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仙台高等裁判所 昭和58年(行コ)15号 判決 1984年5月18日

宮城県古川市李

字明神一三番地

控訴人

梅森昭雄

同県同市幸町一丁目二番一号

被控訴人

古川税務署長

荒川重夫

林勘市

庄司勉

佐々木範三

鈴木洋一

武山洋明

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が古川市東町三番四三号佐藤きをに対して国税犯則取締法第十二条ノ二に基づく告発の手続を為さぬことの違法であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張は、控訴人が当審において別紙記載のとおり主張したほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

証拠関係は記録中の証拠関係目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

当裁判所は本件訴えは不適法であって却下すべきであると判断する。その理由は原判決の理由と同一であるからこれを引用する。要するに、不作為の違法確認の訴えは、法令に基づき申請権を有する者が申請をしたにかかわらず、行政庁が相当の期間内に何らの応答をしない場合に、右申請権者がこれを提起しうるものである。控訴人の本件申請(と称するもの)は、行政庁の職権発動を促す趣旨のものにすぎず、法令に基づく申請でないこと明らかである。

よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤幸太郎 裁判官 石川良雄 裁判官 岩井康倶)

控訴の理由

一、原判決は、たとえ被告が原告から佐藤きをに対して告発をするよう申請を受けたにもかかわらず、これについて相当の期間内になんらかの手続をしなかったとしても、そのことがただちに該申請をした原告の個人的利益を害したこととなるものではない。との判断をなしたが、当判断は誤った判断といわざるをえない。

すなわち、不作為の違法により作出された不法状態を排除することにより回復される社会全体の利益を考慮して控訴人が被控訴人に対し求めた当該手続を被控訴人がなさないことが、不法状態を排除することを求めたという、控訴人の利益を害したこととなる。

二、原判決は、被告ら収税官吏は原告の本件申請に対してなんらかの応答をなすべき義務を有しているものではない。従って、原告は、被告が告発をしないことについての違法の確認を求めることはできないものというべきである。との判断をなしたが、当判断は誤った判断といわざるをえない。

すなわち、応答すべき義務を有しないとしても、収税官吏には当該告発をなすべき換言すれば法令に従うべき義務がある。

本訴の如き不作為の違法が重大明白な訴えであれば、この訴訟によって護らるべき法的利益換言すれば、不作為の違法により作出された不法状態を排除することによって回復される社会全体の利益を考慮し抗告訴訟の途を開くことが、現代社会の実情に則して法治主義の理念を貫き、且つ行政事件訴訟法の法意に適合するものである。

三、原判決は、被控訴人の本案前の主張に対する控訴人の反論の1についてのみ判断をなしているが、当判断は審理不尽ないし理由不備のそしりを免れない。

すなわち、原審は控訴人の反論の一部の排除をなしたが、本訴の如き不作為の違法が重大且つ明白な訴であれば、容易に排除をなすべきでなく、審理をつくし、しこうして、訴訟判決についての判断をなすべきである。

以上のとおり判決は、法令の解釈を誤ったか、若しくは審理不尽理由不備の違法があり、よって、控訴に及ぶものである。

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