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仙台高等裁判所 昭和43年(く)40号 決定 1968年10月31日

少年 T・N子(昭二八・三・一六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年の法定代理人名義の抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する。

まず、職権で調査すると、少年に対する親権者としては、申立人のほか、少年の実父であるT・S(大正八年一〇月二〇日生)があつて、申立人と婚姻関係にあり、ともに同居していることが明らかである。そして、未成年者の父又は母は、親権者であるという地位にもとづいて、未成年者の法定代理人となるものであり、かつ、親権は、父母の婚姻中は、父母の一方が親権を行なうことができない場合のほか、父母が共同して行なうべきものとされているのであるから(民法第八一八条参照)、少年法第三二条が法定代理人に付与している抗告権も、父母の一方が親権を行なうことができない場合のほか、親権の共同行使として、父母が共同して抗告申立をすることを要するものと解するのが相当である。してみると、少年の母である申立人だけの申立にかかる本件抗告は、少年の父が親権を行なうことができない事情を記録上何ら窺うことができず、かつ、少年の父が本件抗告の申立について同意していたことを推認すべき資料も何ら存しないから、不適法というほかはない。

この点を別としても、記録により明らかな少年の本件各非行の動機、経緯及び態様、少年の非行化の程度、少年の性格、経歴、転職事情、少年の非行前後の生活状況及び交友関係、家庭に対する親和感の程度、保護者の保護能力等の情状を考え合わせると、少年に対しては、少年院に収容したうえ、集団的な生活訓練を通じて社会的協調性を養い、あわせて適当な職業訓練を施すことが必要であると認められる。したがつて、原裁判所が少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたことをもつて、所論のように、著しく不当な処分であるとはとうていいうことができない。論旨は理由がない。

そこで、本件抗告は理由がないから、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 有路不二男 裁判官 西村法 裁判官 桜井敏雄)

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