これが市街化区域内に存在するとして誤つてされた本件評価は、不当な高額をもつてされた疑いがあり、右評価は適正に行われたものということができない。

したがつて、右評価に基づいて最低売却価額を定めた本件競売は、適法な最低売却価額の決定、公告を欠くものとして違法であるといわなければならない。

よつて、本件抗告は理由があるから、原決定を取消し、本件売却を許さないこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官輪湖公寛 裁判官武田平次郎 裁判官木原幹郎)

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