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仙台高等裁判所 昭和27年(う)154号 判決 1952年5月30日

控訴人 検寧官 高橋嘉門

被告人 大内勝四郎 外七名

弁護人 真木桓 外三名

検察官 木下猛雄関与

主文

本件控訴を棄却する。

理由

検察官木下猛雄の陳述した控訴趣意は原審検察官高橋嘉門名義の控訴趣意書の記載と同一であり被告人大内、三瓶、大平の弁護人真木桓の陳述した答弁は同弁護人名義の検察官の控訴趣意書に対する反駁上申書の記載と同一で、被告人矢島、大貫、上山の主任弁護人岡田実の陳述した答弁は同弁護人及び弁護人奥原喜三郎共同名義の答弁書の記載と同一で被告人遠藤の主任弁護人勅使河原直三郎の陳述した答弁は弁護人大嶺庫名義の答弁書の記載と同一であるから孰れも茲に夫れを引用する。

控訴趣意第一点について、

所論は要するに原審検察官が刑事訴訟法第三百条の規定に基き同法第三百二十一条第一項第二号所定の書面の取調を請求した場合には裁判所は之を受理し該書面の証拠能力を取調べ然る後断罪の資料となすべきや否やを判定しなければならないのに原審は弁護人の意見を聴いたのみで決定をもつて検察官が取調請求をした宮川福松、山岡三男治、鈴木源七、石井祐士、小林佐幸、石井実、阿久津正三の検察官並に検察事務取扱検察事務官に対する供述調書の取調請求を却下したのは、採証の法則を誤り訴訟手続に法令の違反があるというのである。

よつて記録を精査し原審第十回及び第十一回公判調書の記載を調査するに、検察官は被告人矢島嗣郎関係の証拠として検察事務官に対する宮川福松の供述調書、検察官に対する宮川福松(二通)山岡三男治(第一、二回)の各供述調書、被告人大内勝四郎関係の証拠として検察事務官に対する宮川福松の供述調書、検察官に対する宮川福松の供述調書、被告人大貫義雄関係の証拠として、検察事務官に対する宮川福松、鈴木源七の各供述調書、検察官に対する宮川福松(第一ないし第三回)鈴木源七(第二、三回)の各供述調書、被告人村田俊夫関係の証拠として検察事務官に対する宮川福松、石井祐士の各供述調書、被告人遠藤三郎関係の証拠として検察事務官に対する山岡三男治の供述調書、被告人上山文太郎関係の証拠として検察官に対する鈴木源七(第一、二回)宮川福松、石井実の供述調書、検察官に対する鈴木源七、石井祐士(第一、二回)阿久津正三、小林佐幸の各供述調書、被告人三瓶伯次関係の証拠として検察事務官に対する山岡三男治の供述調書、検察官に対する山岡三男治(二通)の供述調書、被告人大平勝関係の証拠として検察事務取扱検察事務官に対する宮川福松の供述調書謄本を刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の書面として他の書面と共に取調を請求したのに対し原審裁判所は夫々の弁護人より右列記の取調請求には任意性がない故証拠能力がない書面であるから異議がある旨の意見を聴いた上該書面の取調請求を却下した事実を確認しうる。しからば右却下決定は採証の法則に違反しているか否かを検討してみるに、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号により証拠となるには(イ)検察官の面前における被告人以外の者の供述を録取した書面であること、従つて検察事務官の面前における供述録取書は茲には包含されないが検察事務取扱検察事務官の面前における供述録取書は検察官の面前における供述録取書として取扱うべきものと解する。(ロ)公判準備又は公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき、(ハ)但し公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限るのであつて、是等の条件が具備しない限り証拠とすることは出来ないこと勿論である。しかして右(ロ)(ハ)の条件を具備しているか否かを判定するには其の内容を取調べ比較検討して始めてなしうるのであるから刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の右(ロ)(ハ)の条件は一応検察官の見解に委ねるの外なく従つて検察官が同法第三百条の規定に基き之れが証拠調を請求した場合裁判所は常に必ず夫れを受理して取調をしなければならないか。当裁判所は必らずしも之を肯定しない。何とならば若し裁判所が事案の如何に拘らず証拠能力のない証拠でも其の証拠について内容を調査する義務があるとするならば既に夫れによつて心証が形成される危険が生ずる。さればこそ刑事訴訟法は同法第二十条第七号、第二百五十六条第六項のような規定を設けてこの種危険防止に対処しているのであろう。この危険防止の精神に立脚して考量するに検察官より取求の前記供述調書が既に他の証拠により公判準備又は公判期日における供述より信用すべからざる情況が認め調請られる時は裁判所は其の取調をなすべき筋合に非ざることを容易に首肯しうるところである。

よつて本件につき是をみるに原審は検察官より前記各供述調書の取調請求前に当該本人を証人として尋問したことは勿論幾多の証拠の取調を行い之等の証拠によつて右請求にかかる調書は同人等の公判期日における供述よりも信用すべからざる情況の下に作成されたものとの心証がえられたので前叙のような却下決定がなされたことを窺知しうる。なお刑事訴訟法第三百条は同法第三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることが出来る書面については検察官は必ずその取調を請求しなければならないと規定しているが右は裁判所に取調義務を命じた規定ではなく裁判所において前叙の如く信用すべき情況にないことが認められる検察官の面前における被告人以外の者の供述録取書の如きは之が取調請求を認容する限りでない。

されば原審がなした検察官の前記証拠の取調請求を却下する旨の決定は相当であつて所論のような採証の法則違反の違法は存しない。論旨は理由がない。

同第二点について、

所論は要するに原審検察官が刑事訴訟法第三百二十二条の規定に基き証拠能力ありとして取調を請求した被告人等の検察官や検察事務取扱検察事務官の面前における供述調書について裁判所は之を受理し該書面の証拠能力を取調べ然る後断罪の資料となすべきや否やを判定しなければならないのに原審は弁護人の意見を聴いたのみで決定をもつて直ちに之を却下したのは裁判の衡平の原則に違反し採証の法則に戻つた法令違反であるというのである。

よつて記録を調査するに原審第十回公判調書の記載によれば検察官は被告人矢島嗣郎関係の証拠として検察官に対する同人の第一ないし第三回各供述調書。被告人大内勝四郎関係の証拠とし検察官に対する同人の第一ないし第三回の各供述調書被告人大貫義雄関係の証拠として検察官に対する同人の第一ないし第七回の各供述調書、被告人村田俊夫関係の証拠として検察官に対する同人の第一、二回の各供述調書、被告人遠藤三郎関係の証拠として司法警察員に対する同人の弁解録取書及び同人の第一ないし第三回の各供述調書、検察官に対する同人の供述調書、被告人上山文太郎関係の証拠として検察官に対する同人の第一ないし第五回の各供述調書、被告人三瓶伯次関係の証拠として検察官に対する同人の供述調書を孰れも刑事訴訟法第三百二十二条により取調を請求し之に対し弁護人は被告人上山文太郎関係は取調請求に異議あり、被告人遠藤三郎関係は弁解録取書を除き其の他の取調請求には異議なし、と述べた事実を認めうべく、原審第十一回公判調書の記載によれば検察官は被告人大平勝関係の証拠として司法警察員に対する同人の第一、二回の各供述調書、検察官に対する同人の供述調書を刑事訴訟法第三百二十二条により取調を請求し裁判官は弁護人及び同被告人に意見を求めた上前記第十回及び第十一回の公判廷で検察官が証拠の取調を請求した前記被告人等の各供述調書又は録取書は之を取調べる旨の決定を宣し適法な証拠調をして検察官より之を裁判所に提出せしめた事実を確認しうるのであつて所論のように右取調請求を却下した形跡は全然存しないのであるから論旨は到底採用の限りでない。

同第三点について、

所論は要するに被告人遠藤三郎、同大貫義雄、同大平勝は孰れも公務員であるのに然らずとなした原判決は失当であるというのである。

よつて記録を調査するに昭和二十四年十一月一日原審第一回公判調書中の証人松山敏三の供述記載によれば右被告人等が公訴事実記載の行為当時の身分は其の頃配炭公団では職員の資格審査や定員の問題等のため公団法規定の職員である一級二級三級の孰れかの職員に該当するかの辞令を出しえぬ結果、一応同法には存しない配炭公団の臨時職員として採用し同公団の臨時事務を委嘱した次第であつて公団法の職員ではない事実即ち公務員でない事実を認めるに足るべく、記録を精査するも同被告人等が公務員であつたと認むべき証拠はない、従つて同被告人等は行為当時刑法第七条にいわゆる法令により公務に従事する職員の範疇に属さないものというべきである。されば同被告人等において当時金品の収受或は饗応の事実があつたとしても之を収賄罪に問擬しえないこと勿論であつて原判決の認定には何等の違法も存しない。論旨は理由がない。

以上のとおりであるから刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件控訴を棄却すべきものとして主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

検察官高橋嘉門の控訴趣意

第一点原判決には訴訟手続に法令の違反がありこの違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである。原審第十一回公判調書記載によれば検察官が刑事訴訟法第三百条に基き同法第三百二十一条第二号の書面として証人宮川福松、山岡三男治、鈴木源七、石井祐士、小林佐幸、石井実、阿久津正三の検察官並に検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書の取調請求を為したるに原審裁判所は弁護人の意見を聞いたのみで決定を以つて直にこれを却下したことを認め得る。

按ずるに検察官が前述の調書の取調べを請求した場合には裁判所は刑事訴訟法第三百二十一条第二号の規定に則り右書面の証拠能力を取調べ断罪の資料と為すべきや否や判定しなければならぬ。即ち

(イ) 証人が公判期日に於て為した供述が前に検察官の面前に於て為した供述と異なるか否かの点については該証人に対する検察官作成の供述調書の内容と同人の法廷に於ける供述内容を比較検討して初めてこれを察知することが出来る性質のものであるからその供述調書の内容を知らない裁判官としては一応これを取調べなければ右供述調書が果して証拠能力を有するか否やを判定する事は出来ないと謂う可きである。

(ロ) 刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号に所謂前の供述を信用すべき特別の情況とは(A)公判期日に於ける支離滅裂な供述より検察官の面前に於ける供述の方が理路整然としているとか(B)調書に於ける供述が他の証拠と合致し若しくは経験則に合するとか(C)或は他の有力な証拠と比較し検察官の面前に於ける供述の方が公判期日に於ける供述より著しく信用出来る等の事情を指すものであるから之亦比較上の問題であるので結局前記調書の内容を知らなければ判定し難いものでこれは判例も支持している処である(名高判昭和二十四年十月十二日)。

(ハ) 元来裁判官の面前に於ける供述は検察官の面前に於ける供述より信用性の高い事は一般に認められる処であるが一面公開の法廷に於ては被告人及び一般傍聴人が在廷して居るので其の面前に於て供述を為す事は相当の努力を要することで被告人等の圧迫を受け又はその他の関係を顧慮し真実の供述を為し得ぬこともあるし又日時の経過等の為記憶を呼び起し得ぬ場合もある可く殊に本件に於ける証人(石井、小林、阿久津を除く)は被告人等と必要的共犯の関係にある贈賄罪によつて別件起訴され事の真実を証言する場合に於ては自己も亦有罪の判定を受ける虞れがあるものであるから必ずしも裁判官の面前に於ける供述であるからと言つて検察官の面前に於ける供述より真実に合致するとは断し難い。刑事訴訟法第三百条はその真実発見の建前から検察官に対し同法第三百二十一条第二号の調書の証拠調請求を義務づけて居るのであり故に検察官が右義務の履行として該書面の証拠調の請求を為した場合同じく真実発見の責任を負う裁判官が右証拠能力も取調べず之を却下し得るものとせば前記第三百条の規定の趣旨は没却されるに至るものと言はなければならない。然る時は、(イ)前記宮川鈴木等の原審法廷に於ける供述は左記の通り曖昧で或は黙否し同人等の検察官或は検察官事務取扱検察事務官に対する理路整然たる供述に対比し支離滅裂である(証拠第十一回公判調書に於て取調請求をした同人等の検察官及検察事務官に対する供述調書記録にあり)、第四回公判調書中宮川証人の「上山、村田と飲酒した記憶なし志賀が金を贈つたのを聞かず吹の湯に於て大内矢島に金を贈つた事なし」との旨の記載、鈴木証人の「なるこ亭が上山、大貫を招待し一人千円乃至千五百円の御馳走をした帰る時に自動車賃はやらねばならぬと思いましたが先に酔つて仕舞つてやつたかどうか判りません」との旨の記載、第六回公判調書中山岡証人の「東京商工局に於て相馬事務官に現金一万円を贈つたるも拒否された炭繰り会議に出席し矢島大内等と宴会を為し同人等の宴会費及び宿泊料は全部組合負担なりし旨、矢島の結婚の際現金千円を贈つた旨紐金につい何等供述せず黙否した旨、紐を長くしない様にと矢島大内が言つた事について記憶がない旨、遠藤に昭和二十三年二月石川亭で金を贈つたかとの問につき黙否した旨の各記載、原田の「大手に金を贈らず村田には昭和二十三年九月頃東京商工局でウイスキー代として千円貸した旨」の各記載 (ロ)同証人等が検察官及同事務取扱検察事務官に対して為した供述は全く任意になされたものであること、原審第八回公判調書の証人三笠三郎柏木忠第九回公判調書の証人宮後誠一鈴木久学松野内高市中村三朗第十回公判調書の証人保倉忠の「各贈賄者を取調べたるも任意に些の強制もなく供述を為したる」旨の各記載及び第四回公判調書の証人宮川の「鈴木、柏木検事の取調は強制的でなかつた」旨の供述記載、証人相馬常敏の「鈴木、三笠各検事中村事務官には強制されたことがなかつた」旨の記載を綜合し其の任意の供述たるや明白の事実である。(ハ)検察官が証拠調を請求した前記宮川福松等贈賄者の検察官及び検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書の記載(前記録編綴)は法廷に於ける他の証人刈部謙三、野部貞、相馬常敏の供述(原審第四回公判調書)及び証人森誠之助の供述(第八回公判調書)と相応じて首尾一貫し詳細に贈賄の事実を述べて居り到底実行行為者でなければ陳述し得ざるものあるを窺はしめる。以上の諸点より検察官が刑訴第三百二十一条第一項二号後段の事由ありとして前記書面の取調請求を為した場合裁判所としては之を受理し右書面の証拠能力を取調べた後これが採否を決定すべきであるのに拘らず原審が右措置を採らず検事の右請求を却下し検察官が右証拠により立証せんとする被告人大内同村田同矢島同三瓶同上山に対する公訴事実につき(但し上山の追訴五を除く)犯罪の証明なしとして無罪の言渡しを為した事は記録上明白で原審の右措置はひつきよう採証の法則を誤り訴訟手続に法令の違反ありと謂はなければならぬものと信ずる。

第二点被告人等は原審に於て孰れも公訴事実を否認し且検察官並に検察官事務取扱検察事務官の取調を受けた際いづれも強制を受け誘導に陷り虚偽の自白又は不利益な供述を為した旨弁疏すれども原審第八回公判調書中証人三笠三郎国分則夫柏木忠の第九回公判調書中証人宮後誠一鈴木久学松野内高市中村三朗の第十回公判調書中保倉保の「被告人等の取調べに当つては供述拒否権を告知し強制誘導等を加へた事実はなく被告人等は進んで事実を述べたのでこの供述通り録取したもので各被告人等は事実相違ない旨を認めて署名捺印した」旨の記載、第十回公判調書中大嶺庫証人の「上山被告人の弁護人として一目接見した処同人は事件について相済まなかつた三笠様に御願いして一日も早く釈放して貰う様に尽力して呉れと申し向けた旨三笠検事の取調べは強制的でなかつた旨被告人と面接した同人より聞知したことと同人の兄の話と一致せず公判対策が決らざりし為弁護人を辞任した」旨の記載及び此等の証人に対し被告人等より何等有効な反対訊問もなかりし旨の記載により検察官が刑訴第三百二十二条該当の事由ありとして証拠調の請求を為したるに原審は弁護人の意見を聞いたのみで直ぐにこれを却下したことは原審第十一回公判調書の記載により明らかである、按ずるに被告人等は一般に自己の有罪を免れる為法廷に於ては警察検察庁の取調に当つて強制誘導等を受け不任意に虚偽の供述を為した旨弁疏するのが通常であり殊に涜職選挙事犯に於て最とするが一般である。此の如き場合捜査官が右強制誘導等を加へた旨自認するか又は被告人等の弁疏を特に明白に裏づける事実が立証される場合は格別然らざる場合被告人等の供述は否認の為め一応の弁解に止り其の供述は経験法則上極めて信憑性の薄弱なものと言う可きで裁判所は被告人より右弁疏が出た場合他に之を補強する立証なきに拘らず容易にこれを措信し調書に任意性なしとしその証拠能力を取調べざるは裁判の衡平の原則に違反するものである。被告人側に於て任意性の反証として小林碧の死亡は検察官の強制等の結果による旨主張しおるも第八回公判調書中証人三笠三郎の供述により右小林が死亡したのは元軍人としての階級立場性格を考慮し強制等の結果死亡したものに非ずして武人的感情より犯罪を犯し被告人等に迷惑を掛けたる事を恥じての結果なる可きと推知せしめる。徒らに感傷に溺れ任意の供述なりや否や事案の真相を逸す可きではない。然る時は検察官が前記被告人等の供述調書の取調を請求した場合は自白なりや不利益な事実の承認なりや又論旨一貫した供述なりや否特に信用すべき情況に於て為されたか否右調書に被告人等の署名捺印があるか否(此等は右書面を受理して始めて判定出来るものである)を審究し然る後判断の資料に供す可きであるのに前記原審の採証の法則に違反任意信用性ある可きをにわかにこれなしと速断したもので因つて之に基き被告人大内勝四郎外四名に対して犯罪の証明なしとして無罪の言渡しを為したのは判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反であると信ずる。

第三点原判決は被告人遠藤同大貫同大平に対し同人等は配炭公団臨時雇事務取扱にして所謂公務員に非ずと為し無罪の言渡しを為したるも原審に於て証拠に採用になつた遠藤三郎の検察官及び司法警察員に対する供述調書(記録添付)及び第十回公判に於て検察官より取調べのあつた被告人大貫同大平の捜査官に対する供述調書(記録添付)によれば被告人は孰れも配炭公団法に基ずく配炭公団の職員にして判例の所謂刑法の公務員なるには其の職務が単に公務のみならず公務に従事する資格の根拠が法令に存するを必要とするに該当し実質的に配炭公団法の規定する公務に従事し其の職種に応じて俸給等の支給を受け且遡つて辞令の交付を受けて居る以上仮令辞令の交付が形式的に後れたりとするも刑法の所謂公務員と見る可きに変りなく原審がこれを臨時雇事務取扱として排斥したのは事実の誤認があるが又は法令の解釈を誤りたるものにして孰れも判決に影響を及ぼす可く原判決は破毀を免れざるものと思料する。

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