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仙台高等裁判所 昭和33年(う)510号 判決 1959年2月26日

被告人 矢吹武司

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役二年に処する。

原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

次に職権をもつて調査するに、

原判決は、被告人に対し第一の恐喝、第二の脅迫、第三の脅迫及び傷害の各事実と累犯の要件たる前科を認定し、法令の適用として右各所為につき刑法の該当法条を適用し、第二、第三の各罪につき所定刑中懲役刑を選択したうえ、以上各罪につき累犯の加重をするにあたつて刑法一四条の適用を示し、次いで併合罪の加重をするについて右法条の適用を示していない。ところで、一四条は有期の懲役又は禁錮を加重することによりその長期が二〇年を超える場合に始めて適用さるべきであり、かつ、その場合においては必ず適用されねばならないのである。したがつて、本件においては、累犯の加重をするについては一四条を適用する余地がなく、併合罪の加重をするについてはそれを適用すべきである。すなわち、原判決は一四条の適用を必要としない累犯の加重についてその適用を示し、その適用を必要とする併合罪の加重についてその適用を示していないわけである。原判決が累犯の加重について一四条の適用を示したのは全く無意味なことであるから、右誤は判決に影響を及ぼさないと言いうるが、併合罪の加重について一四条の適用を示していない点については、同様に論ずることはできない。なるほど、一四条を適用することと、判文にそれを示すこととは、理論上別個の問題であつて、判文に明示していなくとも、適用したことが判文から推認できれば、違法ではないと解しえないでもない、しかし、原判決の示す法令適用の表現形式並びに全趣旨に徴しても、原判決が併合罪の加重をするについて一四条を適用し、その制限内において処断刑を定めたのであるが、ただ判文にそれを示すことをしなかつたにすぎないものとは認めがたい。原判決はひつきよう法令の適用を誤つたもので、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を免れない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判官 門田実 細野幸雄 有路不二男)

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