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仙台高等裁判所 昭和54年(ネ)113号 判決 1987年7月15日

控訴人 川原利夫

右訴訟代理人弁護士 榊原孝

被控訴人 太田安五郎

右訴訟代理人弁護士 伊藤大陸

主文

原判決中、控訴人に関する部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

一、控訴代理人は、主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却、控訴費用控訴人の負担との判決を求めた。

二、当事者双方の主張及び証拠の関係は、被控訴人において「原判決の別紙目録記載の土地、建物(本件土地、建物)は被控訴人の控訴人に対する四〇〇万円の借金債務の譲渡担保として、控訴人の名義に所有権移転登記を経由したものであり、その当時、本件建物は新築したばかりであり、本件土地、建物の価額は右借金額をはるかに超えるものである。」と補足し、控訴人において「本件土地、建物は被控訴人主張の借金債務のために、代物弁済契約ないし買戻予約のもとに控訴人の名義に所有権移転登記されたものであり、その当時の価額は土地が四四六万円余、建物が未完成のものであって(両者あわせて五〇〇万円が限度として評価していた。)全部を四〇〇万円の債務の代物弁済に供しても不自然ではなかった。」と補足し、当審における証拠関係が当審記録中の証拠目録のとおりであるほかは、原判決の事実摘示のとおりであるから、ここに、これを引用する。

理由

一、被控訴人の本訴請求は、被控訴人が控訴人に対する四〇〇万円の借金債務の担保のために、本件土地、建物を譲渡担保とし、その所有名義を控訴人の名義に所有権移転登記をしたことを前提とし、その被担保債務である元金及び利息等の支払と引換に、自己の所有名義を回復するため控訴人に対して所有権移転登記手続を求めるものであるが、債務の担保として物件を譲渡した場合には債務者が債務の履行について先給付の義務を負うのであり、担保物件の返還との同時履行ないし引替給付の関係に立たないものである(譲渡担保においても、その担保性からみて、この点については抵当権または仮登記担保権のときと同様に解するのが相当である。抵当権についての最判昭和五七・一・一九裁判集民事一三五号三三頁、仮登記担保権について最判昭和六一・四・一一裁判集民事一四七号五一五頁各参照)から、被控訴人の請求はその前提において失当であるし、かりに、被控訴人の請求を将来被担保債務を完済することを条件に、予めその時点における所有権移転登記手続を求める旨の、将来の給付請求と理解しても、そのような給付請求を予めなす必要は認められず失当である。

したがって、被控訴人の請求は現在の段階ではいずれの点からみても、理由がなくこれを棄却すべきであるから、これと結論を異にする原判決は不当であるので民事訴訟法三八六条に従い、原判決を取り消して被控訴人の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき同法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奈良次郎 裁判官 伊藤豊治 石井彦壽)

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