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仙台高等裁判所 昭和40年(ネ)21号 判決 1965年7月19日

控訴人 遠藤松治郎

被控訴人 大塚徳治

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し、金六万円及びこれに対する昭和三九年四月一七日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを二〇分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

この判決は、被控訴人の勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上、法律上の陳述、証拠の提出、援用、認否は、すべて原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

一、被控訴人の訴外合資会社仙松タクシーに対する被控訴人主張の各債権の存否についての当裁判所の判断は、原審の判断と同一であるから原判決理由中一、の部分をここに引用する。

二、控訴人が昭和三六年三月八日から昭和三八年二月六日まで、右訴外会社の無限責任社員であつたことは当事者間に争がなく、成立に争のない乙第四号証の六と弁論の全趣旨とにより、被控訴人が昭和三七年一〇月一五日頃、訴外会社に対して強制執行をしたが効を奏しなかつたことを認めることができる。

三、そこで次に控訴人主張の抗弁について判断する。

被控訴人が昭和三五年五月一日以降同年八月二四日まで、(但し、入社登記は同年五月一二日、退社登記は同年九月二日である。)右訴外会社の無限責任社員であつたことは当事者間に争がない。控訴人は右事実に基き、被控訴人の訴外会社に対する昭和三五年二月八日、及び同年四月一日貸付にかかる貸付金がいずれも混同によつて消滅したと主張するが、右事実からは、直ちにそのような法律効果が発生するものとは解せられない。

しかし、商法第一四七条によつて合資会社の無限責任社員の責任について準用せられる商法第八〇条の規定は、会社に対する債権者が、たまたま同会社の無限責任社員の地位をも兼有する場合においては、その者が会社に対して有する債権については適用がなく、たとえ、右債権者がその後右会社を退社し、無限責任社員たる資格を有しなくなつた後においても、当該債権については、再び適用を見るに至らないものと解するのを相当とする。してみれば、前記事実に基けば、被控訴人の訴外会社に対する債権のうち、昭和三五年二月八日及び同年四月一日貸付にかかる各債権については、商法第八〇条の規定は適用がないものといわなければならない。よつて、右各債権につき商法第八〇条の適用のあることを前提とする被控訴人の請求は、理由がない。

四、よつて、被控訴人の請求は、前記理由のない部分を除いた、金六万円及びこれに対する昭和三九年四月一七日から完済に至るまで年六分の割合による金員の支払を求める限度においてのみ正当であるから、この限度において認容し、その余の請求を棄却すべきである。従つてこれと異なる原判決は失当であるから、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条、第九二条、第一九六条に従つて主文のとおり判決する。

(裁判官 新妻太郎 須藤貢 小木曾競)

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