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仙台高等裁判所 昭和41年(ネ)315号 判決 1968年10月16日

主文

原判決を左のとおり変更する。

被控訴人は、控訴人に対し金二万九、〇〇〇円を支払え。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

この判決中控訴人勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人に対し、金三一万三、八三七円およびこれに対する昭和三一年七月一日以降完済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

第一、控訴人は、被控訴人から

(一)  昭和三〇年四月九日金三万円を、同月一〇日金七万円を、利息月五分、弁済期昭和三一年六月三〇日、の約定で借り受け、

(二)  昭和三〇年一二月二〇日、金二万円を、弁済期、利息の定めともに(一)と同じ約定で借り受け、

(三)  昭和三〇年一二月二七日、金六万円を、弁済期、利息の定めともに(二)と同じ約定で借り受けた。

第二、訴外瀬川政吉は、被控訴人から昭和三〇年九月二六日、金六万五、〇〇〇円を、利息日歩五銭四厘、弁済期昭和三一年一月三〇日、遅延損害金日歩七銭の約定で借り受けた。

第三、

(一)  訴外瀬川政吉は、控訴人のために、昭和三〇年九月二六日被控訴人に対し、金五万円を、第一(一)の借金に対する一〇か月分の利息として弁済し、

(二)  控訴人は、昭和三一年六月三〇日被控訴人に対し、自己の前記借金の元利のほか、第二の瀬川の借金を同人に代わり、合計五五万円を支払つた。

第四、右第三の弁済は、利息制限法所定の制限を超える前記約定利率にしたがつて計算しても二四万六二六円三〇銭の超過払いであり、まして利息制限法の制限にしたがつて計算するときは、いうに三一万三、八三七円以上の超過払いをしたこととなるから、被控訴人は、控訴人の損失において、同額の不当利得をしたことに帰する。よつてその返還およびこれに対する最終の弁済の翌日である昭和三一年七月一日以降完済にいたるまで年五分の割合による利息の支払を求める。と述べ、

立証として甲第一号証、第三ないし第九号証を提出し、原審証人獅子内文助、橋本敬次郎、小野寺常蔵、中山ミヱの各証言、原審ならびに当審における控訴本人尋問の結果を援用し、原判決事実摘示のとおり乙号各証の認否をした。

被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求め、答弁として、控訴人主張の事実中第二記載の日時被控訴人が訴外瀬川に対し、金六万五、〇〇〇円を利息の点を除き控訴人主張のとおりの条件で貸与したこと、第三の(一)記載の日時被控訴人が右訴外人から控訴人の借金の弁済として金五万円の支払いを受けたこと、同(二)記載の日時被控訴人が控訴人から貸金の弁済を受けたこと(ただし受領額は五五万五、〇〇〇円である)、は認めるが、その余の事実は、すべて否認する。右第二の訴外瀬川に対する貸金の利息は、日歩一七銭の約定である。第三の(一)記載の右訴外人が第三者弁済した金五万円は、被控訴人が昭和二九年一一月二〇日控訴人に対し、訴外瀬川の保証のもとに、金一〇万円を、利息月五分、弁済期昭和三〇年九月二六日の約定で貸与した貸金に対して弁済されたもので、右元金は、前記五万円の利息の弁済があつた二、三日後に弁済された。控訴人主張の第三の(二)の弁済は、被控訴人から訴外瀬川への貸金に対するものを含まず、控訴人自身への貸金も、控訴人の主張するところとは、全く異なり、被控訴人は、昭和三〇年四月九日金三〇万円を利息日歩二〇銭、弁済期同年六月三〇日の約定で貸与し、その担保として控訴人所有の山林に抵当権の設定を受けたところ、控訴人は、右弁済期を徒過し、貸付当日から昭和三一年五月末日までの四一八日間の前記利率による利息および遅延損害金の合計は、二五万八〇〇円となつたので、被控訴人は、控訴人に対し、抵当権実行の意向を告知したところ、控訴人は、同年六月一〇日抵当物件を任意売却したうえで、前記貸金元利および損害金を支払う旨約したので、被控訴人は、同年五月末日までの利息および遅延損害金二五万八〇〇円ならびに同年六月一日から同月九日までの遅延損害金五、四〇〇円のうち四〇〇円を免除し、元利、遅延損害金合計五五万五、〇〇〇円を、控訴人から弁済を受け、即時内金五、〇〇〇円を控訴人に贈与したのである。と述べた。

証拠(省略)

理由

一、被控訴人が(1)昭和三〇年九月二六日、控訴人に対する貸金につき訴外瀬川政吉から金五万円の支払いを受けたことは当事者間に争いがなく、(2)控訴人自身から昭和三一年六月三〇日金五五万五、〇〇〇円の支払いを受けたことは、原審における控訴本人尋問の結果によつて、これを認めることができる。

二、控訴人は、右一、(一)の支払いは、控訴人主張の第一(一)の借金の約定利息一〇か月分を訴外瀬川が代つて弁済したものであると主張し、原審および当審における控訴本人の供述中に右主張にそう部分があるけれども、右供述のとおりとすれば、金三万円と七万円の合計金一〇万円を借りた日から約五か月半を経た時点で、未経過期間にもかかる一〇か月分の利息までも支払つたこととなり、そのようなことは、必ずしもありえないことではないまでも、稀有のことに属し、特段の事情の認めるべきもののない本件においては、措信しがたいところであり、このことと、原審における被控訴本人尋問の結果、ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、右金五万円は、被控訴人が控訴人に対し、昭和二九年一一月二〇日ごろ金一〇万円を、利息月五分、弁済期昭和三〇年九月二六日の約で貸与した貸金の利息として訴外瀬川が第三者弁済をしたものと認めるのが相当である。(右利息の支払は、利息制限法一条所定の制限を超えるものであり、該超過部分は、民法四九一条により、右貸金の元本の弁済に充当されたものというべきであるから、他に特段の主張立証のない本件では、右訴外人の第三者弁済によつて、控訴人の損失において被控訴人が不当に利得をしたという関係は生じない。)。

また控訴人は、前記一(2)の支払いは、(その支払額は控訴人主張のように五五万円ではなく、五五万五、〇〇〇円であることは後記のとおりである。)控訴人主張の第一の(一)ないし(三)の控訴人自身の被控訴人からの借金および、同第二の訴外瀬川の被控訴人からの借金の弁済として支払つた旨主張し、原審証人橋本敬次郎、中山ミヱの各証言(右第二の瀬川の借金の弁済を含むとの点について)、および原審ならびに当審における控訴本人の供述中には、右控訴人の主張にそうものがあるけれども、登記官作成部分につき成立に争いがなく、その余の部分も、原審における控訴本人の供述により、その成立を確認するに足りる乙第二号証と右本人尋問の結果とによれば、控訴人主張の第二の被控訴人と訴外瀬川間の金銭消費貸借契約については、右訴外人所有の宅地について、抵当権が設定されているところ、控訴人が前記金五五万五、〇〇〇円を被控訴人に支払つた際右抵当権設定登記につき抹消その他の措置を求めた事実がなく、また右訴外人が被控訴人に差入れてある借用証書の返還も受けなかつたことが認められるほか、原審における被控訴本人の供述に照らし、右五五万五、〇〇〇円の支払いは、訴外瀬川の借金の返済をも含むとの前記各証言および控訴本人の供述は、措信できないし、右金五五万五、〇〇〇円の弁済の一部が充てられた貸金が控訴人主張の第一(一)ないし(三)のとおりの消費貸借であるとの右控訴本人の供述も、原審における被控訴本人の供述に照らし、措信できない。むしろ成立に争いのない甲第三、四号証に原審における証人小野寺常蔵、種村武志の各証言、被控訴本人の供述を総合すると、被控訴人は、控訴人に対し、昭和三〇年四月九日、(控訴人が第一(一)で主張するような金三万円と七万円に分けて合計一〇万円を貸したのではなく)金三〇万円を弁済期同年六月三〇日、利息月五分の約で貸与し、その担保として控訴人所有の二戸郡福岡町下斗米字取合岸一八番山林一町八反五畝外四筆の山林につき抵当権の設定を受けたこと、もつともその設定登記面では、利息制限法の制約を慮り、利息は年一割八分として登記したこと、(遅延損害金は、実際幾らと定めたかは、直接の証拠はないが、登記面上は、利息と殆んど同率の日歩金五銭としてあることから推せば、実際上利息と同率の月五分の約束であつたと思われる)、控訴人が昭和三一年六月三〇日弁済した五五万五、〇〇〇円は、右金三〇万円の借金の元利および遅延損害金として支払つたものと認められ、右認定を左右すべき証拠はない。

三、ところで右認定の三〇万円に対する貸付当日たる昭和三〇年四月九日から弁済当日たる昭和三一年六月三〇日までの一四か月二二日間の月五分の割合による利息および遅延損害金は、二二万一、〇〇〇円で、これに元金三〇万円を合わせれば五二万一、〇〇〇円にすぎないことは、計算上明白である。右認定事実と原審における被控訴本人の供述を総合すれば、被控訴人は、誤算により過大請求をしたものと推認できる。しかるに控訴人が前記のように金五五万五、〇〇〇円を支払つたことについては、原審ならびに当審における控訴本人の供述は、そのまま信を措くにたえないまでも、控訴人が詳密な計算を試みることなく、被控訴人の計算違いに気付かず、おおまかなところで、そのようになるものと信じ、被控訴人からいわれたとおりの金額を支払つたものと認めるに足りる、そうすると、控訴人は約定よりも金三万四、〇〇〇円余計に誤払いしたことになることも計算上明白である。しかし当審における控訴本人の供述によると、控訴人は、右金五五万五、〇〇〇円を支払つた即刻その場で、被控訴人から右支払つた金員の中から金五、〇〇〇円を貰い受けていることが認められ、これを贈与と目することができるとしても、実質的には弁済額の減額を受けたのと変るところがなく、そうしてみると、この限りにおいて、被控訴人は、結果的には、利得をしていないし、控訴人に損失もないものと認めるのが相当であるから、前記過払い額三万四、〇〇〇円から右五、〇〇〇円を差引いた金二万九、〇〇〇円を不当に利得し、これにより控訴人に対し同額の損失をおよぼしたものというべく、右利得が現存しないことの反証がないから被控訴人は、控訴人に対し、右利得を返還すべき義務があるから、その限度で控訴人の本訴請求を認容すべきであり、控訴人の本訴請求中には、利息制限法の制限超過部分の利息ないしは遅延損害金の返還をも求める訴旨を含むがごとくであるが、原審における証人獅子内文助の証言、被控訴本人の供述によれば、控訴人は、同法違反の利息および遅延損害金を任意に支払つたものであることを認めるに足りるから、同法一条二項四条二項の規定に照らし、右請求は、認容できず、前記認容の限度を超える控訴人の請求は、理由がない(利息の請求も、被控訴人が不当利得につき善意であつたことは、前記のとおりであるから理由がない)からこれを棄却すべきである。原判決は、これと異なる限度で不当であるから変更すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、九二条但し書を、仮執行の宣言につき、同法一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

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